C3キューブ 伝える物達   作:アロンダイト

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「ここはよいとこだな・・・」

フィアが屋上にもたれかかりながら憂鬱そうに呟く

 

「ねえ、そろそろ帰ろうよー」

 

「ゾリショに賛成だ。早く帰ってメシにしよう」

もう下校時間も近く部活の生徒もほとんどいなくなってる

 

「もう少し・・・もう少しだけ・・・ここにいたいのだ」

悲しそうに呟いたフィアをみて春亮は

 

「十分だけだぞ」

そういうとゾリショは空腹が限界らしく先に帰ってしまった

 

「こんな人もいないし、何もない場所が楽しいか?」

 

「光景や風景ではない、学校というものは今まで縁がなくてな・・・こんなに大勢の人間が楽しそうにしている場所は初めてだ」

 

「そっか・・・」

哀愁漂うフィアの背中を眺めていると

 

「春亮。お前は知りたいか?私が今までどこにいて、今まで何をしてきたどんなものか」

 

「それは・・・・」

春亮が一瞬視線を巡視し答えを告げようとしたら

 

「第一の問いにお答えしましょう。それ《・・》は数百年もの間廃城の隠し倉庫に隠れてたので我々の目を逃れていたのです」

豪奢な赤いドレスを風にはためかせた金髪の美女がそこに現れた

 

 

 

 

 

 

高価そうな赤いドレスにウェーブのかかった金髪に紅をさした口には煙草が咥えられた美女

 

しかし、その彼女の両腕は肩から指先まで真っ黒い鉄で覆われていた

まるで巨大ロボットの腕のようで自身の体よりも巨大な鉄の手甲とでもいうべきかその光景はまさにいびつなヤジロベイのようだ

 

「あ、あなたは・・・いったい?」

警察呼ばれても文句言えない不自然さに若干怯えながらも春亮が聞く

 

「おや、これは失礼を。わたくし【蒐集戦線騎士領】にという組織に所属いたしますピーヴィー・バロヲイと申します。以後お見知りおきを」

巨大な鉄の手でドレスの端をつまみ一礼。ひどくシュールな光景だ

 

「えーっと、よくわからないのですが・・・」

 

「おや、ご存じありませんか。失礼ですが、貴方は夜知性の方ですか?」

 

「そうですが・・・」

 

「では、説明いたします。蒐集戦線騎士領と貴方の父系にあたる夜知崩夏は我等と対立しており、貴方の後ろにいるそれ《・・》を破壊するのが目的です」

 

「あんた・・・何でフィアを狙うんだよ!」

 

「なぜ?愚問です。それは禍具に関わる組織全ての関心ですがわたくしたちの組織は【研究室長国】とも【竜島《ドラコ》/竜頭組織《ドラコニアンズ》】とも【ビブオーリオ家族会《ファミリーズ》】とも当然【夜知崩夏】とも違います。我ら蒐集戦線騎士領は、禍具の存在を赦さない《・・・・・・・・・・》!禍具はこの世に存在するべきではない存在!ゆえにわたくしは、筆頭たる箱型の恐禍《フィア・イン・キューブ》を破壊いたします!」

 

 

 

するとピーヴィーは唐突に春亮達に駆け寄る

 

「逃げろ、春亮!」「春亮くん!」

フィアとこのはが同時に叫ぶが

 

ヂィン!ヂィン!ヂィン!

