課金厨のソシャゲ廃人がリリカルなのは世界に神様転生してまた課金するようです   作:ルシエド

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※通報されたようなのでタイトル変更

炎上に継ぐ炎上、糞対応に継ぐ糞対応、悲痛な利用者の悲鳴、永遠に炎上中(ETERNAL BLAZE)……


あれこれエタブレ

 時は12時間ほど遡る。

 少年はフェイトにバルディッシュ・アサルトを渡し、地球時間での早朝にログインボーナスを確保、その後地球に移動していた。

 今日は翠屋を手伝う予定の日であったが、早朝から開業準備までの間には時間がある。

 少年はベッドでスマホをいじり始めた。

 

 今彼が参加しているイベントは、ギルドと呼ばれるチームをプレイヤー間で構築し、ギルド対ギルドという形で競い合うPvP亜種タイプのイベントだった。

 ギルドの仲間と共に敵を攻めると敵チームのデータがオートで反撃してきて、敵が攻めて来ると自分と仲間のデータがオートで反撃する。

 それらの戦いで勝利すると大量のポイントが、敗北すると少量のポイントが手に入る。

 仲間とチャットするとポイントが貰えたりもする。そうしてポイントを溜めて、上位報酬をゲットするために走るイベントだった。

 少年も当然、課金で行動力を回復しつつ戦い続けていた。

 

 にもかかわらず。ギルド名『無課金教会騎士団』などといった、無課金ユーザーだけが集まってワイワイやっているギルドにすら、肩を並べるのがやっとという有様だった。

 

「あっはっは……

 リアルでもゲームでも人の手を借りられない奴はダメ人間だな……死にてえ……」

 

 個人ランキングで言えば少年は上位に入れるほどの重課金廃人だ。

 なのに勝利数が足りない。迎撃での自動勝利は多いが、ギルドの皆と能動的に攻めて得た勝利の数があまりにも少なすぎる。

 何故だろうか?

 理由は考えるまでもない。

 彼の所属しているギルドのメンバーのログイン率が、クソ低かったからである。

 

 『人間は一人では生きていけない』の格言の通りに、このソシャゲもまた一人であることの無力を知らしめる。課金では、ギルドアクティブユーザーの数の差は中々埋められない。

 課金を最大効率で活かせていない感覚が、彼の胸中を掻き毟っていた。

 普段からもうちょい仲良くしておくべきだったな、と少年はちょっと後悔する。

 虚しさから課金を止めて、イベント走破も止めて休憩に入る少年。

 露骨に仲間に足を引っ張られて、少しふてくされた気持ちになったようだ。

 『複数人戦前提のソシャゲで他人のログイン率が足りないことを責めるのは悪である』という認識を持っていない、他の人のリアル事情を考慮しない人間ならば、即座に抜けているはずだ。

 そういった認識と考慮を持つ少年だからこそ、苦しみながら今もギルドを抜けずにいる。

 

 でも「また同じことあったらこのギルド出て行くのも考えよう」とはちょっとだけ思っていた。

 

 だが、ギルドに人がほとんど居なくとも、彼は一人ではない。

 ギルド『中華レストラン・ガーミヤン』には、課金少年の他にもう一人だけ、ログインしてイベントを走ってくれている仲間が居たのである。

 ニート級のログイン時間と廃人臭の無さを併せ持つ、今もログイン率を下げていない唯一のギルドメンバー。ギルドマスターの"NAME:はやはや"さんだ。

 少年はギルド専用チャットルームに入り、互いに生存報告をする。

 

NAME:千葉県のKさん:おっすおっす

NAME:はやはや:おっすおっす

 

 実装直後は変な負荷を発生させサーバーを落としまくっていたチャット機能であるが、今では少年や"はやはや"のように活用している者がほとんどだ。

 この二人は、来年十周年を迎えるこのソシャゲではそこそこに古参のプレイヤーだった。

 はやはやの方がプレイ歴は一年半ほど長いが、それでも両者共に五年以上のプレイ時間が刻まれており、二人の差は連続ログイン日数2000日という大きな壁くらいのものだ。

 

 ちなみに少年の登録ネームはNAME:千葉県のKさん、である。

 橘万里花をカタカナにしてタチバナマリカ、これの順番を入れ替えてタカマチナリバ、MMR式アナグラム法に則って『リ』を似ている『ノ』に変え、『バ』から濁点を抜く。

 つまり、橘万里花=高町なのはという意味合いの登録ネームだったんだよ!

 

 海鳴市は千葉県じゃねえよ、と突っ込む者は誰も居ない。

 

NAME:千葉県のKさん:今回のイベ上位報酬ラインが緩かったから助かった

NAME:はやはや:そら一人で独走して上位取れたら逆に凄いで

 

 そして少年だけでなく、このはやはやというユーザーも実は子供であった。

 チャットで長く話していれば、年齢というものは透けて見えてくる。

 少年が"自分と同年代だろう"という推測をしていたくらいには、その年齢は透けていた。

 

 千葉県のKさんとはやはやはこのソシャゲにおいて、五年近くの付き合いがある子供。

 言うなれば『ソシャゲ幼馴染』。そんなものが存在してしまう社会なんて滅んでしまえ、と思う人間が居てもおかしくない形の関係性だった。

 まともで健全な育ち方をした子供であれば、絶対に持つことはない関係性である。

 どう考えても、このはやはやというユーザーには何かしらの問題があった。

 課金少年に脳細胞レベルでの問題があることは言うまでもない。

 はやはやという人物は、一体何者なのだろうか?

 

NAME:千葉県のKさん:今日もみなさんログイン率クソっすね

NAME:はやはや:1987年から2001年までの阪神くらいクソやな

 

 チャットは続き、チャットルーム右端の非ログイン状態枠の中に見える『PSP』『淫乱ピンク』『捨丸』『忠』の灰色ユーザーネーム達が少年の胸を痛ませる。

 

 千葉県のKさんは課金でギルドに戦力を補充する柱。はやはやはイベントで名指揮を見せチームに最高の力を発揮させるギルドマスター。ならば残りの四人はどういうプレイヤーなのか?

 

 四人の中で一番直感的に動くのがNAME:PSP。

 良く言えばアクティブで、悪く言えば猪突猛進。陣形を乱す可能性が一番大きいタイプだ。

 ガチャ当たり画像を使いこなす課金少年によく煽られているプレイヤーでもある。

 

 四人の中でプレイヤースキルが一番高いのがNAME:淫乱ピンク。

 「家族に勝手にこう名付けられた」と少年の笑いを呼び、「私のことは騎士と呼べ、いいな?」「アッハイ」という流れを経て少年に騎士と呼ばれているプレイヤーだ。一度『淫乱ピンクに完封されたwwww』というタイトルで2chに晒しスレ立てがされたほどの猛者である。

 

 NAME:捨丸は、バフデバフ管理を第一とするギルドの要だ。

 捨丸(すてまる)という名前がやたらと渋カッコいいな、なんて少年は思っている。名前の時代劇風渋さ、チャットでの女性的喋り方から、時代劇ドラマ大好きな主婦系おばさんでないだろうか、と少年は推察していた。

 

