Fate/of dark night   作:茨の男

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絶望前の苦悩

壱.幾ノ瀬の屋敷 真の邂逅より直後

 

ーー歴史とは勝者の描く記録である。

 

些か言葉に差異と捻じ曲がりがあるかとは思うが、歴史とはつまりそういふことだと語った名言がある。詰まるところ俺達の良く目にし聴く歴史とは時の権力者により都合良く編纂されることを指した皮肉めいた台詞だ。

過去とはあやふやだ。何せ俺達人間は過去の記憶を無意識に美化するのだという心理学‥‥違った、脳の構造の研究すらある。不快だと思った出来事は大抵忘れているのがその例だ。

しかし嘘は、特に相手へ向けた真実の編纂は後々に暴かれてしまうのが常。それも最悪のタイミングでだーー時効で当事者から赤裸々にされた真実の残酷さも勝るに劣らぬだろうが。

 

例えばブルータスが友の裏切りに絶望して放ったあの名台詞。

例えば英雄ナポレオンが歴史に刻んだ華々しい伝説的偉業。

例えば悪夢から恐怖の神々を産み出した小説家の “予言” 。

これらは史実から離れ脚色された嘘だ。

ブルータスの台詞は作家シェイクスピアにより装飾されたのであり、ナポレオンの伝説は彼自身と取り巻きの者達が創り上げた崇拝物であり、ーーあの物語はあまりにもリアリティに溢れ過ぎたが故に信じ込んだ者がそうやって騒ぎ立てただけだ。あれはただの架空の神話だ。

 

対し、もう確かめる術すら無くしたものもある。

例えば劇場型殺人事件の開祖、通称 “切り裂きジャック” の正体。そしてその後。

例えば聖女ジャンヌ・ダルクをかの救世主の如く人間に処刑されんことを赦した “宣告者” 。

例えば英雄にして始まりの王ギルガメッシュの史実としての真実、或いは嘘。

これらは全て史実でありながら真相を歴史の海原に沈められた謎だ。

最早証拠になる痕跡は黄ばむどころか虫喰いになり修復する手立ても見当たらない。

 

そもそも我々人間は後世に全てを伝えるなど可能なのだろうか、現時点で散逸してしまった記録も数知れずだ。

時間すらも敵となる。無慈悲、だが慈愛に満ちた死神は人類の意識の流れすらも変革してしまうのだ。

噫、何故だ。何故俺はこの事実を識ることも無くのうのうと生きてきたのだ‥‥‼

 

 

 

「主人 (マスター)」

「ーーっ」

 

非生産的な思考で迷走する無我への瞑想で頭痛が駆け抜けかけた瞬間、澄んだ女性の呼び声を聞いてーーそれは裂けた。

 

「心中を察してやれないのは申し訳ないがもう少し続けて二人の話を聞いてくれ」

 

ーーああ、そうか。これが現実か。俺は避け得られない真実に顔を振り向かなければならないのだ。

悲壮感に酔っている暇は無い。逃げるな、受け入れるのだ。でなければーー俺は夢見のままで死ぬ。

 

「頭の整理時間はあげるとは確かに言ったけれども、開始早々に使われるとは思ってもいなかったわ‥‥」

「いや、俺もあの頃はそんな状況だったぞ」

「あらあら、貴方には魔術師としての予備知識があったじゃない」

「だとしても凛から聞いたのは全て初耳だったけれどな」

 

‥‥のかもしれない。

今現在苦悩する俺の様が微笑ましいのか、夫婦 (ふたり) は昔を懐かしむように話を始めていた。何と言うか、どう聴いてもノロケ話だった。

 

(‥‥えと、あの、そのお二人共。俺の先程までの状況の中で一体何処に朗らかになる要素があるのですか?)

 

俺は諦感の脱力した表情でそう言いたいと考えながら夫婦のノロケ様を見ていた。

真剣にこれからの事に苦悩していたはずなのだが、恥ずかしくなってきた‥‥。

 

「まあ、確かに落第レベルの知識‥‥だったわね、忘れてた」

「‥‥悪かったな」

「ふふふ‥‥御免なさい、からかい過ぎた」

「懐かしいけど、本当にあの頃はーー」

「‥‥あー、済みません。一応頭は冷えたので話を続けてもらってくれませんか?」

 

さて、改めて何処から現状を語れば良いものか。本当に困っている。もう迷走や焦燥は俺の中は現在いない。落ち着いてはいる、間違い無く。

ただ正直決断と例えるべきか、何らかの確固たる意志が欠如しているのだろう。優柔不断も程が過ぎる。話された事柄を事実と受け止めるには胸の鼓動が罪悪感で静止してしまいそうになるのだ。

 

本当に意味が理解不能だが今はそうするしか無い。‥‥説明を続けて貰おう。

 

 

 

 

弐.北京郊外‥‥? 西 卓恩

 

 

 

‥‥もう、力を込めることが出来そうに無い。

だが、それでも、いやーー

 

