ビスコッティ共和国興亡記・HA Edition   作:中西 矢塚

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 ◆◇◆

 

 

「渡りはまぁ、土地神の亜種みたいなものでね。その名の通り、土地から土地へ、フロニャの力の流れに乗って旅をする神様なんだ。土地に住まい土地を守るのが土地神なら、土地を流れ力の循環の健全を維持するのが、こいつ等の役割かな」

 

 テーブルの上でぴこぴこと跳ねる、白い生き物。

 なりは小さくユニークでも、これでどうも、神様らしい。

 

「……随分、可愛らしい神様だね」

「ま、こいつ等は力の弱い方の連中だから。もっとでかいのとか凄いのとか、人里離れた僻地へ潜れば色々居るよ」

 今度、探しに行くかい? 

 そう尋ねるシガレットに、ナナミは一瞬興味を引かれたが、今はいいと首を横に振る。

「うん、シガレットがやっぱり何かフツーじゃないことだけは解ったから、それよりホラ、結局魔物の方はどうするのか考えようよ」

 私、行けるなら行きたいと、ナナミは周囲に向かってアピールする。

「それでこそ、我が勇者」

 その意気や由と、大いに頷くガレットの領主。

 そして、彼女は婚約者へと視線を送った。

 シガレットは頷き、口を開く。

「それほどたいした問題じゃないみたいだね。少なくとも、積極的に人に害を齎したいって魔物じゃないらしい。―――ああ、いや。目的の過程で結局人に迷惑をかけてるのは勿論なんだけど」

 その辺の自覚の程は不明だと、シガレットは渡り神にクッキーの欠片を渡しながら言った。

「それ、ひょっとしてその子が教えてくれたの?」

「まーね。土地で異常が発生してたらその土地の神様に聞くのが一番だし……とは言え、一々土地神を見つけに行くのもアレだから。こいつ等なら、呼べば飛んでくるし」

「勘違いするなよナナミ。ンな事出来るのその馬鹿だけだからな」

「そもそも、普通の人には土地を行き来する渡り神は、存在が虚ろ過ぎて、見ることすら出来ませんから」

 声を聞くなど到底無理だと、ガウルの言葉にビオレまで頷く。

 結構簡単なんだけどなぁ、とシガレットは不貞腐れた声で呟いた。

 一応彼は彼で、自分の非常識を気にしているらしい。

「まぁ、ともかく。こいつ等が好きに飛び回っていられるんだから、フロニャの加護が減少しかけているとか、そういう致命的な話では無いって事だよ。野生のウサギが誤って人里に紛れ込んだとか、その程度の物じゃないかな」

 レオンミシェリはなるほどと言った後で、今度はビオレに視線を送る。

 ビオレは一礼して、手元の資料を開いた。

「既に被害件数は十五件を超えていますが、そのいずれも、けが人は出ていません―――怪我をする間も無く、一撃でけものだまになってしまったとも言いますが……ともかく。被害内容に関してですが、先に述べたとおり、その全てが衣服を剥ぎ取られ路上に放置されたという内容です」

「名付けてオイハギウサギと言ったところか……」

「ただ、数が居るみたいだね。或いは、群れの主が何かの拍子に人間の服に興味を持って、住処を離れて町に狩に来たのかも」 

「手下を引き連れて、か。獲物が人間そのものでなかったことに、先ずは安堵するべきか……」

「ですが、こうも立て続けに事件が続けば、町民達の不安も高まります」

「丁度この間までビスコッティと戦やってたからな。町の警備の連中からも、腕に覚えのある奴を引っこ抜いてたし。数が居るなら、遅れをとっても仕方ねぇか」

「お前なぁ、人手を抜くなら、その穴埋めを確り考えておけとあれほど……まぁ、今更言っても仕方ないか」

 前回の戦興行の運営を主導したガウルをジト目で睨んだ後で、シガレットはこの場の最高責任者に視線を向ける。

「それでレオンミシェリ。どうしますか?」

「フム……」

 口元に手をやり考えるレオンミシェリ。

 

 すばしっこく、数の多い魔物の群れ。

 人が怪我をするなどという大事には至っていない。

 しかし、町の警備隊では始末に終えない程度には、強いようだ。

 

