問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第三十九話

悪夢の執事体験から一週間後、今はリリと紫炎で買い出しに来ていた

 

「今日の晩飯は何がいい?」

 

「えっと、お魚が食べたいです」

 

「わかった」

 

あの日以降、紫炎はリリ達と毎日交代しながら料理を作っている

 

「せめて四日に一回にしてくれ」という紫炎の頼みは問題児たちの前では無意味だった

 

(まあ、美味しいって言われるのは悪い気はしないな)

 

そんなことを考えながら歩いていると魚屋までついた

 

「紫炎さん、どれにします?」

 

「そうだな・・・。照り焼きでもいいか?」

 

「はい。紫炎さんの料理は何でも美味しいですから」

 

「嬉しいこと言ってくれるね~。リリの料理だって美味しいぜ」

 

そう言って紫炎がリリの頭を撫でる

 

「あ、ありがとうございます」

 

狐耳と尻尾を揺らし、喜ぶリリ

 

「あ、紫炎。買い物?」

 

「おお、耀か。そうだけど・・・手に持ってるのはなんだ?」

 

耀が右手に持ってる紙袋が気になり聞く紫炎

 

「これ?サウザンドアイズに換金しに行ったら白夜叉がくれた」

 

「へえー。中身なんなんだ?」

 

「ケーキ」

 

紫炎が聞くと耀は目を輝かせて即答した

 

「そうか。・・・まさか一人で食うつもりじゃないだろうな?」

 

「・・・・・」

 

紫炎が聞くと耀は少し目を逸らす

 

「せめて飛鳥と分けろ」

 

「・・・わかった。」

 

そういうと耀は少し落ち込みながら帰路についた

 

「さて俺らもさっさと買い物を追われせて帰ろうか」

 

「そうですね」

 

夕食に必要なものを買い足し、紫炎たちも本拠に戻った

 

―――――――――――――

 

ノーネーム本拠に戻ると何故か紫炎の父・紫龍がいた

 

「おう、久しぶりだな。紫炎」

 

「リリ。黒ウサギ呼んで来てくれ。不審者を追っ払ってくれって」

 

「え、でもお知り合いなんじゃ・・・」

 

「いいから」

 

その言葉を聞き、リリが心配そうに紫炎を見ながら黒ウサギがいるであろう場所に走って行った

 

「おいおい、あんな年下まで手をだすのか?」

 

「用がないなら帰れ。今日は忙しいんだから」

 

「相変わらず冷たいな。誤解は解けたんだろ?」

 

「うるさい。あれが誤解でもお前が母さんを殺したのには変わりない」

 

その言葉を聞き、紫龍の表情が強張ったものに変わる

 

「・・・それは本当に俺が付けた傷が元なのか?」

 

「何を・・・」

 

「もしかしてお前、あの時の記憶、断片的にしか思い出せないんじゃないか?」

 

「そんなこと・・・」

 

紫炎は「ない」と言いかけたが何故か思い出せない

 

「そうかならしょうがないか・・・」

 

「おい、どういうことだよ」

 

紫炎が掴み掛るが、紫龍の表情は元の飄々とした表情に戻っていた

 

「さあね?」

 

「ふざけ・・・」

 

「あの無表情な娘、耀ちゃんだっけ?好きなんだろ?」

 

「なっ・・・」

 

いきなりの言葉に顔を赤くする紫炎

 

それを見て笑う紫龍

 

「いやはや、わかりやすい。若いっていいね」

 

ひとしきり笑い終わった後、しみじみと呟く紫龍

 

「うるさい。もう帰りやがれ」

 

紫炎が蹴って追い返そうとすると紫龍が何かを思い返す

 

「あっ。手紙があったんだ。これ渡しといて」

 

「おい、誰に渡せばいいんだよ・・・っていない」

 

自分の用件だけを済まし、相手の事を考えずに消えた紫龍

 

「はぁ~しょうがない。黒ウサギにでも渡しとくか」

 

「何がでございましょう?」

 

いきなり後ろから声を掛けられた紫炎が過剰反応するとその反応に驚く黒ウサギ

 

「び、びっくりした。黒ウサギか」

 

「びっくりしたのはこっちもなのですよ」

 

「ところでなんでいるんだ?」

 

それを聞き、黒ウサギはウサ耳をピーンと立てて怒る

 

「さっきリリが『紫炎さんが黒ウサギを呼んで来いって言ってました』って聞いたので急いで来たのですよ」

 

「あ~」

 

紫龍との言い争いですっかり忘れていた紫炎

 

「ところで赤羽さん、不審者はどこにいるんですか?」

 

「ああ、勘違いだったよ。あと、手紙」

 

そういって紫炎は手紙を黒ウサギに渡した

 

「は、はい。えっと・・・紫炎さん宛なんですけど・・・」

 

「えっ、マジで!?」

 

少し嫌そうな顔で聞き返す紫炎

 

「はい、白夜叉様から」

 

そう言って手渡された手紙を読む紫炎

 

『ちょっと伝えたいことがある。早めに来てくれぬか?』

 

(面倒臭いし、料理も作らなきゃいかんし今日はいいか)

 

そう思った瞬間、手紙から手錠が現れ、手に掛けられた

 

「は?なにこれぇぇぇええ」

 

すると、突然何かに引っ張られるような感覚があったと思うとサウザンドアイズの店前に来た

 