 NAME:忠はヘイト管理・肉盾特化ビルドのメイン盾プレイヤー。

 一切ネタに走らず、他人が振ったネタに乗らず、チャットでの発言も少なく、けれどプレイヤースキルで一目置かれるという、他プレイヤーに好かれるが絶対にオフ会には来ないタイプだろうと少年は思っている。

 会話やハンドルネームのネタの少なさ、チャットでの無口さから、ネット慣れしていない話し下手な成人男性だろう、と思ってたりもしていた。

 

 この四人はギルド勧誘に積極的でなかったギルドマスターはやはやが突然連れて来た、プレイ歴一年未満の半人前ひよっこ軍団であった。

 突然連れて来た事情は分からず、少年もそこはちょっとだけ気になっている。

 それを言えばこの少年がこのギルドに入った経緯の方がキチってると言えばキチってるのだが、それは今この状況には無関係なことであるので知らなくてもいいことだ。

 

NAME:はやはや:さみしーわ

NAME:千葉県のKさん:イベ中なのにログイン率クソなギルド、これは抜けるべきですわ

NAME:はやはや:やめーや、Kさん居なくなったら私ぼっちやで?

NAME:千葉県のKさん:ギルドマスターの人望の無さが原因。残当

NAME:はやはや:そうなんやろなあ。私、人望無くて困るなあ……

 

 はやはやはこういう流れで自嘲を始めるタイプのプレイヤーではない。

 ネットだからこそよく分かる非なんJな本物関西人の血から来るユーモアで、冗談めかしてはぐらかすタイプのプレイヤーだ。

 少年はちょっと気になり、ちょっと踏み込んでみる。

 

NAME:千葉県のKさん:なんだ、あのメンツがログインしてない理由聞いてたのか

NAME:はやはや:あー、言っとらんかったけど、迷惑かけとるしなあ

NAME:はやはや:あんなあ、ちょい前に入った皆って、私の家族なんや

NAME:千葉県のKさん:え? オレ身内ギルドに厄介になってた系? うわ、死にたくなるわ

 

 さもびっくりしました、といった書き込みをしているが、少年は真顔のまま打ち込んでいる。そりゃあ表情変えながらチャットする奴は居ないだろう……といった話ではなく、普段のチャットからリアルの知り合いであることは薄々感づいていたからだ。

 

NAME:はやはや:気にせんでええやん、うちの稼ぎ頭なんやから

NAME:千葉県のKさん:気にするわ。で、お前らリアルの都合でログイン率下がってるのか

NAME:はやはや:ごめんなあ、Kさん。あの子らが何に不満なのかも、私はわからんのや

NAME:千葉県のKさん:リアル優先、これ一番な。ゲームに人生捧げろとか言えんわ。ゲームと

NAME:千葉県のKさん:いうか課金に人生を捧げる捧げないは個人の自由

NAME:はやはや:聞こえるニュアンスが自殺の自由とかそんなかんじやな

 

 はやはやは月500円というラインを絶対に越えない鉄の自制心を持つ微課金だ。

 "まあこのくらいなら運営にお布施をしてもいい"くらいのラインを決して越えず、決して誘惑に自制心が負けることはなく、少年に近いようで遠い存在である。

 はやはやはランキングの上位をあくせく狙うタイプでもない、けれど平日でも一日中ログインしていることがあったりするため、割といい成績を残しているタイプでもあった。

 

NAME:千葉県のKさん:つか理由は分かったがオンラインでリアルの話とかすんなよ

NAME:はやはや:そら分かっとるけど、皆帰って来ないんで暇なんや。かまってーな

NAME:千葉県のKさん:そこに走るべきイベントが有るじゃろ?

NAME:はやはや:行動力回復したらな

NAME:千葉県のKさん:金で回せ

NAME:はやはや:個人の自由、なんやろ?

NAME:千葉県のKさん:冗談で書き込んでおいてなんだが課金の強要って凄いな

NAME:はやはや:でも課金でレア物持つのを強要してる人は居るで。この前で野良で

NAME:はやはや:誰か知らない人誘おうって話になってな? 適当にPSPが声かけたんやけど

NAME:はやはや:『○○持ってないなら来るな』って突っ返されたんやで。んでキレてた

NAME:千葉県のKさん:理想パはつよい。俺達イベント特効で蹴散らしてるけどな!

NAME:はやはや:今回の配布最強や! 課金レアとかいらんかったんや!

 

 PSPというユーザーはネットで煽られてキレるまでがワンセットなのだろうか。

 

NAME:はやはや:あー、それと一ヶ月……まあ八月くらいかな? ログインしなくても心配は

NAME:はやはや:せんでな。ちょっと色々あって、ログインできなさそうなんや。そんでに

NAME:はやはや:あ、打ち間違えた上送信してもーた。上の書き込みは無かったことにしてな!

NAME:はやはや:で、ログインできないまま引退するかもしれんのや

 

 はやはやに珍しい打ち間違い。少年はそこに、今まで何度か見た"課金のし過ぎでリアルが崩壊して引退した者達"に似た何かを、課金直感にて感じ取る。リアルが何か大変なことになっているのかもしれない、と彼は思った。

 

NAME:千葉県のKさん:話の流れ的に、飽きたんじゃなくてリアル事情?

NAME:はやはや:せやせや

NAME:千葉県のKさん:戻って来る予定は?

NAME:はやはや:引退したなら、戻って来ることはないと考えてええで

NAME:千葉県のKさん:そうか

 

 けれど、そこは踏み込まない。

 ソーシャルゲームでリアルの問題に踏み込んでどうするというのか。相談されて問題をどうにかできるとでもいうのか。ならない。大抵の場合はならないのだ。

 二人は現実で友達ではない。

 虚構の世界の仲間でしかない。

 現実の友人や家族に対して抱いている気持ちほどのものを、互いに向けていないのだ。

 だから頼らないし、話を聞こうとは思わない。

 

 軽快な会話を何度重ねようが、所詮は相手の顔も知らないネットの関係でしかない。

 

NAME:千葉県のKさん:まあ俺は気長に戻って来るの待ってるわ

NAME:はやはや:そら人生の無駄遣いやないかなー

NAME:千葉県のKさん:帰って来るこないは別として、家族の問題は解決しておけよ

NAME:はやはや:んー、そっちも早めにやるわぁ。ぱーっと上手くやる方法とかないんかなあ

 

 あと一ヶ月しか無いらしいはやはやに、少年は無責任で適当で曖昧それっぽいだけの……けれども、ちゃんとはやはやのことを案じた書き込みをする。

 

NAME:千葉県のKさん:じゃあ一つだけアドバイス

NAME:はやはや:わくわく

NAME:千葉県のKさん:ゲームの中ならそれっぽい言葉と文体使って寛容な人間を演じればいい

NAME:千葉県のKさん:でも身内と仲直りするなら、現実で顔合わせてちゃんと話さないと駄目

NAME:千葉県のKさん:帰って来たとこで捕まえて座らせてちゃんと話せ

 

 少年は偉そうに"話し合い"を語れる人間ではない。

 むしろ高町なのはと対称的に、人間関係に問題アリアリなタイプである。

 知り合ってから長いはずのすずかには距離を取られたままであるし、フェイトの使い魔であるアルフには苦手意識を持たれたままだ。

 この少年に好意を持っている人間より、この少年を忌避している人間の方が多い。

 

