BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A.   作:B.O.A.

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・1969年6月15日
アンブレラ・アフリカ研究所完成。
研究所主任にブランドン・ベイリーが就任。


chapter 1-3

・見滝原ショッピングモール、改装地区廊下。

 

 

 

「おい、ここで何をしている」

 

竜二は目の前に現れた少女に問いかける。

少女は最初は呆然としていたようだが、その声で我に返ったらしくこう返してきた。

 

「……猫が」

「猫?」

「友人が飼っていた猫がこっちに逃げ込んだのを見て、それを探していたのよ」

「……そうか」

「そう言うあなたは? ここの関係者のようには見えないけど」

 

今度は、少女の方が問いかけてきた。

 

「こんなナリだが、一応その関係者だ」

「……そう」

 

 

 

 

 

会話が止まる。

 

 

 

 

 

「……なあ、お前」

 

唐突に切り出す竜二。

 

「何?」

「猫以外に何かここで見たか?」

「……いいえ。何かいたの?」

(落ち着いているのを見ると、さっきの奴らには会わなかったようだな。運のいいヤツだ)

 

“もう一つの可能性”も考慮しつつ、そんな結論を出す竜二。

だったら早くここから離れてもらおうと、“血の一滴も付いていない右手”で後方を指差して、

 

「見てないのならいい。出口はあっちだ。見逃してやるから他の大人が来る前に立ち去れ」

「……ありがとうございます」

 

少女はそのまま歩き出し、竜二とすれ違って後方の扉に向かっていく。

 

(……行ったか)

 

それを確認して、自らの目的のために階段を探し始める竜二。

 

 

 

 

 

 

 

奥に向かうその後ろ姿を、少女は静かに見つめていた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・改装地区5階。

 

 

 

広めの一角に立ち入る竜二。

改装が始まって間もないらしく、所々で無骨な鉄筋が丸出しになっている。

 

「…………?」

 

妙な違和感を覚え、中程まで歩いて辺りを見渡していると、

 

 

 

 

 

「来たようだな」

 

 

 

 

 

 

その声は後ろから掛けられた。

 

「遅れてすまない。ちょっと取り込んでてな」

 

そう言いつつ、後ろを振り返る竜二。

そこには、当にサラリーマンといった風情の男が、大きめのボストンバッグを持って立っていた。

 

「何かあったのか?」

「妙なのに絡まれてな。お前も見てないのか?」

「さあ? ガキども二人が走っていくのぐらいしか見てないが?」

(二人? あいつ以外にもいたのか?)

 

そんな事を思いながら、先程の生物について説明する竜二。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……そんな事が』

 

通信機からジョージの声が響く。

 

「新型、というよりもはや“B.O.W.”なのかも怪しい奴らだった」

「分かった。それについてはこっちでも調べてみよう」

 

サラリーマンの声を聞いていた竜二は、ふと、

 

「ん? じゃあ、お前は奴らを見ていないんだよな?」

「そう言ったはずだが」

「なら」

 

そこで一旦区切って、竜二は続ける。

 

 

 

 

 

 

「さっきからこの辺に漂ってる硝煙のニオイは何だ?」

 

 

 

 

 

 

一気に緊迫した空気が場を包む。

 

「……俺は感じないが」

「俺は人より鼻が利くのでね。薄らとだが、多分マグナム弾のものだと思う」

「…………」

 

黙り込んだサラリーマンを見ながら、竜二は先程の少女を思い出す。

 

 

 

 

(まさかな……)

 

 

 

 

“もう一つの可能性”、つまり、“あれを見ても平然としていられる”という可能性をもう一度考慮し直す竜二。

と、そこへ、

 

『そういえば、さっきお前が遭遇したのは結局誰だったんだ?』

「……ああ」

 

そう言えば説明してなかったな、と思う竜二。

少女について説明し終えると、

 

「つまり、少なくともさっきまでは、此処に三人ガキがいたという事だよな?」

「そういう事になる」

『謎の生物に、子供が三人か……』

 

 

 

 

 

しばらく、会話を止めて考え込む三人。

 

 

 

 

 

「……まあ、これ以上は考えても無駄か」

 

切り出したのはサラリーマンだった。

 

「これについては、追々調べていくことにしよう。その前に、“約束の品”を渡さないとな」

 

そう言って、サラリーマンはボストンバッグを床に置く。

 

「言われたものは全て入っているはずだが、自分の目でも確認してくれ」

 

竜二はボストンバッグを手元に取り寄せ、ジッパーを開いて中を覗く。

そこに入っていたのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一丁の散弾銃と、

 

 

 

一丁の短機関銃と、

 

 

 

一丁の自動拳銃と、

 

 

 

幾つかの手榴弾と弾薬だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「問題ない。確かに受け取ったよ」

 

銃機の軽い点検を終えて、竜二が言う。

 

