C.E.72年5月5日
地上オーブの宣戦布告なしの突然攻撃はコロニーの独立運動を激化させた。安全だと思っていた場所が味方によって侵攻されたのだ。そしてサハクはそれを完璧な防御体勢で撃退した。完璧に近い政策、経済制度、軍事力を使うサハクと幾つのも失敗で国土を焼かれ、経済を破綻させかけたアスハ、どっちを選ぶかは子供でも分かるだろう。L2コロニーはスムーズに独立する。C.E.72年5月5日午前10時、コロニー建設者たるサハク家首長、コトー・サハクが世界同時通信で宣言をする。
『オーブは堕ちている！かつて領土が少ないにもかかわらず、我らは知恵と努力でオーブの力を世界に知らしめていた。しかし、アスハは下らない政治闘争の為に国の力を落としただけでなく、他人の技術を盗む事でしか国を守れなかった。更に己の信念を優先して、国民を戦禍に巻き込み、果ては国有財産をも独断で破壊した！我らはオーブを復興しようとした、だがアスハは帰ってきた途端権利を要求して来た、国が一番困難な時に逃げたにもかかわらずに！復興を優先する為に我らは権力の問題を後回しにした、それをアスハは無視するだけでなくこんな時にコロニーへ攻撃してきた！何故だ！我々は地上のためにあらゆる支援をしてきた、何故攻撃されなければならない！これで分かるだろう、我らとアスハは相容れない。故に、私はここでL2コロニー群を領土とした独立国家、N・ORB（Nation of the Original of the Revolution for Being）通称ネオ・オーブの建国を宣言する！！それに伴い、サハクはコロニーの所有権を放棄し、国有財産とする。そして初代大統領の選挙を11月に行う！』
氏族制度では無く、選挙制度なのは前からあったことだ。しかし、過去では１つのコロニーの代表者、つまり市長選挙までしかなく、全コロニーの代表はサハクと成っている。そのサハクが権利を放棄すると言っているのだ。簡単に言うがそれは並大抵のことではない。これには民衆は感動するしか無い。演説は更に続く。
『そして我が国は人類の進化の道標となるであろう』
これには市民は疑問を感じずに居られない。
『コーディネーターは自らを新人類としてナチュラルを軽蔑する者がいる。そしてナチュラルにはコーディネーターを怖れる者がいる。この感情がお互いを駆逐しようとし、それが連合とプラントの戦争が起こった原因の一つだ。しかし、私は知った。コーディネーターは人類の進む未来の唯一の可能性ではないことを。宇宙環境に適応し、自然進化の産物であるニュータイプ。そして人と人、人と機械を繋ぐイノベイター。新たな可能性を見つけた我らは此処で人類のあるべき姿を探求する事を、世界に宣言する！』
歴史的宣言のあと、コロニーは静粛に包まれていた。しかし、一人が歓声を上げると全てが追随した。ネオ・オーブで今日は独立記念日で祝日である。
翌日、三種類の進化方向が公表された。
コーディネーター：遺伝子を改造し高い身体能力と思考能力を持つ。技術的に最も普及していて既存のコーディネーターは２０００万人も居る。しかし遺伝子を改造した事によって、全ての進化の可能性が無くなる。変わり続ける他種の遺伝子を組み込む事によって擬似的に進化する事はできるが、種としての他種に進化を依存しなければならないのは致命的な欠陥である。また、コーディネーター同士の出世率が代を重ねると低くなることから種の生存自体が他種に依存する事になる。結果、種として単独では生存出来ない。
ニュータイプ（未だ全て解明されていない）：宇宙に適応した自然進化した結果。先天性に他人の感情を感じることができ、高い空間認識能力をもち、さらに特殊な脳波を発信することが可能。しかし他人の感情を感じると同時に影響も受けるので悪意に弱い。人の死の瞬間発する強烈な感情はその心を壊す可能性がある。後天的に外科的方法でなることも可能であるが、体と心に大きな損傷をもたらす。なおPTSD患者がニュータイプになる適性が高い。ニュータイプは感覚進化である。宇宙では地球に比べあらゆる距離が大きい、故に遠くの物体を感知する為に五感以外の感覚が発達したと思われる。人類の宇宙での生活時間が進むにつれ発生確率が増加する。なお、戦闘では敵意や悪意を感じ取り、時には先読みまででき、それ故に軍事利用されやすい。非人道的な行いを防ぐため既に確認されたニュータイプは公表しない。
イノベイター：先天性にイノベイターたる因子を持、覚醒を経てイノベイターになる。高い空間認識能力、反射能力をもち、。脳量子波を発生させることでGN粒子を介して同類と通信、機械を操作出来る。後天的に外科的方法でなることも可能でリスクは無い。自然覚醒する確率は極めて低い。非人道的な行いを防ぐため既に確認されたイノベイターは公表しない。戦争利用を回避する為に関連技術の公表もしない。
現段階では違う種の特性を同時に持つのは不可能という結論が下されている。