公太郎はトラウマ   作:正直な嘘吐き

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オリ主が望んだチートはヴァルキリー・プロファイル1と2のスキルやら能力やらなんやらです、色々出てきます。


第一部
プロローグ


「うぇっ、うぶっ……おえ、おろろろろ――」

 

 この世に二度目の生を受けて十六年。

 

 生まれてきてから今まで何事も無く平和に暮らしてきた俺に、この仕打ちは酷すぎるのではないでしょうか、神様。実際この不意打ちは無しでしょう。

 

 辺りには上半身女性で下半身は四足(よつあし)の獣の体を持った、なんとも言えないおぞましい化け物がバラバラに引き裂かれ、細かな肉塊になって散らばっていた。

 

 俺はそんな肉塊を前に、四つん這いになって胃の中のものをゲーゲーと吐き出していた。心なしか目から何か水のようなものまで流れてきている。

 

 糞がっ! これぐらい、生まれる前に散々見てきた筈だったのに!

 

 事の始まりは数十分前まで遡る。

 

 月曜日の深夜零時。

 

 とある週刊少年誌を愛読している方なら分かるだろうが、月曜日とはその少年誌の発売日なのだ。

 

 俺はその少年誌を買おうと、日付の変わった時間帯に家を出た。

 

 日付が変わる頃にはコンビニに並べられるため、それを目当てに俺は毎週月曜日、この時間帯にコンビニに向かうのだが……。

 

 この日はなんの気まぐれか、いつもとは違う道を利用しようと思ってしまったのだ。

 

 もしかしたら近道になるかもしれない。

 

 その逆のことは想定せず、深夜特有の謎のテンションで利用した結果が――

 

「なんだかとても美味そうな臭いがするぞ? これは美味いに違いない。こんなにも美味そうな餌が来るなんて、私はとても運が良いぞ」

 

 これだ。

 

 上半身が女性で下半身が四足の獣の体を持った化け物が、重い重い足音とともに暗闇から現れるとは誰も思わないだろう。

 

 白昼夢だと思って、呆けてしまうのも無理はない、はずだ。

 

 そんな呆けている俺を化け物は愉悦を孕んだ瞳で捉え、低い声音(こわね)を投げかける。投げかけるんだけども……。

 

「一体どんな味がするんだろう? 甘いのかな? それとも――」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

 十六年ぶりの異形の存在を前に完全にビビッてしまった俺は、化け物の言葉を最後まで聞かず、生成したアントラー・ソードを手に化け物へと突っ込んでいた。

 

 この世に生まれる前、セラフィックゲートで何千回も文字通り殺されながら鍛えあげられた俺の動きに、化け物はついていくことはおろか、反応すら出来ず轟沈。

 

 気がつけば化け物をバラバラに引き裂いていたようで、あまりのグロテスクな光景にリバース。

 

 現在に至る。

 

「あー、やっと慣れてきた。こんなのアイテム目当ての部位破壊で見慣れてる筈じゃないか。なんでこんな吐きまくってたんだろ」

 

 よくよく考えてみれば、向こうにはこの化け物以上におぞましい存在が跋扈していたのだ。

 

 そんな奴らの(ことごと)くを屠ってきた俺が、今更こんな奴にビビる道理はない。

 

 いやー次来てももう余裕だわー。ワンパンで余裕だわー。てゆうかもうビビんねえし。

 

 ……はぁ。もうジャンプ買おうって気にはなれないな。今日のところは帰って寝よう、それがいい。

 

 無意識でありながら、一滴の返り血も浴びずに倒した自分に拍手を送ってやりたい。

 

 ――十六年ぶりとは言え、動きは鈍っていなかったな。

 

 その事実にほんの少しの喜色の笑みを浮かべ、帰路につく。その時だった。

 

「これをやったのはあなた?」

 

 後ろから聞こえてきた声に心臓が破裂しそうになる。

 

 待て、落ち着け俺。餅をついておちつくんだ。咄嗟(とっさ)に餅を生成しようとするが何故か生成できない。畜生っ! エリクサーならいくらでも生成できるのにっ!

 

「聞こえていないのかしら? これをやったのはあなたなのかと聞いているんだけど」

 

 駄目だ。俺、落ち着けていないみたいだ。声からして女ってとこか。

 

 答えるために後ろを振り向く。振り向いてわかったが、女一人ではないらしい。

 

 長い長い紅髪。黒髪ポニーテール。短い白髪の女三人。

 

 金髪で顔立ちの整った奴と、茶髪のなんだかおろおろしている奴の男二人。

 

 計五人の若い男女がそこにいた。制服を着用しているのを見るに、歳は近いのだろうと判断できる。ってゆうか、あの制服は駒王学園の……? 難関と名高い学園の生徒がこんな時間にこんなところで何を?

 

 それに、茶髪の彼を除いた他四人はなんだか物騒な空気を醸し出してるし。

 

 え? 俺なんかした? まるで意味がわからんぞ! あっ、もしかして……。

 

「……はい、さっきまで俺が散々吐いていましたから。この辺りがなんか酸っぱい臭いがするのは恐らくそのせいでしょう」

 

「そうじゃなくて! はぐれ悪魔バイサーをやったのはあなたなのって聞いてるの!」

 

 はぐれ悪魔? バイサー? なんのこっちゃ。

 

 ……ってそうじゃない! バイサーっていうのはさっきの化け物のことか!

 

 この人はなんでこんなに怒ってるんだと思ったが、一気にその疑問が氷解した。

 

 そりゃあ意味のわからん的外れなことばかり言われたら誰だってキレるだろう。これは申し訳ないことをした。

 

「ええ、ここに居た化け物だったらさきほどバラバラに引き裂いてやりました」

 

 この言葉に先の四人は臨戦態勢に入る。って待て待てぃ! なんで正直に答えたのにそんな殺気立つんだ! あっ、正直に答えたから!?

 

「まさか領域内にエクソシストが紛れ込んでいただなんて!」

 

「部長、気をつけてください! あの剣から強いオーラを感じます! まるで聖剣のような……!」

 

 そうしてあまりの超展開に俺は着いていくことができず、あっという間に彼女らに囲まれる。

 

 ……どういうことなんだこれは(困惑)

 


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