MSデッキではミネルバ所属のパイロット達と整備士などが雑談していた。
「オーブのアスハ!?」
シン・アスカが驚いたように言う。
「ええ、さっきあのザクで入ってきたわ」
ルナマリア・ホークが答える。
「待てよ、あいつはナチュラルだろ」
「パイロットは別よ。護衛の人なんだけど、もしかするとあのアスラン・ザラかも」
「え?」
「アスハ代表が咄嗟にそう呼んだのよ」
「アスラン….ザラ…あっ、でもあの二機は?」
「ああ、あれはネオ・オーブのロイ・サハクとその護衛らしいわ」
「マジで!?あの二人、技量では敵を圧倒していたぞ!」
「え?そうなの?」
「ああ、俺が到着したときアスラン・ザラのザクはガイアと五分五分だったが、ネオ・オーブの二機はカオスとアビスの相手をしててカオスの装甲をダウンさせてた」
「ザクで?」
「ああ」
「冗談でしょう!?ZAFTレッドのあたしたちでも互角だったのよ!」
「お前も見ただろ」
「そうだけど、てっきりシンがやったのかと思ったわ」
「あとで映像を見てみよう、何か分かるかもしれない」
「ええ、でもロイ・サハクってナチュラルじゃなかったっけ?」
「え?」
「そうだ、ロイ・サハクはナチュラルでコーディネーターを凌駕する頭脳を持つ事で有名だ」
レイ・ザ・バレルが割り込む。
「嘘!?」「マジかよ…」
両名は静かに落ち込んだ。
その時、扉が開いてデュランダル率いる団体が入ってくる。遠いので何を言っていたかは分からなかったが。また、カガリが騒ぎ出す。
「力か。争いが無くならぬから力が必要だと仰ったな、議長は」
カガリが聞く。
「ええ」
議長が答える。
「だが! ではこの度の事はどうお考えになる!」
ロイ達はやれやれ的に肩をすくめる。アスランは止めるべきかどうか悩んでる。
「あのたった3機の新型モビルスーツのために、貴国が被ったあの被害の事は!?」
「だから、力など持つべきではないのだと?」
「代表……」
流石になだめるべきと考えたか、アスランが動く。しかしカガリは熱くなって話を聞かない。
「そもそも何故必要なのだ! そんなものが今更!」
この言葉を聞いてロイが笑いを堪える。
「我々は誓ったはずだ! もう悲劇は繰り返さない! 互いに手を取って歩む道を選ぶと!」
「それは……しかし姫……」
デュランダル何も知らないお姫様に苦笑いするしか無い。
前大戦は三隻同盟によって無理やり止められた。ナチュラルとコーディネーター、連合とプラントの問題は全く解決されていない。ユニウス条約締結後、両陣営共に新型機開発に力を入れた事から再戦は避けられない。ロイは既にいっぱいいっぱいだ。そろそろロイが爆笑する時、下から聞こえてきた。
「流石綺麗事はアスハの御家芸だな」
「ちょっとシン!」
『敵艦捕捉、距離8000、コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機せよ』
いいタイミングかどうかは分からないが、ミネルバが敵艦発見。全員持ち場へ移動する。ロイ達はさっきの士官室で待機しようとしたが、デュランダルにブリッジに案内された。デュランダルが先に入り、艦長と交渉し終えて、四人はブリッジに入る。
こちらはMSを発進させたのにあっちは発進しない。ロイは何かに引っかかった。そして敵はそのままデブリの中に入る。今度は確信した、デコイを使うつもりだと。デブリの中では視界が悪いので、エンジンカットすれば隠れるのには最適だ。ちなみに原作は細かい事まで覚えていない。
「(となるとデコイは既に発射されたと見るべきだ、長時間なにもしないんじゃあ怪しまれる)」
ロイは敵の作戦を正しく把握したが教えるつもりもなかった。自分に危険は無いし、気付かないのは軍人たるクルーの問題だと考えている。
「ボギーワンか。本当の名前は何というのだろうね。あの艦の?」
突然デュランダルがアスランに話しかける。
「はあ?」
アスランは意味が分からない・
「名はその存在を示す物だ。ならばもし、それが偽りだったとしたら……。それが偽りだとしたら、それはその存在そのものも偽り、と言う事になるのかな? アレックス、いや、アスラン・ザラ君」
「……」
全員が沈黙すら中。ロイが発言する。
「ガーディ・ルーだ」
「は?」
「連合とモルゲンレーテの共同開発でDSSDの技術も積み込んだ宇宙専用戦艦、ガーディ・ルー。それがあの艦の名前だ」
「……」
今度は別の意味で沈黙する。ステラ以外「なんであんたが知ってるんだ」的な目で見てる。デュランダルは遠い目をし始めた。
「(ザラ議長閣下もこんな目に会ったんだろうな、身を持って体験するとやっと気持ちが分かる)」
ギルバート・デュランダル、精神的にそろそろ危ないかもしれない。評議会議長だからこそその情報の入手がどれだけ困難かが分かる。ネオ・オーブの諜報員は連合、プラントの両方に深く入り込んでいるようだ。
「そ、そう。それでどこの所属か分かる?」
艦長のタリア・グラディスは中々強い、精神的に。
「いえ、それは分かりません。連合では特務部隊に何隻か配属されてますが、オーブやDSSDと言う線が全くないとは言い切れませんし。前にジャンク屋連合に一隻盗まれたと情報もありますのでさすがに所属までは分かりません。何番艦か分かれば所属も分かるんですが。」
次々に語られる機密に一同は戸惑いは隠せない、そして目の前の少年が更に恐ろしく見える。管制官のメイリン・ホークは涙目だ、ちょっと可愛いかもと思ったロイだった。
「わかったわ、武装は分かるかしら?」
「特に注意すべき武装はありません、陽電子砲もありませんし」
「感謝するわ」
ロイがわざわざ教えたのはただ面白そうだけだったりする。周りの反応をみてロイは満足した。
「後二分くらいか?」
ロイの最後のつぶやきは全員聞こえたが聞く勇気の有る者は居なかった。(ステラも自力で気付いた)