バカとテストと召喚獣 ~とある男の物語~   作:カンベエ

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第二問 国語
以下の意味を持つことわざを答えなさい
(1)得意なことでも失敗してしまう事
(2)悪いことがあった上に更に悪いことが起きる喩え

秋山隼人、木下優子の答え
(1)弘法にも筆の誤り
(2)泣きっ面に蜂

教師のコメント
正解です、他にも(1)なら「河童の川流れ」や「猿も木から落ちる」、(2)だと「踏んだり蹴ったり」や「弱り目に祟り目」などがありますね。

土屋康太の答え
(1)弘法の川流れ

教師のコメント
シュールな光景ですね。

寿々屋義行の答え
(2)泣きっ面にシャイニングウィザード

教師のコメント
君は将来残虐超人でも目指すつもりですか?

浦辺綾乃の答え
(1)秋山隼人の名前書き忘れ
(2)三宮叶の解答欄間違え

教師のコメント
他人の傷を抉らないで上げて下さい


第二話 バカと昼と開戦の狼煙

雄二の宣言にざわつくクラス、それはそうだろう。成績の最下層であるFクラスが試験召喚戦争を挑むなど自殺行為以外のなんでも無い。

 

「勝てるわけが無いだろ!」

「まかり間違ってこれ以上設備ランクが落ちたらどうするんだ!!」

「叶タンがいるなら他は何も要らない!!」

「姫路さん結婚して下さい!」

「綾乃たーん!!」

 

明らかに求婚まがいな事を言っている後半数人を取り敢えず粛清しながら隼人が声をあげる。

 

「だがな雄二、勝てる証左が無ければ戦意が上がらないのも確か「ギャーッ!!」だぞ」

 

雄二が次を言いやすいように誘導する言葉、と同時に取り敢えず一人の関節を外して直ぐに戻す。

 

「勝つ要素はある!」

 

先ずは指さされるのは隼人と姫路、叶の三人だ。

 

「姫路の実力に関しては言うまでも無いだろう・・・・そして隼人と三宮だ」

「そこで俺の名前を出すのか」

「(ふぇ)?」

「隼人は去年の学年五位、三宮もAクラスレベルの成績がある」

 

そう、隼人も叶もまともに点数をつけていたならば間違い無くAクラスだったのだ。

 

「そうだよな、俺らには姫路さんがいるんだ!」

「秋山も成績凄いじゃないか!」

「叶タン!結婚してくださギャー!!」

 

求婚しようとしていた奴が隼人に関節をきめられている。

 

「そして・・・・ムッツリーニ、姫路と浦辺のスカートを覗いていないでこっちに来い」

「ふぇっ!?」

「んにゃっ!?」

「・・・・・・!(ブンブン)」

 

畳に顔をこすりつけて姫路と綾乃のスカートを覗いていた康太が否定を現すように手を振る。

 

「あいつがあのムッツリーニだと!?」

「流石だ、あれだけ大胆に覗いていて尚否定するとは・・・・」

「ああ、その名に恥じぬムッツリだ」

 

「木下秀吉もいる」

 

「おお・・・・」

「確かアイツの姉はAクラス・・・」

「実は頭が良いんじゃ・・・・」

 

少しづつ、クラス内に勝てるんじゃないか、というムードが漂う。

 

「俺も全力を尽くす」

 

「確か坂本って昔神童って呼ばれてたよな」

「って事は実は振り分け試験は体調不良だったとかで成績が良いんじゃ・・・・」

 

「それに・・・・吉井明久と寿々屋義行もいる」

 

シーン・・・・・・・・

 

「ちょっと雄二!どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさ!!」

「そうだ雄二!どうするんだこのシラけた空気を!」

 

クラスがざわつく、それって誰だ?と。

 

「知らないなら教えてやろう・・・・コイツラは・・・・・『観察処分者』だ」

『観察処分者ってバカの代名詞じゃ無かったっけ?』

 

クラス中がハモる。

 

「ち、違うぞ!!」

「そ、そうだよ!ちょっとお茶目な十六歳に付けられる愛称で・・・・」

「そうだ、バカの代名詞だ」

『肯定するなバカ雄二!!』

 

観察処分者―――素行不良・・・・程度では済まされない生徒に与えられる称号であり、様々なメリット、デメリットが生じる。前者として召喚獣に物理干渉能力、つまり実体に触れる力が与えられ、後者としてフィードバック、つまり召喚獣のダメージが召喚主に還ってくるという力が付与される。主にその能力を利用して教師の雑用役を任される事が多い。

 

「まぁいてもいなくても戦力としては全く問題無い連中だ」

 

名前を出すだけ出して投げ捨てるというどエスな事を言っている。

 

「まぁともかく、これだけの戦力が整っているんだ!先ずはDクラスあたりから戦ってみようと思う」

 

「皆!この境遇には大いに不満だろう!!」

『当然だ!』

「ならばペンを取れ!出陣の準備だ!」

『おぉおおおお!!!』

 

雄二の指揮能力はずば抜けている。

 