「あら、貴方ですか。ボスは中ですよ」

 

女性店員が早く入れという風に言い放つ

 

「その前にこれの・・・」

 

「ボスは中ですよ」

 

紫炎が手錠の事を聞こうとしたが女性店員は機械のように同じ言葉を繰り返す

 

それを聞き、これ以上は無駄だと悟った紫炎は店の中に入って行った

 

「うむ、来たか。ちょっと頼みたいことがある」

 

「頼みたいこと?」

 

紫炎が何だろうと次の言葉を待ってると、

 

「白、次は南か?」

 

紫龍の声が聞こえてきた

 

「・・・帰っていいか?」

 

「手錠を外さんで良いのか?」

 

してやったりという顔で見てくる白夜叉

 

「わかったよ、頼みってなんだ?」

 

「頼みというわけではないが、おんしの今の力を見せてほしい」

 

「待て、流石にお前に勝てるわけないぞ」

 

「当たり前だ。こちらで用意してある相手と戦ってもらう」

 

その言葉を聞き、紫炎が少し考え込み気になることを聞く

 

「そいつは消し炭にしてもいいのか?」

 

「くくっ、やれるものならな」

 

そう言ってこの前のゲーム盤入った

 

「これが今回の契約書類だ」

 

 

『ギフト名 “Gatekeeper of Abyss”

 

 ・プレイヤー名 赤羽紫炎

 

 ・勝利条件 プレイヤーがホスト側を死亡または降参させる

 

 ・敗北条件 プレイヤーが死亡または降参する

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

                              “サウザンドアイズ”印』

 

その瞬間、一匹の獣が現れた

 

「おいおい、ケルベロスかよ」

 

「実力的には六桁の最上位くらいだ」

 

その言葉を言い終わるか否かのタイミングでケルベロスが噛みつきにかかる

 

「おいおい、すごいやる気だな」

 

「そやつは元々下層と中層の間の番犬だったのだが、この前世代交代してな。本人はそれに承諾しておらぬから、おんしを倒したら戻してやると約束したのだ」

 

「勝手に約束するな」

 

炎で応戦しながら突っ込みを入れる

 

ケルベロスの一つの頭を炎の鎖で動きを止める

 

しかし残り二つの頭でも噛みつこうとする

 

紫炎は噛みつかれそうになると両手で炎を放出しながら防ぐ

 

「ふう。面倒臭い」

 

そういうと紫炎はギフトカードからリットゥを取り出す

 

(さてどうするか)

 

するとケルベロスは鎖を引きちぎり、こちらに走ってくる

 

それを紫炎は横っ飛びで避け、一番近い頭に剣を振り下ろす

 

「なっ!」

 

それを他の頭の歯で受け止める

 

「GRUAAAA」

 

「ガハッ」

 

隙を見せた紫炎に噛みつくケルベロス

 

「見込み違いだったか」

 

「誰がだ!」

 

白夜叉の呟いた言葉に返答が帰ってきたと思うとケルベロスの頭が一つ切り落とされた

 

「は、は、は・・・」

 

「ほほう。なかなかやるな」

 

「当たり前だ。・・・うぐっ」

 

紫炎が白夜叉の言葉に返した後、剣を鞘に戻した

 

「GRRRRR」

 

「うむ、わかった」

 

白夜叉がケルベロスと会話をしている

 

「はあ、はあ、はあー。・・・うしっ。まだやるか?」

 

「いや、こやつの負けで言いそうだ」

 

「あら」

 

やる気だったのにそれをそがれる紫炎

 

「ところで、紫炎。最後の攻防、どうしたのだ?」

 

「噛まれたと見せたのは炎で作った分身だ」

 

そういってもう一度分身を作る紫炎

 

「それはわかったが、それまでおんしはどこにおった?姿が見えんかったが・・・」

 

「ああ、基本一緒だ。炎に色を付けるんだ。ただし、移動する毎に色が変わるように設定するんだよ。けど基本的に自分の周りでしかこれは使えないんだ」

 

「ほう、それでも凄いと思うが・・・」

 

白夜叉がすこし呆れながら言う

 

「もう帰っていいか?」

 

「まてまて。ギフトゲームに勝ったのだ。ギフトを持って行け」

 

そういって白夜叉は一本の剣を渡してきた

 

「それとこれが本当の頼みなんだが、リットゥを返してほしいのだ」

 

「これか?別にいいぞ」

 

そう言ってそのまま白夜叉に投げ渡す

 

「ぬわっ!おんし、抜き身の刀を投げるでない」

 

「悪い悪い」

 

ぶつぶつ文句を言いながら剣をギフトカードにしまう

 

「それとさっき渡した剣は魔王にも対抗できるギフトだ」

 

「そんな立派なもん貰っていいのか?」

 

「構わんよ。だから命を脅かすギフトを使わんでもよい」

 

そういった瞬間景色が戻った

 

「誰から聞いたんだ?」

 

「さあのぉ?もう帰っても良いぞ」

 

これ以上聞いても無駄だと悟り、店を出る紫炎

 

外に出ると真っ暗だった

 

「謝ったくらいで許してくれる相手じゃないよな」

 

紫炎は覚悟を決めてノーネーム本拠に帰った

 

すると案の定、他の問題児たちからボコられ目が覚めたのは三日後だった


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