 

“もう終わりにする” ◀

 

“あきらめない”

 

 

 

もう、終わりにしよう。疲れたのだ、休ませてほしい。

ーーゆっくりと視界がぼやけていく。体温が、下がって、いくーー眠ろう。

 

 

 

<GAME OVER>

 

 

 

読者の皆さん、短い間でしたがこの様な三文小説を愛して頂き感謝の極み、誠に有難う御座います。あまりな展開でいきなりのジ・エンド‥‥全くもって弁明のしようもないこと申し訳有りません。

 

些かの期間の後、次回作「優雅な末裔は魔法少女に転生するようです」

に御期待下さい。再度、誠に申し訳有りませんでしたーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‥‥って冗談じゃねえよ阿呆っ!なァに勝手に人殺してんだゴルァ⁉

ーーネタに突っ走りたかった‥‥?‥‥よおしワカッタ、解ったぞ。

 

ブチ殺し確定ね☆ ヤロウブッコロシテヤル (某CV)

 

(推奨挿入曲 某アーケードゲーム 必殺技発動成功)

 

ーーまずはその幻想をヌッ殺す! 滅!

ーー生きているなら運命の女神だって殺って観せる、喰らいやがれぇええ‼

ーー泣け!叫べ!そして氏ねえぇ‼

ーー猫なる生モノよ、お前はもうタヒんでいる‥‥。

 

<マジ☆狩る八極拳 × 一夫多妻去勢脚>

 

K.O. ーーPerfect. (某CVpart 2)

 

「たった一つのシンプルな答えだ‥‥お前は私を怒らせた」

 

〜夢(?)回想 強制終了〜

 

 

 

 

弐.同所

 

 

 

「ーーでは今回の受講はここまでだ」

「終わた‥‥」

 

受験地獄、もとい魔術講座 (愛のスパルタ式) が終わった。

ああ、生きてる、私生きてるよ‥‥!

 

「一応言ってはおくが私も厳しくするつもりは無い。試験は行わないから予習だけに専念すると良い」

「‥‥ご容赦感謝します」

 

まああんまりにもつまらならかったから睡魔の囁きに従ったお陰で内容を全く覚えてなんていないケド、仕方ないネ。

さてさて、どんな内容だったカナ? ノートノートと。

 

(んっと〜‥‥)

 

 

 

1.メソポタミア神話 〜創世叙事詩 編〜 P.1

2.メソポタミア神話 〜英雄ギルガメッシュ 編〜 P.51

3.旧約聖書 〜ユダヤの神話 編〜 P.101

4.旧約聖書 〜至高神Y.H.V.H. 編〜P.151

5.新約聖書 〜救世主の偉業 編〜P.191

6.旧約聖書・新約聖書 〜書籍中の悪魔と神 解説編〜 P.231

 

etc‥‥

 

(oh‥‥gha)

 

やったというものが想像以上にヘビィだったZE‥‥

 

「‥‥おっとそうだった、そうだった。次にその範囲は世界史の部分を行うから予習しておけよ」

 

ーーO.M.G.

想像以上にorz状態まっしぐらの非道の御言葉‥‥嗚、O.M.G.

 

「お疲れ様です主様 (マスター)」

 

次の地獄がお前を待つと告げられ絶望の淵に佇むそんな可憐で悲劇のヒロインの私にふと、救いの手を差し伸べる天使、いやもはや女神の優しく暖かく澄んだ御声が香しい珈琲の微風と共に私の真横から静かに響いた。

 

「ありがと、ヘレネさん」

 

そこにいたのは正しく聖母だった。アルビノの髪に肌、灰色の瞳、白基調だけで繕った服を除けば彼女を聖母と比喩ではなく決め付けてもおかしくなかった。

紹介しよう、ヘレネさんだ。

彼女は私の呼び出したサーヴァントのキャスターの従者兼妻兼崇拝物とされる神様の部下の転生‥‥らしい。イマイチキャスターの宗教観が理解不能だ。

何故いるのかと言うと、キャスターの宝具として番外位の従者の位格に収まることで現界を可能にしているのだとか、因みに戦闘に関してはある一部分を除けば大体非力だけど家事万能だから現在私の隠れ家の調理担当者だ。悔しいけどレトルトやインスタントなんか一口で飽きるくらい美味で安いのを作って頂けるのよね、ホント。

 

「あの方も久しぶりなものだから教師の振る舞いが癖みたいになってまして‥‥主様の為とは言えごめんなさい」

「あれがデフォ‥‥? 英雄の振る舞いが一片も無いのに教師となると様になるって何かネ‥‥」

「そういう先生/人だから」

 

ヘレネさんの入れてくれた珈琲に市販のミルクと角砂糖を二三溶かして口に含み、そんなガールズトークを続けた。

 

さてさてここら辺で話題を今回私が召喚したサーヴァント、ティ‥‥違った。キャスターのことについて語ろう。

 