「というわけで明久、義行。宣戦布告の使者として赴いて欲しい」

「下位勢力の宣戦布告の使者ってよ」

「大抵ひどい目に合うよね?」

 

不安満点な二人の肩に雄二がポン、と手を置く。

 

「大丈夫だ、俺を信頼して騙されたと思って行ってみろ、お前らに危害は加えられない」

 

いくら明久と義行の二大バカとは言えそんなんで行くわけが・・・・

 

『分かった!行ってくる!』

 

あるんかい。ともかく勇んでDクラスへと向かった二人・・・・・

 

―数分後

 

『騙されたよ!?』

 

ズタボロになって帰ってきた二人。

 

「よーし、ミーティングを行うぞ。バカとバカ、バカに隼人、秀吉、ムッツリーニ、姫路、島田、三宮、須川は付いてこい」

『呼称が同じ!?』

 

明久、義行、綾乃のシャウトも無視して歩き出す雄二。どうやら向かう先は屋上のようだ、丁度昼休みだし飯を食べながら話すのだろう。

 

「・・・・(さすさす)」

 

畳の跡を気にしているのか頬をさする康太。

 

「康太、心配しなくとも跡は残っていないぞ」

「・・・・(ぶんぶん)!!」

「いや、今更否定されてもムッツリーニがHなのは周知の事実だぞ?」

「・・・・(ぶんぶん)!!」

「そこまでバレているのに否定し続けるなんて、ある意味凄いなお前は」

「・・・・(ぶんぶん)!!」

『・・・・何色だった?』

 

明久と義行が問いかければ。

 

「みずいろとしろ」

 

どっちがどうとか何の色とか関係なしに即答。

 

―屋上

 

「・・・・隼人、コレは何だ?」

「?俺らの弁当だが・・・・どうかしたか?」

 

目の前にあるのは重箱弁当・・・・五段の。おにぎりが詰まった一段目に唐揚げと卵焼きの二段目、野菜スティックの入った三段目にウインナーとゆで卵、黒豆の四段目とデザートにオレンジ、林檎、ぶどうのはいった五段目。

 

「お前らはどういう昼飯を食ってんだ」

「すごいです・・・・」

「ちょっと豪勢っていうか・・・・」

「美味しそうなのじゃ」

「・・・・(こくこく)」

「?まぁ良いが・・・・余分に作ってきた、皆もつまむといい。ほら、箸だ」

 

そういって全員に割り箸を配るとめいめいに箸を伸ばそうとする・・・・と。

 

「おい待て」

 

それを隼人が制する。

 

「飯を食う時はいただきますからだ」

『いただきます』

 

その言葉と同時に全員が食べ始める。

 

「ところで明久、義行、ちゃんと伝えて来ただろうな?」

「ああ、問題無い」

「午後一時半からって伝えてきたよ」

 

弁当をパクつきながら会話を続ける。

 

「なぁ雄二、一つ質問があるんだが良いか?」

「なんだ隼人」

「なんでDからなんだ?」

「ああ、それは俺も思った」

 

亮が同意してくる。

 

「まぁ理由はいろいろあるが・・・・景気づけ、だな・・・・Eクラスじゃ相手にもならないだろうしな」

『どういう事?』

 

バカ三人組(明久、義行、綾乃)が首を傾げる。

 

「振り分け試験の時点ならば話は別だが・・・・今お前の周りにいるメンツを見てみろ、明久」

 

ぐるりと周囲を見回す明久。

 

「バカが四人と美少女が三人、お父さんが一人とムッツリが一人かな」

「誰が美少女だと!?」

「・・・・(ぽっ)」

「えぇ!?雄二とムッツリーニが美少女で反応するの!?」

「誰がお父さんですか!?バカにしてるんですね!?」

「えぇ!?綾乃がお父さんで反応するわけ!!?どうしよう!僕だけじゃツッコミ切れない!」

 

恐慌状態に陥る明久。

 

「落ち着け雄二、康太、綾乃。話が進まんだろう」

 

と、隼人が方向修正を試みれば。

 

「そ、そうだな・・・・ま、要するにだ。姫路や隼人、三宮に問題が無い以上Eクラス程度なら勝てる」

「Dクラスだと怪しいのか?」

「確実とは言い難い」

「同じ不確実だったら最初からAの方が良いんじゃないのか?」

「さっきも言っただろ?景気づけだ、それにAクラスと事を構えるにはそれ相応の準備が必要なんだ」

 

どうやら作戦があるらしい。

 

「お前らが協力してくれるなら・・・・絶対に勝ってみせる」

 

不敵に、自信満々に笑う雄二。

 

「ふっ、上等だ・・・・使いこなして見せろ雄二」

「当たり前だよ!」

「だな、しっかりやれよ代表」

「そうじゃな、Aクラスの連中を引きずり落としてやるかの」

「・・・・(ぐっ)」

「いいわね、面白そうじゃないの」

「ふふふっ、下克上って良い響きですよね」

「が、頑張ります!」

「えいえいおー♪」

 

「よし、作戦を説明する」

 

涼しい風がそよぐ屋上で、作戦会議が始まったのだ。


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