BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A.   作:B.O.A.

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・1998年12月27日

レオンを通じてクレアの危機を知ったクリスが、レオンに救助要請を出した後自らもロックフォート島に向かい、クリスを追ってきたジルと行き違いになる。





バイオハザード CODE:Veronica ~ロックフォート島襲撃事件~


chapter 4-9

・見滝原市、見滝原市立病院。

 

 

 

「…………」

 

昨日の一日で、凡そ百人強の怪我人が“テロ”の影響で出ていた。

それによって、五郷市立病院だけでなく見滝原市立病院にも患者が運ばれていた。

そしてその中の一人に、美国織莉子の姿はあった。

 

「織莉子……」

 

ベッドの上で虚ろに窓の外を見る織莉子の脇で、呉キリカは心配そうな声を出す。

二人のいるこの病室は、嘗てほむらが運ばれたのと同じ場所であった。

大きな怪我をしなかった織莉子だが、一応検査の為に昨日から入院していた。

勿論それだけで無く、限られた人間しか立ち入らないこの場所が織莉子に対する“とばっちり”を回避する上で好都合だった、という事もあるが。

 

「……何か、飲みたい物ある? 私が買って来るけど」

 

静寂に耐えられなくなったキリカがそう聞くが、

 

「…………」

 

織莉子は全く反応を見せない。

昨日の事件後から、彼女はずっとこんな感じであった。

 

「……何か適当に買って来るよ」

 

キリカがそう言い残して去って行っても、彼女は微動だにしなかった。

 

(……あ~、どーしよ。ホントどーしよ)

 

廊下を歩きながら、キリカは考えを巡らす。

 

(駄目だ、何にも言う事が思い付かない)

 

彼女、呉キリカの“願い”は“臆病な自分から変わりたい”である。

それを叶えた事により、今のキリカは社交的で明るい性格になったが、そもそも彼女は心理カウンセラーではない。

大きなショックで塞ぎ込んだ織莉子の元気付け方なんて、流石の彼女でも直ぐには思い付かなかった。

 

(……駄目だなぁ。嘘吐いてまで一緒にいたかったのに、私は……)

 

暗い絶望感に飲まれかけるキリカ。

無意識に少し俯いてしまう。

 

 

 

 

 

 

だからこそ、角から飛び出した人影に気付かなかった。

 

 

 

 

 

「きゃあ!?」

「うわっ!?」

 

 

 

 

 

 

そのままキリカと人影はぶつかる。

その後、人影はヨロヨロと数歩進んだ後、

 

「あうっ」

 

ベタンっ、と倒れる。

 

「ご、ゴメン! 大丈夫かい?」

 

謝りながら、その人物に近付くキリカ。

 

「うぅ……、大丈夫」

 

ゆっくりと立ち上がったその人物は、緑色の髪をゴムで束ねた小さな少女だった。

 

「お姉ちゃん、ごめんなさい」

「良いよ。私の方が悪かったし。ゴメンね」

 

ペコっと頭を下げる少女に、キリカは優しく言う。

と、少女の来た通路の奥から、

 

 

 

 

 

 

「こいつは丁度良かったな」

 

 

 

 

 

 

そんな風に言いながら、竜二が近付いてくる。

二人がそれに気付き、

 

「おに~ちゃ~ん」

「ゆまちゃん、余り一人で先に行くなと言ったろ?」

「あう……、ごめんなさい」

「気を付けなよ?」

 

側に寄って来たゆまの頭を撫でながら、竜二はキリカに目を向ける。

 

「今話出来るか?」

「ああ……、うん。だけど、その前に飲み物買って良い?」

「分かった。付き添うよ」

「ゆまもジュース飲みた~い」

「分かった。買ってあげるよ」

「やた~!」

 

三人は自販機の場所まで歩き、それぞれ欲しい物を買う。

 

「札入れるから、好きなの選びな」

「え? でも……」

「良いから」

 

因みに、全て竜二が出した。

 

「~♪」

 

ご機嫌な様子のゆまに対し、

 

「…………」

 

