問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第三十七話

「お嬢様、お茶とお菓子をお持ちしました」

 

飛鳥の部屋の前に着き、定例文のように告げる紫炎

 

「ええ、入っていいわよ」

 

「失礼します」

 

飛鳥の言葉を聞き、入る紫炎

 

見ると部屋には飛鳥しかいなかった

 

「こちらハーブティーとケーキでございます」

 

「あら、ありが・・・って大きすぎるわよ。しかも二個って」

 

「二人分だろ?こんなもんだろ」

 

「いくらなんでも私とレティシアじゃ無理よ」

 

飛鳥の言葉を聞き、驚いた表情をする紫炎

 

「レティシア?耀とじゃないのか?」

 

「春日部さん?誘ったけどあなたに頼むって言った瞬間逃げちゃったのよ」

 

何かしたんじゃないの?という目で紫炎を見る飛鳥

 

その時、部屋にノック音が聞こえた

 

「飛鳥居るか?私だ」

 

「あっ、レティシア。開いてるから入っていいわよ」

 

「うむ、失礼する」

 

そう言って入って来たレティシアはメイド服ではなくペルセウスから助け出してきたときの服装だった

 

「うん?主殿ではないか」

 

「あら、レティシア。今彼は使用人で私たちが主人なんだから名前で呼びましょ」

 

「別にそうじゃなくても名前で良いぜ」

 

「ん、そうだな。えーと、よろしくな紫炎」

 

「ああよろ・・・」

 

飛鳥が紫炎をじーと見る

 

「・・・よろしくお願いします。お嬢様」

 

それを聞き、飛鳥の視線が外れる

 

「それじゃあケーキ一個貰うわね」

 

「もう一個はどういたしますか?」

 

それを聞き、二人は呆れた目で紫炎を見る

 

「そんなに食べれるわけないでしょ」

 

「紫炎、私たちはそんなに大食いではない。他の人にでも渡しておいてくれ」

 

「かしこまりましたお嬢様方」

 

そういって部屋を出る紫炎

 

「さて、どうするか」

 

ケーキ1ホールを持って佇む紫炎

 

「あ」

 

「ん?」

 

すると耀が通りかかり目が合う

 

「良かった。ケーキあるんだけど・・・」

 

声をかけた瞬間、逃げられた

 

(俺、何したんだ?)

 

「って、考えてる場合じゃない」

 

「あれ、赤羽さん。どうしたんですか?」

 

黒ウサギが紫炎の目の前に現れた

 

「ちょうどいい。これ冷やしといて」

 

「あ、はい・・・」

 

紫炎はケーキを黒ウサギに渡し、耀を追いかけた

 

―――――――――――

 

「私どうしちゃったんだろう」

 

耀は自室に戻り、枕に顔をうずめている

 

(レティシアが紫炎を起こしに行ったって聞いた時、何かもやっとした。それだけじゃない。ガルドの時に庇ってもらってから紫炎の顔を見ると少し、ドキッっとする。こんな感情初めて)

 

≪お嬢、大丈夫か?≫

 

「うん。ちょっと・・・」

 

≪またあの小僧か!お嬢を困らせおって≫

 

「ううん。そうじゃないんだ・・・」

 

(なんかいつもと違う紫炎を見ると顔が熱くなるし、飛鳥に誘われた時も紫炎が持ってくるって聞いて・・・)

 

そこまで考えると顔が真っ赤になったのがわかり、さらに枕に顔をうずめる耀

 

すると、ノック音が聞こえてきた

 

(誰だろう?)

 

「はー・・・」

 

枕から少し顔をあげて声を出した

 

「あっ、良かった。部屋にいて。ちょっといいか?」

 

(紫炎!!)

 

紫炎の声を聞き、また顔が赤くなる耀

 

(どうして)

 

耀自身も何故顔が赤くなるのかわからず狼狽える

 

「耀。お前に俺が何をして怒らしたかわからないがすまなかった。」

 

「ち、違うの。怒ってる訳じゃ…」

 

「もし許せないなら・・・指輪を捨ててくれ」

 

「!?」

 

「それじゃあな」

 

それだけ言うと紫炎は去ろうとする

 

「ま、待って!」

 

すると耀が慌てて部屋から飛び出す

 

「よ・・・」

 

そして紫炎が言葉を発する前に抱き着いた

 

「お願いそんな事言わないで」

 

「す、すま・・・!!!」

 

耀が泣きながら紫炎に言ってきたため言葉を失う紫炎

 

「怒ってる訳じゃないの。ただ・・・」

 

そういって少し力を入れる耀

 

それを感じて抱きしめ返す紫炎

 

「っ・・・」

 

すると耀の顔が赤くなる

 

「悪いな。俺もお前に嫌われたと思って気が動転してたみたいだ。泣かすつもりはなかったんだ」

 

「ううん。私も変な態度とってたから・・・」

 

耀は顔をうずめながら喋る

 

「もういいか?こんなとこ誰かに見られたら・・・」

 

「いいけど、もうちょっとだけ・・・」

 

「・・・ああ、わかった」

 

「ありがとう」

 

それから数分そのままの姿勢でいた

 

「もう大丈夫か?」

 

「うん。大丈夫」

 

そういって二人は離れる

 

「ありがとう。落ち着いた」

 

「おう良かったぜ。そうだ、ケーキ作ったんだが」

 

「食べる」

 

即答した耀は立って微笑みながら紫炎に手を伸ばした

 

「行こ」

 

「・・・ああ」

 

それに応え、手を繋ぎながら二人は食堂に向かった


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