混沌の使い魔 小話   作:Freccia

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羨ましくとも

 ――楽しげな声が近づいてくる。

 

 扉を隔てたそれは徐々に近づき、食堂へと入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 今日のメンバーはルイズ、その姉であるミス・エレオノール、学院長の秘書だった――過去形が今の状況をよく表しているだろう――ミス・ロングビル、そして、これまた一応はルイズの使い魔ではある、ある男。時折引き連れてくるメンバーは変わるとはいえ、美女、美少女というのは変わらない。

 

 うらやましく、それ以上にねたましい。それは学院の男ほぼ全員が持っている感情。だからこそ、今食堂へと入ってきた一団へ皆が視線を送っている。ぐるりと見回しても、隠しているかどうかを置いておけば、皆が様子を伺っている。そも、美女、美少女を見たいというのは男の性であるならば。自分とてその一人、それは自然な反応だ。

 

 本来ならば嫉妬に狂って突撃する者がいるだろう。が、今もってそんな展開にはなっていない。答えはとても簡単なこと、手を出すというのが命がけであるならば。だから皆、遠目に眺めるだけだ。あの一団を眺める自分と同じように……

 

 

 ルイズが件の使い魔に笑いかける。時折拗ねたように口を尖らせるも、それだけ一人占めにしたいからだと思えば、なんと可愛らしいことだろう。もともと、女性らしい丸みには乏しくとも、それを補ってあまりあるほどの美少女。同年代とはいえ、それを守りたいと思うのも自然だと感じるほど。そういえば、一緒に寝ているという話も聞く。子猫のように甘えるんだろうと思うと、抱きしめたいという衝動が胸を突く。

 

 ルイズの姉のミス・エレオノール。普段の怜悧な雰囲気はそれはそれで良いものだが、件の使い魔の前ではとにかくべたべたと甘えたがる。それは妹であるルイズにも負けてはいない。本人は押さえているつもりなんだろうが、見ていていたたまれなくなるほどに分かりやすい。が、それを向けられる側になればと考えれば悪くはない。件の使い魔からはチョーカーを贈られたことを自慢していたとの話もあり、首輪のようなものだと思うと、とにかく従順な様子が目に浮かぶ。それはそれで、良いものだ。

 

 最近は学院長よりも件の使い魔と一緒にいるのを見かけるミス・ロングビル。知的な雰囲気と、抜群のスタイルの良さが年上の魅力にあふれている。加えて、漏れ聞こえる話からすると、件の使い魔にはどういった意味で使っているかは別として、いじめられているらしい。嗜虐指向かと思いきや、実は被虐指向だと考えると、それがまたなんとも……一言で表すならエロい。

 

 今日はその三人だが、時折加わる他のメンバーも美少女揃い。目を閉じればすぐに浮かんでくる。それだけ印象深い。

 

 例えば、たまに学院内で見かけるウラルという十を数えるほどの少女。無表情で近づきがたくはあるが、子供達と一緒にいるとき、ごくごく稀に笑う。自分は見たことはないが、それを見ると、とてもとても幸せな気持ちになれるそうだ。もとが綺麗な顔立ちなだけに、あと数年後がとても楽しみだともっぱらの評判だ。マリコルヌは彼女の魅力はそれだけじゃないと言うが、それは自分だけの秘密だと決して語らない。まあ、ロリコンの戯言だろう。気持ちは分からなくもないが……。

 

 血はつながっていないということだが、ミス・ロングビルの妹だというティファニア。姉とは違って、ほんの少しだけぼんやりとした様子が可愛らしい掛け値なしの美少女。そして、何より特筆すべきはあの胸。いや、あれはただの胸ではない。言うならば、おっぱい様。あれには様づけでなければ失礼だろう。幼げな容姿にキュルケよりも大きいかもしれないあのおっぱい様は反則だ。あれに触れられるのなら死んでも良いという男も少なくないだろう。が、誰にとは言わないが、実際に殺される可能性があるためにまだ実践したものはいない。まあ、いずれ死人が出るかもしれないが、それはそれで本望だろう。気持ちは分からなくもない。

 

 そして、新しくそこへ加わったルクシャナという美少女。人でない何かを思わせる、芸術品とも言うべき美しい顔立ちはもちろん、何かを食べる時の幸せそうな表情がとても良い。知的な雰囲気を漂わせているというのに、食べる時に浮かべる時の本当に幸せそうな表情とのギャップが良い。小麦色の肌というのが平民を思わせはするが、あれはあれで良いものだというのが現在のところ一致した見解だ。

 

 皆が皆、絶世のという言葉でも足りないほどの美女、美少女。だというのに、皆見るだけ。それはあのギーシュですらも例外ではない。

 

 ハーレムはうらやましく、ねたましい。が、下手なことすれば死ぬ。比喩でもなんでもなく死ぬ。

 

 皆、知っている。最近でも、近くの草原を荒野に変えていたということを。

 

 そして、最近、鍛えるという名目で空を舞っていた黒髪の平民。何でも、ルイズに馴れ馴れしい口をきいていたとか。ただそれだけでと皆が戦慄した。生かさず、決して殺さず。あれこそまさに、悪魔の所行だろう。


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