転生?チート?勘弁してくれ……   作:2Pカラー

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02.プロローグ2

 

「ふむ。なるほど。魔法の才能は要らない、と」

 

 しばらくじっと俺を見つめていた神さんがやっと口を開いた。

 ぶっちゃけ目を逸らしたいほど神さんの目つきが怖いんすけど、でも、ここで退くわけにはいかんのよ!

 

「わかりました」

 

 うっしゃーーーーー!!! さらば死亡フラグ!!!

 にしても生まれる前から死亡フラグを考えなきゃならないなんてなんて世界だよハルケギニア。

 

「ですが」

 

「はい?」

 

 え? 一件落着じゃなかったんスか?

 

「『ゼロの使い魔』において、『ゼロ』とは一種の特殊性を示すことになります。魔法の才能を失くすということは出来ますが、メイジの子供として生まれた場合」

 

「あー、完全に魔法が使えなくするわけにもいかないですか」

 

 メイジの子はメイジ。それがハルケギニアなのだろう。となればメイジの血を引くにも拘わらず魔法が完全に使えないというのはある意味異常。ルイズやジョゼフもそうだったが、彼女らの場合は『失敗』という形で魔法は発現していたし、何よりいずれ虚無へ至るのだ。コモンも系統も虚無も発現しない完全な『ゼロ』のメイジの子供。それは言ってしまえば完全なる異端。

 さすがにそれは勘弁だな。何より『系統魔法』が使えない貴族となってしまえば、ガリアやロマリアに虚無疑惑をかけられかねない。

 

「そうですね。じゃあ落ちこぼれ位にしといてください。コモンマジックはなんとか出来る。でも系統は必死に努力してもドットで失敗しまくる、とか、そんな感じで」

 

「わかりました。系統の希望はありますか?」

 

「ないです。どうせ使いませんし」

 

 ふぃー。やっと一段落か。なんとか希望が通ってホッとしたぜ。

 

「では、こちらで元より用意していた貴方のスペックに関しての説明は終わりました。最後に何か質問は?」

 

 ふむ。別に無いよな? 見た目を調整されて、体を丈夫にしてもらうだけなんだから。

 

「無いようですね。では次の話に入りましょう」

 

 そこで初めて神さんは表情を変えた。

 ニヤァ。そんな音を錯覚させるような笑みを顔に張り付け

 

「貴方が求めるつもりの『力』について教えていただきたい」

 

 ……やっべ。なんも考えてねえよ。

 

「魔法の才能を拒否し、落ちこぼれとなってなお、原作に介入し己の自由を貫き通す。『力』さえあればそれだけのことが可能だと貴方は考えているのでしょう? 是非ともその『力』の概要を説明していただきたい」

 

 クカカ、キキキと神さんが笑う。めっちゃコエェんですけど!!!

 なんで俺いじめられてんの? 口から出まかせで嘘ついたから? 神さんの厚意を無下に扱ったから怒られてんの?

 と、とにかくそれっぽいスーパーな『力』を言うしかない。ブリミル教に異端だと指さされず、魔法だとも思われず、それでいて強力で、万が一戦争に巻き込まれても生き残ることが出来、億が一エルフと出会っても殺される前に逃げ出せるような、……ああ!

 そうだ! そうだよ! 何も戦いに使える力だけが『力』じゃないじゃん! 要するに人を超えたチート能力が神さんの言う『力』なんだろ! なら

 

「こっ、コミュ力をくれ!」

 

 神さんの方は茫然としてるっぽいが、考えてみればこれ以上のズルい(チート)能力は無いんじゃないだろうか。ただしゃべくってるだけで異端だと言ってくる神官なんかいないだろうし、実際魔法じゃないし、戦争の士官の話だってのらりくらりとかわせるだろうし、エルフをも会話によって丸めこめる。おお! 考えれば考えるほどいけそうな気になってきた。ジョゼフだろうが教皇だろうが舌先三寸で丸めこめるというなら、まさに俺最強と言えるはず!

 

「……コミュ?」

 

「ああ! あっ、いや、はい。そうです。えっと、要するにコミュニケーションが得意になる能力というか」

 

「話術、あるいは詐術のようなものですか?」

 

「(詐術て。まぁそういうものかもしれないけど)ハイ」

 

「クッ、ハハハ」

 

 俺が会心のアイデアに内心震えていると、神さんの方も実に楽しそうに笑っていた。

 いや、鷲巣笑いなんかされるよりよっぽどいいんだけどさ。俺はというと状況の変化について行けず内心ビクつきながら問いかけた。

 

「そんな面白かったっすかね?」

 

「ん? ああ。そうだな。実に面白かったとも」

 

 なんて砕けた口調で笑いかけてくれた。

 

「いや、くれてやると言った才能を拒否したり、戦争のある世界に行くにも拘わらずまるで戦い向きで無い力を要求したり、お前は面白い。端的に言って気に入ったのさ」

 