 それでも、『他人と仲良くなるか課金を止めるかの二択なら、仲良くなるのを諦める』とナチュラルに考えているあたり、彼はいつも通りの彼だ。

 そこがなのはと絶対的に違う。

 だからか、彼は"あの幼馴染だったらどう言うだろう"と考え、トレースしたなのはの考えに自分の考えを混ぜてから書き込んだ。

 

NAME:千葉県のKさん:言っておくが、相手の顔が見えないチャットの万倍面倒くさいぞ

 

 少年の書き込みから、たっぷり五分が経つ。

 リアルでは短い、チャットでは長い五分。

 はやはやというプレイヤーが、書き込みの内容に迷っているのが伝わる五分だった。

 書き込んでいる当人にとっては一瞬、書き込みを待つ者にとっては一時間にも感じる五分が終わる。

 

NAME:はやはや:ん

 

 その書き込みを最後に、はやはやはチャットルームを退室した。

 何を想って書き込んだのか、全く伝わって来ない書き込みだった。

 少年は同様にチャットルームを出て、敵が攻めて来てPSPや淫乱ピンク達のデータがオートで敵を打ち倒した数……つまり、迎撃成功回数を見る。

 能動的勝利はしょっぱいのに、そこに表示された受動的勝利の数は圧倒的だった。

 というか、受動的敗北がほとんどない。

 データでしかないのに、はやはやを守ろうとする意志が滲み出ているかのようだ。

 

「迎撃というか……はやはやさん守ってる時、こいつら異様に強いよなあ……」

 

 あと一ヶ月。つまり八月には、元の日々から何かが欠けてしまうか、日々が全て元通りになるかが決まるという。他所様のリアル事情は頭の片隅に置き、少年はイベクエを始めようとする。

 

「さて、走る時間だ」

 

 そして時計の6:30という表示が目に入り、さっと血の気が引いた。

 彼が今やっているソシャゲはフルスクリーンでプレイするタイプであり、スマホの画面に時間を映さないタイプだ。そのため、6:20に家を出るつもりだった少年は、焦る。

 

「違った。出勤の時間だ!」

 

 翠屋の手伝い! と叫びながら、少年は自転車を全力でこぎ出して行く。

 なお、ギリギリになりはしたものの、なんとか間に合った様子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。

 少年はプレシアの口座から引き出した少額の金を財布から出し、まず両親に普段のお礼を言いつつ外食に誘い、翌日の夜に高町家の皆を食事に誘っていた。

 名目は、普段お世話になっている大人への恩返し。

 

「今日はご馳走になった。ありがとう」

 

「少し臨時収入があったので、そのついでですよ。普段のお礼ってやつです」

 

 安めのファミレスで少年の奢りな飯を堪能し、皆が帰宅する中、高町士郎は少年にそんなことを言っていた。

 道はどこでも広いわけではない。

 車道に出ないために、歩道にて皆である程度列を作って歩かなければならない道もある。

 列の先頭付近では真っ先に少年に礼を言った女性陣、なのはの母・桃子となのはの姉・美由希が楽しげに話しながら歩いていた。

 その後ろで少年となのはの父・士郎が話しながら歩いていて、その少し後ろでなのはの兄・恭也となのはが話しながら歩いている。

 

 話している相手によって位置は流動的に変わり、士郎が下がって恭也が進めば、自然と少年と恭也が会話する形となる。

 

「普段うちで稼いでるお前にこう奢られるのは妙な感覚だな。

 いや、それを言えば親に溺愛されてるお前は、うちで金を稼がなくても奢れるんだろうが」

 

「課金と礼は親の金でするものじゃないと思ってますので」

 

「そもそも課金を……いや、なんでもない。今日の飯は美味かった。素直に感謝しておこう」

 

 奢られた日に奢ってくれた者に説教かますこともない、第一言ってもこいつは聞かないし、と大変真理に近い結論を思考内で出しつつ、恭也は前を歩く桃子と美由希を見た。

 

「ねね、それでねお母さん」

 

「あら、そうなの?」

 

 女性陣の話は盛り上がっており、そこになのはが加わっていかなかったことが不思議ではあったが、全体的に見れば高町家は仲良く話せていたために、気にせず流す。

 

「最近は全員揃って食事することが減っていたかもしれないな。今思った」

 

「そこは、こう……丸亀製麺美味かったぜ皆で行こうぜ、と誘うとかしないんですかキョウさん」

 

「お前最近丸亀製麺に行ったな?

 それで美味いと思ったから特に理由なく言ったな? 分かるんだぞそういうのは」

 

「うへぇ」

 

 亀の甲より年の功。少年よりちょっとばかり大人な恭也は、少年のちょっとばかり上を行きながら、少年の脳天にこつんと軽く拳を当てる。

 兄と弟と言うより部活の先輩と後輩に近い関係を見せる兄と少年を後ろから見ながら、なのはは悩ましげに頭を抱えていた。

 

(……ううーん)

 

 この課金少年の行動には理由が無いように見えて、実は理由があることが多い。

 なのはは数日前"最近みんな忙しそうで、一緒にごはん食べれないのさびしいなあ"とぽろっと呟いてしまった過去の自分を、その発言を、ちゃんと覚えていた。

 彼女のその発言だけでこういう企画をするものだろうか?

 する。この少年ならばする。少なくとも、なのははそう思っている。

 

 この少年ならば、普段のお礼という偽装名目→自分の家族と外食→高町家を誘って外食という流れを作って気遣いを気付かせないようにすることくらいはする。

 何故ならば、この少年はなのは曰く、なのはを子供扱いしているからだ。

 なのはは『子供扱いをされてる』と思うと少しむっとするため、少年が自分の気遣いを子供扱いと思われないよう、回避のための小細工をしていても何らおかしくはない。

 

(聞くべきか、聞かざるべきか……)

 

 だが、そう聞いてもし『お前自意識過剰だな。オレより』と言われたらなのはの心は折れる。

 そういう確信が彼女の中にはあった。

 だから聞けない。

 聞けるわけがない。

 しかし聞かなければ、"ありがとう"とその気遣いに対し言うこともできないわけで。

 

「……うーん……」

 

「どうしたなっちゃん? 課金の世界に入門する苦悩か? 大丈夫、迷いは最初だけだ」

 

「それだけは死んでも嫌だ、って思うの!」

 

 嬉しそうに近寄ってくる少年に向かってなのはは鋭く首を振り、左右に束ねた髪をぺちんと彼の顔面に当てた。痛みを与えず拒絶を示すなのは式ビンタである。

 士郎はそんな娘の姿を見て苦笑しつつ、大通りに出た途端、違和感を持つ。

 

「うん? ……」

 

 高町士郎。彼は永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術の師範であると同時に、この世界という枠の中で見ても上位に入る強さと技を持つ。

 そのため彼は、今この場に居る人間の中で最も"戦場の気配"に敏感だった。

 殺気は感じない。敵意は感じない。スコープ越しの視線や、怪しい気配も感じない。

 だが、戦いの直前から直後にまで持続する"戦場の気配"だけが、薄っすらと感じられた。

 士郎はそれが気のせいかどうか確かめるため、周囲をぐるりと見渡す。

 

