問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第二十二話

食堂に着くと十六夜達がもう席についていた

 

「おう、紫炎か。今まで寝てたのか?」

 

「んなわけないだろ。コミュニティ内の散歩だ」

 

「あら、それは本当かしら?結局朝食の時は来なかったんだもの」

 

「それはない。起きたのは確認したから」

 

「俺の頭に辞書を落して起こしたんだもんな」

 

それを聞き、十六夜と飛鳥が笑い出した

 

「笑い事じゃないぞ。当たりどこ次第じゃ結構な問題になるからな」

 

「起きない紫炎が悪い。」

 

うんうん、と頷く二人

 

「・・・。昼食、食べたらどうするんだ?」

 

話を逸らす紫炎

 

「これ見て」

 

飛鳥にチラシのようなものを渡される

 

「参加資格が男女ペアで報酬がギフトと・・米50キロ!?」

 

「参加しない手はないだろ」

 

「食料の足しにもなるしね」

 

「確かに魅力的だがルールが書いてないのは気になるな」

 

「別いいんじゃない?」

 

「そうだぜ。行ってからのお楽しみだ」

 

こいつらならそういうか

 

「それじゃあペアはどうする?」

 

紫炎がそう聞くと、

 

「何言ってんだ?出るのはお前と春日部かお嬢様のどっちかだ」

 

「「「へっ?」」」

 

紫炎だけでなく耀と飛鳥も聞かされてなかったらしい。

 

「どういうことよ?十六夜君。」

 

「そのまんまの意味だぜ。二人がこのゲームをクリアしてもう二人が他のゲームに参加して賞品をいただく。それがベストだろ。」

 

「・・・。」

 

それなら何故お前が出ないんだ?と、言いたいところだが、一人で確実に勝てるのは十六夜ぐらいだから仕方ないだろう

 

「それなら春日部とかな」

 

「私?」

 

「ゲーム内容が書かれていない以上、多様性があるギフトが必要になる。飛鳥のギフトも使い道は色々あるが戦闘の可能性も捨てきれないからな」

 

俺の言葉に飛鳥が一瞬不満そうな顔をしたが、しょうがないといった感じで紫炎を見た

 

「・・・。わかったわ。ただし、絶対勝ってきなさいよ」

 

「当たり前だろ」

 

「うん」

 

飛鳥の激励に首を縦に振る二人

 

「当然だ。負けたら一発ぶん殴らせてもらうぞ、紫炎。」

 

「遠慮しとくぜ。一回負けるだけで命を懸けるには嫌だからな」

 

「勝てばいいだけでしょう?」

 

「ゲームの内容によるだろ」

 

「あの~お昼の用意が出来たんですけど・・・」

 

リリが申し訳なさそうに言ってきた

 

「だそうだ。それじゃあ絶対勝ってこいよ」

 

「負けたら十六夜君に殴られた後、晩飯抜きね、紫炎君が。」

 

「ペナルティ増えてないか!?それと晩飯抜きだけなら耀もすればいいだろ」

 

「いやだ」

 

「だそうよ」

 

「それじゃあ」

 

「あなたは強制よ」

 

理不尽だー、という紫炎の叫びは問題児たちには何の意味もなかった

 

――――――――――

 

昼食を食べ終わり、ゲームの登録をし終えた紫炎と耀

 

「しかし、契約書類をみるかぎり単純なゲームだな。」

 

「うん。だけど油断禁物。」

 

「分かってるって」

 

『ギフトゲーム名“禁断の果実”

 

 ・参加条件 男女ペアであること

 

クリア条件  一番最初に舞台内のある果実を二人同時に食すこと

       但し、果実を食べるのは一回だけとする

 

ペナルティ条件  他の対戦相手にギフトで危害を加える

       

 

賞品   お米券(50kg分) シークレットギフト

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、各コミュニティはギフトゲームに参加します。

                       

         

                サウザンドアイズ 印』

 

 

「しかし、サウザンドアイズが舞台区画を用意するほど大掛かりとは・・・」

 

「絶対白夜叉が関わってる」

 

そんな話をしていると

 

「それではスタート」

 

ギフトゲームが始まった。

 

その瞬間、紫炎が他の男性参加者全員をぶん殴って気絶させた

 

「さて行くぞ。耀」

 

「ちょっとまって。どう見ても反則でしょう」

 

さっさと果実を取りに行こうとしていた紫炎を止め、抗議に入る他の女性陣

 

「ギフトを使わずただの拳で叩きのめしたんだ。ペナルティには入らん」

 

紫炎の言葉に運営側がそうですね、と短く返した

 

「それじゃあ改めて行くか耀。」

 

「いいけど、やりすぎじゃない?」

 

「油断大敵だろ。だから邪魔されないように全員ぶん殴ったんだ」

 

笑いながらいう紫炎に呆れたように見ていた耀

 

「じゃあ“禁断の果実”でも探しに行くぞ。」

 

「そうだね。リンゴであってるよね?」

 

「多分な。大人数を想定したゲームなんだから謎解きより探す方に時間をかけるようにするだろ」

 

そういって探し始めるが

 

