子供達が手に手にプレゼントを自慢しあう。可愛らしいぬいぐるみだったり、模造刀だったり。子供達それぞれにばらばらだけれど、皆嬉しそう。
思えば食べるばかりに精一杯で、プレゼントなんてあげたことなかったしなぁ。せいぜい、誕生日には少しだけ、ほんの少しだけ豪華な食事にしたぐらいだっけ。こんなに喜んでもらえるなら、私がプレゼントしたかったな。こんなに喜んでもらえるなんて、『サンタクロース』さんがうらやましいなぁ。
「――姉さん」
テファがそっと耳打ちする。シキさんにはお礼を言っておいてね、と。
「それとね」
ふわりとテファが微笑む。
「私にもイヤリングをプレゼントしてくれたの。エルフの耳を隠してくれるっていう、姉さんも探してくれていたもの」
くるりと回ってみせる。エルフだって分からない耳元に、小さなイヤリングが揺れている。
「石は姉さんとお揃い。これで一緒に買い物にだっていけるね。嬉しいなぁ。姉さんと一緒にどこかに行ったことなんてなかったから。ううん、何も気にせずに外に出られるなんて、生まれて初めて」
耳に触れ、本当に嬉しそうにはにかむ。上気した頬、子供のようにはしゃぐ様子はまるでお酒に酔ったよう。それとも、テファなら妖精が舞うようとでも。
そんなテファがふと、ことりと首を傾げる。
「ところで、さっきからお尻を押さえているけれど、どうかしたの?」
「……言わないで。お願いだから」
子供達とテファにはプレゼントで、私には――
テーブルにはシキさんとエレオノールさんがいた。私に気づいたエレオノールさんが手をあげる。でも、シキさんは目を合わせない。ええ、気づいているはずだけれど、目を合わせない。
「楽しそうですね。私も混ぜてもらってもいいですか?」
「ええ、もちろん。ね、シキさん?」
エレオノールさんがシキさんに笑いかける。
「ああ、そうだな……」
それなのに、やっぱりシキさんは目を合わせない。
「ん? シキさん、どうかしたんですか?」
いつもと違う様子に、エレオノールさんが首を傾げる。シキさんは曖昧に言葉を濁すだけ。
ふーん……。一応、反省はしているんだ。
「シキさん……」
私の呼びかけに、びくりと肩を振るわせる。
「な、何だ……」
「お尻、痛いです」
「……そうか」
「シキさんには本当に、ええ、本当に感謝しています。でも、子供達とテファに比べて、私の扱い酷くないですか?」
シキさんが更に目を逸らそうとするけれど、両手で捕まえる。
「……悪かった。本当に悪かった」
ようやく、それだけ口にした。
「えっと、お二人とも何の話をされています?」
エレオノールさんはさっきから首を傾げたまま。
「知りたい、ですか? 本当に?」
「いや、知らなくていい」
私の口を押さえようとするけれど、そうはいかない。
「前に、好きな人は好きだって言ったことがあったでしょう?」
「好きな人は好き……」
目を閉じて考え込む。そしてあっと言う間に真っ赤になった。
「あ、ああっ、シ、シキさん! ……あれ? いない?」
ぶんぶんと茹だった顔で探すけれど、もう遅い。私が口にした時にはもう逃げる準備は終わっていた。
「逃げ足、早いなぁ。でも、ま、これぐらいで許してあげようかな? 一応、テファには手を出さないようにはしてくれたみたいだし」
走り去っていった後の扉が、かすかに音をたてて戻ってくる。
「……と、ところで」
「ん? 何ですか?」
「その、お尻でするのって、どうなんでしょうか?」
ちらちらと周りも伺いながら、恥ずかしそうな小声で口にする。
「えーと、分かっていると思いますけれど、人前で話す内容じゃないですからね? まあ、私が言えた義理じゃないですけれど」
「あ、そ、そうですよね……。うー、わ、私ったら……」
テーブルの上で頭を抱え込む。
「うーん、純粋な方が変な風に興味を持っちゃうのかなぁ。はぁ、テファ、大丈夫かな……。シキさんに変なこと教えられなきゃいいんだけれど」
もう一度、テーブルで悶えるエレオノールさんに視線を移す。上気した頬は色っぽくもあるけれど、色々と駄目だと思う。
――でも、なんだかんだで興味津々みたいだし、シキさんにお願いするんだろうなぁ。テファがこんな風になったら嫌だなぁ。