遊戯王GX―とあるデュエリストたちの日々―   作:masamune

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第七話 〝最強〟という壁、弱者の意地

 

「退学ぅぅぅぅぅっっっ!?」

 

 廃寮から帰って来た日の朝、気になることがあったために早くから学校へと登校し、共有端末で夢神祇園は色々なことを調べていた。その後、朝方の購買部の手伝いをしていたのだが、校長室に呼び出され……そして、先に来ていた遊城十代と丸藤翔の二人と共に聞かされた言葉に言葉を失ってしまう。

 

「廃寮は立ち入り禁止区域なノーネ。そこに入ったシニョーラたちは倫理委員会で退学が決定されたノーネ」

「ちょっと待ってくれよ先生! そもそもあそこには明日香だっていたし、不審者もいたんだぜ!?」

「ふん。証拠もないことを言っても仕方がないノーネ」

「けどさ……!」

 

 十代が喰ってかかるが、クロノス教諭に譲る気はないらしい。祇園はあの、と手を僅かに挙げながら言葉を紡いだ。

 

「それは即時、ということなんでしょうか……?」

「いえ、制裁デュエルという形になります。タッグデュエルとシングルデュエル。それに勝利すれば、今回の件は不問という形になりますね」

「もし、負けたら……」

「残念ながら……」

 

 鮫島校長がゆっくりと頭を振る。それを見た翔が青い顔をし、祇園も苦い表情になった。それを見て、ふん、とクロノスが言い捨てるように言葉を紡ぐ。

 

「制裁デュエルは一週間後に行われるノーネ。それまで、精々頑張るが宜しい」

 

 ぴしゃりとクロノスが言い放ち、三人で視線を合わせる。

 ……選択肢は、ないようだった。

 

 

 …………。

 ……………………。

 ………………………………。

 

 

 祇園たちが出て行ったしばらくした後、校長室の扉がノックされた。鮫島がどうぞ、と言おうとするが、その前に激しい音を立てて扉が開け放たれる。

 

「邪魔と失礼をしに来たぜ、ジジイ共」

「ちょっと宗達! 失礼よ!」

「扉を開ける時の音はこんなに激しかったかしら……?」

「うう、いきなり印象悪い感じなんだな」

 

 入って来たのは四人の生徒だった。その先頭に立つ人物に、鮫島が務めて平静を装いながら言葉を紡ぐ。

 

「どうしました、如月くん?」

「どうしたもこうしたもねーよ、クソジジイ。朝っぱらから寮を爆破するだの退学だの……常識がねぇのかあんたらには」

「ふん、それはこちらの台詞なノーネ。そもそもドロップアウトボーイたちが校則に違反したのがいけなイーノ」

「爆破なんて校則どころか法律違反だろうが。オーナーは知ってんのか、海馬社長は?」

 

 ピクリと鮫島の眉が跳ねあがった。それを一瞥し、そもそも、と宗達は言葉を紡ぐ。

 

「俺たちも廃寮には行ってたんだ。制裁デュエルってんなら、俺たちも受けるのが筋ってもんだろ。堂々と差別してんじゃねぇぞ教育者」

「アタシはイッてないけれど……」

「黙れ無駄にエロい声出すな。……というか、どうして付いて来たんだよ」

「あら、語る必要があるのかしら……?」

「……とにかくだ。俺も明日香も隼人も現場にいた。制裁デュエルがあるんなら、俺たちも受ける」

 

 鋭い視線を二人へ向ける宗達。その隣に歩み出ると、明日香も言葉を紡いだ。

 

「私も同じ考えです。十代たちだけというのは、あまりにも不公平です」

 

 宗達の言葉に明日香の言葉も加わり、鮫島は僅かに唸り声を漏らす。隼人が、俺も、と遠慮がちに言葉を紡いだ。

 

「俺、自分のこと駄目な奴だって思ってました。でも、十代に会って、翔に会って、祇園に会って……特に祇園なんか、毎日寮の食事まで作ってくれて、購買部でもアルバイトして……それなのに、いつも誰よりも努力してて……俺、こんなんじゃ駄目だって思って。みんなのデュエルを見て、俺、ようやく夢が見つかりそうなんです」