「リンゴの木がたくさんある」

 

「確かに殆どリンゴだったな」

 

「どれか食べればいいのかな?」

 

「そうじゃないと思うぞ。それなら木に模様なんかはつけないだろ」

 

そういってライオンの模様が刻まれた木を触る

 

「他にも蛇、狼、熊、狐、豚、山羊があった。」

 

「七本以外は何も刻まれてないからこれのどれかだと思うけど・・・」

 

「全然共通点がわからない。」

 

「いや、七匹の動物の共通点は分かった」

 

えっ?といった表情で耀が紫炎を見る

 

「七つの大罪って知ってるか?その罪ごとに動物の姿で表されてることがあるんだ。それがこの七匹。」

 

「へぇ~」

 

「だが、それとエデンの園の共通点が見つからん」

 

「イブやアダムの行動が関係あるんじゃない?」

 

そういわれてまた考え出す紫炎

 

「神の言うことを聞かずに食べた傲慢さ、食べた後に出る恥ずかしさは色欲、食べた理由が神への嫉妬とも限らないし」

 

「大丈夫?」

 

「だぁー、解釈次第で全部あり得るぞ」

 

「適当にどれか食べてみる?」

 

「それは他の参加者が来るまでしない。時間の優位はこっちにあるんだからぎりぎりまで考える」

 

「それじゃあイブとアダムが見つけた方法でも試してみる?」

 

「ふたりは元々木があった場所を知っていた。食べるなって言われてたから食べなかっただけでそれを食べようとしたのはイブがそそのかされたからで・・・」

 

「どうしたの?」

 

「おいおい、まさかこんなことじゃないよな。だったら他のでもいいと思うが」

 

「まさかわかったの」

 

「とりあえずはな。」

 

そういって紫炎は正解と思われる木に向かった

 

その途中、耀が

 

「答えがわかったってことは七つの大罪とエデンの園の関係が分かったってことでしょ。」

 

「・・・まあな」

 

「どういう関係なの?」

 

耀が聞いてくると紫炎が複雑そうな表情をする。

 

「・・・聞いても怒るなよ。」

 

「どういうこと?」

 

「それはYESと取るぞ。関係性だがまったくない」

 

「どうしてそう思うの?」

 

「イブとアダムは知恵の樹、つまり禁断の果実を食べることで無垢を失ったとある。だから感情である七つの大罪はリンゴを食べ終わってから現れると推測した。だからリンゴを食べる前のこの段階ではブラフだと考えた。」

 

「それならどの木になるの?ヒントがなくなったよ」

 

「いや、イブはリンゴを食べるとき、蛇にそそのかされ食べたと伝説にある。ならそのまま蛇、と思ったんだ。」

 

「・・・単純すぎない?」

 

「俺もそう思うんだが、最初に言った通り謎解き自体は難易度が低いと思ってな。蛇の樹も結構奥の方にあるし模様に気づけなけりゃアウトだしな。」

 

そんな話をしてると蛇の樹までついた

 

二人がリンゴを手に持ち

 

「いくぞ、せーの」

 

同時にかぶりついた

 

その瞬間

 

「ただいま勝利条件を満たしたペアが出ました。勝者は“ノーネーム”春日部耀、赤羽紫炎ペア」

 

俺たちの勝利宣言をされた

 

―――――――――――――

 

優勝の景品である米の引換は明日にしようということで二人はノーネーム本拠に戻っていたが何故か二人の顔は赤い

 

それは景品授与の時、

 

 

「優勝おめでとうございます。こちら景品のお米券とギフト“約束の指輪”でございます」

 

「これはどんなギフトなの?」

 

耀が聞くと主催者らしき人物が答える

 

「これはお互いが指輪をつけて願えば赤い糸がお互いの場所につながるというものです」

 

それだけというような表情で見る耀

 

「しかしなんでそんなもんがこのゲームの景品なんだ?」

 

「それはこのゲームに優勝したカップルがお互い離れていても思っている、と示すものだからです」

 

「優勝したカップル?」

 

「はい。お二人もお似合いですよ」

 

この言葉を聞き、紫炎の顔が赤くなった

 

耀の方を見るとふいっ、と顔を逸らされたが耳が真っ赤だった。

 

「お米の方は期限は一週間になりますのでそれまでにお願いしますね」

 

最後の言葉には答えられなかった

 

 

 

 

そんなことがあり、二人は終始無言だった

 

そんな時、

 

「あら、二人ともどうしたの?顔が真っ赤だけど・・・」

 

飛鳥が声をかけてきた

 

どう説明しようか迷って耀を見るとまた目を逸らされた

 

嫌われたかな、と思ってると

 

「別に何もなかった」

 

耀がそう答えた

 

そしてこちらを睨む

 

誰にも言ううなということだろう

 

「何もなかったようには見えないのだけれど・・・」

 

「ゲームに勝ったんだが俺がミスリードに引っかかりかけてな。」

 

なるほどね、といった表情でこちらを見る飛鳥

 

「それじゃあ本拠に戻ろうぜ。」

 

俺の言葉に二人はそうね、と短く返し歩を進めた


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