問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第六十三話

ゲーム攻略がなされた次の日、耀が目を覚ますと見知った顔が自分を見ているのに気付いた

 

「・・・紫炎?」

 

「起きたか。可愛い寝顔だったぞ」

 

その言葉を聞き、耀は少し疑問に思う

 

「もしかしてずっと起きてた?」

 

それを聞くと紫炎は罰の悪そうな顔を浮かべる

 

「・・・この状況で寝られるほど俺は無遠慮な人間じゃないんだよ」

 

「え?・・・あ!」

 

そういって耀は自分の手が紫炎の袖を握っているのと、浴衣が少しはだけて上から布団がかぶされてるのに気が付いた

 

「それに寝言もな・・・」

 

そう言って紫炎は顔を赤くする

 

「・・・私なんて言ったの?」

 

紫炎を見て更に顔を真っ赤にする耀

 

すると、それを見て紫炎がいきなり笑い出した

 

「ククク。嘘だよ、寝言なんて言ってなかったよ」

 

それを聞いた瞬間、耀の拳が紫炎を捕えた

 

「バカ。本当に言ったかと思ったじゃん」

 

「悪い。でも寝顔は可愛かったぜ」

 

耀は先ほど以上に顔を赤くする

 

「もういい。ご飯行こう」

 

「ああ、そうだな」

 

そういって二人は手を繋いで食堂へと歩いて行った

 

(寝言、ホントは言ってたんだけどな。まあ、おれの胸の内だけにしまっておくか)

 

紫炎はそう思いながら耀の寝言を思い出していた

 

『ずっと・・・一緒に』

 

それを思い出してると紫炎は顔が赤くなってるのに気付く

 

「紫炎、どうしたの?顔、赤いよ?」

 

「い、いや、なんでもない。なんでも・・・」

 

「嘘。何考えてたの?」

 

すると、耀は紫炎を下から覗き込む様に見る

 

「な、何でもないって。ほら、行こうぜ」

 

「あ・・・」

 

そういって紫炎は耀の手を引いて食堂に走り出した

 

――――――――――――――――

 

「は、は、は。疲れた」

 

「急ぎ過ぎ」

 

食堂に着いた二人は空いている席に座った

 

「あら?紫炎君に春日部さん、おはよう」

 

「おはようなのです、耀さん、赤羽さん」

 

そうしていると飛鳥と黒ウサギが二人に近づいた

 

「おはよう、黒ウサギ、飛鳥」

 

「おはよう、二人とも」

 

二人も挨拶を返すと、飛鳥が紫炎の耳元で囁いてきた

 

「昨日何か進展あった?」

 

「あるわけないだろ」

 

紫炎が目を逸らしながら言うと、飛鳥は何を勘違いしたのかニヤニヤ紫炎を見る

 

「目を逸らしてるってことは・・・」

 

「紫炎、久々に料理が食べたい。作って」

 

飛鳥が続けて言おうとすると、耀が紫炎の腕を引っ張って話を中断させる

 

「お、おう。わかった」

 

紫炎は耀の迫力に押され、キッチンに向かった

 

耀は紫炎が料理を作りに行ったのを確認すると飛鳥に詰め寄った

 

「紫炎と何話してたの?」

 

「か、春日部さん、目が怖いわ」

 

「何話してたの?」

 

「分かったわ。話すから離れて」

 

飛鳥が根負けしてそう言うと耀は元の席に戻る

 

「それで何話してたの?」

 

「昨日何か進展あったかな~って聞いてたのよ。それで目を逸らしてたのよね」

 

「ふ、ふーん」

 

「それでどうだったの?」

 

先ほどの仕返しとばかりに飛鳥は耀に詰め寄る

 

「な、何にもない」

 

「進展はあったみたいね」

 

「進展?」

 

飛鳥が何かに感づいていると、黒ウサギは何にも知らないのか頭にはてなマークを浮かべている

 

「具体的に何があったのかしら?」

 

「な、何にもなかった」

 

「あら?何にもないならどうして目を逸らすのかしら?」

 

