SIDE ロイ
アークエンジェルが襲ってきた、ジャンク屋連合も船をかなり出してきた。いつも通り情報は完璧で準備も問題ない。経済が回復途中なので圧倒的に勝利しないとマズイ、じゃないとまた混乱する。そこんとこどうよ?ってあのバカに聞いてみたい。
ん?通信?敵旗艦から?
『君がロイ・サハクか』
あれ?この盲目の男……
『私はマルキオと言うものだ、どうしても君と話がしたくてね』
こいつバカだ!!!連合外交官なのにネオ・オーブ内戦に介入しやがった!PU参加国はジャンク屋連合の特権なんぞ認めてないし、どうするつもりなんだよこいつ。
「なにか?」
取り敢えず答えてみるか。
『君はなんのため戦っている?』
イキナリだな。
「国家利益」
『ネオ・オーブか、私はあの国がただ暴走しているように思える』
「へー」
どうでもいい。
『特にあのコロニー、あえて旧式を使うなど正気とは思えない』
私はお前が正気とは思えない。あれは見た目以外、全部プラントコロニーより二世代は進んでるし。
「ただのコーディネーターが設計したコロニーが私のよりも優れていると思っているのか?」
『自信があるのはいいが、過信は身を滅ぼすぞ』
「貴様の命で確かめてみようか?」
『そしてありもしない進化の方向で世界を騙している』
脈絡がねえ。
「貴様何しに来たんだ?」
そんなもん今直ぐ証明できるし。
『嘗て私が言ったように、人類はSEEDを持つ者に導かれ、進化するべきだ』
オーブはあのバカに導かれて経済崩壊したぞ。
「奴らは導く者じゃない、頭のネジが緩みきった者がリミッターを外して調子にのっているだけだ」
『傲慢だな』
お前が言うな。
『君たちは直ぐにオーブを明け渡しなさい、さもなくば宇宙でも容赦しない』
こいつもしかしてとんでもなく軍事に疎い?どこから突っ込めばいいか分からない。いつの間にツッコミ役になったんだ、私?
「時間の無駄だな、貴様はここで死ね!!」
ってえ?
また通信?おい、コレは…
SIDE OUT
話が終わっても両方共動かなかった。アークエンジェルからはストライクルージュが発信され演説している。
『私はオーブ連合首長国代表のカガリ・ユラ・アスハだ、そいつを捕らえろ!』
ぶっちゃけ誰も聞いていない。最強のMSパイロットで優秀な指揮官のロイは軍人に信頼されていて、極少数のアスハ支持者は除隊か排除している。大多数はこの自分勝手な言い方にイライラしている。その中、ロイは有り得ない通信を受けていた。
『降伏するので、身の安全を保障してほしい』
相手はサーペントテールの叢雲劾だった。
「いいのか?戦闘はまだ始まってすらいないぞ」
『私ではお前に勝てない』
「つまりお前とフリーダムで私の相手をするつもりだったのか」
『ああ、正直この仕事を受けたのは失敗だった』
「傭兵として大丈夫なのか?」
『命の危機が有れば逃げていいとの契約だ、元々乗り気じゃなかったんだがな。お前ならオレを瞬殺する事くらい出来るだろう』
「では、武装解除してMSをポイントK-23にロックしろ。そのままお前は基地に行け、話は付けておく」
『感謝する』
期待のサーペントテールは戦闘前に投降、マルキオのプランは開始する前に崩れた。カガリは演説に疲れてブチ切れた。
『ロイ、お前オーブ軍に何をした!?』
付き合いきれんと言わんばかりにアマツがストライクルージュに向かって飛ぶ。フリーダムが介入する。アマツとフリーダムが戦い、ムラサメも出動する。一方ジャンク屋連合には空戦MSが殆ど無い、対空兵器で応戦するも苦戦する。サーペントテールは通信途絶、オーブ軍の援護も無し、フリーダムはアマツと戦闘中、開戦して直ぐに大ピンチだ。
『僕たちは、戦争を止めたいだけなんだ!』
「無理やりか?」
『それでも戦争はしちゃいけないんだ!』
「それが人の思いを踏み躙っている事を知らんのか?」
『それでも!』
「戦う権利を奪われた者は自分で動く、ユニウスセブンテロの様に!そうさせたのは貴様らだ!」
『……』
「神にでもなったつもりか?あの導師の言葉でも信じたか?世界は貴様らの導きなんぞ必要ない!」
『違う、僕たちはただ戦争を』
「世界は人々が傷つけあいながら前進する物だ、考えを押し付ける英雄は要らないんだよ!」
『戦争は悲しみを生む、それでもいいって言うのか?』
「戦争が悪だと誰が言った。お互いにエゴをぶつけ合い、優れたほうが勝つ。歴史はそうやって造られてきた」
『犠牲になる者はどうでもいいって言うのか?』
「では人の意志を無視するか?最愛の人を殺され、撃った奴がのうのうと生きているのに我慢しろと言えるのか?絶望した者達に!」
『くっ!』
「まあいい、此処で進化を教えてやる」
ロイがトランザムバーストを起動し、戦場の人々の意志が感応し合う。それに伴いアマツから大量の粒子が放出され、通常通信が不可能になった。これには敵味方関係なく混乱した。
<勇敢なるネオ・オーブの将兵達よ。コレが進化の一つ、イノベイターの通信能力だ。>
ロイが精神から強く語りかける。
<私はイノベイターでは無いが擬似的に発生させることは出来る。>
語りながら戦う、フリーダムは応戦するも戸惑っているようだ。
<我々は自らの進化で前進する、奴らの言う導きなど不要だ!>
性能差がありすぎた。ついにフリーダムがマガノイクタチの先端に挟まれる。
「これは貰って行くぞ」
システムを乗っ取り、コクピットを射出させた。トランザムバーストを切って空に盛大にバスターライフルを撃つ。ネオ・オーブ兵は士気を上げ敵を駆逐していく、ステラの出番がないまま敵は敗走した。なお、アークエンジェルとマルキオはロイの思惑でまた見逃された。