「なんなら、俺様が……」

「待て、ガウル。それならいっそ、ワシ自ら」

「お二人とも」

 率先して現場に赴こうとする領主姉弟を、目付け役のビオレが嗜める。

「領主御自らが易々と現場に赴けば、それを大事と捉えて、返って民は不安に思いますでしょう。それに、本日はミルヒオーレ姫様のご来訪を予定しておりますれば、出迎えに領主不在と言う訳にはまいりません」

「む……」

「うむぅ……」

 ご自重くださいとの言葉に、反論が見つからず口ごもる二人。

 ビオレはそんな二人の態度に嘆息しつつ、シガレットに顔を向けた。

 シガレットは当然、その視線の意味を理解していたが、いや、と首を横に振る。

「ビオレさんもご存知でしょうが、オレはオレで、人を待っているんですが」

「あれ? 今日ってシンクたち以外にもお客さんが来るの?」

 シガレットの言葉に目を瞬かせるナナミ。

 ビスコッティで生活しているシンクとミルヒオーレが、このヴァンネットにやって来るという話は既に知っていたが、それ以外に来客があるという話しは、彼女は知らなかった。

「まぁ、オレの私的なお客人だけど」

「正確には、コヤツとワシの、じゃがの」

「更に正確に言うなら、ガレット領主家の、となります」

 端的に答えるシガレットを、レオンミシェリとビオレが補足する。

 シガレットは嘆息しつつ続けた。

「そー言ってくれるなら、準備手伝ってくれればよかったのに―――って、まぁその辺の愚痴は兎も角だ。オレは元々その人に会うために、こっちに来てたんだよね」

 尤も、どうやらその人物の到着が予定の日時より遅れているらしいから、実は今日のミルヒオーレたちの来訪に合わせてヴァンネットに向かっていても、問題が無かったようだが。

「それなのですが、アッシュ様」

「はい?」

「町中への魔物の発生と言う現状を鑑みまして、あの方のお立場を考慮すれば、自ずと……」

「……ああ」

 居住まい正したビオレの言葉に、シガレットはぽん、と手を打って納得の態度を示す。

「そうか。所用で少し遅れるって話しだったものね」

「はい。ならば、恐らく」

「行けば居るか。うん、そりゃ居るよ。兄妹揃って、ソレが仕事だものね」

 うんうんと、シガレットは頷く。

 そして。

 

「じゃあオレが、お客さんをお迎えに行くついでに、魔物退治もしてくるよ」 

 

 シガレットの宣言に、私も行きたいと、ナナミが手を上げた。

 

 

 ◆◇◆

 

 

「そういえば、シガレットのお客さんって、どんな人?」

 

 アヤセの町の、東方風―――地球人的に見れば、十七世紀の日本風―――の茶店にて、それぞれに見回った町中の様子についての報告が粗方終わったあたりで、ナナミは、思い出したように尋ねた。

 婦女子を―――つまり、魔物退治に同行してきたナナミ、ジョーヌ、ベールを囮にして、追剥の魔物をおびき出そうと言う意見に最後まで異を唱え、最後は不貞腐れて餡蜜の白玉をパクついていたシガレットは、ああ、と一つ頷き、

「腕の良い刀鍛冶の人」

 そう、答えるのだった。

「なに、アニキ。遂に武器とか持つの?」

 カキ氷を掻きこんで額を押さえて呻いていたジョーヌが、興味深げに尋ねる。

「いや、違う。婚礼の儀で使う用のヤツをさ」

 頼んでおいたんだと、シガレットは苦笑して答える。

「ああ、土地神様に奉納するための……」

「宝刀ですね。刀鍛冶のイスカ・マキシマ様より、先ごろ仕上がったとの報が入りましたので、その検分のためにアッシュ様をお呼び立てしました」

 ベールが納得し、ビオレが補足する。

「宝刀を、奉納……こっちの結婚式って、そういうことするんだ?」

 イメージが沸かないと首を捻るナナミに、シガレット微苦笑した。

「まぁ、自分で言うのもアレだけど、エライ人の結婚式だからね、オレとレオンミシェリのそれは。自国の民は当然、周辺国のお偉方にも、そして、土地を守護する神様達にだって、きちんと結婚の報告はしなくちゃ、なのさ」