 結果、『誘われた通りに』『視界の隙間が出来上がり』『そこを縫うように敵が現れる』。

 

 士郎が誘われた結果、誰も見ていない空間が出来、襲撃者はそこを飛んで来る。少年との会話に夢中になっていたなのはを狙って、彼女の背後から襲撃を仕掛けて来ていた。

 襲撃者はシグナム、ヴィータ、ザフィーラの三人。

 高町士郎にも完全には気付かせない気配の隠形、日常の中で油断していたとはいえ高町家相手に奇襲を完璧に成功させる動き、初撃成功時点まで結界を使わず魔力反応を隠していた徹底さ。

 魔法技術と、戦闘者としての技術を最大限に注ぎ込んだ最高の奇襲。

 少年の目の前で、なのはの背中に迫る襲撃者の魔手。

 

 だからこそ、その襲撃に気付けたのは、なのはと話していた少年だけだった。

 

 他の誰かなら反応できただろう。士郎なら、恭也なら、美由希なら、なのはを抱えて敵の初撃を完璧に回避することくらい造作もなかったはずだ。

 だが、できない。

 この少年に戦闘の才能はない。

 戦いに向いていない彼に、なのはを助けて自分も助かる方法はない。

 

 だから少年はなのはを突き飛ばし、自分も逃げようとしたが間に合わず、その胸にヴィータの腕を突き立てられていた。

 

「―――」

 

 突き飛ばした理由の1/3は、なのはを残した方が戦局が有利になるという打算。二つ目の1/3は、親の前で子供を傷付けさせるのはどうなんだというどこかズレた使命感。最後の1/3は、単純に高町なのはが大切だったから。

 

「え」

 

 なのはが惚ける。

 士郎、恭也、美由希の動きが変わり、襲撃者に強烈な敵意が向けられる。

 そして少年は、このまま戦いが始まってしまえば自分の次に非魔法使いの三人がやられ、動揺から立ち直る前のなのはがデバイス起動前に三対一を強要されて負ける、そんな未来を読んでいた。

 この襲撃者達は、プロだ。

 そう理解したからこそ、少年はなのはにデバイス起動の時間を与えるため、鎖のバインドで襲撃者三人をまとめて掴み、転移魔法で離れた場所へと飛んで行った。

 

「アンチメンテ、チェーンバインド! テレポートぉッ!」

 

 強制転移魔法は魔力を喰うものだ。

 必然的に少年の口座の金は、熱いコーヒーをアイスコーヒーにするため投じられた氷のように、笑えない速度で減少していく。

 逃げるためではない。奇襲の失敗と敵を引き離すことを目的とした魔法行使であった。

 "高町なのはさえ残れば勝てる"という信じる気持ちから来る、幼馴染に託す行動だった。

 

「か……かっちゃんっ!?」

 

「待てっ!」

 

 なのはは悲鳴に近い声を上げ、恭也が転移魔法陣に手を伸ばす。

 だが、手は届かない。

 少年と襲撃者は高町家の皆の前から消え去り、後にはなのは達だけが残されていた。

 

 

 

 

 

 そうして、時系列は合流する。

 

 少年のリンカーコアは強奪され、アカウントの全てが強奪される前にフェイトの介入が成功、フェイト&ユーノVSヴォルケンリッターという構図が成立することとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フェイト・テスタロッサは遠中近距離全てを隙無くこなせるオールラウンダーだが、その強みは万能さではなく、飛び抜けた『速さ』にこそある。

 どのくらい速いかといえば、少年の危機を知って全速で飛ばして来た結果、フェイトと一緒に居たはずのアルフを完全に置いてけぼりにするくらいに速かった。

 ユーノがフェイトの服の端に必死にしがみついていなければ、この戦場で闇の書の騎士・ヴォルケンリッターに立ち向かっていたのは、フェイト一人だっただろう。

 

 その場合『フェイトがどう負けるか』ではなく、『フェイトがどう食らいついていたか』を想像する人が多いだろうと思えるくらいに、今のフェイトは強かった。

 

(……速いな)

 

 シグナム達のそれぞれの速さを1とした場合、今のフェイトは2の速さを発揮している。

 そして自分の動きの無駄をとことん削り、流麗な加減速を用いた飛行魔法で縦横無尽に飛び回っていた。敵に影を踏ませるものか、と言わんばかりのスピードが彼女の姿を目にも止まらせない。

 

 シグナムの斬撃を右斜め前下方向に潜るように飛んで避け、その先に居たヴィータを雷の刃で斬りつける。鉄槌で受け止められるが、そのままバルディッシュを強く押し、反動で上空に飛ぶ。

 

「っ、なんだこいつ!?」

 

 ヴィータはフェイトに強く押されたせいで体勢が僅かに崩れ、フェイトはその反動で上がった上空で魔法を展開。雷の矢を乱射して三人の足を止め、ザフィーラの背後に回り込もうとする。

 

「ザフィーラ!」

「!」

 

 雷の矢を足止めと目眩ましに使い、背後に回って切り捨てるという発想自体は見事なものであったが、それを読んでいたシグナムに防がれてしまった。

 フェイトは悔しがる様子も見せず、感情を顔に出さないまま再度高速戦闘を開始する。

 いい勝負だった。

 フェイトは力勝負も挑まず、剣技勝負にも持ち込ませず、ひたすらスピードで敵を振り回して数の利を活かさせないようにしていた。

 友を守ろうとしている今この瞬間、フェイト・テスタロッサは異様に強い。

 

 これでこの戦いが"ただの三対一"であったなら、フェイトもまだ保たせられただろうに。

 

「悪ぃが、手段を選んでられる身の上でもねえんだ!」

 

《 Schwalbefliegen 》

 

 現実は無情である。

 ヴィータが発生させ、鉄槌で叩いて撃ち出した四つの鉄球が、フェイトを無視して飛んで行く。

 その先には瀕死の少年と、少年に回復魔法をかけている最中のユーノが居た。

 ユーノは防御魔法を展開し、歯を食いしばる。

 

「くっ……!」

 

 ヴィータの鉄球とユーノのサークルプロテクションが衝突し、防御が軋む音がする。

 先頭を飛んでいた鉄球はユーノのバリアを軋ませたが、それ以外の全ての鉄球は、一瞬にして移動したフェイトの斬撃により切り捨てられていた。

 だが、これは最悪と言っていい展開だ。

 

「下がってユーノ!」

 

「駄目だ! 今のかっちゃんの体じゃ動かすだけでも危険だ!」

 

「下がらないともっと危険!」

 

「……っ、分かった!」

 

 ユーノは慎重に痙攣している友を運びつつ、継続して回復魔法をかけ続ける。

 フェイトはその後退を援護しながら戦うが、もはや先ほどまでの流れを取り戻すことはできなかった。次第に押し込められ、ヒヤリとする場面が増えていく。

 

 ヴォルケンリッターは、本来フェイトが一対一で戦っても勝てると断言できないほどの強者だ。

 なのに三対一でも食い下がれていたのは、フェイトが常に速さで勝ち続け先手を取り、戦いの流れをコントロールできる立場に居たからである。

 先程まではフェイトが攻めている時間の割合が多かった。

 今はフェイトが防御し回避している時間の割合の方が多い。

 

