問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第七話

俺たちは黒ウサギの提案で各々の持つギフトを鑑定してもらうことになった。

 

そこで、ノーネームと交流があったコミュニティを訪ねることになった。

 

その名は、

 

「“サウザンドアイズ”?」

 

「YES。サウザンドアイズは特殊な“瞳”のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」

 

「ギフトを鑑定すると何かメリットがあるのか?」

 

「自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出所は気になるでしょう?」

 

同意を求める黒ウサギに、十六夜・飛鳥・耀・紫炎の四人は複雑な表情で返した

 

道中、黒ウサギを除く四人は町並みを興味深そうに眺めていた。

 

日が暮れて月と街灯ランプに照らされている並木道を、飛鳥は興味深そうに眺めて呟く。

 

「桜の木・・・・・・ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」

 

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ」

 

「・・・・・・?今は秋だったと思うけど」

 

「いや、春真っ只中だから咲いててあたりまえだろ?」

 

ん?っと噛み合わない四人は顔を見合わせて首を傾げる。

事情を知る黒ウサギは笑って説明する。

 

「皆さんはそれぞれ違う世界から召還されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」

 

「へぇ?パラレルワールドってやつか?」

 

「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけども・・・・・・今からコレの説明を始めますと一日二日では説明しきれないので、またの機会ということに」

 

十六夜の疑問を黒ウサギは曖昧に濁して振り返る。どうやら着いたらしい。

 

“サウザンドアイズ”の旗は、蒼い生地に互いが向かい合う二人の女神像が記されている。

 

店の前では、看板を下げる割烹着の女性店員の姿があって、黒ウサギは慌ててストップを、

 

「まっ」

 

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

・・・・・・ストップをかける事も出来なかった。

 

黒ウサギは悔しそうに店員を睨みつける。

 

飛鳥も意を同じくする。

 

「なんて商売っ気のない店なのかしら」

 

「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

 

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

 

「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」

 

キャーキャーと喚く黒ウサギに、店員は冷めたような目と侮蔑を込めた声で対応する。

 

「なるほど、“箱庭の貴族”であるウサギのお客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

「・・・・・・う」

 

一転して言葉に詰まる黒ウサギ。しかし十六夜は何の躊躇いもなく名乗る。

 

「俺たちは“ノーネーム”ってコミュニティなんだが」

 

「ほほう。ではどこの“ノーネーム”様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

十六夜たちは知る由もなかったが“サウザンドアイズ”の商店は“ノーネーム”の入店を断っている。

全員の視線が黒ウサギに集中する。

彼女は心の底から悔しそうな顔をして、小声で呟いた。

 

「その・・・・・・あの・・・・・・私たちに、旗はありま」

 

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィ!」

 

「きゃあーーー・・・・・・!」

 

黒ウサギが店内から爆走してきた着物風の服を着た真っ白い髪の少女に抱きつかれ、少女と共に街道

の向こうにある浅い水路まで吹き飛び、ボチャン、と転がり落ちた。

 

それを、十六夜達は目を丸くし、店員は痛む頭を抱えた。

 

「・・・・・・おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非」

 

「ありません」

 

「なんなら有料でも」

 

「やりません」

 

「そうだぞ、十六夜。」

 

ここで今までほとんど話に加わらなかった紫炎が口を開く

 

「ここは濡れた黒ウサギを俺たちを濡らした罰と思って笑うとこだろ。」

 

「確かに。因果応報」

 

俺の言葉に耀がすぐさま反応する

 

根に持ってたのかな?

 

視線をもどすと黒ウサギが何やら言い合ってるみたいだ

 

「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」

 

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろに!フフ、フホホフホホ!やっぱりウサギは触り心地が違うのう!ほれ、ここが良いかここが良いか!」

 

「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」

 

黒ウサギは胸に顔を埋めている白夜叉を引き剥がすと、頭を掴んで店に向かって投げつける。

 

クルクルと縦回転した少女を、十六夜が足で受け止めた。

 

「てい」

 

「ゴバァ!お、おんし、飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとは何様だ!」

 

「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」

 

ヤハハと笑いながら自己紹介する十六夜。

 

一連の流れの中で呆気に取られていた飛鳥は、思い出したように白夜叉と呼ばれていた少女に話しかけた。

 

「貴女はこの店の人?」

 

「おお、そうだとも。この“サウザンドアイズ”の幹部様で白夜叉さまだよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」

 

「オーナー。それでは売り上げが伸びません。ボスが怒ります」

 

どこまでも冷静な声で女性店員が釘を刺す。

 

ちょうどその時、黒ウサギが濡れた服を絞りながら水路から上がってきた。

 

「うう・・・・・・まさか私まで濡れる事になるなんて」

 

濡れても気にしていなかった白夜叉は、店先で黒ウサギ達を見回してにやりと笑った。

 

「ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たということは・・・・・・」

 

不敵な笑顔を浮かべる白夜叉に視線が集まり、

 

「遂に黒ウサギが私のペットに」

 

「なりません!どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」

 

ウサ耳を逆立てて黒ウサギが怒る。

 

「まぁ、冗談はさておき話があるのじゃろ。話があるなら店内で聞こう」

 

何処まで本気かわからない白夜叉は笑って店へ招く。

 

「よろしいのですか?彼らは旗も持たない“ノーネーム”のはず。規定では」

 

しかし、女性店員が眉を寄せながら水を差す。

 

「“ノーネーム”だとわかっていながら名を尋ねる、性悪店員に対する侘びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ」

 

む、っと拗ねるような顔をする女性店員。彼女にしてみればルールを守っただけなのだから気を悪く

するのは仕方がない事だろう。女性店員に睨まれながら五人は暖簾をくぐった。

「いや~悪かったね」

 

紫炎が心を込めずに形だけの謝罪をして四人の後に付いて行った


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