「う・・・」

 

飛鳥がさらに詰め寄って来て耀は怯んでしまう

 

「さあ、夜、何があったか洗いざらい・・・」

 

「へい、お待ち!」

 

飛鳥がさらに問い詰めようとした瞬間、紫炎が皿を置いて注意を逸らせる

 

「あ、あら紫炎君。・・・怒ってる?」

 

「さあな。ほら、食べてくれ」

 

そう言った紫炎は笑顔だったが、目が笑ってなかった

 

「「「い、いただきます」」」

 

「いただきます」

 

そうして四人は静かに食事をした

 

食事をし終わると黒ウサギはレティシアの様子を見に行った

 

「さて俺は紫龍に話を聞きに行くから・・・」

 

「紫龍さんと碓氷君なら東に帰ったそうよ」

 

「は?」

 

「昨日の夜に碓氷君が言いに来たのだけれど・・・」

 

それを聞き、紫炎は頭を抱えた

 

「あの野郎、逃げやがったな。・・・まあ、答えは分かってるからいいんだけどな」

 

そう言った紫炎の顔が何かさびしそうに感じた耀は声をかけようとする

 

「しえ・・・」

 

「お、いい匂いがしてるな」

 

「おはようございます、皆さん」

 

しかし、突如入ってきた十六夜とジンによって阻まれた

 

「おお、二人とも。お前らの分ならちゃんと置いてあるから食べときな」

 

そういって紫炎は耀の手を取って食堂を出た

 

それを見ていた十六夜が口を開いた

 

「あの様子だと夜は何もなかったようだな」

 

「そうなのかしら?目を逸らしてたりちょっと様子がおかしかったのだけれど・・・」

 

「隠したいなら今みたいに二人っきりになるのを避けるだろうよ」

 

それを聞き、飛鳥は納得し、ジンは黒ウサギ同様わかってない様子だ

 

「しかし、紫炎もへたれだな。あれだけお膳立てしてやったのに何にも進展がないとは・・・」

 

「まあ、それだけ大事に思ってるってことじゃないかしら?」

 

「あの~、お二人とも何を話してらしゃるんですか?」

 

何の話か気になったジンが口を開く

 

「御チビは気にしなくていいぞ」

 

「ええ、そうね」

 

「あ、そうですか」

 

最初から期待していなかったのか、その言葉を聞き、ジンはそれ以上聞かなかった

 

―――――――――――――――――

 

紫炎と耀は食堂を出た後、部屋に戻り耀を着替えさせた

 

その後、ヘッドホンを探す為古城に来ていた

 

「ヘッドホン、壊れてなきゃいいけど・・・」

 

「手伝うって言った手前手伝うけど、これは・・・」

 

二人は昨日、耀が敵の幹部と闘っていた場所に的を絞って探すことに決めたが、かなり荒れはてていた

 

「やっぱり、他の人にも手伝ってもらおうか?」

 

「いや、大丈夫だ。ちょっとだけ集中させてくれ」

 

「うん。わかった」

 

紫炎が数秒目を閉じる

 

押して目を開いたかと思うと、左目は前のように白目の中に紋章が浮かび上がってきた

 

「よし。それじゃあ・・・」

 

「待って。昨日も思ったんだけど、その左目どうしたの?」

 

「ああ。昨日、偶然手に入れたギフトだ。寝不足できついがなんとか扱える」

 

そういって紫炎は左手を地面に付ける

 

(昨日の夜聞いたお前のギフト、『空間』に関するものともうひとつで間違いないな?)

