問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第四十五話

紫炎たちは境界門を通って七七五九一七五外門“アンダーウッドの大瀑布”、フィル・ボルグの丘陵に着いた

 

すると、丘陵に冷たい風が吹いた

 

「きゃ・・・!」

 

「わ・・・!」

 

それに驚いた飛鳥と耀が声を上げる

 

それを気にせず紫炎は眼下の風景を見ている

 

「絶景だな」

 

紫炎のその言葉を聞き、二人もそちらを見る

 

「たしかに凄い水樹ね」

 

飛鳥達が見たのは樹の根が網目模様に張り巡らされた地下都市だった

 

「飛鳥、紫炎、下!滝の先に水晶の水路がある」

 

耀が大きな声で二人に呼びかける

 

「へー。綺麗だな」

 

紫炎の感想とは裏腹に飛鳥は何か考え込んでる様だ

 

「二人とも、上!」

 

それを聞き、二人は上を見る

 

そこには角の生えた鳥が何十羽も飛んでいた

 

それを見て紫炎は厳しい顔で、飛鳥は唖然としながら見上げていた

 

「聞いたことも見たこともない鳥だよ。やっぱり幻獣なのかな?黒ウサギは知ってる?」

 

「え、ええ。まあ・・・」

 

耀の言葉に黒ウサギが苦い顔で答える

 

「ちょっと見て来てもいい?」

 

「ダメだ」

 

興奮気味の耀を紫炎が手を掴んで止める

 

すると懐かしい声が聞こえてきた

 

『友よ、待っていたぞ。ようこそわが故郷に」

 

白夜叉の試練の時にいたグリフォンだった

 

ちなみに紫炎は南に来ることが決まってから指輪をつけているので、言葉は聞こえている

 

「久しぶり。ここが故郷だったんだ」

 

『ああ。サウザンドアイズもバザーに参加するのでな、護衛の為に来た。ところで小僧、何故友の手を掴んでいる?』

 

「耀がペリュドンに近づこうとしてたから止めてたんだよ」

 

紫炎が上空を指さしながら言う

 

グリフォンがそちらを見て眼光が鋭くなる

 

『彼奴らめ・・・。あれほど警告したのにまだいるのか。余程人間を殺したいと見える』

 

「食人種なの?」

 

「違う。ペリュドンは人間を殺すだけ、言わば殺人種だ」

 

耀の言葉を紫炎が訂正を入れる

 

するとグリフォンが紫炎に興味を示す

 

『小僧、博学なのだな』

 

「南に来ることになってから幻獣について調べまくったからな。それと小僧は止めろ。俺には紫炎ていう名前があるんだ。わかったか、グリフォン」

 

『私も騎手からグリーと呼ばれている。種族で呼ぶのは止してもらおう』

 

二人が睨みあいながら喋る

 

言葉のわからないジンと飛鳥は何が何だか分からない様だ

 

「そんな危険な種だって知らなかった。ありがとう、紫炎」

 

会話を聞いていた耀が空気を変える為に紫炎に話しかける

 

その言葉を聞き、二人の空気が変わる

 

「別に礼なんていいさ。ところで街までどれくらいあるんだ?グリー」

 

『ふっ・・・。少し距離がある上、南側には野生区画というものもあり、道中は危険だ。私の背で送って行こうか?紫炎』

 

二人が仲良さげに話しているのを聞き、耀が嬉しそうに笑う

 

「俺は大丈夫だから、他のやつらを頼む」

 

「うん、お願い。それと私もグリーって呼んでもいい?私は耀で、向こうの二人はジンと飛鳥」

 

『別に構わん。それと友の名前は耀で、友の友はジンと飛鳥だな』

 

この会話を黒ウサギがジンと飛鳥に説明し、頭を下げて背に跨る

 

三毛猫は黒ウサギに抱かれている

 

『それでは行くぞ』

 

グリーがそう言うと翼で風を起こし、大地を蹴って飛び立つ

 

「わ、わわ」

 

グリーが瞬く間に外門から離れていく

 

耀は何とかついて行ってるが紫炎はまだ動いていない

 

『やるな。半分足らずの力で飛行しているとはいえ、二か月足らずで私に付いてくるとは』

 

「う、うん。黒ウサギが飛行を手助けするギフトをくれたから。けど紫炎が・・・」

 

「だ、大丈夫ですよ。きっと追いついてきますよ」

 

耀と黒ウサギがまだ来ていない紫炎の心配をするが他はそれどころではなかった

 

ジンは最初に加速した時に風圧で飛んだが命綱のおかげで宙づり状態になっている

 