「正直なことを言えば、私もこの学校がとてもつまらなかった。くだらない男ばかりで、つまならい日常が続いていくだけど。けれど……あのボウヤたちに出会って、少し考えが変わったの。私だけじゃないわ。ここにいる皆、ボウヤたちに影響を受けてる。宗達なんて、その典型だものねぇ……?」

「うっせぇ」

「照れ隠しも可愛いわよ……♪ フフッ♪」

「ええい話が進まん。……つーわけでだ、実際、俺はアイツらに救われた。アイツらがいなけりゃ、俺はアカデミアに最悪な印象を持ったままだったと思う。ここに残ってなかったかもしれない。だから、俺たちにも罰を寄越せ。もしくは、三人の罰を軽くしてはくれねぇか。――頼む」

 

 宗達はそこで頭を下げた。その場の全員が驚きの表情を浮かべる。

 宗達が鮫島やクロノスのことを嫌っているのは周知の事実だ。その彼が頭を下げる――その事実に、校長もクロノスも一瞬息を詰まらせる。

 

「……キミたちの気持ちはよくわかった。私としても、そうまで言ってくれる友人を持つ彼らを助けたい気持ちはある。特に祇園くんはその成績のこともあってラーイエローへの昇格が間近だった。……だが、これは倫理委員会で決まったことなのだ。私ではどうにもできんのだよ」

 

 そう言うと、鮫島は腕を組んで押し黙ってしまった。宗達が、拳を強く握り締める。

 ……できることは、もうないようだった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 宗達たちがレッド寮に行ってみると、悲痛な声が聞こえてきた。翔が『この世の終わり』とでも言いたげな表情で絶叫している。

 

「おしまいだぁ~~~!! 退学になるんだぁ~~~!!」

「大丈夫だって翔! 何とかなる!」

「……二人と僕だとシナジーが全くないし、下手をすれば邪魔をしそうだから僕がシングルに出るべきだと思うんだけど、三沢くんはどう思う?」

「それが一番だろうな」

 

 騒ぐ翔とそれを宥める十代とは対照的に祇園はラーイエローのエース、三沢大地と真剣に討論をしていた。祇園がアドバイスのために呼んだのである。

 

「しかし、祇園……キミのデッキには『ミラーフォース』が入っていないようだが」

「デッキを削って墓地肥やしをするから、墓地に落ちることが多くて……。それに攻撃反応型は何となくだけど遅い気がするんだよね」

「遅い?」

「僕の使ってる『ライトロードマジシャン・ライラ』とか『魔導戦士ブレイカー』は、攻撃する前に魔法トラップを破壊できるでしょ? そういうのもあって、攻撃反応型よりも召喚反応型の方がいい気がするんだ」

「成程、そういう考え方もあるのか……攻撃に対処するのではなく、攻撃そのものをさせない。そういうことか」

「うん。でも、それも落ちちゃったら意味がないから……トラップカードは極端に少ないんだけどね」

「六枚か……ふむ、だがこのデッキが結果を残しているのも事実。面白い発想をするな、祇園」

「いっそ相手の『サイクロン』を腐らせるためにトラップ〇もありかな、と思ったんだけどね。こういうカードもあるから」

「……何だこのカードは。何、墓地から発動できるトラップだと!?」

 

 真剣な表情で三沢と議論を交わす祇園。祇園はこちらへと歩いてくる宗達たちに気付くと、あっ、と声を上げた。

 

「宗達くんに、隼人くん。それに……明日香さん、藤原さん」

「落ち込んでるかと思ったら、意外と前向きだな」

「うん。落ち込んでも仕方ないから。それに、勝てば無罪放免らしいし……」

「翔にも見習って欲しいんだな」

「でも、大丈夫なの?」

「ボウヤなら大丈夫よ。私に勝ったんだもの」

 