「へぇ~……」

「領主直轄の聖域の奥に住まう、領国の土地神様たちを束ねる、尤も巨大で強大な力を有する土地神に、今後二人で力を合わせて国を……土地の平和を守り、今よりもっと豊かにするために頑張りますと、その誓いの証として、無垢の宝剣を捧げるんです」

 土地神を束ねる土地神。

 その偉大であろう姿に思いを馳せてか、ビオレが視線を遠くに向ける。

「……無垢?」

「ん? ああ、正確に言えば、注文した宝剣ってのは、『宝剣の元となる剣』なんだよ」

 知らない単語が増えたと目を丸くするナナミに、シガレットが簡潔に告げた。

「正なる器物には正なる力が宿る、ってね。長い時を掛けて土地神の力が奉納した刀に宿れば、それは晴れて本物の力のある宝剣となる」

「それって、エクスマキナみたいなのが出来るってこと?」

「まぁ、大体そんな感じかな。と言っても、ソレとかパラディオンとかは、ちょっと術具的な方向性が強いんだけど」

 予め、より具体的な形状が極まっている魔戦斧グランヴェールの方が、モノとしては近い。

 刀の形で打たれた物であるから、当然、普段の形状は刀の形を維持し続けるのだ。

 エクスマキナに代表される勇者の剣のように、輝力を自在な形に武装化させるための紋章術補助器とは、また少し、違うのである。

 無論、フロニャの力が多分に詰まっている宝剣であるから、持ち主の輝力が合わされば、その形状は自在であろうが。

「ま、そのうち生まれる子供か、孫か、ずっと先の子孫か……。俺らの頑張りを認めてくれたなら、将来の子孫達のために貴方達土地神の力を貸してあげてくださいねって、そういう約束のために必要な物なんだよ」

「あ、そのうち返してもらうんだね」

「そこで暮らす人間の側が土地を守る努力をするってのは、回りまわって土地神たちの生活の場をを保護することに繋がるから」

 ギブアンドテイクの関係だと、シガレットはナナミに首肯する。

「う~ん、なんていうか、凄くふぁんたじぃな感じだ」

 ベッキーとか好きそうな話しだなぁと、遠くパスティヤージュに居る筈の幼馴染の姿を思い浮かべながら、ナナミは感嘆の息を漏らした。

「因みに刀鍛冶のイスカ様は、同時に優れた退魔剣の使い手でもいらっしゃる。魔物騒ぎが近場で起こったなら、必ず現場に現れるんじゃないか、とね」

「だから、シガレットが来たんだ」

「多分、囮作戦をやってたら、途中で合流することになるんじゃないかなぁ。―――ああ、そうだ」

 思い出したように、冗談めかして。

 

「魔物に間違えて攻撃したりしないようにね」

 

 話の締めに、シガレットはおどけた口調で、そう言った。

 

 

 ◆◇◆

 

 

「すいません、ウチの勇者他二名が大変なご迷惑を……」

「ははは、構わないさ。とても元気の良いお嬢さん方だったが、いや、流石に、勇者殿とは思わなかったけどね」

「ほんっと、すいませんでした……」

 背後で正座する女子三名とともに、もう一度、シガレットは頭を下げた。

 構わんよ、と頭を下げられた人物は風雅に笑う。

 柳眉の整った、爽やかな美男だった。

 名を、イスカ・マキシマと言う。

 流しの―――稀代の―――刀鍛冶にして、一流の退魔師。

 この魔物騒動を聞きつけて、ヴァンネットへの旅路を一時曲げ、アヤセの町へと足を向けたらしい。

 

 その魔物騒動に関しては、既に片が付いている。

 

 ウサギが化生した魔物が、小型が十、大型が一の計十一体。

 既に滞りなく捕獲されている。

 後日それらは、本来の住処である森の置くへ放されることだろう。

 事件解決へ向けた過程の内に、ジョーヌとベールが何時もどおり(・・・・・・)服を剥かれたり、通りすがりの獅子王侍と犬姫侍が煙幕とスポットライトの中から登場したりと、色々と突っ込みどころの多い事件が起こった気もするが―――それはそれで、割りと何時もどおりの話しなので、割愛する。

