問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第六十一話

紫炎達が玉座の間を出て行った頃、アンダーウッドの麓では飛鳥が大樹を守る為巨龍の前に立つ

 

「ディーン。限界まで巨大化するわよ!急いで」

 

「DEEEeeeEEEN」

 

飛鳥の一声により、ディーンは大樹と同じくらいの大きさになった

 

(いくら大きくなっても私の力じゃ重量は十倍以上にはならない・・・)

 

飛鳥が少し不安に思っていると、碓氷が飛鳥の隣に降りた

 

「飛鳥さん、後ろに下がってください。僕が止めます」

 

「嫌よ。他の同志が頑張ってるのに私だけ逃げるなんて・・・」

 

「あんな不安そうな顔している女性に無理はさせれませんよ」

 

「!?」

 

自分ではそんなに表情に出しているつもりでは無かったが、それを見られてた思い顔を赤くする

 

「僕じゃあ激突するまで、数十秒ほどしか持ちませんからディーンで他の人を・・・」

 

「ふざけないで!私はアンダーウッドを守るためにここにいるの。人を逃がす為じゃないわ!」

 

飛鳥が碓氷に向かって声を荒げて反論する

 

すると、サラが炎翼をはばたかせ二人に近づいた

 

「何をしている二人とも!早く逃げろ!!」

 

「嫌よ!」

 

「逃げるにしても足止めが必要でしょう」

 

二人はサラの言葉に即答した

 

「私たちの後ろにはアンダーウッドがあるのよ」

 

「承知の上で言っている。早く逃げろ!」

 

「一体どこへ?このまま巨龍がアンダーウッドに突っ込めばどこにも逃げ場なんてありませんよ」

 

碓氷の言葉に一瞬たじろくサラ

 

「それにもし、ここが―――――“アンダーウッド”が巨龍に破壊されたら私の友人全員が悲しむわ」

 

「どうしても退かないのか?」

 

「もちろん」

 

「死ぬかもしれないんですよ?貴女がもし、死んでしまったら・・・」

 

「あら?退くぐらいならそっちの方がましよ。多分、私たちの仲間は全員そう言うわよ」

 

それを聞き、碓氷は少しだけ笑い声をあげる

 

「わかりました。私も手伝います」

 

「そうか・・・。それなら」

 

二人の覚悟が伝わったのか、サラは短刀を取り出し、自分の龍角を切る

 

「な、何をするの!?」

 

「・・・私の龍角は、強い霊格を持っている。神珍鉄とも溶けあうはずだ」

 

そういってサラはディーンに龍角をささげる

 

すると、伽藍洞の身体から赤い熱を帯びた風が吹き荒れる

 

「行きなさい、ディー・・・」

 

「飛鳥さん。後ろ!」

 

「え?」

 

碓氷の声に反応して後ろを向くと、黒い仮面だけが浮いていた

 

すると、その瞬間そこから雷が放たれた

 

「危ない!」

 

その瞬間、碓氷は飛鳥の前に立ち、代わりに雷を浴びる

 

「碓氷君!」

 

「ぼくは・・・大、丈夫です。あの雷はどうにかしますので巨龍の方は任せます」

 

「・・・っ。わかったわ、任せなさい」

 

碓氷の言葉に飛鳥は庇ってもらって自分が頼られているのを実感する

 

碓氷は仮面の方に視線を向け、周りに氷の破片を散らばせる

 

すると、もう一発雷が来ると氷を伝って地面に外れる

 

「消えてろ」

 

矢のような氷を作り、的確に仮面を打ち抜く碓氷

 

「これで・・・」

 

一瞬気を抜いた瞬間、またどこからか雷が碓氷を襲う

 

「碓氷君!大丈夫!?」

 

「な、なんとか・・・。けど、あれは」

 

見てみると、射抜いたはずの仮面の欠片が復元しさらに数が増えていた

 

(さすがにこの数は・・・)

 

「ワォォォォオオオン」

 

いきなり遠吠えがしたかと思うとすべての仮面がいきなり燃え出した

 

「今のは・・・」

 

「そんな事気にしてる場合じゃないわ。迎え撃ちなさいディーン」

 

「DEEEeeeEEEN」

 

飛鳥が叫ぶと、突っ込んできた巨龍にディーンが左腕を前に出し巨龍の動きを止めようとする

 

勢いが少し衰えたものの、まだアンダーウッドの方へ進んで行っている

 

「止まれぇぇぇえええ」

 

飛鳥がサラを抱きながら叫ぶ

 

巨龍はディーンの左手を噛みつきながら勢いは衰えない

 

(ダメ、このままじゃ・・・)

 

飛鳥が諦めかけた瞬間、巨龍の動きがいきなり止まった

 

―――――――――――――――――

 

時は少しさかのぼり、紫炎、耀、十六夜は古城の先端まで来ていた

 

「行く前に確認だ。まず俺が動きを止める、それで心臓が見えたら十六夜が一撃で仕留める。これでいいな?」

 

「私は?」

 

「十六夜を連れて行く役目とレティシアを助ける役目だ」

 

「分かった」

 

耀が紫炎の言葉に頷くと、目を閉じて集中する

 

(まだ合成獣とかまだ怖いけど、そんなことは言ってられない。今は十六夜を運びきるために空を飛べて尚且つ早い幻獣を模倣する)

 

すると、“生命の目録”は光となり、耀の履いていた革のロングブーツを包み込む

 