「貴様のような間抜けな無神論者に呼ばれるなど私は大いにがっかりだ。これなら至高神を狂信する愚者の方が張り合いがあるぞ」

 

先日、召喚直後の私の失言に対し雷の怒声を浴びさせた後のその蔑みの台詞に心折にされた私の怒りボルテージは瞬間的に最高潮に達してやる気スイッチを発動させた為、奴への復讐の第一歩として隙をみてーーググった。

‥‥ショボい?はいはい、悪う御座いましたやり方がショボくてネ。ただ言っとくけどサ、魔術師とは言え破格級の上級使い魔であるサーヴァントに対して互角になれる人間は魔法使いか伝菌保持者とか、後 “人間をやめる” ことをやってのけなきゃ無理だから。

だが英雄とて弱点は付き物だ。西遊記の孫悟空は不死身のくせに頭にはめられた冠に誰からでもアレを唱えると冠が奴の頭をきつく締め付けて観念させられ、また仏には勝てないなど、トラウマ級の苦手が絶対にあるのだ!

 

くくく、奴がそう聖シモンを騙るというならばその弱点、暴いて突いてやるのみよーー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー浅はかな考えであったを私は後に強く悔いた。

 

 

 

参.更新情報

 

【クラス】魔術師

【真名】シモン・マグス

<ステータス>

・筋力:D・耐久:E・敏捷:C

・魔力:A・幸運:C・宝具:C

<クラス別能力>

・陣地制作:B+

……魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。

“工房”の形成が可能。

彼の場合、自分の教団を所持していたことに由来する。

 

・道具作成:A

……魔力を帯びた器具を作成できる。

十分な時間と素材さえあれば、宝具を作り上げることすら可能。

 

<保有スキル>

・カリスマ:D(B)

……軍団を指揮する天性の才能。かつて彼が固有の教団を持っていたことに由来する。 だが、今回はとある事情により、大幅にランクが下がっている。

 

・神性:C

……明確な証拠こそないものの、伝承によって創造神エンノイアを生み出した至高神の転生であると伝えられている。

 

・聖人 (偽):E

……異端派から何度か聖人として非公式かつ勝手に列聖されたことに由来。

HP自動回復か、カリスマを1ランクアップ等から一つ選択される。

だが従来の聖人スキルを持つサーヴァント又は人物に相対した際このスキルや効果は無効化される。

 

 

 

<武装>

・杖:無銘

<宝具>

・創世聖母(エンノイア)

……聖娼ヘレネを従者(サーヴァント)の位格にて召喚する。

彼女自身、戦闘力は皆無ではあるが、彼女が創造神エンノイアの転生としての力を発揮することによりシモンや彼に味方する者への魔力の炉‥‥要するに有益な演算に対するバックアップとなる。伝承の通りやはりその神性は零落しているものの、嘗て世界、謀反を起こした天使達を生み出したとされるその魔力量は膨大であり、含有量であれば「陣地作成」における最高ランク“神殿”に匹敵する程の代物である。

【クラス】従者

<ステータス>All E-

(幸運B、魔力EXを除く。)

<保有スキル>

・神性:C

<経歴>

……魔術師シモンが常に連れていた聖娼。伝承によると彼女は“グノーシス派の光の乙女ソフィア”と呼ばれ、第一思考の流出にして創造の神エンノイアの転生であり、トロイのヘレネ、シュメールのイナンナ、ギリシアのアテナ‥‥等、他の女神の化身とされ教団に崇拝される存在の一つとされた。キリストを生んだのも彼女だと彼らは主張している。

(さすがにこれはでっち上げか妄言であることは間違いない。)

説明によれば、シモンが自分が神であったときに彼女と共に世界創造を行ったと断言している。

 

 

 

<詳細>

・出典:史実 新約聖書、使徒教伝

・地域:パレスチナ(古代 サマリア)

・属性:混沌・中庸

・性別:男

<経歴>

1.皇帝ネロ(37〜68)

……ローマ皇帝。(在位54〜68) 暴君として有名。初期は善政に勤めた。彼はこの皇帝から宮廷魔術師の地位を与えられ、その地で信奉者を得ていたという。また、彼は皇帝の前で死んでみせ、その三十三日後に生き返ってみせたという。

(彼自身は紛れもない事実だと自信満々に言い張るが、「魔術師? ああ、確かにいたな。“幸福された者” のことであろう?……だが余に仕えさせたかどうかは…………覚えておらん」とは某聖杯戦争における赤き暴君本人の弁である。)

 

 




遅れですがあけましておめでとうございます! 何だか通例のような感じですが再三遅れてしまいました。清々しくもなれないです‥‥。まあ、今回は結合機能のおかげでイライラせずに約5000文字書くことが出来ました。題材に迷いさえしなければあと三日早く出せたはずなんですが‥‥。今回はかなりネタに奔走しました。ニヤリとしたり、腹筋を鍛えるものであれば幸いです。次回は閑話になる予定です。
感想批評誤字脱字報告お待ちしております。

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