ビスコッティ共和国興亡記・HA Edition   作:中西 矢塚

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 なんだかんだでダラダラ100時間経過して、漸くゼノのメインシナリオクリア。
 噂には聞いていたけど見事に確信犯的なブン投げだったなぁw
 そら、こんなオチなら世情的にクレームが怖くてCMも撃てんわ。
 とりあえず、海底遺跡と浮遊大陸あたりを追加したエピソード2を期待しておくべきか。
 3は月面でな。

 アレス作りはどうすっかなー


4-14(最終話)

 ―――その帰路での話である。

 

 星鯨の泳ぐ幻想的な空海。

 地上の勇者達を乗せた火竜と、超大型スカイアが優雅に飛んでいた。

 超大型―――と名の付くとおり、そのスカイアは絨毯部分が通常の数名しか乗れないそれに比べ巨大化している。

 具体的に言えば、勇者達の援軍として駆けつけた三国同盟の兵士達百余名が優に搭乗できる規模のものだ。

 規模の、物なのだ。

 

 ……が。

 

 それは勿論言い訳は聞く。

 スカイアを超巨大にしても、それを遥かに上回る巨体を誇る火竜が居るのだから、帰りはそちらに乗せてもらっても良いだろう、とか。

 他の言い方をすれば、シンプルに。

 

「行き過ぎたおせっかいって苛めにしかならないって、解らんかね……?」

「あはははは……」

 

 だだっ広い絨毯に寝そべりながら呻くシガレット。

 その傍にちょこんと腰を落として苦笑する、ベール。

 以上二名。

 百人乗っても大丈夫な、そのスカイアの乗員である。

 繰り返すが、二名だ。

 他の面子は全て火竜の背中に乗っている。

 背中に乗って、まぁ。

 

「空から突き落としてやろうか、チクショウ」

「もう気にしたら負けだと思うよ」

「出歯亀するにしてももうちょっと密やかにやるもんだろ! 体乗り出して覗いてきてるじゃねーか!」

「火竜さん、大きいからねー。乗り出さないと見えないし」

「見るなって言ってるんだよ! つーかお前は見られたいのか!?」

 羞恥プレイは嫌だろう、とがなるシガレット。

 頷いて即答すると思われたベールはしかし、一度瞬きをして、顎に指を当てた。

 うーん、と呟く。そして。

 

「……証人は多いほうが良い、とか」

「お、おう」

 

 シガレットは何故か胃の裏側辺りが急激に重くなったような気がした。

 多分気のせいである。きっと。おそらく。気のせいだと思い込もうとして咳払いをする。速攻で咽た。

「なーにやってるんだか」

「っぇっふっ……ええい、うるさいよチクショウ」

 半泣きになりながら身を起こす。 

 背中をなでてくる手の優しい感触が、全力で惨めな気分を助長していた。

「ぁぁ~~~~ったく、もう」

 胡坐をかいて蹲り、頭をかきむしる。

 

「あのなぁ!」

 

 顔を見ぬまま、呻くように。

 言えば、背中をなでる手が、一瞬震えて、止まった―――そこに、留まった。

 

「今回の一件でよく解ったことだけど……」

 

 ここに来て、何か枕詞をつけたくなる自分が、心底恥ずかしかったし、情けなくもあった。

 こういうときもう少し鈍感であれれば楽なんだけど、と思う。

 ある程度の鈍感さは、人生を幸せに生きるために必要な才能だと、心底思う。

 

「俺は」

 

 思考停止。考えることを諦めた。

 きっと馬鹿だコイツ、とか後で他人事のように思うんだろうな、と言うのがそのとき最後の唯一まともな考えだった。

 

「俺は、お前らが誰かに傷物にされるくらいなら、その前に自分の物にしようと思うくらいには、お前らが好きだからな」

 

 後ではなく、言いながら最高にコイツ馬鹿だなと、シガレットは思った。ついでに最低でもあった。

 俺ならその場で殴る。いや、俺以外でも間違いなく殴りに行くだろう。そう思った。覚悟もした。

 