 口々に言う宗達たちに、祇園も頷く。自信があるとは言い難いが、色々な人が応援してくれている。そのことを考えれば、落ち込んではいられない。

 そんな風に、祇園が内心で決意を固めた瞬間。

 

「おい翔! どこに行くんだよ!」

 

 十代の声が聞こえ、そちらの方へと視線を向ける。すると、翔が十代に背を向けて走り去って行った。

 その背を十代が追いかけていくが、翔はすぐに見えなくなってしまう。

 

「翔くん……」

「……まあ、豆腐メンタルにはキツいかもな」

 

 ポツリと宗達が呟く。それを見て、うん、と祇園は一度頷いた。

 

「僕、翔くんのこと探してくる」

 

 立ち上がり、歩き出す。十代が声を上げた。

 

「俺も探すぜ」

「なら皆で探すか。……策を練れば、どうとでもなる。とりあえず根性付けるところからだな」

「フフッ、それじゃあ手分けして探しましょうか」

 

 それぞれの方向へと歩き出す。そんな中、祇園は迷いなく一つの場所を目指していた。

 ……きっと、あそこだ。

 彼自身、何度も訪れたその場所へ……祇園は歩いていく。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 海岸に辿り着くと、不恰好な筏を翔が造っているところだった。その背に、何してるの、と宗達は問いかける。

 

「そんな筏じゃ、遭難しちゃうよ?」

「ぎ、祇園くん……」

「そんなに怯えないで。……どうして逃げるの? このままじゃ、退学だよ?」

「ぼ、僕のせいでアニキが……負けちゃうッスから……」

 

 翔は泣きそうな声で言う。祇園は、そっか、と小さく頷いた。そのまま、でも、と言葉を続ける。

 

「デュエルはやってみなくちゃわからない。そうだよね?」

「わ、わかってるッスよ。僕は弱いし……」

「僕よりも強いよ。僕に勝ったじゃないか」

「たったの二回ッスよ!」

「それでも、勝ちは勝ち。それに片方は授業でのことだし、翔くんは弱くないよ」

 

 実際、祇園の目から見て翔は弱くないと思う。迂闊な部分が多過ぎるだけで、それさえどうにかできれば十二分に化ける可能性があると見ていた。

 事実、祇園に勝った時は慎重に慎重を重ねたプレイングをした結果であり、その時のデュエルについては十代を始め三沢にさえも全力でダメ出しをする宗達も褒めていたくらいだ。

 

「でも、タッグデュエルッスから……やっぱり、足を引っ張っちゃうッス。あの、祇園くんがアニキと……」

「僕と十代くんじゃ、互いが互いのいいところを潰しちゃうよ。噛み合わなさ過ぎる。……翔くんは、十代くんの足を引っ張るのが怖いんだよね?」

 

 丸太に腰掛けつつ、祇園が言う。翔はその隣に座りつつ、小さく頷いた。

 

「……僕もね、同じことを思ったことがある」

「えっ?」

「三年くらい前にね、僕にとって唯一『友達』って呼べる人がいて……その人と一緒に大会に出ることになって。その人は凄く強い人でね。逆に僕は凄く弱くて。一度もデュエルに勝ったことがなかったくらいなんだ」

 

 そう言うと、祇園は一つのデッキを翔に差し出した。それを受け取った翔は疑問符を浮かべながら言葉を紡ぐ。

 

「ボロボロッスね、このカードたち……」

「うん。そのデッキ、どう思う?」

「……その、言い難いッスけど……無茶苦茶、ッスよね?」

「うん。シナジーなんて何もない。攻撃力の最高は1500ポイント。使い難いカードばかりの『紙束』だよ」

 

 祇園は苦笑を零しながら翔に渡したデッキを受け取る。それを優しく撫で、でも、と祇園は言葉を紡いだ。

 

「僕の持っているカードは、これが全てだったんだ。拾ったり、譲ってもらったり……あまりにも弱過ぎて、その内誰もデュエルしてくれなくなって。友達なんていなかった。いつも一人ぼっちで……でも、そんな僕と一緒に大会に出てくれた人がいて。このデッキに比べたら、翔くんのデッキは遥かに強いよ」