 『戦闘の主導権』こそがフェイトが唯一持っていたアドバンテージであり、それを『友達の無事』と引き換えにヴォルケンリッターに渡してしまった以上、もはやフェイト一人に勝機はない。

 

 シグナムの斬撃を回避しきれず、髪が一本切り捨てられる。

 ザフィーラの拳をバルディッシュで受け止めるも、バルディッシュを掴まれ投げられる。

 そして浮いたところにヴィータが接近し、鉄槌を横薙ぎに叩きつけてきた。

 防御魔法では防げないと判断し、フェイトはバルディッシュで柔らかく、衝撃を殺すように受け止める。二人は鍔迫り合いで睨み合い始めた。

 激しい金属音、散る火花、ヴィータの舌打ち。そのどれもが、フェイトの心を揺らさない。

 

「げ、げぼっ、ごぼっ、ごっ、お゛っ、……っ……ッ……、……!」

 

「かっちゃん、しっかり!」

 

 だが、地上付近から聞こえて来る友の苦悶の声は、彼女の心をざわめかせた。

 

「なんだ、あいつ……なんであんなに苦しんでんだ?」

 

「あなた達が手を出したからだ」

 

「……」

 

「あなた達が手を出したものが、かっちゃんにとっては、きっと命より大切なものだったから」

 

「……っ」

 

「だから! 苦しんでるんだ!」

 

 フェイトは鍔迫り合いを維持したまま、小さな雷の射撃魔法を速射した。

 眉間を正確に狙ったそれをヴィータは避けるが、その隙を狙ってフェイトの蹴りがヴィータの腹に突き刺さる。

 ヴィータは服の頑丈さだけでそのダメージを減らすが、その衝撃で地上に向かって一直線だ。

 

「それがどんなものであっても!

 悪いことをしてない人から力ずくで奪っていいものなんて、あるわけない!」

 

「分かってんだよそんなことは!」

 

 フェイトが叫ぶ。ヴィータも叫ぶ。

 落ちていくヴィータに追撃すべく、フェイトは落ちるように飛ぶ。

 その際にシグナムが剣を変形させた蛇腹剣の結界が割って入ってきたが、フェイトは蜂のように鋭く、蝶のようにひらひらとその隙間を飛んで行く。

 その飛行機動は、まるで蜘蛛の巣の合間を飛んで抜ける蝶のようだった。

 

「誰もが理不尽に何も奪われない世界なら、そいつが一番いいに決まってんだろ……!」

 

 その飛ぶ姿が、あまりにも綺麗で、美しくて、迷いが無くて、まっすぐだったから。

 ヴィータは羨ましさと後ろめたさと悔しさの入り混じった声を漏らす。

 地面にぶつかる瞬間、ヴィータは急減速して音もなく着地し、再度跳躍。

 バウンドするように帰って来たヴィータに一撃叩き込もうとするフェイトだが、そこで地面から生えてきた数十本の白銀の刃と、頭上から来るシグナムの蛇腹剣によって、自分の回避コースの全てが埋められていることに気付く。

 

「っ」

 

「だけどな! ねーんだよ、そんなもんは!」

 

 鋼の軛、という男の声だけが、聞こえた気がした。

 フェイトはヴィータを追い詰めていたのではない。

 この確実に仕留められる殺し間に、誘い込まれたのだ。

 フェイトは眼前に迫るヴィータの鉄槌を見て、手遅れになってからそのことに気付いた。

 

(やられる……!)

 

 余談、ではあるが。

 

 人の縁とは不思議なものである。

 

 変なところで繋がらず、変なところで繋がったりもする。

 

 総じて言えることは、『縁を大切にする人の周りには良縁が集まる』ということだ。

 

「っ!?」

 

 敗北を覚悟し、歯を食いしばって鉄槌の一撃に耐えようとしたフェイトの目の前で、鉄槌に小太刀が二本叩きつけられた。

 弾かれる鉄槌。

 動揺するヴィータ。

 一瞬出来た隙を突き、フェイトとフェイトを救った者は殺し間から離脱する。

 

「君がフェイトちゃんか。娘から君のことはよく聞いていたよ」

 

「え?」

 

 自分を救ってくれた男性と背中合わせに立ち、自分達を囲むヴォルケンリッターを睨んでいたフェイトであったが、背後から予想外な言葉をかけられて、つい素っ頓狂な声を出してしまう。

 シグナムはその男性の構えを見ただけで、男が一流の戦闘者であることを理解し、警戒したまま男に問いかけた。

 

「何者だ?」

 

「ふむ、そうだな」

 

 男は二本の刃をゆらりと下げて、芯の通った声を響かせる。

 何故だろうか。

 フェイトはその男の声に、不思議な安心感を覚えていた。

 

「正義の味方を名乗る歳でもない。通りすがりの子供の味方(おとな)だ、とでも名乗ろうか」

 

 永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術師範、高町士郎。

 子供の危機に全力で走り、子供の危機にちゃんと間に合う、子供のために戦える大人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 士郎が少年に対し、何か恩を感じているというわけでもない。

 士郎がフェイトに対し、何か恩を感じているというわけでもない。

 ただ、高町士郎はお人好しな大人で、かの少年は生まれた時からずっと彼に見守られてきた子供だ。彼にとっては、それだけで命をかけて守る理由になる。

 フェイトはなのはの友達で、なのはは士郎が愛する娘だ。彼にとっては、それだけで命をかけて守る理由になる。

 

 士郎が走る。

 刃先が走る。

 その二つの始動はほぼ同時であり、刃の先がシグナムに到達するまでに要した時間は一瞬。

 奇襲に近い初撃を防げたのは、シグナムの腕をもってしても奇跡の一言であった。

 

魔力付与(エンチャント)……この御仁、非魔導師か!)

 

 たん、と両者の歩法が独特の音を立てて地を踏み蹴る。

 きん、と常人の目では追えもしない速度で剣がぶつかり合う音がする。

 しん、と空振った刃が切り裂いた大気の悲鳴がこだまする。

 

 シグナムは魔法の使用を前提とした剣術を極めた、魔導の騎士。

 士郎は魔法の使用を前提としていない剣術を極めた、魔法の後押しを受ける剣士。

 彼に魔法ブーストを付与した人間がいかに優れた人間であっても、魔法の使用が許される戦闘において、この両者の間にある差は絶対的だ。

 だが士郎は、万事に対応する余裕をもってこの戦いを拮抗させていた。

 

 シグナムが飛べば士郎は追えない。だから飛行を許さない。

 シグナムが距離を取れば戦いは一方的になる。だから距離を取らせない。

 剣技の競い合いに互いが全力を注がなければならない状況、余計なことをすればその瞬間にどちらかが切り捨てられるという状況を、彼は意識して持続させていた。

 

「あの少年の父親か」

 

「いや? 私は……俺は、あの子の両親の友人さ。あの子と私の娘が友達というだけだ」

 

 両者の刃が空を走る。

 街灯、星の光、月の光を受けて刃は輝き、流れ星のような一瞬だけ現れてすぐに消える光の軌跡を、無数に空間に刻んでいく。

 にもかかわらず、シグナムも士郎も無傷であった。

 

