鮮やかな、若葉色のワンピース。小さな体にふわふわの小さな羽で、本当に妖精みたい。
背中の、まだまだ頼りない母親譲りの羽を一生懸命使って、飛びついてくる。大切な、壊れちゃいそうな体を抱きかかえると、柔らかな羽が心地よい。ずっと触れていたいと思うけれど、やりすぎると嫌われちゃう。前にそれで、羽で叩かれちゃった。でも、それはそれで気持ちよかったなんて言ったら、怒られちゃうかも。
「もう、飛べるようになったんだね?」
笑いかけると、元気良くうなずく。
こうやってやんちゃな所は、お父さん似なのかもしれない。少しだけ心配だけれど、でも、女の子だって元気が一番。優しげな顔立ちはお母さん似で、それでいてお父さんの良い所をいっぱい持っている。きっと、魅力的な女の子になると思う。お父さんはきっと大変だ。
「ね、ね。これ、可愛いでしょう? テファおばさんとお揃いだよ」
嬉しそうに自分の──仮装としてつけた、長く尖った耳を引っ張ってみせる。
「うん、お揃いだね。それも、お母さんが作ってくれたのかな?」
「ううん、これはお父さん。服がお母さんで、こっちはお父さんなの」
背中の羽がぱたぱたと暴れて、少しだけくすぐったい。
「ふふ、エルフの仮装なんて面白いね」
「うん。それにね、私は飛べるから、すごいエルフなの」
「あはは、そうだね。じゃあ、みんなにも見せてあげないと」
「そうだね。でね、これからみんなでお菓子をいっぱい、いっぱい集めるの。テファおばさんにもいっぱいあげるからね」
「うん、楽しみにしているね」
地面におろしてあげると、また元気良く走っていく。
走った先には、赤、青、黄色──本当にカラフルな格好をした子供達。フリルいっぱいのドレスだったり、格好良い騎士の格好だったり、魔法使いの格好だったり。それに加えて、獣耳がついていたり背中に羽があったりだから、本当に賑やか。誰がどんな人種なんだかなんて全然分からないし、関係無い。みんな楽しそうで、私はそれが嬉しい。
みんな、お菓子が待ちきれないのか、手を取り合って走っていく。仲の良い子同士で、一斉に走っていく。無くなったりなんてしないように沢山準備しているけれど、転んだりしないか、それだけが心配。
「エマちゃん、どっちがいっぱいお菓子をもらえるか、競争だよ」
「うん、負けないからね。テファお姉ちゃんにもいっぱいあげるんだから」
エマが私に、楽しみにしていてと手を振っている。真っ赤な、鮮やかな赤いドレスは、とてもエマに似合っている。