 兎角、今はもう、魔物騒動の解決を祝っての、内々の宴会の場。

 東方風のアヤセの流儀に沿って、和座敷に円座を並べて、各々気楽な姿勢で互いの健闘を祝いあう時間だった。

 

 そして、襖一枚を隔てた小さな座敷に、シガレットたち、目付け役のビオレを除いた、本来の対魔物実働部隊たちは居た。

 

「ぅう……誤認逮捕は失敗だったなぁ」

「いやま、アレだけ人となりを伝えておきながら、人相に関しては全く伝え忘れてたオレも悪かったわ。夜中に太刀帯びた不審者が歩いてたら、フツーに間違えても仕方ない」

 凹むナナミに、シガレットは慰めの言葉を掛ける。

「不審とは言うね、シガレット」

「一応、わが国は一般市民の帯刀は認可制なんですけどね」

 苦笑するイスカに、シガレットも微苦笑交じりにやり返す。

 現実、帯刀の許認可制度は、ほぼあってな気が如しなのだ。

 市外ならまだしも、山村や人里はなれた街道などを進むために、市民が独自に武装するのはむしろ当然である。

 よほどの不審者でもなければ、たとえ街中で武器を所持していても見逃されているのが現状だ。

「ま、その辺の法制度の不備は兎も角―――、お前等、イスカ殿と初対面だったっけ? ガウルは会ったことある筈だけど」

 ガウルの親衛隊であるジョーヌとベールが知らないと言うのは、どういうことなのか。

「お名前は、勿論、知っとったんやけど……」

 生憎、顔を見たことはと続けるジョーヌの横で、ベールが指を頬に当てて言った。

「と言うか、その時に殿下の護衛役って名目で一緒に居たの、多分、シガレット君だったんじゃじゃないの?」

「ああ……」

 そういえば。

 ベールの言葉に、シガレットは思い出したと頷いた。

「昔はそうだな、アイツのお守りが主な仕事だった気がする」

「いよ! 親衛隊長ー!」

「あの頃、書類仕事とからくちんだったよね~」

「そりゃ、オレが全部やってたからな。お前等のはおろか、ゴドウィン先生とかの分まで、纏めて」

 シガレットは、今やガレットの内政官の頂点ともいうべき立場に、何故か(・・・)居たが、当初からそうだった訳ではない。

 初めは、ガウルの遊び相手のような立ち居地でヴァンネットの王城に出入りしていて、そのうち、いつの間にか親衛隊の一員、そのまとめ役……と言う様に、徐々にその立場を変遷させていったのである。

「冷静に考えれば、あの頃のオレって、ビスコッティのガレット駐在武官に過ぎなかった筈なんだけどなあ。なんで外来のお客様との対面の場で護衛役とか勤めてたんだろう」

「それ、今更突っ込むの?」

「と言うか確か、大抵の場合はアニキが率先して『客人との対面はオレがする』とか言うとったよな」

「いやだって、お前等って何か、想像もつかない粗相をしそうで不安じゃないか……」

「あ、自分のこと棚にあげたなぁ。何かやらかす事にかけては、シガレット君もぜんっぜん負けてないと思うけど」

「アニキ、ガウ様には人前でも容赦せんもんなぁ」

 言い合う昔なじみ達の脇から、ナナミがイスカに訪ねた。

「―――因みに、イスカさんとお会いした時はどんな感じだったんですか?」

「どう、というと、ガウル殿下とシガレットの様子かい? そうだね、たしか……そう。シガレットが、ガウル殿下の頭をテーブルに叩きつけていたね」

 お陰でテーブルが割れていたよ、とイスカ懐かしそうに言う。

 ナナミは額に手を当て呻いた。

「それ、いかにもキミがやりそうだけど、お客さんの前でそれはどうなの……?」

「いやホラ、だって。イスカ殿が腕の立つ剣客だって聞いた途端、あのアホが喧嘩吹っかけようとするもんだから、思わず、ね?」

 ジト目を送られれば、苦しい言い訳をせざるを得ない。

 その姿を見て、イスカは爽やかに笑った。

 

