問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第八十一話

「はいやっ!」

 

ヒッポカンプの貸し出し場に着いた耀はすぐさま試乗していた

 

紫炎はそんな耀を楽しそうに見ていた

 

「あ!常連さん、こんなところにいたんですね。探しましたよ」

 

すると、キャロロがやってきた

 

耀は紫炎に向かって探した、という単語を聞いた瞬間、少し反応した

 

「確かキャロロ、だったか。何の用だ?」

 

「名前うろ覚えですか!?ちゃんと覚えてくださいよ!」

 

キャロロが涙目になりながらツッコミを入れると、紫炎は高らかに笑う

 

「悪いな。それで何の用だ?」

 

「えっとですね、常連さんから預かってる旦那さんから紫炎を呼んでくれ、って頼まれたんですよ」

 

「三毛猫が?」

 

紫炎が何のようだろうか、と悩んでいると、耀が紫炎の横に降り立ち腕に抱きつく

 

「何の話してたの?」

 

耀が紫炎に笑顔で聞く・・・目を除いて

 

「み、三毛猫が俺を呼んでるらしいんだ」

 

「そう。それじゃあ、私も行く」

 

耀がキャロロを睨みながらそう宣言する

 

「あの、耀。その前に離れてくれないか?」

 

「紫炎、私のこと嫌いになったの?」

 

耀がそう言いながら涙を目に溜めて紫炎を見る

 

「う・・・。ダ、ダメだ。水着を着替えなくちゃいかんし、何よりいろいろとヤバい」

 

紫炎はそう言うと、耀を引きはがす

 

「うう~」

 

残念そうに耀がうなると、紫炎は耀にしか聞こえない程度の声で囁きかける

 

「後で埋め合わせてやるから、な?」

 

「・・・わかった」

 

少し残念そうに耀が離れて手を繋ぐ

 

「それじゃあ、耀が着替えてから行くから場所を教えておいてくれ」

 

「あ、はい。少し前まで修行してた場所です。待ってますからね」

 

キャロロはそういって足取り軽くその場から去っていった

 

「それじゃあ、着替えに行くか」

 

「うん」

 

耀はそういって、紫炎に体を寄せた

 

―――――――――――――――――――――――――

 

飛鳥と碓氷は黒ウサギたちから離れて行った後、少し離れた場所で食事をしていた

 

最初の方はちゃんと探していたのだが、気まずい空気のままだったので碓氷が提案して食事をすることになった

 

「おいしいですか?」

 

「ええ」

 

気まずい空気は少し残っているが、それでも先ほどよりもよっぽどましである

 

すると、何処からか出てきたメルンが碓氷の頭に乗る

 

「うすい?」

 

静かな二人にメルンが疑問の声を出す

 

碓氷はそんなメルンを撫でてあげた

 

「ひゃあ~」

 

すると、メルンは嬉しそうに声を上げる

 

「ごめんなさいね、碓氷君。メルン、戻ってきなさい」

 

「やだ!」

 

飛鳥の言葉をメルンは拒否の態度を示して、碓氷の頭にしがみつく

 

「別にいいですよ。この子のおかげでさっきの勘違いに気づけましたし」

 

「か、勘違い?」

 

「はい。『選ばなくてもいいから一緒にいてほしい』って言うのは、飛鳥さんが選んでる間にメルンの相手をしといてくれ、ってことなんですね」

 

碓氷がそう言うと、飛鳥が沈んだ表情になる

 

「そうよね。碓氷君はそういう人だったわよね」

 

「?」

 

突然小声でつぶやきだした飛鳥に碓氷は不思議に思う

 

「碓氷君、勘違いしてた、って言ったわよね?どんな風に勘違いしていたのかしら?」

 

「えっと、それは別にいいじゃないですか。僕の勘違いだったんですから」

 

飛鳥の言葉に碓氷が頬を掻きながら恥ずかしそうに言う

 

「いいから答えて!もしかしたら勘違いじゃないかもしれないから」

 

そう言った飛鳥の目は真剣だった

 