 そう言って神さんは膝の上の資料をテーブルの上にぶちまけた。

 

「二千六百三十四人。今回のジジイ共の暇つぶしに巻き込まれたお前以外の人間の数だ。俺は二千六百三十四の世界を用意し、二千六百三十四通りの能力を与えた。どいつもこいつもつまらん人間だったよ。与えられる才能を歓迎し、強力無比な所謂『チート能力』を求めた。人間によっては暇つぶしのために殺されたという事実に激怒し俺に殴りかかって来る奴までいたな。仮にも神であるこの身を傷つけられると思っていた辺りは愉快な連中だったが。そんな奴らは拷問して『力』を選ばせた上で念入りに殺してから魂に恐怖を刻み付けたうえで送り出してやったけどな」

 

 ……せんせー。かみくんがはんこうきです。

 いや。いやいやいや。まじこええよ。二千六百人のお仲間がいたとかどうでもよくなる怖さだよ。

 

「その点お前は面白い。自分の死を受け入れたがらないやつは珍しくもないが、お前は一度認めてしまえば、そこからはほかの奴らとまるで違った。気に入ったのさ。お前の事がな」

 

「えと、ありがとうございます。それでコミュ力はいただけるんでしょうか?」

 

「ああ。くれてやるさ。そしてやっとお前は転生する準備が整ったわけだ、が」

 

 ……が?

 

「仕事でうんざりしていた俺の気分を晴らしてくれた礼だ。もう一つ、くれてやる」

 

 いや、もうお腹いっぱいなんですけど。戦場とは無縁でいたい以上戦い向きの能力なんていらないし、内政を能力チートでブーストして目立つのも避けたい。無難なものは何かないか? 

 

「そうだな。これは『力』でなくてもいいぞ。物だろうがなんだろうがかまわん。本物の太陽神の槍(ブリューナク)雷神の鎚(ミョルニル)でも用意しようか?」

 

 勘弁してくれ。やばい、早く何か思いつけ! 

 ウオォォォォォ! 唸れ俺の脳髄! 廻れよ知能! 輝け俺の二枚舌ァ!!

 あっ! あったぜオラァ!!

 

「な、ななな名前! 名前をください!!」

 

「クッ、カハハ。名前だと?」

 

「はい! ゼロ魔で生きていく体の名前を付けてください! 神様が名付け親ってのは御利益半端なさそうですし、なにより神さんに付けてもらいたいっす!」

 

「クハハハハハ! いいぜ。俺が名付け親になってやろう。お前の両親には神託にでもして告げてやるさ」

 

 ふぃー。俺、ファインプレーじゃね? 余計な『力』を貰うことなく神さんの不興を買うこともなく。しかも神さんも楽しそう。

 

「さて、俺からはもう何も言うことは無い。質問が無いのならこのまま送り出すことになるが、何かあるか?」

 

「いえ。平気っす」

 

 俺がそう言うと神さんはニヤリと笑ってパチンと指を鳴らした。

 スーッと、四肢の感覚が無くなっていく。なのに恐怖も何も湧かなかった。

 俺は消えかける口をなんとか動かし、一言だけ礼を口にして、そして完全に消えた。

 

 

 

 

 

 

 Side 神

 

 行ったか。

 最後の人霊、対象二千六百三十五号はなかなか愉快な奴だった。なにせ戦乱の世を口先だけで生き抜いてみせると言い切ったのだ。あれほどの馬鹿はなかなか見られない。

 

「しかしまぁ、たかが口先といえど、神の力がそこに宿るならばそれは神秘に昇華してしまう。たかが名前と思ったのかもしれないが、神の与えた名はそれだけで力を与える」

 

 奴はそれを望まないだろう。人霊ごときに騙される俺ではない。奴があくまで平穏を望み、神のためにショーをするなどご免だと考えていたことくらい分かっている。

 

「それでもお前は巻き込まれるのさ。そういう世界の、そういう国の、そういう家に生まれるようにしてしまったのだからな」

 

 ククク。にしても名前か。下手に俺が知恵を絞れば奴に神性を与えかねないからな。

 と、足元に散らばる資料の山が目に映る。なるほどと一枚手に取り

 

「奴の髪の色は遺伝によって確定している。ならばこの名など妥当か」

 

 クカカ。声が漏れる。

 誰もいない空間に向かって、誰にも届かない言葉を投げかける。

 お前の自由を貫いて見せろよ。■■よ。

 




途中で投げずにここまで読んで下さった貴方に無上の感謝を
さて、内容はいかがだったでしょうか?
楽しんでいただければ幸いです

この続きですが一応ある程度のプロットはあるんですが
今一番悩んでいるのが名前についてです
ファーストネームはいいんですが……
「ラ」とか「ド」とか「フォン」とかは何のためについてるの?
ミドルネーム? 洗礼名? なにそれおいしいの? な私としてはどうするべきか
非常に悩んでます

他の作者さんはすごいなぁと思いつつ、本日はこの辺で
読んでいただきありがとうございました

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