バカとテストと召喚獣 ~とある男の物語~   作:カンベエ

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第十四問 アンケート 吉井玲
さて、私が赴任する前の師走寮寮長である秋山隼人君。彼についての印象を答えて下さい。

吉井明久、寿々屋義行、須川亮、三宮叶、浦辺綾乃の解答
『お父さん』

吉井玲のコメント
成程、隼人君は良い寮長だったようですね。確かに昔から面倒見も良かったですし、料理をはじめとした家事全般が得意という事もあるのでしょう。

坂本雄二の解答
『まとめ役』

吉井玲のコメント
クラス代表である坂本君が認める程の、という事でしょうか?確かに隼人君が先頭に立って動くとすごくまとまりがありますね。

木下優子の解答
『・・・・ぽっ///』

吉井玲のコメント
隼人君、申し訳ありませんが少しOHANASIがあります。

秋山隼人のコメント
え?何!?ちょっと待ってくれ玲姐さん!何で包丁を持って俺に向かって来るんだ!?誰か、誰か助けてくれぇえええええええ!!!


第十四話 バカと王様ゲームと告白

定額明けの放課後のFクラスに集まる人々、隼人、明久、雄二、義行、康太、秀吉、亮、姫路、島田、綾乃、叶、比良坂、高本、霧島、優子、工藤らの総勢十六名。

 

「皆、準備は良いか?」

 

隼人の声に、全員が静かに肯く。

 

「では」

「第一回文月学園!」

「王様ゲェエエエエエムッ!!」

『いぇええい!!』

 

最初は、暇つぶしの内容として冗談半分で挙げられた王様ゲームだったが工藤や比良坂、意外にノリの良い高本らが話に加わりものの数分で実行まで漕ぎ着けた訳だ。

 

「ルールを説明する」

 

司会進行は隼人。

 

「ここに一から十五までのクジと王のクジがある、これらを引き王様は数字を指定して命令を出す事が出来る。そして最大のルール、それは・・・・」

『王様の命令は絶対!!』

 

―一回戦

 

『王様だーれだ!!』

 

ピッ、とクジを掲げたのは雄二だ。

 

「さて、口開けだからな・・・・五番が鉄人に、六番が船越先生に『好きです、付き合って下さい』と告って来い!」

 

五番→義行 六番→明久

 

『貴様ぁああああああっ!!?』

 

二人が血涙を流しながら雄二に詰め寄る。

 

「何て命令を出しやがる!?ボッコボコにされる未来しか見えねーじゃねーか!!」

「しかも僕は船越先生にだって!?冗談じゃ済まされないよ!!」

「ダメだよ明久」

「そうよアキ」

『王様の命令は?』

『絶対・・・・・・畜生ぉおおおおおおお!!!』

 

ダッシュで教室を去る二人、義行は数分後にボロ雑巾になって、明久は更に数分後に心身共に疲れ果てて戻ってきた。

 

『雄二ぃ、この後の事を覚悟しろぉ・・・・』

 

―明久&義行の怨念が渦巻く二回戦

 

『王様だーれだ!』

 

ピッとクジを挙げたのは綾乃。

 

「ふふふっ、ならばやるべき事はただ一つよ!」

 

息を呑む一同。

 

「三番が七番に、六番が十三番のほっぺにチューで!」

 

ざわめく一同、そして眼を輝かせる姫路。手に持つは七番のクジ。

 

「明久君の持っているクジは、三番、ですよね?」

 

微笑みながらクジを開く明久、徐々に顔を輝かせる姫路・・・・・だが、クジの数字は二。

 

「え?」

 

あっけにとられた姫路の肩を島田が叩く。

 

「ん」

 

数字は・・・・三。

 

「いらっしゃい、瑞希・・・・」

 

「ふむ、俺が十三番な訳だが・・・・」

『殺したいほど妬ましい・・・・』

 

怨念たっぷりに隼人を睨みつける明久、康太、義行、亮、高本、比良坂。

 

「・・・・私、六番」

 

顔を真っ赤にしながら手を挙げるのは優子だ。

 

『テラコロス』

 

殺意ゲージがMAXを超える明久たち。

 

「あのな、大体お前らは・・・・」

 

チュッ・・・・

 

「・・・・・・・・・・え?」

 

一々騒ぎすぎだ、そう言葉を紡ごうとした隼人の口が止まる。頬に触れた柔らかい感触でだ。

 

「・・・・優、子?」

「な、なによ」

「ナニヲシテオイデデスカ?」

「し、仕方無いでしょ。王様の命令は絶対なんだから」

 

顔を真っ赤にしながらそっぽを向く優子。

 

「そう・・・・ですね、そうですか、こういうのもアリなんですね・・・・なら私、もう遠慮しません!!」

 

そして何故か吹っ切れた姫路。

 

―初々しい空気を出す隼人と優子・・・・を殺意満点で睨みつける男性陣の怨念を感じる第三戦

 

『王様だーれだ!』

 

クジを挙げたのは霧島。

 

「っ・・・・・!!サラバ!!!」

『逃がすかぁああああっ!!!』

 