「ならば何故、そこまで必死になってあの子供達を守ろうとする」

 

「大人は子供を守るものだ。

 魔法の力を持たないこの身だが……それでも、そう在りたいと思っている!」

 

 子供が大人よりも強いのであれば、世界の命運をかけて子供が戦うことは正しい。

 子供より弱い大人が前に出て死んでしまえば、それは無駄死にとしか言いようがない。

 それでも……大人には、子供のために戦う『権利』がある。

 子供が大人のために戦うのも、大人のために子供が戦うのも、全てはその人間の自由だ。

 

「だからあの子達の将来も、守りたいと! そう思っている!」

 

「……あなたもむしろ、課金を好ましく思っていない者だったとは!」

 

 子供のために敵を倒す。課金ソシャゲをやめさせる。両方やらなければならないのが大人の辛いところだ。子供当人が辞める気皆無なのが尚更虚しさを倍加させる。

 子供が課金しすぎていたら怒る、子供が傷付けられていたら怒る。

 それは、人として当たり前のこと。

 

(強い。この男―――強い)

 

 高町士郎の強さは、長い年月を重ねて洗練された武術の強さであり、その武術を極めるために何十年と鍛錬を続けてきた強さであり、揺らがぬ信念の強さでもある。

 信じた武術は嘘をつかない。

 重ねた努力は嘘をつかない。

 据えた信念は嘘をつかない。

 一つの極みに至った武術は、何よりも雄弁にその人間の人生を語る。

 

(強い。この女性は強い……なのに、何故!)

 

 それはシグナムも同じこと。

 剣を交わす内、士郎とシグナムは互いが互いを理解し始めていた。

 

「……それだけ澄んだ太刀筋を持ちながら、何故外道に堕ちた!」

 

「先程の言い分が正しいのであれば、あなたには分かるはずだ!」

 

「―――、家族か」

 

「……」

 

 そして、家族を愛する士郎が相手だったことが、シグナムにとって最悪な方向に働いた。

 沈黙を返答とするも、もう遅い。

 高町士郎は、シグナムの戦う理由が『家族のため』であるとこの一戦だけで理解していた。

 それも、尋常な想いでの戦いではない。

 "勝たねば明日には愛する家族が死んでしまう"といったものに限りなく近い、焦燥感、悲壮感、切迫感、絶望。それらがシグナムの剣から伝わって来る。

 この女性は今崖っぷちに居るのだと、士郎は剣を通して把握した。

 

 それと並行し、士郎の参戦でいくらか楽になった戦いの天秤が、更に傾く。

 

「フェイトっ!」

 

「アルフ!」

 

 シグナムの背中に声がぶつかる。

 フェイトとヴィータとザフィーラ、ついでに逃走中のユーノと課金少年が戦っていた戦場に、新たなヴォルケンリッターの敵が到着した声だ。

 シグナムは状況が悪くなったことを認識しつつ、アルフに続いて更に参戦してきた男と女の斬撃―――恭也の怒りの斬撃と、美由希の静かな斬撃を受け流す。

 

「お前が下手人か。逃げられるだなんて、思うなよ?」

 

(ひえええ、私の方の頭に上った血が急速落下するくらい、恭ちゃんがマジギレしてる……)

 

 魔力付与済みの高町家三人、御神流三人による斬撃の連打がシグナムに向かって放たれる。

 三人六刀の斬撃がかき鳴らす音は、もはやマシンガンのそれに匹敵するほどであった。

 シグナムは剣術勝負で彼らに付き合うのをやめ、剣と鞘と強度を上げたバリアジャケットにて、魔力消費と引き換えに余裕を持って攻めを受けつつ、戦場を俯瞰することを選択する。

 状況は、あまり良くはなかった。

 

(これは……マズいな。読み違えたか)

 

 援軍に継ぐ援軍で、余裕をもって瞬殺できる段階は既に終了している。

 突如乱入してきた金髪の魔導師のリンカーコアもいただこう、と欲張ったのが運の尽きだった。

 そのせいで今、戦いは"いい勝負"になってしまっている。

 

(こいつらは別口だ。

 現地の人間と、管理局員の人間。

 しかもそれぞれの陣営の人間が、我先にと最速で駆けつけようとしていたようだ。

 だから足の速い者から順に辿り着いている……逆に言えば、時間経過で戦力が増えていく)

 

 だがまだこのくらいなら、とシグナムは思う。

 一人が蒐集済みの少年の回復に専念するとして、それでもヴォルケンリッターの敵は非魔導師三人に魔導師二人だ。

 冷静に対処すれば、時間をかけずに詰ませることができる。

 

 それはフェイトや士郎の戦いを見ればよく分かることだ。

 戦いの主導権を握り、敵に好き勝手させないようにした上で『拮抗』止まりであるということはつまり、まともな戦いになればすぐ決着がつくということを意味していた。

 念話で把握している限り次に到着する予定の援軍……クロノの到着には、まだ時間がかかる。

 

(アルフも来てくれた……ここで、私がなんとかしないと!)

 

 フェイトは考えに考える。

 この状況で一手を打たなければ、ジリ貧になるのはまず確実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分がなんとかしなければ。

 そう思っていたのはフェイトだけではない。

 ユーノの治療でなんとか命を繋いでいた少年もまた、戦況を苦々しく見つめていた。

 本来ならば課金蒐集に即死効果など無いのだが、『課金ソシャゲこそ我が命』『この魂が課金色をしている』を地で行く少年に対して、課金蒐集は特攻威力を発揮する。

 こうかはばつぐんだった。

 

「ぐ、ぎぃ、じっ……!」

 

「動くんじゃない、かっちゃん! 今無理すれば、本当に命にかかわるんだ!」

 

 少年は本来、援護でこそ本領を発揮する代金ベルカ式の魔導師だ。

 GooglePlayカードが一枚でもあれば、仲間の援護ができる……できる、はずだった。

 なのに服の内側をまさぐっても何も無い。

 闇の書の課金蒐集は、現実に存在する少年の課金カードすらも略奪していた。

 

「……っ」

 

 何かないか、何かないかと、少年は震える手で弱々しく服をまさぐる。

 すると、その手の先に一枚の硬貨が当たった。

 今夜高町家と食事に行った時のお釣りで貰った、後で誰かに自慢しようと思っていた、綺麗な五百円硬貨が彼の手の中に滑りこむ。十分だ、と課金少年はほくそ笑む。

 

「アンチ、メンテ……ギフトから……キャッシュに……」

 

「やめろ! やめろって言ってるだろ!」

 

「うるせえ……苦しい時こそ、課金で苦痛をやわらげてだな……」

 

「叩けば治る理論を骨折に応用するようなものじゃないか、それは!」

 

 少年の手の中から五百円玉が消え、その代わりに爆発的な魔力が生まれる。

 魔力はリンカーコアが引き抜かれた部分を通って彼の体内をズタズタにしながら、アンチメンテを通して代金ベルカの魔法を起動した。

 

「ブー、ス……ト……ドライブ……!」

 

