転生?チート?勘弁してくれ……   作:2Pカラー

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54.内政チート

 

 オッス。おらクー。おめーら元気にしてたか?

 最近十五になりました。なんだか無性に盗んだホースで走り出したい気分です。

 最近はオルレアンの統治も軌道に乗り初めまして、そろそろ一人前と認めてもらってもいいような気もします。といっても大したことはしてないんですけどね。

 そもそもシャルル兄の継承式典用に街道やら街並みやら綺麗にしてからそう経ってないわけで、定期的に配下のメイジに固定化さえかけさせておけばそれだけで『ガリアの誇る水の都』は維持できるわけです。

 あー、水の都ですか。まぁ、なんですね。そんな感じに呼ばれてます。我がオルレアン。

 ま、察しはつくとは思いますが水の精霊サマのお蔭ってやつですわ。

 元々は無限に分裂できる上に何故か俺を気に入ってくれている水の精霊サマが頑張ってくれれば、治安維持や他国からのエージェント(笑)に対して有効なんじゃないかと思ってだったんですけどね。そのために街中に水道引いたりしてたんですが、やってるうちにちょっとノってきちゃいまして、噴水だのなんだの作りまくっちまったわけですわ。

 元々景勝地として名高いラグドリアン湖があるオルレアンでしたが、一気にハルケギニア最大の観光名所に成りあがりました。つか観光事業で年間何万エキュー(あれ? 桁が一つか二つ違うかも。ま、いっか)も稼いでるとか、ハルケギニアでもウチくらいです。

 で、そんなこんなしているうちに人も増えまして。景気が良い→平民が増える→経済が活性化する→税収が増える→使い道ないしリュティスを習って公共事業でもやるか→平民増える→以下ループ、とそんな感じに王家直轄領だったころに比べて人の数が数倍になったりしました。ま、税率が低かったり亜人討伐にMy軍団が精力的だったりすることも、平民が流入してくることの一因かもしれませんが。

 連鎖的に隣領で交流もあるモンモランシ領が潤ったりもしてますが、まぁその辺は割愛ということで。

 

 で、ハルケギニアってのはある意味ワンパターンなんですかね。何らかの形で目立つと厄介事がやって来るってのはテンプレなのかもしれません。

 ま、今回のは死亡フラグとは無縁っぽいのでどっちかというと『面倒事』というべきかもしれませんが。

 いきなり呼びつけられましたよ。兄ズに。

 マチルダさんとティファニアと、それと数名の護衛を伴ってリュティスに来とります。ま、彼女たちはイザベラやシャルロットやジョゼットと遊びに来たようなものですが。

 ……唯一気がかりなのは最近マチルダさんとシェフィールドが仲が良いっぽいところなんですが……どうか毒されませんように。

 閑話休題ってことで。さて、髭共の『面倒事』に脳みそ使うことにしますかね。

 

「はぁ。ま、なんとなく理解したよ。つまり、『平民が潤いすぎている』ってのが問題なわけだ」

 

 相対してるのはシャルル兄とジョゼフ兄。

 ちなみに王位についているシャルル兄だけど、他の臣民がいない時なんかは普通に接しろと言われてる。本人も『兄弟』として会うときにはあえて王冠を脱いでたりするしね。なので敬語はナシです。

 

「問題、というには語弊があるけどね。平民もガリアの財産だ。彼らなくして国は語れない」

 

「是非ともアホ貴族に聞かせてやりたい言葉だねぇ。ま、そんなアホ貴族の旅行先として潤ってるオルレアン(ウチ)としては大きく出れないところもあるんだけど」

 

 ちなみに俺がリュティスに呼ばれたのは『相談があるから』ということだった。

 相談事は先述した通り平民が裕福になりすぎているということ。ま、パッと見なんでそれが不味いのか分かりにくいことではあるんだけどね。裕福な人間が増えるということは『前世』の価値基準で判断すれば『良い事』に他ならないし。

 では何故『平民が富むこと』が不味いのか。まず思い浮かぶことといえば、

 

「貧乏貴族が僻んでるとか?」

 

 ガリアは広大だ。中には傘張り浪人の如く食い詰めている貴族だっている。大抵は無茶な増税を課したりして民を苦しめ、結果経済を停滞させるといった悪循環をスタートさせたバカなんで、同情の余地もないんだけど。

 

「そちらは兄さんが抑えたよ」

 

「ああ。リュティスで過去何を行ったか公開してやった。自国の人間に隠しておいて得になる話でもないしな。もっとも『助言者』として俺の子飼いをその都度派遣しているが」

 

 あらぁ。何気にえげつないことを。

 つまり『どうすれば景気が良くなるか』を教える代わりに部下を潜り込ませてる訳か。景気が良くなったからと言ってアホなこと考えれば即座に宰相に情報が行くとか。ま、平穏が維持されるというなら反対することはないんだけど。

 

「ということは職にあぶれた他所の平民がリュティスの『豊かな平民』を襲ってるとかいう話でもないわけだ」

 

「そうだね。不景気に苦しむ領の貴族には、まず平民から無用の搾取をしないということを徹底させるから。自分たちの扱いの良くなった故郷を捨ててまで追われる立場になろうとするものは少ないよ」

 

「なのにリュティスの治安は悪化している、と?」

 

 それも豊かになった平民のせいで。

 

「そこまで目くじらを立てるほどのものではないがな。ま、放っておくわけにもいかないが」

 

「何故だかわかるかい? セタンタ」

 

 おいおい。何いきなり先生モードになってるわけ?

 ま、解答に悩むほどの問題でもないけど。

 平民ってのは搾取されてきた立場の人間だ。税を納めるために働き、御上に取られなかった余剰分で生活してきた者たち。

 そんな連中が税収が下げられ好景気の恩恵を受ければどうなるか。オルレアンでも頭痛の種だった。

 ぶっちゃけて言えば、平民の中から成金が出てきてるってこと。しかも彼らは教育なんて受けてない。

 その日その日をどうやって生きていくかしか考えてなかった人間が、何年も先のことなんて考えられるはずもない。

 故に調子に乗る。調子に乗って、

 

「ギャンブルにでも手を出してるんでしょ。突然金を手に入れて、でも贅沢の仕方が分からない。財布に金を詰めて酒場にでも繰り出す平民。いいカモだ。多少おだてて賭場に連れ込めば、初めてのギャンブルに勝手に脳を痺れさせてくれる」

 

「「正解(だ)」」

 

 オルレアンでも困ってるんだよ。ギャンブルってのは。

 全体が富むのは文句などない。多少の贅沢は金の流れをよくして景気を活性化させてくれる。

 でもギャンブルは違う。金は回るのではなく、胴元という一か所に流れ込む。

 それは搾取する側が領主から別の人間に変わっただけ。害でしかない。

 はぁ。娯楽が無さすぎるんだよなぁ。ハルケギニアは。

 貴族でさえ『遊び』を知らない。せいぜいが遠乗りくらいだ。

 ま、原作のモット伯みたいな『遊び』に平民たちにハマられるというのもそれはそれで困るんだけど。

 さて、どうしたもんかねぇ。

 


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