四日間の合宿を終えての感想を書いてください。
二年男子全員の感想
『全略』
教師のコメント
私は随伴しなかったのですが何があったのでしょうか?二年男子全員が停学になった事と関係があるのでしょうか?
―三日目―朝
D、E、Fの男子のほとんどが消沈している。全ては鉄人による徹夜の補習明けのためである。
「・・・・大丈夫か?お前ら」
ずずず、と茶を啜る隼人の前には明久、雄二、秀吉、康太、義行、亮、平賀、比良坂がテーブルに突っ伏している。
「ぬぅ・・・・我が力不足が嘆かわしい事だ・・・・」
「流石にAクラス勢が出てくると厳しいな」
「学年主任が出て来るってのも痛いところだぜ」
「お前ら玲姐さんの存在忘れてるからな?」
その言葉に、一同が首を傾げる・・・・明久を除き、だ。
「どういう事だ」
「玲姐さんはただのブラコンじゃない、頭良いんだぞ・・・・高橋教諭並みに」
『嘘だ!?』
「嘘じゃねーよ、あの人ハーバード大卒なんだから」
『・・・・出涸らしか』
隼人の言葉に明久を一度見てため息をつきながら呟く。
「その言葉の真意を聞かせて!?」
「まぁ明久が出涸らしなのはともかく、だ・・・・流石に全日程成果も無く補習ってのは厳しいだろうから・・・・」
『から?』
「俺も参戦してやるよ、ただし俺の出番は玲姐さんを抜くまでだ。そっから先はテメーらでやれ」
「そこまでやってもらえるなら十分だ!」
ガッツポーズをする雄二を尻目に、頭の中では勝率の計算を始める隼人だった。
―夜―明久たちの部屋
最奥に座る雄二、そこから円を描くように座る一同。主犯格である明久、秀吉、康太、義行、亮、FFF団(Fクラス男子)代表の横溝、Dクラス代表の平賀、Eクラス男子代表格の比良坂喬介、Cクラス男子代表格の黒崎トオル、Bクラス代表の根本、Aクラス男子代表格の久保、高本、進藤がこの場に勢ぞろいしている。
「いつの間にB、Cクラスの男子まで引き込んだ」
「お前こそ、どうやって久保を引き込んだ」
「事実を話したら障害排除までは協力してくれるってよ」
ニヤリ、と笑えば雄二が立ち上がる。
「皆、先ずは俺なんかの呼びかけに応じて集まってくれて感謝する・・・・さて、目的については既に各々聞き及んでこの場に来ているものと思い作戦を説明する」
雄二がどこから出したのかホワイトボードに簡易の地図を書いて行く。
「先ずはここ三階、平賀、比良坂、横溝を中心としD、E、Fの男子でD、Eクラス女子を相手取ってもらう。また長谷川の事だが隼人に任せる」
「請け負った以上はやるだけやってやるさ」
「次に二階、黒崎、根本を中心としB、Cクラス女子を相手取ってもらう。ここにいる布施先の相手は義行と亮に任せた」
「期待に答える、とまではいかないかも知れないが何とかしてみよう」
「おうよ。俺たちに任せろ!」
「そして一階、久保、高本、進藤たちAクラス男子でAクラス女子を抑えてもらう。また階段前にいるであろう吉井姉、翔子、姫路、三宮、浦辺、島田たちだが・・・・」
「そこまでに上の階からある程度のメンツが追いつけば良い、俺が玲姐さんを抑える、久保が姫路を、高本、進藤が霧島を、義行が島田を、根本が三宮を、亮が浦辺をそれぞれ止めてくれ」
「待て、木下が出て来る事はないのか?」
そこで根本が疑問を挟む。
「無い、俺が交渉してきた・・・・少々条件はつけられたもののアイツが今回出撃する事は無い」
『条件?』
「ああ・・・・何か合宿が終わったら買い物に付き合ってくれとか何とか・・・・俺なんかと行ってもつまらんと思うのだが・・・・」
一人悩む隼人、それを見て雄二に根本が耳打ちする。
「坂本、秋山はもしかして・・・・鈍いのか?」
「いや、他人事に関してはその限りじゃ無いんだが・・・・自分の事になるとな」
「?」
二人のひそひそ話を首を傾げながら見る隼人。
「まぁともかく!木下は出てこない、地下で待ち受ける大島先生と工藤、鉄人は俺たちがなんとかする!立ち上がれ野郎ども!!待ち受けるは
『うぉおおおおおおおおおおおっ!!!!!』
男子たちの野太い叫び声が、開戦の合図となった・・・・
―三階廊下
「後は任せたぞ隼人!」
「応」
何とか明久たちを含む主力部隊を階下へと送り込んだ隼人は、廊下側へと視線を向ける。そう、そこにはたった一つの大きな誤算。
「秋山君、そこを通してもらいます」
「隼人君、そこを通らせていただきますね」
長谷川先生と共にいた玲姐さんの存在だ。
「いやいやいや、一番最初に玲姐さんがいるってどういう状況だ?」
「先日、先々日の事の顛末を聞きましたのできっとアキ君たちは今日も来るだろうと踏んでいました、一番手に控えていたのは姉としての心配りです」