そしてブーツは白銀の装甲に包まれ、先端からは光の放つ翼が生えた

 

「出来た。後は十六夜を・・・」

 

「・・・驚いた。めちゃくちゃカッコいいじゃないか」

 

「ああ。凄いじゃないか」

 

二人は耀のブーツをまじまじと見た後、目を輝かせていう

 

すると、耀が少し恥ずかしそうに顔を赤くする

 

「ありがとう。・・・でも、紫炎が言った通り私は運ぶだけだから・・・」

 

「ああ、任せとけ。こんなカッコいいものを見せてもらったんだから、俺もとっておきを見せてやるよ」

 

「頼むぜ。俺も体力的に結構きついからそこまで長く止められそうにないが・・・」

 

紫炎がそう言いながら下を見ると、巨大化したディーンが見えた

 

「飛鳥にも協力してもらうか」

 

「飛鳥にも?」

 

「ああ。俺が止めた瞬間、ディーンで殴ってもらう。だから・・・」

 

「分かってるよ。しっかり一撃で決めてやるさ」

 

そういって十六夜はいつもと同じように笑う

 

そして紫炎が下を見ながら二人に言う

 

「それじゃあ、行くぞ」

 

「うん」

 

「おう」

 

紫炎が飛び出したのを皮切りに、二人も続く

 

紫炎はそのまま自然に任せて落下していく

 

巨龍がディーンと接触したのを見て右手に力を入れる紫炎

 

すると、影が右手を包む

 

(やっぱりこの力、俺のギフトを底上げしてるような感じだ。けど、それだけじゃない気がするが・・・)

 

「今やることは一つ」

 

紫炎が手を軽く振ると、手の平から炎で作った鎖が現れ巨龍の首に巻きつき、動きを止める

 

「よし。飛鳥!」

 

巨龍の動きが止まると、ディーンが右手で巨龍を殴りあげる

 

すると、巨龍の身体が透過していき心臓に刻まれた極光が浮き彫りになった

 

「見つけたぜ、十三番目の太陽!」

 

十六夜は光の柱を束ねて一撃で巨龍の心臓を撃ち貫く

 

すると巨龍は静かに消えて行き、心臓から零れ落ちたレティシアを耀が抱き留めて右手を高く上げる

 

「良かった。・・・グッ」

 

紫炎は安心した瞬間、頭に痛みが走ったかと思うと意識を失って落ちる

 

「紫炎!」

 

それを見ていた耀が急いで紫炎に駆け寄ろうとする

 

(駄目!間に合わない)

 

レティシアを抱き、十六夜を浮かせている今の耀では紫炎に追いつくことが出来ない

 

それでも耀は紫炎を追う

 

地面に落ちると思った瞬間、横から何かが紫炎を助ける

 

「良かった。・・・でも誰が」

 

「おい、あそこだぜ」

 

耀が十六夜の指さした方向を見ると、狼が紫炎をくわえていた

 

「ウォン」

 

狼は紫炎を地面に置くと、アンダーウッドの方へと走り去った

 

それを少し見つめた後、耀は十六夜を地面におろしてレティシアを渡すと紫炎に駆け寄る

 

「紫炎!大丈夫!?」

 

「・・・・・・・zzz」

 

耀は紫炎を見ると、気持ちよさそうな寝顔を浮かべていた

 

「バカ、心配したんだから・・・」

 

涙目で紫炎を抱き寄せる耀

 

それを遠くから見守っていた十六夜は二人に気づかれないようにアンダーウッドに戻る

 

(春日部のギフトがあればちゃんと戻って来れるだろう)

 

自称空気を読める男である十六夜

 

「・・・あれ?十六夜?」

 

耀は一通り周りを見てみると、十六夜が居ないことに気が付く

 

「あの野郎・・・。気が利くじゃないか」

 

抱き寄せていた紫炎からいきなり声が聞こえ、驚く耀

 

「・・・・え。紫炎、いつから?」

 

「ちょっと前から」

 

それを聞き、耀は顔を真っ赤に染める

 

「それじゃあ戻ろうぜ。立てるか?」

 

「待って。その・・・」

 

もじもじしながら紫炎を見つめる耀

 

「・・・触った?」

 

耀の言葉を聞いた瞬間、紫炎はいきなり慌てだす

 

「わ、わざとじゃないぞ。その・・・、耀が抱き寄せた時にちょっとな」

 

それを聞いた瞬間、耀は耳まで赤くなる

 

「いや、その・・・。ごめん」

 

「・・・本当に悪いと思ってる?」

 

「はい、重々思っております」

 

耀の言葉に少し怒りを感じた紫炎は正座をした

 

「それじゃあ一ついい?」

 

「・・・俺に出来ることなら何でもするよ」

 

紫炎が耀を見つめて言うと、耀は顔を赤くして俯く

 

「・・・じゃあおんぶして」

 

「へ?」

 

「アンダーウッドまでおんぶして連れてって」

 

「いいけど・・・」

 

紫炎がそう言うと、背中を耀に向ける

 

そして耀はそれを見て紫炎の背中にくっ付く

 

(やっぱり紫炎の背中、落ち着く)

 

すると、耀は安心したのか紫炎の背中で眠ってしまった

 

「気分はどうですかお姫様、って寝ちまったか」

 

(寝顔もかわいいな。ってのろけすぎか)

 

紫炎は微笑みながらアンダーウッドへと歩を進めた


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