転生?チート?勘弁してくれ……   作:2Pカラー

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51.ジョゼットちゃんガンバル!

 

 ジョゼットちゃんにジョゼフ兄が虚無であるかもしれない云々という話を聞かれてしまったが、まぁ取りようによっては悪い話というのでもないのかもしれないね。

 シェフィールドさんの話も終わり、用意されていたワインを口にしながら、現状のマイナスとプラスを考え、俺は結論としてそう思った。

 なんせジョゼットちゃんはシェフィールドさんの額のルーンを見てしまっている。

 その上シェフィールドさんは自己紹介で『ジョゼフの使い魔』であるとまで言っているのだ。

 今後のジョゼットちゃん次第だが、貴族の子女として生きるというのなら魔法についても学ぶことになるだろう。

 当然使い魔の召喚をジョゼットちゃん本人がすることになる可能性も高い。

 その時に人間が使い魔として召喚されることが普通ではないということには気づかれる可能性も高くなり……。

 要するにジョゼットちゃんにシェフィールドさんの存在を隠すよう言い含めることは必要事項だったわけだ。

 となれば、今話題に出た『ジョゼフ兄が虚無だと知られれば大変なことになる』という情報は、ジョゼットちゃんを口止めする際説得力を増してくれるだろう。なにせそれがバレれば内乱が起こるとまで言っちまったし。

 まさかジョゼットちゃんが戦争LOVEな大隊指揮官殿のような性癖は持ってないだろうしね。

 

「一応言っておくけど、今の話は他言無用ね。ジョゼット」

 

「は、はい! わかりました!」

 

 そういってジョゼットちゃんはコクコクと高速で首を縦に振る。

 ……別に威圧感を出してるわけでもないんだからそう緊張しなくてもいいのにな。

 

 さて、と。

 それじゃ話を戻しますかね。

 シェフィールドさんの話は終わったし、次はジョゼットちゃんのことについてだね。

 まぁなんとなくはわかるよ。ジョゼフ兄が何故俺にジョゼットちゃんのことを説明したのかはね。

 そりゃ自分の考えだけでジョゼットちゃんの処遇を決めたりせず、第三者の意見も聞きたかったというのもあるだろう。

 そのとき話し相手として候補に挙がるのは腹を割って話せる相手であり、かつ、王家を裏切る可能性など皆無な人間、すなわち俺くらいしかいないということもあるだろう。

 でも、やっぱり……。

 はぁ。どういう話になるかは予想できちゃうんだよなぁ。

 

「じゃ、本題に戻ろうか」

 

「そうだな。もともとジョゼットのことを話したくてセタンタには残ってもらったのだからな」

 

 そうなんだよなぁ。

 マチルダさんとリュティスでも見て回りたかったのに。

 

「シャルル兄のもとに返すわけにはいかないよねぇ」

 

「そうだな。王とは言ってみれば貴族のあり方を示す生きた象徴だ。たとえ双子を認めないのが法ではなく風習だといったとしても、それを破っていると知られるわけにはいかない」

 

「双子を認めない風習、か。そいつ自体をつぶすことは?」

 

「容易ではないな。かつてガリアは王家に双子が生まれたがゆえに二つに割れて争った。かの風習はその名残だ」

 

「王家の紋章が二つの杖の交差する様になっているのもその名残だものねぇ。王家を示す紋章を変えるレベルのオオシゴトってわけだ」

 

 となるとジョゼットちゃんをシャルル一家に戻すってのは難しいだろう。

 ジョゼットちゃん本人の意思もあるだろうしねぇ。

 言ってみれば彼女はシャルル兄夫妻に捨てられた人間だ。

 シャルル兄たちは選んだのだ。ジョゼットではなくシャルロットを残すと。

 その親の元にジョゼットちゃん自身が戻りたいかと尋ねれば……答えは聞きたくないねぇ。どちらの答えが返ってくるにせよ、ねぇ。

 

「まったく。アルビオンでも散々思ったことだけど、王家の人間ってのは正直過ぎるよなぁ。小細工ってのをもうチョイ考えてくれてもいいのに」

 

 やりようなんていくらでもあっただろうに。

 確かに青い髪ってのは王家とのつながりを示す。しかし『王家の正式な子供』であることを示しているわけじゃあない。

 俺のように妾との子供だって青い髪は現れる。

 ならシャルル兄の妾の子供として公表しちゃえばよかったんだ。シャルル兄は妾なんてとりそうにもないけどさ。

 あるいはジョゼットの存在を一年遅く公表するとかさ。シャルル家の第二子として。

 成長の遅い第一子と、成長の早い第二子。あり得ない話じゃないだろう。世の中には姉妹に見える母娘だっているのだから、双子に見える姉妹がいたっていいだろう。

 シャルル兄は人望があったんだ。わざわざ『シャルルは子供が双子であったことを隠しているのだ』なんて不敬な疑惑を声高に叫ぶバカも出ないだろうに。

 そもそもジョゼットちゃんの存在は兄弟である俺たちにすら隠されてきていた。

 双子が生まれたから王家の風習にのっとって片方を『いなかったことに』した、なんて法を順守しているぞアピールをしたかったわけでもないのだろう。ならばなおさらジョゼットちゃんを助ける道を模索するべきだっただろうに。