「で、でも今の祇園くんとは……」

「……弱かったから、僕には考えるしかなかった」

 

 勝てないデッキで勝つために。

 どうすれば、勝てるかを。

 考えて、考えて……考えた。

 

「その結果が、今のデッキ。宗達くんは『カオスドラゴン』なんて呼んでるけど、ドラゴンを選んだのはずっと弱いカードばかり使ってた反動だね。……考えるしかないんだよ、弱いなら」

 

 勝つために。勝てるようになるために。

 たったの一度も勝てなくても、祇園はそれを止めなかった。

 

「翔くんにできることを、考えるんだ。僕の考えたそのデッキの結果は、総リクルーターの耐久デッキ。リクルーターで僕は場を繋いで、もう一人に戦ってもらう……情けないけど、僕にはそれしかなかったんだよ」

 

 だから、勝てた。

 自分自身の力じゃ、なかったかもしれないけど。

 

「翔くんは違う。翔くんは翔くん自身で勝つことのできるだけの力がある。僕とは……違うよ」

 

 だから、と祇園は言葉を紡ぐ。

 

「頑張ってみようよ。大丈夫、もし負けても……きっと、手段はあるから」

「……前向き、ッスね」

「後ろ向きだよ、僕は。今だって最悪の状況の事ばっかり考えてる。でも、それでも進むしかないなら……進む。それだけ」

 

 言って、祇園は視線を森の方へと向けた。そこには、こちらへと走り寄ってくる十代たちの姿がある。

 

「翔! 探したぜ!」

「あ、アニキ……」

「頑張ろうぜ翔! 俺の弟分なんだろ!? 信頼してるんだからさ!」

 

 信頼……その言葉に、翔が一度顔を俯かせた。そして意を決したように顔を上げると、わかったよ、と十代の言葉に頷く。

 

「僕、頑張るッス! アニキの足を引っ張っちゃうかもしれないけど……」

「それはお互い様。勝とうぜ!」

「うん! アニキ!」

 

 翔の表情に笑顔が戻る。それを見届けると、よかった、と祇園は小さく呟いた。翔はこちらへ視線を向けると、軽く頭を下げてくる。気にしないで、と手を振って返答を返した瞬間。

 

「――カイザー……」

 

 不意に、宗達が真剣な表情で呟いた。全員の視線がそちらを向く。……そこにいたのは。

『デュエルアカデミアの帝王』――『カイザー』丸藤亮。

 その男が、こちらを見ていた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 カイザーと呼ばれるアカデミア最強のデュエリスト、丸藤亮。その実力はその噂に違わぬものだった。

 十代がデュエルを挑み、それに応じたカイザー。

 決着は――十代の完敗。

 攻撃力8000などという破格のモンスターによる攻撃を受けて負けた十代。しかし、彼が伝えたかったことはしっかりと翔へと伝えられたようだ。

 一週間、制裁デュエルの対策のためにできる限りのことをした。一度、退学のことを話したら購買部のトメさんが他の職員を巻き込んで鮫島へと抗議してくれたこともあったが……結局、決定が覆ることはなかった。

 そして、迎えた制裁デュエル当日――

 

「行くぜ、翔!」

「はいッス! アニキ!」

 

 並び立つ二人と、それに対抗するのは……かつて『キング・オブ・デュエリスト』武藤遊戯とも戦ったことのある二人組。――迷宮兄弟。

 

「頑張れ、二人共」

 

 控室で、モニターに対してそう呟く。個のデュエルの後、祇園も制裁デュエルが待っている。相手はいまだ不明だが、誰が相手でも全力でやるだけだ。

 そんな風に、腹を括る祇園。モニター内では遊戯王OCG屈指の召喚かが難しいカードである『ゲート・ガーディアン』が特殊召喚されたところで、会場では大歓声が上がっていた。

