C.E.71年6月15日
SIDE ロイ
ついに攻撃してきたか。こちらの準備は完了した。優秀な兵器とパイロット、さらに指揮官も熟成した戦術を取り込んだ、負ける要素は無い。しかし東は駄目だな、兵器の思想がオーブの地形に合ってない、そして指揮官がカガリって、止める者がいなかったのか?これでは一日も持たないぞ、ウチの兵員の脱出の準備にもまだ時間がかかる。仕方が無い、私が後で加勢するか。
ピピッ
ん?こんな時にソロモンからの連絡?
ちっ!こんな時にZAFTだと!ギナに連絡する必要があるな。
「姉さん、緊急事態だ、ギナに連絡して」
「先程のPDAか?何があった?」
「ソロモンからの情報だ、コロニーにZAFTが向かっている」
「なに!オペレーター、直ぐに連絡だ。」
「了解!」
『どうした?』
「兄さん、プラント方面からZAFTが近づいてる」
『なに?そんな情報は無かったが?』
「恐らく一部の暴走だ。直ぐ探してくれ、それとプラントに確認を。」
『分かった、VFで応戦する、戦闘経験は必要だ』
「まだダメだよ、VFのパイロットは訓練がまだ足りない。ソロモンからゴーストを24機出す、VFは出さない方がいい」
『そうか、パイロットは貴重だから仕方が無いか。それでそちらはどうなんだ?』
「そろそろ始まる、私もすぐに出る」
『気をつけろ、最近ステラが寂しがってる、早く帰って遊んでやれ』
「多分明日には決着がつく、お迎えよろしく」
『既に発進した』
「分かった、じゃあね」
さて、PDAでソロモンに指示をだしてっと。ちなみにPDAはフォールド通信を使います。
「姉さん、では私は出ます」
「十分気をつけろ、機体スペックはエゲツないが戦場ではどんな事でも起こりうる」
「大丈夫ですよ」
SIDE OUT
専用格納庫に居る禍々しい機体、アマツ、パイプラインが次々と切り離されていく。ロイはIFS用パイロットスーツを着て、コクピットに入った。回りに人は居ない、アマツはサハクの最高機密だ。格納庫の上が開放され、発射準備が整った。
「戦闘はもう始まったか、準備も完了。」
ロイは深呼吸をした、彼にとってはコレは初陣だ。
「ロイ・サハク、アマツ、出る!」
機体が高速で発射され、色がメタルグレーから黒と金に変わった。ここに、悪魔が飛び立った。
オーブ北では激しい防衛戦が始まっている。オーブは陸が少ない、故にミナは連合に上陸させずに海で殲滅しようとする。フラッグとスイクンのコンボは確かな効果を出していた、連合艦隊はVTOLと少数のスカイグラスパーで迎撃するしか無い。しかし今回の攻撃を凌ぐためには東の増援に行かなければならない、陸戦兵器のアストレイでは上陸を阻止できないからだ。その為には速やかに北の敵を撃退しなければならない。突撃すれば目的は達成できるが被害が多すぎる。
司令室ではミナが北と東、両方の戦局を見ていた。
「予想はしていたが、東がかなり押されている」
「しかし、北ではこちらが圧倒的有利です」
「一方面突破されればアウトだ、何故カガリなんぞに指揮をとらせている?ミスが多すぎる、どれだけの将兵が無駄死にしていると思っているんだ。」
「キサカ准将が補佐に付いてると聞きますが」
「カガリの性格ではあまり聞かないだろうな、ロイの到着まで後どれくらいだ?」
「約三分です」
「一度ぶつけて直ぐ東に行く様伝えろ、カガリの指揮が予想以下だ」
「分かりました、しかしロイ様一人で足りますか?」
「少なくとも時間は充分稼げるはずだ」
北部の海では空中戦が繰り広げられている。
「クルエ隊は後退し補給!オズマ隊に代われ!」
前線指揮官達は損害を抑えつつ速やかに撃破せよとの命令を受けている。結構矛盾しているが、サハクの軍では出来ないこともない。だが、やはりこのままでは時間がかかりすぎる。最後のスカイグラスパーを撃墜した後、一機のMSが飛んで来る、識別信号によるとパイロットはロイ・サハク将軍だ。
「なんで将軍が前線に出ている!?」
『こちらロイ・サハクだ、これから突っ込む、敵を掻き乱した処を一斉攻撃だ』
「ロイ様、MS使えたんですか?」
『ハイル一佐、時間が無い、部隊を少しだけ下げてくれ』
そう言うと、アマツは敵艦隊に向かっていった。
「さて、驚くといい、早速フルバーストだ!」
アマツから赤、黄、緑の三色合計六つのビームが発射される。それらは駆逐艦と巡洋艦に命中し、轟沈させた。
「時間が無い、後一発」
そして、艦隊の真上へ飛び、バスターライフルをドッキング、下に向けてチャージ開始。連合はまだ混乱から開放されていないようだ。
「スイクン各機は激流に備えろ!」
バスターライフルを空母一隻に向かって発射する。
空母は貫通され爆発、残ったエネルギーで波が発生、駆逐艦、巡洋艦が幾つか転覆した。この隙を逃さずフラッグは攻撃を開始する、スイクンは体制を立て直すのに時間が少しかかる様だ。
「空母とMS輸送船を優先して攻撃しろ!」
海上ではダガーは使用できない、いいカモだ。この攻撃で連合艦隊は混乱し、殆どの未発進VTOLが海に落ちた。
「私はこれから東の援護に向かう、此処は任せた!」
返事も聞かずに、急いで飛び去った。