 

「そういうな。全ては過去のことだ」

 

「そうだね。考えるべきはこれからのこと、か」

 

 まぁ当時のシャルル兄は王位に執心だったからね。

 万一にもジョゼフ派に付け込まれる隙を作りたくなかったんだろうなってのはわかるけどさ。

 

「といっても選択肢なんて二つしかないんだろうけど」

 

「ふむ。そうだな。事情を知らないものに預けるわけにもいかないだろう」

 

 となればジョゼフ兄か俺か。どちらかがジョゼットちゃんを引き取ることになるだろうね。

 シャルル兄との関係性を第三者に悟らさないために青い髪こそフェイスチェンジなりで隠す必要はあるだろうが、それでもなるべくなら不自由なく生きてもらいたい。

 

「加えるならば、リュティスにジョゼットを居させるのは避けたいというところだな」

 

 やっぱりそう来ますか。

 まぁ理屈の上ではそっちに分があるだろうけどね。

 

「そうなるか。シャルル兄と鉢合わせる可能性も高いしね」

 

「シャルルにはいずれ説明するつもりではあるが、な」

 

 捨てられた側と捨てた側。顔を合わせづらいことだろう。

 それによってシャルル兄の行動が乱れれば、勘ぐってくるやつも出かねないしね。

 

「俺としてはオルレアンにてジョゼットには生活してもらいたいと思っている。リュティスに居させるよりも安全だろうし、ラグドリアン湖があるオルレアンならば休暇の名目でシャルルらも足を運びやすいだろうからな」

 

 ……はぁ。

 ま、いいさ。ここまで来たらジョゼットちゃんも面倒見ますわ。

 もともとティファニアのために余所からの目には警戒する予定だったしね。ジョゼットちゃんのことも隠し通せるでしょう。

 マチルダさんとの愛の巣(予定)に人が増えるのは歓迎できないけど、ティファニアの遊び相手になってくれれば邪魔され率も減るかもしれないし。

 まぁそのことを受け入れた一番の理由は、俺とジョゼフ兄とでジョゼットを押し付けあうみたいな嫌な議論をジョゼット本人に見せたくなかったってのがあるんだけどさ。

 

「わかっ「あ、あの!」」

 

 と、腹を決めたところで当のジョゼットちゃんが口を挟んだ。

 見れば胸の前で両拳を握り、耳まで真っ赤にしているではありませんか。あらかわいい。

 

「私は、あのっ、ジョゼフ様と一緒にいたいです!」

 

 ……あらかわいいw

 ジョゼフ兄はといえばポカンと口を開けていた。あらかわ……いや、こっちはどうでもいいか。レア顔だけど。

 

「あっ、その、そのっ、恩返しがしたくて! 私を助けてくれたジョゼフ様に! そのっ、なのでここに置いてはもらえませんでございませんでしょうかです!」

 

「……使い魔だけじゃなく姪まで落とすとか。スゲェな兄貴。イザベラになんて説明するんだよ」

 

「ちょっと待て、セタンタ! 何を言っている!? ええい、ニヤニヤするな!」

 

 ウケケケケ。いや、ニヤニヤするっての。

 そういや原作でのジョゼットは乙女回路内蔵型美少女だったものね。

 つまり『このジョゼット』にとってジョゼフ兄は原作での『竜のお兄様』的ポジションになったってことだろう。

 牢獄のような修道院から救い出してくれた白馬の王子様(笑)。いや、王子様(髭)かw

 あー、楽しい。あのジョゼフ兄がオタオタしてやがる。

 ま、でもこれでジョゼットちゃんの処遇は決定だな。

 顔を真っ赤にしてまで告白まがいの発言をしてくれた可愛い姪っ子を悲しませるなんてナシだぜ?

 ジョゼットちゃんをリュティスに置くのはいろいろと大変だろうけど、ま、頑張ってくれ。そういう陰謀面はジョゼフ兄の得意分野なんだからね。

 

「……あの、駄目でしょうか?」

 

「い、いや、駄目なんかじゃないんだが。って、ええい、セタンタ! 何を笑ってるか!」

 

 ウケケケケケケケケケケケケケケケ!

 ジョゼットちゃんの応援もするともさ。シェフィールドさんと三人で面白可笑しくラブコメでも展開してくれ。

 そういうのは見ているのが一番楽しいからね。

 




というわけでジョゼットはジョゼフが面倒を見ることになりました
ジョゼットファンの方、ごめんなさい。ハーレム展開を希望していた方にもごめんなさい
・・・まぁジュリオに都合のいい女扱いされるよりは幸せになれるんじゃないでしょうかね?
シェフィールドさんは強敵だぞ。頑張れ、ジョゼットちゃん!


さて、これにて原作知識を利用しての先回り活動は終わりです
こっからどうしたものか


あー、ネギまの二次が書きたいにゃー

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