 

「チッ!」

ピーヴィーの手甲で火花が三回散った

 

「おやおや、まだ腐れ糞《ビッチ》がいましたか」

 

「酷い言われようだ。傷つくなぁ・・・」

屋上の貯水タンクの裏からゾリショが出てくる

 

「まあ、掃除する塵が増えるのはいいことですビッチ!」

ピーヴィーが獣のように前屈姿勢でゾリショに駆けだす

 

「おおっと!」

ピーヴィーの攻撃をゾリショが回避しピーヴィーに向けて右手の人差し指と親指を立てるいわゆる指鉄砲の構えだ

 

「バットヴォーダバロウダニェン!〈唯一無二の相棒〉!」

流暢なロシア語を魔法の呪文のように叫ぶとゾリショの右手に一丁の拳銃が現れた

 

その銃の名前は”コルトM1911A1”通称ガバメント。アメリカをはじめとした世界各国で100年以上使用されてる息の長い自動拳銃だ

ゾリショは昇順をピーヴィーの足元に合わせて引き金を引く

人気の失せた校舎に甲高い銃声が響いた

 

彼女は呪われた”木箱”その箱の中に格納された17個の銃火器装備品で戦うWWⅢ《第三次世界大戦》時代の禍具だ

 

「銃火器の禍具!ビッチ!」

吐き捨てるように叫んだピーヴィーはガバメントから撃ちだされた45ACP弾を腕の装甲とも呼べる手甲で弾き一気に方向転換しフィアに襲い掛かる

ゾリショが人を殺せない(・・・・)のを見越しての選択だ

 

ピーヴィーが腕を振るとあたった個所が砕けフェンスがひしゃげる

攻撃自体は単純な振りおろし、だがしかしその威力は一発一発が即死レベルの攻撃力を誇っていた

 

「どうして逃げてばかりなのですか?フィア・イン・キューブ。話に聞く限りではあなたはそのような物ではないはずですが?」

 

「それ以上・・・・・いうな・・・」

その苦しそうなフィアを見てピーヴィーは合点がいったといわんばかりに顔に笑みを浮かべた

 

「もしやあの少年さんたちはあなたのことを知らないのですか?これはなんとビッチなんでしょう!では、ついでに先ほどの質問にお答えしましょう」

 

「やめろぉぉ!!」

フィアの叫びも虚しくピーヴィーは上機嫌に話し出した

 

「今までに何をしたか?簡単です。大勢の人を殺したんです!男も女も子供も老人も貴族も貧民も黒人も白人も黄人も妊婦も赤子も罪がある人も無い人も!」

 

「あ・・・ああ・・・」

 

「すべてを神のごとく等しく残酷に、一方的に殺したんでしょ・・・?」

 

「ち、ちが・・違う。違う!私は、私は、使われただけだ!やりたかった、わけでは・・・・」

 

「あらあら、いいわけですか物のくせに見苦しいビッチですね。けどやったという事実は変わりません、だからこそ貴女はこうして呪われてる」

 

「黙れ・・・黙れ黙れ!」

 

「さて、最後の問いが残っていましたわね。どんなものか。これはもっと簡単です」

プッと吸ってた煙草を吐き捨てその目に蔑みを混ぜながら高々といった

 

「フィア・イン・キューブ。異端審問末期に開発された凡庸処刑器具ですわ」

 

 

 

 

 

「キサマアアアアアアアア!!」

 

「どれほど喚き散らしたところで貴女には人化するほどの罰がある。物は物らしくさっさとガラクタになりやがれ、ビッチ」

ピーヴィーの両腕につけられた鉄塊が持ち上げられ放心状態のフィアに振り下ろされる

 

いくら人外の力をもったフィアとはいえどコンクリートを一撃で粉砕するピーヴィーの攻撃にかかればまさに一撃だろう

 

そのフィアとピーヴィーの間に割り込む一人の少女、村正このはがピーヴィーの頭上から手刀による奇襲をしかける

ピーヴィーの手甲とこのはの手刀が火花を散らしピーヴィーが距離を取る

 

「あらまぁ、あらまぁビッチな塵がもう一匹!こうもわらわら出てくると胸糞悪いを通り越して気持ち悪いですねビッチ!」

 

「そうですか、けど胸糞悪いのはあなただけじゃないんですよ!」

 

「このはちゃんに同意!」

このはとゾリショが各々の武器を掲げてピーヴィーに駆け寄った

 




あー、小説家になろうとの二足のわらじは大変です

2013年4/5に一部改訂

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