 が。

 

 だが。

 

「…………ふへへ」

 

 聞こえてきたのは、そんな、間の抜けた、声。笑い声だ。

 あと、ついでに。

「おい、痛いぞ」

 ばしばしと背中を叩かれる。

 本気で痛かった。伊達に常日頃から硬い弓の弦を引いていない訳ではない。納得の腕力である。

「なんかさーあれだねー」

「何でも良いから叩くのやめーや。ちょっとババくさいぞ」

「なんかいった?」

「何も言ってません」

 怖かったので口を閉じた。流石に背骨は折られたくない。

「もー、ほんっとばかみたいな気分になるから、変な茶々入れないでよね」

「大変申し訳アリマセン……ってか、……あ~……その、馬鹿みたい、っていうと?」

 どういう意味でしょうか、と。

 確実に言わされているのが解っていながら、尋ねないわけにもいかない状況だった。

 

 うん、それはと。頷く声はいやらしい位に可愛らしい。

 

「安いおんなだよねー、わたし。ふへへへへ」

「……ぉぉう」

  

 ちらりとは以後を振り向いて、凄い高い買い物をしたのだなと、漸く実感した。

 衝動買いをしてしまった気まずさを容易に凌駕する満足感が、間違いなくあった。

 

「あ、でも。もうちょっと雰囲気ある感じもほしいなー」

「……そこで安売りしきらない辺り、立派だと思うわ」

「この後たいへんなんだから、それくらいの役得があっても良いじゃない……って、わぁ」

「ん? ―――おお」

 

 いつの間にか、空海の雲の中を突き抜けていた。

 地上の空に、戻ってきたのだ。

 空からは、光の粒子が降り注いでいる。

 守護の力の宿った、幻想的な光の粒が、地上界を祝福するように、淡く照らしていた。

 

「星祭の影響が、地上にまで届いてるのか」

「巫女様とミルヒオーレ姫様の歌、凄い素敵だったもんね……きれい」

 

 呟く女に、綺麗なのはキミの方だと言いたい衝動にかられた。

「ふぇっ!?」

 凄い勢いで首が向いてきた。

 それだけで、実際に口に出していたのだと、シガレットは気づいた。

 視線が絡む。至近で瞳を覗き込める距離。潤んでいたのか、光の粒が反射してそうみえているだけなのか。

 

「俺と結婚してくれ」

 

 言ってそのまま引き寄せた。

 強引に。返事は全く、微塵も聞きたくなかったからだ。

 そのまま口を塞ぐ。はたして、抵抗は、無かった。

 はい、という風に唇が動いたような気もするし、そうでもないような気もする。

 只の気のせい―――ではなく、勝手にそうだったのだと、思うことにした。

 

 魔物を退治し。

 土地神が大地を祝福する、その片隅で愛を交わす。

 シチュエーション的にそれは。

 春先にあったそれと、太陽の位置以外は、ほぼ一致していた。

 

 そのことには誰だって気づく。

 そのことを()どう(・・)思うのかに関しては―――さて。

 

 ―――甲斐性みせてよ。

 ―――努力はするよ。

 

 つまりは、そういうことである。

 

 

 

 

 

 完

 

 

 

 




 と、言うわけで。
 ダラダラと中断期間をはさみつつ、このSSもまた最終回です。
 えーっと、三度目?
 再開したときは、どーせ『何も起こりませんでした』エンドになるんだろうなーと思ってたんですが、意外とそれなりに話が出来てたような、そーでもないような。
 どうしてこうなった。
 いや、八割方お見合い回の対処どうしようかって頭をひねってしまったせいなんですが。
 あと、アリアか。
 アレのせいで三馬鹿が公式フリーになっちゃったからなー。
 にしても、こういう展開にするなら嫁が孕んでるって言う設定は明らかにいらんかったね。
 まぁ、ライブ感()がルールのSSなんで仕方ないんですが。

 兎角、四期を待ちながら。
 一先ずここまで、お付き合いのほど、どうもありがとうございました。

 2015年 6月22日 中西矢塚




 
 



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