 もう一度頑張れ、と呟く祇園。すると不意に、部屋をノックする音が聞こえた。

 

「はい?」

 

 返事を返す。すると、扉が開き――

 

「――久し振りやね、こうして直接会うんは」

 

 一人の少女が、入って来た。

 黒髪をポニーテールにし、前髪に二房ほど白い髪の混じったスタイルの良い少女。テレビでも良く見かけるその少女は、世間でこう呼ばれている。

 

〝史上最年少プロデュエリスト〟

 

 十三歳の時からプロの世界の門を叩き、ずっと第一線で活躍してきたデュエリスト。アイドルであるがその実力に偽りはなく、今期の個人リーグではランキング30位、団体では所属する『横浜スプラッシャーズ』での先鋒を務め、チームは優勝争いをしている。

 男女問わず人気を集め、この間行われた全米オープンでも準優勝を果たしたその少女の名は――

 

「……美咲(みさき)」

 

 ――桐生美咲(きりゅうみさき)。世界ランクにも名を刻む、プロデュエリスト。

 

「うん。びっくりしたで? いきなり制裁デュエルを受けるー、なんてメールが来たし」

「まあ、それは校則を破った僕たちが悪いから」

「ま、確かにそれは悪いことやけど……それがあったとしても、ちょっとやり過ぎやな。社長も珍しくキレてたし」

「社長って……」

「今日の結果次第でどうするかは決めるゆーてたけどな。……さて、どうやら終わったみたいやね」

「……みたいだ」

 

 モニターから聞こえてきた結果。十代と翔が力を合わせて召喚した、『ユーフォロイド・ファイター』が相手の切り札を打ち破る。

 無事に、勝てたようだ。

 

「そろそろ、行かなくちゃ」

「……なぁ、祇園。こう見えて、ウチ、期待してるんやで?」

 

 部屋を出ようとする祇園へ、美咲がそう言葉を紡ぐ。祇園はうん、と頷いた。

 

「勝って来るよ」

「……成長したね」

「どうして?」

「勝つ、っていう言葉を祇園が言うなんて……ちょっと、驚き」

 

 頑張って、と彼女が言った。

 祇園にとって一番最初の友達であり、ずっと目標にしてきた少女の言葉。

 

「うん」

 

 頷き、部屋を出る。美咲は、ふぅ、と小さく息を吐いた。

 

「……祇園、相手は〝伝説〟や。生半可な覚悟やと叩き潰される」

 

 会場のモニターへと視線を向けながら。

 美咲は、憂いを帯びた言葉を紡ぐ。

 

「頑張って」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 クロノスに呼ばれ、祇園は会場へと足を踏み入れる。相手はまだ来ていないらしい。

 迷宮兄弟のように、何かしら実績のある人が来るのだろうか――そう思った時。

 

「では、シニョール夢神の相手は私が――」

「――ふぅん。久し振りに訪れたが、そう簡単には変わらないようだな」

 

 クロノスの言葉を遮り、反対側から一人の男が現れた。

 スーツケースを持ち、ロングコートを身に纏う人物。日本どころか、世界においても『彼』を知らない人物などいないだろう。

 

「制裁デュエルだったな。この俺が直々に相手をしてやろう。――貴様の実力が美咲の言う通りのものか、見定めてやる」

 

 キング・オブ・デュエリスト――武藤遊戯。

 伝説と共に語られる彼にとって永遠のライバルにして、世界に三枚しかない究極のレアカード『青眼の白龍』の唯一の所持者。

 

 海馬――瀬人。

 

 世界最強に最も近いデュエリストが、祇園の前に立ちはだかる。

 

「……ッ、そ、そんな、海馬さんと……!?」

「お、オーナー!? 何故ここに……!」

「ふぅん。少々気になる報告が上がったから見に来た、そのついでだ。――ゆくぞッ!!」

 

 拒否権はないらしい。会場は海馬瀬人の登場に驚き、未だにざわついている。

 そんな中、海馬の宣言が響き渡った。

 

「――決闘(デュエル)!!」


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