遊戯王GX―とあるデュエリストたちの日々― 作:masamune
「もう一度、よろしくお願いします」
「ええ、歓迎しますよ」
多くの思惑に翻弄されてきた少年は、再びその地の土を踏む。
迷いを心の内に抱えながら、それでも前を向くために。
「女子寮ができたんだね」
「うん。方針変更でなー。ゆーてもレッド寮に落ちる子は今のところおらんよ。イエローに落ちた子なら何人か男女問わずおるけど。逆に上がった子も」
「まあ、僕には無縁のこと……かな?」
「出席とかいろいろ面倒臭いしなぁ。祇園の場合」
戻ってきた場所は、少し変わっていたけれど。
それでも、温かで。
「いいんじゃねーの? お前の人生だろ、お前が決めろよ」
「祇園、デュエルだデュエル!」
「祇園ちゃん、良かったねぇ……。戻って来れて、本当に良かったよ」
過ぎていく日常。
少しずつ変わっていく日々。
「は、初めまして! 早乙女レイです!」
「……えっと、どういうことなの?」
「あんたらまさかこんな小さい子を誘拐してきたんやないやろな?」
「なんでだよ!?」
「桐生テメェふざけたこと」
「へぇ? そうなの宗達?」
「すんませんマジで勘弁してください雪乃殺さないで」
騒がしくも、心地良い日々。
一日一日が、本当に輝いていて。
「俺は帰って来たぞ! 如月! 貴様に今度こそ勝利するために! 忘れているなら教えてやる! 俺の名は! 一!!」
「「「十、百、千!!」」」
「万丈目サンダー!!」
「「「サンダー!!」」」
「チェンジで」
「貴様ァ!!」
だからこそ、迷いが深まり。
「どちらを選ぼうと後悔はするさ。選択など総じてそんなものだ。結局はな」
「納得するしかないんよ。どんな道を選んでも、自分自身を納得させることができるんやったらそれがきっと正しい道や。そう、信じて納得するしかあらへん」
そして――黄昏が来る。
「生徒たちに、手出しはさせません。私はデュエル・アカデミアの校長です。私には彼らを命懸けで守り切る義務があり、使命がある」
「闇は光を凌駕できない……! 決して諦めてはいけませンーノ!!」
「……すまない。俺は――」
「殺し合うなら、相応の覚悟をしていくべきだ。最早これはゲームではないのだからな」
「不甲斐ないなぁ……。何もできひん自分が、不甲斐ないよ」
「悪いな、雪乃。先に逝っててくれ。俺もすぐに逝く」
「……仕方ないわねぇ。いいわ、待っててあげる」
「勝つために! 強くなるために俺はここにいるのだ!」
「届いて、ください……! お願い、届いて……ッ!!」
絶望の果てに。
少年の手に、背に、残ったモノは――
「否定はさせない、絶対に。それだけは、させない」
貫くと決めたのは、心に宿る大切なモノ。
懸けると決めたのは、たった一つの小さな命。
遊戯王GX―とあるデュエリストの日々―
七星動乱編