 

≪ああ。って言ってもお前が今自分の意志で使えるのは、『空間把握』だけだけどな。昨日みたいに俺が力を貸さない限り・・・≫

 

(今はそれでいい。これから認めさせて引き出させてやるさ)

 

それを聞き、頭に響いた声が止んだ

 

「見つけた。大丈夫、壊れてないよ」

 

そういって紫炎は少し離れたところにあったヘッドホンを拾い上げた

 

「良かった。ありがとう紫炎」

 

「おう。それと悪いんだけど俺を下に連れて行ってくれ」

 

「え?わっ!」

 

紫炎が言い終わった瞬間、耀に向かって倒れる

 

「すまん。このギフトを使うと一気に消耗するんだ」

 

「わかった」

 

「悪い。下に・・着い・・・たら・・・・」

 

「寝ちゃった。・・・久々に寝顔見たかも」

 

魔王のゲームが始まってからはもちろん、収穫祭が始まってから個室で生活し、自由な時に起きるので起こす機会がなかった

 

「早く下りて紫炎の美味しいご飯を食べさしてもらおう」

 

そういって耀は“生命の目録”を白銀のブーツに代えて紫炎をおんぶする

 

「・・・好きだ、耀」

 

紫炎の突然の寝言を聞き、耀は顔を真っ赤にする

 

最初は起きてるんじゃないかと思ったが、結構深く寝ているようだ

 

「やっぱりもうちょっとだけ二人っきりで・・・」

 

耀は紫炎を下すと、膝枕をした

 

「私も好きだよ、紫炎」

 

こうして昼になるまで二人の甘い時間が過ぎた

 

――――――――――――――――

 

碓氷と紫龍は現在、東に戻って白夜叉のいるサウザンドアイズ支店にいた

 

「しかし、神格を返上して大分姿が変わったな、白」

 

「今のお主にだけは言われとうないぞ、龍」

 

ロリから和装の美人になった白夜叉だったが、人間から狼になった紫龍にはとても驚いていた

 

「しかし、この酒はうまいのう。いい土産を持って帰ってきたのう」

 

「だろ。けど、二人で飲むにはちょっと多すぎたか?」

 

「別によい。なにせ今日一日中飲むつもりだからな」

 

白夜叉がそう言うと、二人は盛大に笑った

 

ちなみに女性店員は仕事、碓氷は下戸だからという理由でこの部屋にはいない

 

「しかし、思った以上に不便だわ、この体」

 

「だろうな。しかし、本当におぬしは何者なんだ?流石に知りたくなってきたぞ」

 

「う~ん。誰も聞いてないか?正直、あんまり聞かれたくないんだよ」

 

それを聞き、白夜叉は扇子を広げ、いつものように笑う

 

「大丈夫だ。近くにはおらんよ」

 

「そうか。・・・誰にも話すなよ」

 

「分かっておる」

 

「それじゃあどこから話すべきか。じゃあ最初は―――――」

 

――――――――――――――――――――――

 

(なんだ、この状況は・・・)

 

紫炎は困惑していた

 

今、紫炎は耀に膝枕をされてる状況である

 

「まだ起きないのかな?」

 

耀はまだ起きてないと思い、頬をつつきながら楽しんでいる

 

(ここは起きるべきか。でもな・・・)

 

「何か楽しくなってきた」

 

耀がそういうと、頬をつつくほかに、引っ張ったり、頭を撫でたりして楽しんでる

 

(痛い。・・・でも嬉しそうな顔してるな)

 

そう思いながら紫炎は耀の顔を見るが、それがいけなかった

 

「え?」

 

「あ・・・」

 

耀と目があってしまった

 

「・・・えっと、起きた?」

 

「ああ、それじゃあ下に戻るか」

 

そういって紫炎は立ち上がると、耀がこちらに手を伸ばしてきた

 

「膝枕してたから足がしびれちゃった」

 

「ああ、わかった」

 

紫炎は耀がおんぶしてほしいと気づいたが、あえてお嬢様抱っこをした

 

「え!?ちょ、ちょっと紫炎!?」

 

「足がしびれてるならこれでもいいだろ?」

 

「う~」

 

紫炎が言うと、耀は少し涙目になりながら紫炎を見上げた

 

(やべ、超可愛い)

 

「わかった。恥ずかしいけど、このままで・・・」

 

「ああ、それじゃあ行くぞ」

 

そういって二人はそのまま下に降りた

 

案の定、十六夜や飛鳥に見つかり、色々言われたが二人は殆ど気にせず、そのままでいた


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