 放たれた補助魔法の光が、フェイトに届く。

 魔法に込められた意志が、フェイトに届く。

 それを受け止め、フェイトは目を見開いて、力強く頷いた。

 

「―――! 分かった、やってみる! バルディッシュ!」

 

《 Yes sir 》

 

 バルディッシュ・アサルトが全てのカートリッジを吐き出していく。

 少年がフェイトに送った補助魔法は、『詠唱加速』『詠唱圧縮』『詠唱代替』の三種。

 ソーシャルゲーム的な表現をするならば、"大技発動に必要なゲージを課金回復する"効果だ。

 フェイトはその魔法効果をカートリッジで更にブースト、今の自分では本来詠唱が必要なはずの大魔法をほぼノータイムで発射する。

 

「フォトンランサー・ジェノサイドシフトッ!」

 

《 Photon Lancer Genocide Shift 》

 

 放たれるは、広域を焼き尽くす雷の射撃魔法の高速連射。

 雷だ、とヴィータは思った。

 雨のようだ、とシグナムは形容した。

 夜空が見えんな、とザフィーラは眉間にしわを寄せた。

 

 ニアSランクの魔導師ですら落とされかねない、雷属性の大魔法。

 だがヴォルケンリッターの動きはどこを見ても巧く、力強く、速く、鋭く、無駄がない。

 彼らにとって、この程度の魔法は致命打にはならない。

 戦いの流れは断ち切られたが、この程度でベルカの騎士に負けはない――

 

 ――なんて、思っていたのに。その瞬間に聞こえた声と、見えた光に、彼らは戦慄を覚える。

 

 

 

 

 

『サーチ完了! 全員、指定範囲から動かないで! 砲撃行くよ!』

 

 

 

 

 

 放たれた光の奔流を見て、高町士郎は先程なのはとした会話を思い出す。

 

―――魔法で皆の後押しをするから、先に行って。足止めをお願い

 

 高町恭也は、結構図太くなった妹に、嬉しいやら悲しいやら、複雑な気持ちだった。

 

―――どこかにまだ仲間が居るかもしれない

―――一番駄目なのは、相手がどのくらい居るのか、どこに居るのか、どのくらい強いのか

―――それを知らないまま戦って、予想してなかったことをされたら絶対勝てないよ

 

 高町美由希は、妹の考え方に素直に感心していた。

 

―――だから、今どうなっているのか全部把握するまで、私に時間をください

―――かっちゃんが本当に大変だったら途中でやめるけど

―――それでも今は、ちゃんと考えて動かないと!

 

 高町桃子は、娘のたくましさを素直に喜んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 湖の騎士シャマルは、遠方から仲間達をサポートしつつ、隙を見せた魔導師のリンカーコアを一撃でいただこうと、虎視眈々と戦場を眺めていた。

 『伏兵』は人類において、最強の戦術の一つであるとすら言える。

 格闘漫画で言えば、それは『見えない一撃』に相当するだろう。

 存在を認識されて居ないシャマルが、戦場にて徹底して隠れ続け、戦いの有利不利が決まる瞬間に不意打ち一発決めたなら、格上だろうとその一撃で仕留められる可能性は高い。

 

 シャマルの存在が認識されておらず、シャマルが敵の存在を一方的に認識している状況ならば、彼女は一方的にどんな強敵でも脱落させられる。

 ならば、逆なら?

 シャマルの存在を想定し、念のためにと自分の存在を隠しながらサーチを続け、シャマルに気付かれないままシャマルの位置を把握した者が居たならば、どうなる?

 

「え?」

 

 シャマルが自分の足元に魔法陣が発生したことを認識したのと、自分の存在が露見していたことに気付いたのと、自分が戦場に転送されたことと、自分が認識していない高ランク魔導師が暗躍していたことに気付いたのはほぼ同時。

 まさかあの魔力反応のあった子が、と思うももう遅い。

 

転移(テレポート)!? いえこれは、他者移送(トランスポート)―――)

 

 なのはがしたシャマルの転送から、刹那の時も置かずに次の魔法が発動される。

 

「ディバインバスター・オルタナティブ!」

 

《 Divine Buster Alternative 》

 

 高町なのはのレイジングハート・エクセリオンが、マガジン丸ごと一つを一気に使い切る。

 マガジン一つ分の大魔力が込められた砲撃が、常識外れなレベルの火力・弾速・精密性にて、アウトレンジからヴィータに向かって放たれた。

 なのははフェイトの射撃魔法からヴォルケンリッターがどう逃げているか、それをつぶさに把握しながら撃った。つまり、避けられるタイミングで撃つはずがない。

 

 ヴィータは回避に動いたが、そんなヴィータを追うように砲撃が空中にて"曲がり"、避けた先のヴィータに直撃する。

 

「が―――!?」

 

 砲撃の速度は音速なんてとっくの昔に超えている。

 ヴィータの悲鳴、ヴィータを飲み込んだ砲撃が揺らした空気がシグナムに届く前に、ヴィータを飲み込んだまま砲撃はシグナムも飲み込んでいく。

 

「ッ!?」

 

 また曲がり、今度はザフィーラを飲み込み、再度曲がって今度はシャマルを飲み込んでいく。

 

「がッ!?」「きゃ―――」

 

 ヴォルケンリッター四人を飲み込んだ時点で、砲撃は横方向に向かうのをやめて上空へ向かうように曲がり、上空から今度は地面にぶつかるように曲がる。

 そして砲撃は地面に衝突、大爆発を起こした。

 爆心地には、非殺傷設定のおかげか怪我はないものの、もはや戦えないヴォルケンリッター達が転がっている。

 

 フェイトの大規模魔法の最中に起こった、一瞬の出来事。

 シャマルの強制転送からヴォルケンリッターの総撃墜まで0.1秒とかかっていないという、詰将棋の最後の一手のような、いっそ美しさすら感じる一撃であった。

 

「……い……」

 

 ヴィータは呻き、悔しげに言葉を漏らしながら、立ち上がろうとする。

 想いがあった。

 負けられない理由があった。

 家族を想う愛があった。

 だから、彼女は立ち上がろうとする。

 

「一番、やべえ奴が、隠れて奇襲の隙を窺ってたなんざ、ふざけんな……!」

 

 だが、立ち上がることはできず、そのまま力尽きて倒れていった。

 

 

 

 

 

 フェイトやユーノと同じく普段から地球に居るわけではなく、今日のフェイトやユーノと同じように地球に居たわけではなかったため、遅れて来たクロノ。

 だが、遅れて来てしまったがために、彼はなのはの砲撃決着をモロに見てしまっていた。

 眉間を揉み、クロノは闇の書の騎士にやられた少年を、心の中で心配すると同時に呆れるという器用なことをやっていた。

 

「……これが、あいつの話に時々出ていた『高町なのは』か」

 

 能力アップアイテムを、主人公だけに集中して使う。気に入ったヒロインだけに集中して使う。リセマラで引いたエースだけに使う。初めて引いた最高レアにだけ使う。気に入った性格のキャラにだけ使う。お気に入りの強キャラにだけ使う。

 RPG式の系譜であるゲームなら、誰でもすることだろう。

 

 かの課金少年が"そういう相手"に選んだのは、高町なのはという幼馴染であった。

 

