問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第六十話

古城に着いた紫炎は体を引きづりながら歩いていた

 

「くそ!思うように体が動かん」

 

それでも龍が動き出してしまった為、体に鞭打って動き続ける

 

すると、数分歩いたところで誰かが倒れているのが見えた

 

「耀!?グッ・・・」

 

紫炎は駆け出そうとしたが、疲労の限界だったのか倒れる

 

それでも立ち上がり、無理矢理耀のそばまで移動する

 

そして、耀の状態を確認する

 

「足のけが少し酷いが、とりあえず大丈夫か」

 

紫炎が安堵していると物陰から二つの影が出てきた

 

「お兄さん。耀さんは無事でしょうか!?」

 

「兄ちゃん、嬢ちゃんの様子はどうだ?」

 

出てきたのは収穫祭の受付にいた木霊の少女と老人の猫の獣人だった

 

「とりあえず気絶してるだけみたいだ。ところで二人の名前は?」

 

「私はキリノです」

 

「俺はガロロ=ガンダックだ。兄ちゃんは?」

 

「赤羽紫炎だ。・・・って自己紹介してる時間がもったいない。急いでクリアを・・・」

 

限界だったのか紫炎は立とうとした瞬間、耀に乗っかるように倒れる

 

「おい、兄ちゃん。大丈夫か!?」

 

「あ、ああ。大丈夫だ」

 

(急がなきゃいかんのだが・・・、もう少しだけこのまま)

 

わざとじゃないが久々に耀に触れられて、少し癒される紫炎

 

「ん?紫炎じゃないか。なにやってんだ?」

 

「大丈夫かよ?」

 

すると、十六夜とアーシャ、ジャックが現れた

 

紫炎は急いで立ち上がろうとしたが、まだ体力が回復してなかったのかもう一度倒れこむ

 

「・・・ヤホホホ。皆さん、行きましょうか」

 

「そうだな」

 

「?」

 

「・・・なるほど。そういうことか」

 

紫炎の下にいた耀が目に入ったのかジャックと十六夜が笑いながら言うと、キリノは何のことかわからずガロロは二人の関係を気づいたようだ

 

「おい、待てお前ら」

 

「あんまり大声だすと春日部が起きるぜ」

 

「ヤホホホ。そうですよ。貴方達の体力の回復を待ってるほど時間もなさそうですしね」

 

そういって五人が歩き出した

 

「おい、待てって。おい、コラッ!」

 

紫炎の言葉は届かず、そのまま歩いて行った

 

一分ほどじっと体力の回復に努めた

 

「よし、何とか動けるな。それじゃあ・・・」

 

紫炎は耀をおぶり、十六夜達の後を追った

 

「ん・・・。ここは・・・」

 

「起きたか。大丈夫か?耀」

 

「え・・・・。紫炎?」

 

耀は起きると今の状態に気が付き、顔を赤くする

 

「ん、どうした?」

 

「な、なんでもない」

 

おぶられていたため顔は見られなかったが、手に力が入ってしまって強く握りしめてしまい紫炎に不審がられるが何とかごまかす耀

 

「それならいいが・・・。時間が惜しいし、少し急ぐぞ」

 

「う、うん。・・・・・・あ」

 

「どうしたんだ?やっぱりどこかけがを・・・」

 

「ち、違うの。その・・・あのヘッドホンがなくなったみたいなの」

 

「そうか。けど今はまだ探しに行くなよ」

 

「わ、わかってる」

 

そんな話をしながら玉座の間に着く二人

 

「お、来たか。別に二人でゆっくりしてても良かったんだぜ」

 

「アホか。今は一刻も争うんだぞ。ゆっくりするのはゲームが終わってからだ」

 

「疲れで春日部の上に倒れこんだんだから無理はするなよ」

 

「バカ、言うな!」

 

十六夜がにやけながら言った言葉に紫炎は顔を赤くして怒鳴り返し、耀も顔を真っ赤にし俯く

 

「まあ、それよりレティシア。一つ質問だ」

 

「何だ?」

 

「外の巨龍、あれはお前自身だろ?」

 

その言葉を聞き、レティシアが意外そうな顔を浮かべる

 

「ふっ、その通りだ。だが安心しろ。勝利条件をクリアすれば巨龍は消え、私の力は無効化されゲームクリアだ」

 

「・・・信じていいんだな?」

 

十六夜がレティシアを睨みながら言うと首を縦に振る

 

それを見た十六夜が最後の欠片を窪みにはめる

 

すると、契約書類が勝利宣言がなされた

 

『ギフトゲーム名“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”

     勝者 参加者側コミュニティ “ノーネーム”

     敗者 主催者側コミュニティ “     ”

 

*上記の結果をもちまして、今ゲームは終了とします

 尚、第三勝利条件達成に伴って十二分後、大天幕の開放を行います

 それまではロスタイムとさせていただきますので、何卒ご了承ください

 夜行種の死の恐れがありますので七七五九一七五外門より退避してください

 

                            参加者の皆様お疲れ様でした』

 

それを見た耀は鋭い目つきでレティシアを睨む

 

「・・・どういうこと?」

 

「そのままだ。十二分後に大天幕が開かれ太陽の光が降り注ぐ。その光で巨龍は太陽の軌道へと姿を消すはずだ」

 

「レティシアはどうなるの?」

 

その言葉を聞き、レティシアは苦い顔をする

 

そして懺悔するように呟いた

 