反射的に全力疾走しようとしていた雄二を明久と義行が反射的に取り押さえている。

 

『さぁ王様!ご命令を!!』

「・・・・じゃあ・・・・雄二は私とデートに行く」

「霧島よ、番号で命令せねばならんのじゃぞ?」

 

その言葉でハッ、とする雄二は二人の拘束を振りほどいて。

 

「そうだ、秀吉の言う通りだ!俺の番号を当てなけりゃ・・・・」

「じゃあ四番」

 

雄二のクジ→四番

 

「っ」

『させんわ!!』

 

取り押さえられ霧島に引き渡される雄二、数分後には何故か手足を縛られ猿轡を噛まされていた。

 

―死屍累々な十回戦

 

「口惜しい事ではあるが下校時刻も近い、これが最後となるだろう・・・・勝っても負けても恨み言は無し!!せーの!!」

『王様だーれだ!』

 

くじを挙げたのは隼人だ。ここまでの十戦、隼人は良い思いこそしたものの罰ゲーム的なモノに関しては一切被害を被らないままに来ているのだ。

 

「ふむ、大トリをしかと務めさせて貰おうか」

 

ふむふむ、と顎に手を当てて考え始める隼人、ポン、と何かを思いついたように・・・・ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「では行こうか」

『嫌な予感しかしない』

「一から十五までの全員・・・・」

 

ゴクリ、とつばを呑む音が響く。

 

「自分の好きな人、もしくは気になっている異性を俺に耳打ちする事」

『!!?』

 

隼人の思惑はただ一つ、おもしろ半分などでは無い。あるのはただ一つの願い、皆に残る学園生活を楽しく過ごして貰いたいと。気になる人がいるならば結果に関わらず出来る事をさせてあげたいという半ば親心のようなものなのだ。

 

「無論、俺はコレを口外する事は無いし当人が望むならばその手助けも考えるつもりだ」

 

そう言えば、先ずは霧島が来る。

 

「・・・・私が好きなのは雄二」

「だろうな、アイツもまんざらでは無いと思うからちゃんと手伝ってやる」

「・・・・ありがとう、秋山は良い人。秋山も困った事があったら言って・・・・私が助けるから」

「おう、そん時は頼むぜ」

 

続けて来たのは島田だ。

 

「あ、あのね、実はウチね」

「うむ」

「義行の事が・・・・」

「成程、だがな島田。あれは明久と並ぶ鈍感だ、もう少し好意を前面に押し出さなければ気づいてすら貰えんぞ」

「う・・・・」

「フォローはしてやる、ちゃんとやれ」

 

次は義行だ。

 

「言わなきゃダメ?」

「言わなくても良い」

「なら・・・・」

「言わなかった場合、数々の罪をでっち上げ女装させた上で禁欲させたFFF団の中に放り込む」

「島田が好きです」

 

その言葉に笑みを浮かべる隼人。

 

「ならもうちょいアピールして行け、こういうのは男から言い寄るもんだ」

「・・・・頑張ってみる」

 

次に現れたのは叶だ。

 

「・・・・あの、ね?」

「うん」

「・・・・亮君の事が・・・・(もじもじ)」

 

隼人の顔が(  Д ) ゚ ゚になった。

 

「・・・・蓼食う虫も好き好きとは言うが・・・・」

「(ふるふる)亮君、おバカ、でも優しい、好き」

「亮も明久、義行に負けず劣らず鈍い、アタックを仕掛けるんだ」

「ん!」

 

グッとガッツポーズをとった叶が、亮にフライングクロスチョップを仕掛けていた・・・・うん、確かにアタックだな。

 

そこから姫路、明久、康太、工藤、秀吉、綾乃、がそれぞれ好きな人を吐露し、残るメンツは気絶した亮を除いて優子、比良坂、高本の三人だ。

 

「俺か」

 

次は高本だ。

 

「とは言っても今は好きな人とかいなくてな」

「気になる人は?」

「いないんだ、コレが」

「お前・・・・そっちの趣味か?」

「コロスゾ」

「冗談だよ」

「まぁ何時か誰かに恋する事もあるんだろうが今はいない・・・・ってのじゃダメか?」

「いや?嘘を付いているわけじゃなさそうだ、問題はねぇよ。何かあったら相談してこい、相談ぐらいなら乗ってやるからよ」

「おう」

 

続けて比良坂。

 

「ウチの、クラス代表が気になっていて・・・・」

「中林だったか?」

「・・・・ああ、一目惚れ・・・・とでもいうか・・・・彼女がソフトボールの試合をしていたところを偶然見たんだ、そしたら・・・・輝いていたんだよな。ソフトボールが出来る事が嬉しくて嬉しくて仕方無いみたいな感じで」

「・・・・俺はそういうの嫌いじゃねぇぜ」

「秋山」

「応援するさ、その恋」

「お、応」

 

最後の優子。

 

「い、言わなきゃ・・・・ダメ?」

「ルールを忘れたワケでもあるまいよ」

「う・・・・」

「まぁ今までの奴らに半ば無理矢理に聞いた手前おおっぴらには言えんが言った事にしても良いしだな」

「・・・・よ」

「え?」

 