「ハハハ。いやしかし、あの傍若無人な態度を見て、俺は実感したよ。ああ、この子はまさしく(・・・・・・・・)マギーの子供(・・・・・・)だってね」

 

「はい?」

 瞬きするシガレット。

 過去を懐かしむイスカの言葉に、何か、聞き捨てなら無い単語が混じっていた気がするのだ。

「マギーって……」

「ひょっとして、マギーおばさんの事?」

 ベールとジョーヌも、不思議そうな顔をしている。

 事情が解らないナナミが首を捻る。

「誰?」

「マギー……マーガレット・ココット。一応、オレ母上様、なんだけど……」

 

 なんだけど。

 何故、このタイミングで予想外の人物の口から、その名前が出てくるのか。 

 

「あのお転婆が結婚して子供を生んだというだけでも驚きだったが、今度はその子の結婚式とはね。―――長く生きていると、次々に予想外の事が起きる。あいつ等が聞いたら、何と言うかな」

 しかし、場に戸惑いを齎した人物は、昔を懐かしむながら、極自然な口調で、親しみを込めて語るのみだ。

 イスカにとっては、聞かなければ疑問とすら思われないだろう、それは当然の事実のようだった。

 だから、シガレットは勇気を出して尋ねた。

「あの、ウチの母上様と、イスカ殿はお知り合いで……?」

「ん?」

 尋ねれられて漸く、イスカはシガレットたちの戸惑いに気付いたらしい。

「ひょっとして、彼女から何も聞いていないのかい、キミは」

「いや、聞くも何も、何を聞けと……」

「ああ、そこからになるか」

 更に戸惑いを深めるシガレットに、イスカは頷く。微苦笑をしながら。

「何一つ話していないと言うのは、いかにもアイツらしい。恐らく理由なんて無くて、きっと面倒だからとか、その程度の話なのだろうが……」

「あ、今の言い草で、すっげーウチの母と知り合いなんだって実感できました。ウチの母上様の事を、本当に良くご存知なようで」

「ははは、まぁね。前に会いに行った時に、新婚生活を邪魔されたくないからしばらく来るなと言われて以来、もう随分会っていなかった訳だが―――そうか。うん、まぁいかにも彼女らしい」

 

 ―――百年も前から(・・・・・・)、相変わらずのお転婆だ事で

 

「ひゃく……? は?」

「しかし、いい加減もう、結婚して子供まで生んで、母親になったっていうんだから、そろそろ落ち着きが出てきてもいいと思っていたのだが。もう直ぐ息子が結婚しようって時になっても、往時のお転婆そのままとは恐れ入る。―――本当に筋金入りだ、あの鉄拳の巫女は」

「鉄拳って、何か物騒な……って、いやいやいやいや、ちょっと待った。よりにもよってアンタみたいな人が、いかにも昔なじみみたいな口調で人の母上様のことを語らんで下さいよ!」

 慌てて口を挟むシガレット。

 彼は、イスカという人物が一体どのような経歴を―――いや、どのような人生(・・)を送ってきたか、ある程度の知識を有していた。

 見かけ、年若い二枚目の色男であるこの男が、実は百年以上の長い時間をいき続けていると言う事を。

 シガレットは理解していた。

 故に、その男の昔の馴染みの人間など、いや勿論、既に彼は薄々理解している。

 既に認めがたい事実は、イスカの口から放たれているのだから。

 そして。

「昔馴染み、と言うか」

 

 駄目押しの一言が。

 

「そもそも、俺やヒナとは古い仲間だからね。彼女、キミの母親のマルグリット・ガレット・コ・コアは」

 

 放たれた。

 

 

 

 





 Q: そんな設定初耳です

 A: 私(作者)もです

 原作の後付け(かどうかは知らんけど)設定には、こちらも後付けで対応するっ……!!

 ―――いや、うん。
 そろそろ新しい箔付けが欲しいなぁ、とかそういうんじゃなくて、取っ掛かりの一つでもないと、絡まないまま終わるよなぁ、と言う判断です。
 しかし、前期のラストあたりに勝るとも劣らない、凄まじいオレ設定度になったなぁ、今回……。

 何時もの事といえばそれまでだけど!



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