「そ、それは、その。二人っきりでいるだけで幸せだって思ってくれてたら嬉しいな、って思ったんですよ」

 

碓氷が恥ずかしそうに顔を逸らしながら言う

 

飛鳥はそう思っていてくれたと知ると、顔が赤くなる

 

「お、思ってただけですよ。勘違いってのは分かってますから、どうか今聞いたことは忘れてください」

 

飛鳥の表情に気づかずに、碓氷がまくし立てる

 

「ま、待って。私の話を聞いてほしいの」

 

すると、飛鳥が碓氷の手を握る

 

「は、話ですか?」

 

「ええ。私は・・・」

 

「あ!飛鳥さんに碓氷さん、こんなとこにいたんですね」

 

飛鳥の言葉を遮るように黒ウサギが登場した

 

「もう、酷いなのですよ。こっちはちゃんと選んでいたのに、お二人は食事ですか!?」

 

「く、黒ウサギのお姉ちゃん、そんなに怒らなくても・・・」

 

リリが飛鳥と碓氷の方をちらちらと見ながら黒ウサギを止めようと声をかける

 

「いいえ。飛鳥さんには一度・・・・ムグッ」

 

黒ウサギが飛鳥に説教をしようとすると、誰かに口を押えられてしまう

 

「おい、黒ウサギ。お前は一度空気を読むってことを知れ」

 

「い、十六夜君!?」

 

黒ウサギの口を押えたのはどこからか現れた十六夜だった

 

「ったく、黒ウサギもいい所でやってきたな」

 

「うん。後もうちょっとだったのにね、飛鳥」

 

そしてその後ろから紫炎と耀が出てきた

 

「それじゃあ、俺らは用事があるから後は二人で楽しんどきな」

 

そういって五人は去っていった

 

残された二人はまたも微妙な雰囲気になる

 

「うすい?あすか?」

 

一人取り残されたメルンは疑問の声を上げるのであった

 

――――――――――――――――――――

 

紫炎と耀は十六夜と別れた後、当初の目的通り三毛猫に会いに来た

 

「三毛猫、来たぞ」

 

「小僧、来たか。お嬢も一緒か。」

 

三毛猫は巨龍の時の怪我がまだ完全に治ってないのか、所々に包帯を巻いていた

 

「耀と一緒だと問題があるのか?」

 

「いや、手間が省けて良かったわ」

 

「手間?」

 

三毛猫の言葉に紫炎は少し違和感を覚えたが、それは三毛猫の言葉を聞いてはっきりとした

 

「実はな、ワイは此処に残ろうと思うとんねん」

 

「え!?」

 

三毛猫の言葉に耀が驚くと、三毛猫が続ける

 

「ワイはこんな怪我やし、それにもう長くないからな。ここでゆっくりしようと思うとる」

 

三毛猫がそこまで言うと、紫炎の方に向く

 

「小僧。お嬢の事、頼むで」

 

「ああ。言われなくてもわかってるよ」

 

紫炎はそう言うと、耀を抱き寄せる

 

しかし、耀は目に涙を溜めていた

 

「お嬢も悲しまんといてくれ。いつか来る別れが少し早まっただけや」

 

「でも、生まれて来てから一緒だったのに」

 

「耀・・・」

 

紫炎はそんな耀を見て三毛猫との絆の深さを実感した

 

「お嬢、そんなに思っていてくれはったことは素直に嬉しいわ。でも、もうお嬢はワイがおらんでも一人やないやろ?」

 

三毛猫が優しい声でそう言うと、耀が泣き始めた

 

「ありがとう、三毛猫」

 

「ああ。それと小僧、お嬢の事を幸せにしてやってくれな」

 

「ああ、一生かけて幸せにしてやるよ」

 

紫炎のこの言葉を聞いた瞬間、耀は茹で上がったように真っ赤になった

 

「プロポーズはまだ早いんとちゃうか?」

 

「保護者の許可を貰ってから言うのは逆に遅い方だと思うが?」

 

紫炎がそう言うと、耀に照れ隠しで殴られてしまった

 




活動報告にあるアンケートは大体八月の中旬くらいに締め切る予定です

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