「成程、言いたい事は分かるがね。アイツらだって『覗き』がメインじゃねーんだ、黙ってあのまま通してやってくんねぇかな」
「一教師として、承諾しかねます」
「ならば一戦交えるさ」
『
数学:2-F 秋山隼人 VS 教師:吉井玲&長谷川
726点 795点 518点
「っ・・・・拙いな・・・・」
相手が長谷川先生だけならば、何とかできた。だが玲姐さんの点数が高すぎる、こうなってくると分からない・・・・どちらかの相手をしているうちにもう片方からの不意打ちで大幅な減点、最悪戦死も有り得る。
「どうすっかなぁ・・・・」
長谷川先生だけを狙うならば200点消費の『爆撃』を一発決めればそれで良い、だが既に点数で上回られている玲姐さんがいる以上打てる手は無い。
「っ・・・・スマン・・・・明久、雄二・・・・」
同時に地を蹴り襲いかかってくる玲姐さんと長谷川先生、明確に、敗北を覚悟していた・・・・
「試獣召喚!」
『!?』
長谷川先生の召喚獣を突き飛ばす影が一つ、突き飛ばされた長谷川先生の召喚獣に巻き込まれて玲姐さんの召喚獣も飛ばされる。
2-A:木下優子
数学 386点
「優子!?」
隼人の驚きは並では無い、ただ参戦しないでいるだけで良い。確かに優子にはそう言った、それだけで戦力差が大分埋まるのだからと思っていた。その優子が参戦している、『こちら側』で。
教師:吉井玲&長谷川
数学 753点 485点
「何故木下さんが・・・・」
「優子さん」
呆然としていれば、スパァン!!と背中を叩かれる。
「痛ってぇ!?」
「ほら、何時までボーッとしているつもり?私が手伝ってあげるんだから、勝てなかったら・・・・折るわよ」
「何を!?」
「関節を一個増やしたくないならシャキッとしなさい」
性格が違う!?と一瞬思いもしたが考え直す、ああ、この優子が素の優子なんだろうなと。同時に嬉しくもあった、助けに来てくれた事も、素を晒してくれた事も。
「おうよ!」
「ん、その調子よ!」
―10分後
戦況は五分五分、と思われていたのだがここでとある差が発生する。玲姐さんの操作能力だ、長谷川先生はともかくつい数日前に転任してきたばかりの玲姐さんは操作技能が点数に追いついておらず、ゴリゴリと点数を削られているのだ。
2-F:秋山隼人&2-A:木下優子 VS 教師:吉井玲&長谷川
数学 619点 278点 210点 197点
「こんな・・・・」
「・・・・隼人君、何故アキ君たちに手を貸しているのです?隼人君はこういう不実な行為は許さないタイプだと記憶していましたが」
「ま、確かに覗き自体はいけねー事だろうけどよ、さっきも言ったけどメインは違うんだって」
一気に両者の懐に飛び込んでその点数をゼロにした隼人。
「どういう事ですか?」
「なぁ玲姐さん、明久が脅迫されてる・・・・っつったら信じる?」
「・・・・まさか」
「マジな話だ、明久もあんな性格だから姐さんには相談しなかったんだろうな」
「・・・・悔しいです」
「?」
ギュッ、と拳を握り締める玲姐さん。
「そんな時に相談もしてもらえなかった、自分が悔しいんです・・・・隼人君」
「玲姐さん・・・・」
「ともかく」
少し話の輪から外れていた長谷川先生が前へと歩み出る。
「例え如何なる理由があったにせよ、彼らの行いは看過出来るものではありません。ですが・・・・」
『?』
「今の話を聞く限り情状酌量の余地はあります、可能な限り処分が軽くなるように尽力しましょう」
「長谷川先生・・・・」
少しばかり気が弱く、情けなく見えていた長谷川先生を少し見直した。
「んじゃあ・・・・」
クルリと振り返れば廊下ではまだ大乱戦が続いている。
「部屋戻るか」
「戻るの?」
「ああ、長谷川先生と玲姐さんを討った時点で俺はノルマ達成な訳だしな・・・・茶ぐらい出すから話し相手頼む」
「そうね、ご馳走になろうかしら」
この数分後、茶を飲みつつ『割に合わねぇええええええええ!!!』という不特定多数の男子の叫び声を聞いた隼人と優子。
「バカだなぁ・・・・女子のほぼ全員が防衛に出ていて高橋教諭と玲姐さんも参戦、となれば誰が風呂にいるか何て分かるだろうに」
「え?まさか・・・・」
「ご愁傷様というやつだ、これに懲りて覗きをしようだなんて二度と考え無いだろうさ・・・・多分」
―通告―
文月学園2年男子総勢149名、上記の者たちを一週間の停学処分とする。
ついムラっときてやった。今は心の底から後悔している。
―――2-F 吉井明久
軽率で浅慮な自分の行動を戒めると共に、この後悔の念を忘れずにいたい。
―――2-F 坂本雄二
むしろ慰謝料を請求する!
―――2-E 比良坂喬介
まぁ加担したし仕方ないよね。
―――2-F 秋山隼人
出来心だったんです。
―――教員 鳶田廉介