「それと、コイツも受け取ってくれ」

 

そう言って、一枚の小紙を渡すサラリーマン。

 

「これは?」

「明日にでも、そこに挨拶に行っとけ」

『因みに、他にも行くとこあるから』

「…………なんでまた」

『日本はその辺シッカリしないといけないからな』

「…………Jesus(畜生が)

 

二人の発言に、天を仰ぎながらそう呟く竜二だった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・翌日、見滝原市内。

 

 

 

「マミさん、昨日の魔女見つかりそうですか?」

「う~ん、反応は近づいているみたいだけど……」

 

黄色いドリルテールの少女が、ピンクの少女と青の少女を連れて歩いてゆく。

 

「……あいつら?」

 

彼女らとすれ違った竜二が振り返りながらそう言う。

 

『どうした?』

「……いや、なんでもない」

 

顔を戻し、街並みを歩いてゆく竜二。

 

「この辺だったな」

 

やがて、一軒の屋敷の前で止まる。

事務所も兼ねているらしく、家の前には一枚のポスターが貼られていた。

 

 

 

 

 

 

《美国久臣》

 

 

 

 

 

 

「ここだな」

 

そう言って、インターホンを鳴らす竜二。

暫くすると、女の子の声が聞こえてくる。

 

「はい、どちら様ですか?」

「初めまして、竜二・K・シーザーと申します。お父様はいらっしゃるでしょうか?」

「父ですね? 分かりました。呼びますので、家に上がってお待ちください」

 

その声と共に、何処からともなくメイドがやってきて門を開け始める。

 

(本当に豪邸だな……)

 

応接間に通されて、出された紅茶を飲む竜二。

一杯飲み終えたくらいになって、応接間の扉が開いた。

 

「やあ、君がそうか。待ちわびたよ」

「初めまして、美国大臣」

 

竜二は立ち上がり、笑顔で現れた男、美国久臣と握手を交わす。

 

「その呼び方はなんだか慣れんな。妙にむず痒い気がするよ」

「実力が認められたからこそ、外務大臣になれたのですよ」

 

二人は机を挟んで、対面に椅子に座る。

 

「まず、これが君のこの国での身分だ」

 

そう言って、久臣は封筒を差し出す。

中を見た竜二が若干渋い顔をして、

 

「海外から派遣された捜査官……。なんかあまり変わらない気が……」

「そうでもしないと、この国では人に銃を持たせられないのだよ。因みに、捜査内容はダミーだ」

「了解しました」

 

封筒を持って来ていたボストンバッグに入れる竜二。

その様子を見ていた久臣がポツリと呟く。

 

「……私には、今年で16になる娘がいる」

「娘?」

 

ふと、インターホンの声を思い出す竜二。

 

「織莉子と言ってな。よく出来た、自慢の娘だよ」

「…………」

「君たちを信じていないという訳ではないが、それでも不安なのだよ。他国のエージェントが本当に織莉子のいるこの国を守れるのか。いや、織莉子のいるこの街で起きる事を君たちに任せなくてはならない事自体が」

「“美国さん”」

 

急に声の調子を下げた竜二に、久臣は押し黙る。

 

「“B.O.W.”の中で一番価値のあるタイプのものは何か、ご存知ですか?」

「……いや」

 

竜二は、ゆっくりと言う。

 

 

 

 

 

 

 

「“人型”ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

渋い顔をして黙る久臣に、竜二は続ける。

 

「この件は、我々の方が慣れていますし、正直、不慣れな人間が介入してきて、“二次災害”が起こった時が一番怖いのですよ」

「……分かった。よく分かったよ」

 

これ以上はうんざりだ、と言うように久臣は言う。

 

「それでは、そろそろこの辺で失礼させて貰います。わざわざ、届けてくださってありがとうございました」

「ああ、こちらこそ。為になる話が聞けてよかった」

 

立ち上がって、応接間を後にしようとする竜二。

ドアノブに手をかけた時、後ろから声が掛かった。

 

「……“イザナミ計画”」

「……何?」

「かつて、独断で裏について探った時に耳にした。これ以上は知らない」

 

後ろを振り返る竜二。

その目を強く見返しながら、久臣は言う。

 

「あとは任せたぞ。“若いの”」

「……了解」

 

扉を開き、竜二は出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人だけ応接間に残された久臣は、窓の外を見ながら言う。

 

「あれが、“竜二”か……」

 

ニヤリと笑うと、こう続ける。

 

「お手並み拝見といこうか」

 

 

 

 

 




B.O.A.です。

今回は二場面投下しました。文量も倍になったかと思います。
マミさん初登場!ホンの少しだけ!

あと、すっかり忘れていた、おりこマギカタグ付けました。
美国氏が大臣に出世しました。

次回は序章の山場。気合入れて書きます!

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