小さな声だったがために、聞き逃してしまい思わず疑問符をあげる。

 

「わ、私が好きなのは・・・・貴方よ、隼人」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「隼人?」

 

あまりの出来事にフリーズ中の隼人。

 

「あーうん、ちょっと待って、待ってくれ・・・・明久、義行、亮、秀吉、スマンがそっちの連中を命懸けでここに近寄らせるな」

「えー面倒クサイ」

「何だ秘密の話し合いってか?」

「俺は気絶させられていたというのに」

「それは隼人のせいでは無いのじゃが・・・・」

「グダグダ抜かすな、『アレ』、やられてーのか?」

 

『アレ』、の単語に過剰反応を示す四人。

 

『Sir、yes Sir!さぁさぁ!あの場に近寄るな!角へ集まるんだ!!』

 

四人の気迫に押されて角に押し込まれる連中を見ながら、隼人は今一度視線を優子へと移す。その顔は今までに見たことの無いぐらいに真っ赤になっている。

 

「・・・・何で俺なんだ?」

「・・・・最初はね、貴方の事は目の上の瘤ぐらいにしか思っていなかったわ。何時も私より一歩上の順位で、人気もあって人望もある」

 

それは覚えている、一年生も半ばまで来た頃だろうか。イキナリ突っかかってこられてライバル宣言されて。

 

「でもそんな貴方を何時か追い越す、って思って見ているうちにね・・・・別の思いが生まれてたの」

「別の思い?」

「何時も貴方の周りには人がいた、明久君や義行君、亮君に秀吉、叶や綾乃、島田さんに坂本君、土屋君、他にもいーっぱい、そんな姿を見てたらね・・・・何時の間にか『私もあそこで一緒に』って」

「・・・・」

「でもね、Fクラス対Aクラスが終わって、隼人の提案で一緒に遊ぶようになって、それで満足できたと思っていたの・・・・でも違った、何かが違う、私が欲しかったのはこの場所?って」

「・・・・何が、違かったんだ?」

「私が本当にいたかったのは、隼人の隣。他の誰よりも近くで隼人と一緒にいる事だって・・・・気づいたの、だから私は・・・・」

 

思い当たる節が無いワケでも無い、最近になって優子が明るくなってきた、積極的に話しかけてくるし何よりちょっとした事でも自分に相談してきたり、今に思えば好意を向けられていたんだな、と理解出来る。

 

「ねぇ隼人、貴方にとっての私って何?私は・・・・・・」

「優子、少しだけ時間をくれないか?」

「え?」

「俺は・・・・確かにお前に対して特別な感情を抱いている、だがそれが恋愛感情なのか違うものなのかが分からない・・・・今少しだけで良い、時間をくれ」

「・・・・うん」

 

眼を閉じ、ゆっくりと考え込む。自分のこれまでの優子がらみでの行動、言葉、思惑、その全てを一つ一つ思い浮かべていく。

 

「・・・・そうか、俺も・・・・優子が好きだったんだ」

「え?」

「だから俺はお前に負けたく無かった、カッコ悪いとこを見せたく無くてずっとお前より上にいたかった・・・・」

「隼人・・・・」

「ったく、情けねーこった。義行にゃあれだけ男から言うべきだー何て言ったのによ」

 

ふん、と息を吐き出せば優子の真正面へと向き直る。

 

「改めて俺から言わせてくれ・・・・優子、俺はお前が好きだ。付き合ってくれ」

 

ポロポロと優子の瞳から涙が溢れ出す。

 

「はや、とぉ・・・・」

「泣くなよ」

「アンタが泣かせ、てるんでしょ・・・・」

「スマン」

「私も、隼人が好き。だから・・・・宜しく」

「おう」

 

はにかむ二人。

 

『じー・・・・・・・・・・』

『はっ!?』

 

向けられる十四の視線。

 

「オメデトー優子!」

「おめでとう木下さん」

「おめ、でとー」

「おめでとさん、隼人は優良物件だから良い買い物したよ」

「おめでとうございます木下さん」

「・・・・おめでとう、優子」

「皆・・・・ありがとう、でも・・・・恥ずかしいぃいいい」

 

口々に祝辞を述べる女性陣。

 

「妬ま・・・・おめでとう、隼人」

「コロ・・・・おめでとう隼人」

「・・・・殺・・・・・おめでとう」

「死・・・・おめでとう隼人」

「何でオヌシらは素直に祝福出来んのじゃ、隼人よ。姉上の事を頼んだぞい」

「Kill・・・・・おめでとう、秋山」

「おめでとさん、秋山。まーお似あいだと思うぜ」

「おかしいな、祝福の言葉が二つしかねーぞ」

 

恨み、妬み、嫉み、殺意が蔓延する男性陣。

 

「・・・・ふふっ」

「・・・・ふぅ」

 

とにもかくにもこの日が、隼人と優子にとって忘れられない日になったのは確かな話なのだ。




アニメ版のオマケストーリー『文月学園王様ゲーム』を改変させてみた結果、何故かラブストーリーに発展しました。作者も書いててビックリです。

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