飛鳥はジンの二の舞にならないように手綱を掴んで歯を食いしばっている

 

三毛猫は黒ウサギに抱かれているおかげで落下の危険はないが風圧でもがき苦しんでいた

 

『お、お嬢!!旦那に速度を落とすように頼んでくだせぇぇえええ!!』

 

それを聞き、耀がグリーに声をかける

 

「グ、グリー。後ろが大変なことになってる」

 

『む?おお、すまない』

 

グリーが速度を緩める

 

すると何かが通り過ぎた

 

「おっと、行き過ぎた」

 

「紫炎!」

 

紫炎が後ろからもの凄いスピードで追い越し、前で止まった

 

『ほう?なかなかのスピードだな」

 

「俺はグリフォンの飛び方に近くてな、空気を踏めるものに作り替えてそれを蹴って加速してるんだ。だから勢いが付き過ぎるから少し遅れて動いたんだ」

 

紫炎が説明しながら宙づり状態のジンをグリーの背中に戻す

 

「あ、ありがとうございます」

 

ジンが紫炎にお礼を言う

 

それを聞いて紫炎が軽く手を挙げて反応する

 

「わあ・・・。掘られた崖を樹の根が包み込むように伸びているわ」

 

少し余裕ができた飛鳥が下を見て言う

 

「アンダーウッドの大樹は樹齢八千年と聞きます。今は木霊が棲み木として有名です」

 

『しかし十年前に魔王の襲撃を受けて大半の根がやられてしまった。多くのコミュニティの助けのおかげでようやく景観を取り戻している』

 

グリーの言葉に、言葉のわかる三人が魔王という単語に反応するが、グリーは気づかず話を続ける

 

『今回の収穫祭は復興記念も兼ねているから、絶対に失敗できない』

 

言葉に強い意志を込めながらいうグリー

 

紫炎がそれに答えるように言う

 

「任せとけ。俺らが盛り上げてやるさ」

 

「うん」

 

それに耀が頷く

 

そんな話をしながら地下の宿舎に着いた

 

三人と一匹をおろした後、グリーが翼を大きく広げた

 

『私は騎手と戦車を引いてペリュドン共を追っ払ってくる。耀たちはアンダーウッドを楽しんでくれ』

 

「うん。気を付けてね」

 

その言葉を聞き、グリーは旋風を巻き上げて飛び立つ

 

すると耀が少し困った様に紫炎に問う

 

「殺人種なんているんだね。もし、私があの幻獣からギフトを貰ったらどうなるんだろ?」

 

「やめとけ。間違いなく襲われるし、もしかしたら呪いを受けるかもしれないぞ」

 

「呪い?」

 

「どこかの神に己の姿と違った影を映す呪いを先天的にかけられたらしくてな。その解呪方法として人間を殺してるらしい」

 

「そう、なんだ」

 

紫炎から少し強めにくぎを刺され、肩を落とす

 

それを見て紫炎は、他の奴が見ていないのを確認し、耀の頭に手を置く

 

耀も置いた瞬間はびっくりしたが、紫炎の手だとわかり、顔を赤くする

 

すると上から声が聞こえた

 

「あー!耀じゃん。お前らも収穫祭に?」

 

「アーシャ。そんな言葉遣いは教えた覚えはありませんよ」

 

全員が上から聞こえた声に反応し、見てみると、ウィル・オ・ウィスプのアーシャとジャックがいた

 

「アーシャ達も来てたんだ」

 

「まあね。こっちにも事情があって、サッと」

 

「こら、おやめなさい。アーシャ」

 

窓から飛び降りて耀たちの前に下りたアーシャをジャックがふわふわおりながら叱る

 

「あっ!失礼男までいる!!」

 

「誰が失礼男だ」

 

「こら、いい加減にしなさい、アーシャ」

 

ジャックに怒られ、肩を落とすアーシャ

 

するとアーシャは耀の方へ、ジャックは紫炎の方に歩み寄った

 

「先ほどは失礼しました」

 

「別にあれぐらいの暴言は慣れてる。それより無視されてる方がきついからな」

 

紫炎がジン、飛鳥、黒ウサギの三人を見る

 

「いえいえ、そっちではなく。いえ、そっちの方でもあるんですが・・・」

 

ジャックがそういうと紫炎にだけ聞こえるように囁く

 

「アーシャが話しかけなければもう少し春日部嬢に触れていられましたので。かなり進展があったようですね」

 

「なっ・・・」

 

ジャックの言葉に紫炎が顔を赤くする

 

ジャックはそれを見てヤホホホと笑いながら紫炎から離れて行った


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