「・・・死ぬ、だろうな。龍の媒介は私だ。それにこの玉座の上にあるのは水晶体だから太陽が直射されることは間違いないだろう」

 

「だ、だって無力化されるだけだって・・・」

 

「あれは嘘だ」

 

自嘲気味に告げたレティシアに耀が紫炎から降りて胸ぐらを掴もうとするとその手はすり抜けてしまった

 

「な、何これ?」

 

「言っただろう?あの龍の媒介は私だと。此処にいる私はいわば精神体のようなものだ。本来なら私に触れると影が襲ってくるのだが・・・やはり十六夜が倒したらしい」

 

レティシアは苦笑しながら十六夜を見るが、十六夜は目を細めてそっぽを向く

 

「三人とも、辛い役目を騙すように押し付けてしまってすまない。しかしわかってくれ。私はもう二度と同志を死なせたくないのだ」

 

懇願するように三人に優しい目を向けながら言うレティシア

 

すると今まで黙っていた紫炎が急に口を開いた

 

「なるほどな。レティシアの言い分は分かった。要するに俺達“ノーネーム”の同志たちは絶対に殺したくないってことか」

 

紫炎の言葉にレティシアは安堵の表情を浮かべる

 

「それならレティシア、お前も俺たちの同志だ。絶対に死なせやしない」

 

「なっ・・・。バカなことはやめろ!おい、誰かあいつを止めてくれ。紫炎は・・・本気で龍と戦うつもりだ!」

 

レティシアが外に行こうと体を外に向けた紫炎を止める為に周りにいる全員に叫ぶ

 

すると十六夜が紫炎の肩をつかむ

 

「お前・・・本気か?」

 

「ああ」

 

十六夜の言葉に振り向いた紫炎の左目はジョーカーと闘った時のように、白い眼の中に紋章があった

 

「そうか。なら、手伝ってやるよ」

 

「十六夜!お前まで何を言っている!!」

 

「巨龍を倒すといったのさ。さっきまで気力が萎えてたんだがな、同じコミュニティのメンバーがやるなら協力するのはあたりまえだろ?」

 

そういった後、いつものように笑う十六夜をレティシアが更に言葉を続ける

 

「見損なったぞ、紫炎、十六夜。お前たちはもっと聡明な人間だと思っていたのに・・・。コミュニティを任せられる男達だと・・・」

 

「おいおい、レティシア。十六夜はまだしも俺の事は買いかぶり過ぎだ。俺は『仲間を見殺しにしたくない』っていう自分のエゴの為に半ば自殺するような男だぜ。・・・まあ、十六夜が手伝ってくれるなら自殺じゃなくなるがな」

 

そういって紫炎は十六夜を見ながら笑う

 

「お前たちは無責任だ。もし、お前たちが死んだら耀は、飛鳥は、ジンは、黒ウサギは・・・何よりコミュニティに残ってる子供たちはどうする。残された者の事を考えたらどうだ」

 

「ああ、残されたものは悲しむな。誰が死んでもな」

 

紫炎がレティシアを睨みながら言うとレティシアはだまってしまう

 

「レティシアの言ってることは正しいぜ。俺たち二人は無責任かもしれない。・・・けどな、責任を背負わない奴は臆病者で卑怯者だ」

 

紫炎が言い終わると、十六夜が何かに気づいたようで紫炎に声をかける

 

「紫炎。もし俺が言わなかったらどうしてた?」

 

「決まってんだろ。特攻」

 

それを聞き、さらに高らかに笑う十六夜

 

「レティシア。テメーは自己犠牲を貫く聖者のような奴だ。けどな俺はそんな奴より紫炎みたいな物わかりの悪い勇者を助ける方が百倍好ましいね」

 

「私も、行く」

 

十六夜が言い終わった後、耀がおぼつかない足取りで立ち上がる

 

紫炎は耀に駆け寄り、肩を貸す

 

「大丈夫か?歩けるか?」

 

「うん、何とか」

 

「やめとけ・・・と言いたいところだが、俺も似たようなもんだからな」

 

少し笑いながら、耀を元気づけようとする紫炎

 

「分かるか、レティシア。お前が同志を殺したくないのと同じくらい―――――いや、それ以上に俺達は仲間を見捨てたくないのさ。だから待ってろ。俺たちがお前を、完膚なきまでに救ってやる」

 

十六夜が耀と紫炎に聞こえない程度の声でレティシアに声をかけた

 

それを聞き、レティシアは顔を俯かせ髪で顔を隠す

 

「おい、二人とも。いちゃついてないで行くぞ」

 

「「いちゃついてない!!」」

 

十六夜が茶化すと耀と紫炎は顔を赤くしながら返す

 

そして十六夜を先頭に、紫炎が耀に肩を貸し、ついて行くという形になった

 

三人が去った後、ガロロは他の人たちも人払いをしてレティシアに話しかける

 

「いい仲間をもったな」

 

「ああ、私にはもったいないほどのな」

 

レティシアは泣いているのか少し声が上ずっていた

 

「あの子たちは同志を殺したくないってお前さんの思いを汲んで、命を懸けて救おうとしてくれてるんじゃないか」

 

「そんなことは最初から分かっているさ。だが、実際は死ににいくようなものだ」

 

「信じよう。待つのも仲間の務めだぜ」

 

諭すような声でガロロがレティシアに話しかける

 

レティシアはそれを泣きながら黙って聞いていた


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