「あの課金バカが数年ガチャして引いたステータスアップ系アイテム……

 そのほとんど全てを注がれた、あいつなりの友情と信頼の表現方法で生まれた魔導師」

 

 能力アップアイテムは他人に使う場合、その他人が『傍に居る』時のみその効果が発揮され、傍に居なくなれば途端にその効果は失われる。

 これを"キーファエスケーピング理論"と言う。

 逆説的に言えば、他人にステータスアップ系アイテムを使うという行為は、その人間は自分から離れていかないだろうという信頼を表す行為であり、好感を持っているという証明になる。

 

「つまりは『一番愛着を持っている対象であるという証明』……

 なるほど、あいつがこの子を管理局に誘わないはずだ。これは見られるだけで恥ずかしい」

 

 もしも仮に、ヴォルケンリッターがなのはやフェイトなどに勝ったなら、その理由には『家族愛』『武器の差』『積み重ねた鍛錬と努力の年月の差』など理屈が付けられることだろう。

 だが本日の勝敗決着要因は文句無しに『課金の差』である。

 酷すぎる。

 少年が元気な状態であれば"正義は必ず勝つ! 何故なら俺が正義を応援して課金するからだ!"とほざき始めそうな、そんな酷い決着であった。

 

(……だが、なんだ、この胸騒ぎは……決着は、ついたはずだ)

 

 これにて闇の書事件は解決、速攻解決めでたしめでたし……で、あるはずなのに。

 

(なのに何故、僕はこんなにも、捕まえたことで『やらかしてしまった』気になっている……?)

 

 クロノは理由の無い胸騒ぎに、顔を顰めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なのはは気絶したヴォルケンの体表についた小さな傷を治し、バインドでガチガチに固めてからアースラに一報入れて、アースラの次元犯罪者捕縛室へと彼女らを転送する。

 後付けの強化がなされていたとはいえ、ヴォルケンリッターを一撃で全滅させた先の流れは、流石になのはにとっても負担が大きい。

 額に汗が一筋垂れて、なのははそれを袖で拭った。

 

「ふぅ」

 

 袖で汗を拭い、ほっと息を吐く。

 なのはの様子には、赤の他人からも見て取れるほどの『安堵』があった。

 深く息を吐いたなのはが、息を吐く挙動から息を吸う挙動に映るその一瞬。

 彼女の背後から、正体不明の『仮面の男』が迫り来る。

 

(―――)

 

 奇襲は完璧。仮面の男の動作はどこを見ても文句のつけようがない。

 だが、なのはの背後で攻撃を放とうとしたタイミングで、仮面の男の背筋に悪寒が走る。

 

「サーチは完了してたって、言ったでしょ?」

 

《 Divine Buster 》

 

 誘いだ、と仮面の男が悟ったその瞬間、仮面の男の腹に細い砲撃が突き刺さっていた。

 全ての敵の存在を、"潜伏していた存在"も含めて全て認識していたなのはが、自分の服と胴体で右腕を隠すようにして、右掌で左脇下から背面に砲撃を撃ったのだ。

 さながら西部のガンマンの曲芸撃ちのように、早く巧みに正確に。

 

(砲撃背面撃ち!?)

 

 一撃確殺と言えるほどのダメージは通らなかったが、それでも砲撃は仮面の男の防御を撃ち抜いて、仮面の男の意識を一瞬飛ばす。

 そこで仮面の男ではない誰かが仮面の男を助けようとして放った転移魔法が、仮面の男を数十m後方に移動させた。

 なのはは"まだ居た"と目を細め、仮面の男は目を見開く。

 仮面の男が一瞬前まで居た場所に無数のバインドがかかっているのを見て、仮面の男は先の砲撃ですらバインドの前座でしかなかったことに気付き、舌打ちする。

 

「悪魔か、貴様は……!」

 

「悪魔でもいいよ。悪魔は約束を守るって、お姉ちゃんが言ってた」

 

 仮面の男に向けられる杖は、

 

「友達は、私が守る。そう約束したんだから」

 

 少年がなのはを守るといつどこで言ったのか、これまで何回言ったのか。なのはが少年を守るといつどこで言ったのか、これまで何回言ったのか。そんなことも二人は覚えていない。

 もしかしたら言っていないかもしれないし、人生の重要な場面で言ったかもしれない。

 少なくとも、高町なのはは幼馴染(ともだち)を守ると自分がいつ誓ったのか覚えていない。

 

 けれどそれでいい。それでいいのだ。

 高町なのはとその幼馴染の関係は、それで良かった。

 約束をしたという記憶だけが、その約束を貫く意志さえあれば、それでよかった。

 それさえあれば、なのははいつだってどこでだって、たくさんの友達を守って行ける。

 

 仮面の男は再度転移魔法を使用し、なのはの知覚範囲外にまで一気に離脱する。

 深追いはせず、なのははサーチ魔法を手動での繰り返しからオートでの繰り返しに切り替えた。

 彼女は今度こそ、演技ではない本物の安堵の溜め息を吐く。

 

「……かっちゃん……大丈夫かな……おっきな怪我とか、してたらやだな……」

 

 役割を終えたなのはは堰を切ったように、一気に幼馴染の下へと飛んで行く。

 友達の現状が、心配で心配でたまらなかった。

 その心配をこの瞬間まで抑えつけ、なのはは見事に敵を打倒してみせていた。

 少年がなのはに期待した通りに、なのはは期待に応えてみせたのだ。

 

 少年は信頼した。なのはは応えた。ただ、それだけの話。

 

 

 




『強化アイテム』

 ソーシャルゲームに限らず、キャラクターの基礎数値を上昇させるアイテム。
 いわゆる"ゲームで定められたバランス"を、"プレイヤーの愛着"によって変動させるアイテムのこと。キャラに注いだ愛の分だけ強さに変わる、というシステムは長年愛され続けている。
 このお話の主人公はゲームをプレイする時主人公に強化アイテムをフルに注ぎ、余ったら一番好きな仲間に強化アイテムを注ぐタイプであったため、必然的にガチャから出たものの大半が高町なのはへと流れた。
 だが『目からビーム能力』のように、なのはが突っ返したものも存在する。

 作中で出たキーファエスケーピング理論の他にもキーファシード理論などの分析法が存在し、『どう使うか』『どう集めるか』『誰に注ぐか』が日夜プレイヤー間で考察され、語られている。
 RPGではゲームバランスを取るために有限であるが、ソーシャルゲームの場合は無限に手に入れられるがそこまで大量に手に入るものでもない、とうバランスであることが多い。
 ガチャを回した結果ゴミとして手に入ることも多々あるため、必然の帰結として、高町なのはは超時空要塞の領域に到達していた。何もかも幼馴染が悪い。

 ちなみにゲーム的に見ると高町なのはのステータス欄は何ページかあり、三ページ目を見ると

チャンス◎、パワーヒッター、ケガ○、逆境○、ノビ◎、キレ◎
粘り打ち、ローボールヒッター、クロスファイヤー
意外性、威圧感、レーザービーム、打たれ強さ◎
牽制○、闘志、重い球、重戦車、精神的支柱

 といった感じになっている。

 恋の病でバント○(晩泊まる)からの初球○で内野安打? 知らない子ですね……

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