混沌の使い魔 小話   作:Freccia

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手紙

「――ちい姉様へ」

 

 それを読むだけで自然に頬が緩む。ふだんルイズとはなかなか会えないから、たとえ手紙でも、そんな風に呼んでもらえると嬉しくなる。

 

 

 

 

 

 毎週、私の元には家族から手紙が来る。私はなかなか外に出られないからだ。

 

 そうやって来る手紙は色々なことを教えてくれる。動物達も色々なことを教えてくれるけれど、それとはちょっと違う。だから、毎週届くのが本当に待ち遠しい。そして、届いた手紙に対して返事を書くのもまた、私にとってはすごく楽しいこと。

 

 中でも、ルイズとエレオノール姉さんからの手紙は、最近特に楽しみにしている。

 ちょっと前まで、ルイズが無理をしているというのは手紙からでも分かるぐらいだった。でも、シキっていう人を使い魔として呼んでから変わったみたい。たまに不満を書いていることもあるけれど、それでもその人のことが大好きだっていうことがよく分かる。

 

 その人とどこに行った、何を食べた――それこそ、私がやってみたいと思うことを活き活きと。うらやましくもあるけれど、見ているだけで、私も嬉しくなってくる。

 

 そして、エレオノール姉さんからの手紙。研究所にいた頃は仕事に対する愚痴のようなものが多かったけれど、学院に移ってからはそれがなくなった。仕事自体はやることが多くて大変だって言っていたけれど、手紙にはそれ以外のことを書いている。ルイズと同じように、休みにどこへ行った、何を食べた、と。誰となんてことは書いていないけれど、姉さんが本当に嬉しそうだから、それでいい。

 

 最近の二人は、本当に楽しそうだ。そういう手紙を読むと、私も一週間を楽しく過ごせる。

 

 そして、今日は二人から同じ内容の手紙が来た。

 

「――発情期の犬を出歩かせないようにするにはどうすればいいか、ね。うーん……、その人の――じゃなかった、その子の子供ができれば、きっと親としての自覚を持ちます、と」

 

 発情期ってそうしないと落ち着かないから。まあ、一か所でとは限らないけれど。

 

「――ふふ。二人の子供だったら、きっと可愛いだろうなぁ。そうしたら、私も叔母さんかぁ」

 

 ちょっと無責任かなって思わなくもないけれど、きっと大丈夫。それぐらいしないと駄目なような気がするし、何より、二人が好きになった人だから。

 

 そんなことを考えるのは幸せだけれど、少しだけ寂しい。

 

 ――私にも、そんな人がいたらいいのにな。

 

 そして子供をもてたら……でも、贅沢よね。なにより、子供が可愛そう。

 

 ああ、でも、いいなぁ。

 

 本当に好きな人との子供。

 

 私と、その人との子供。

 

 たとえ短くても、一緒にいられたら……


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