無言で織莉子の病室に向かう二人。

キリカは昨日竜二の“アレ”を見た事で、完全に彼を警戒していた。

その様子に気付きながらも、竜二は逢えて彼女を放置していた。

やがて三人が織莉子の病室の前に着くと、竜二が扉を軽くノックして、

 

「美国ちゃん、竜二だ。今入って良いか?」

「…………どうぞ」

 

扉の向こうから小さな声が聞こえる。

それを聞いて、三人は病室に入る。

 

「…………」

(っ……)

 

織莉子の殺気じみた睨みに、内心動揺する竜二。

だが、それを表には微塵も出さずに、

 

「一応聞くが、身体は大丈夫か?」

「お陰様で…………」

 

恨む様な口調で言う織莉子。

彼女からすれば竜二は父親の仇であり、同時に父を狂わせた“物”と同じ得体の知れない“化物”である。

 

(……どう話した物か……)

 

竜二自身、恨まれる事自体は覚悟していたが、それでも直に向けられると辛い物がある。

竜二が掛ける言葉を迷っていると、

 

 

 

 

 

 

「こらっ! お兄ちゃんをイジメるなっ!!」

「「「!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

脇にいたゆまが前に出て、織莉子を睨む。

 

「ゆまちゃん、別にお兄ちゃんは虐められてる訳じゃ……」

「ムゥ~ッ!!」

 

竜二が宥めようとするが、完全にゆまは聞く耳を持っていない。

織莉子はゆまに目を向けて、

 

「……妹さん?」

「“妹さん”じゃなくて“ゆま”っ!!」

「此処に来る途中に、偶々会ったんだ。……一応、関係者でもある」

 

竜二は軽く過去を思い返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女と会ったのは、まどかを学校に送った後、病院へ向かう為に公園を横切った時だった。

竜二が歩きながら、ピアーズの報告を受けて今後の行動を考えていた時、

 

 

 

 

 

“「おに~いちゃ~ん~~っ♫!!」”

“「ゆまちゃん!?」”

 

 

 

 

 

児童施設の行事の一貫か、職員達や他の子供達と公園で遊んでいたゆまに見付けられ、思いっきり飛び掛られる竜二。

 

“「久しぶり~っ!!」”

“「……ああ、久しぶり」”

 

無邪気に笑うゆまを見て、竜二は優しく微笑む。

少しだけ、今のシビアな状況を忘れていた。

 

“(こういうのも、悪く無いな)”

 

のんびりと思った竜二だったが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後が大変だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“「イヤ~っ!! お兄ちゃんと一緒が良いっ!!!」”

“「あ、あの、ゆまちゃん……」”

 

職員の元に返そうとしたら、もの凄く駄々を捏ねられた。

職員達とどうにか説得しようとするが、全く離れる様子が無い。

 

“(……ああ、もう……)”

 

彼女の“過去”を考えての事か、職員達も余り強く出られない様子だった。

力尽くでも離そうかと竜二が考えた時、

 

“(待てよ……、使えるか?)”

 

ある意味織莉子と境遇の似ているゆまなら、彼女と話す上で良い緩衝材になるかもしれない。

そんな打算的な考えの元、竜二は彼女を一日引き取ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……いい方向に転がってくれるかな?)

 

そんな事を思って二人を見ていると、

 

「……んでさ、結局この子はお兄さんの何なの?」

 

脇にいたキリカがそう聞く。

 

「彼女は、……その」

「お兄ちゃんはゆまを助けてくれたんだよ」

 

竜二が答えるよりも早く、ゆまがそう答える。

驚いた顔をしたキリカは、

 

「じゃあ、その子も……?」

「いや、“アレ”より前の事だ。……実は、この街で既にテロが起きている」

「「!?」」

 

織莉子とキリカが驚いて目を見開く。

 

「一から話すとな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

ほむら、さやか、杏子と続いて同じ様な事を話した所、二人は呆然としている様子だった。

 

「??」

 

ゆまは何の事か理解出来ていない様だったが。

 

「……今ので、大体全てだ」

「……えと、つまり、お兄さんは“アレ”を倒しに来たって事?」

「まあ、間違いでは無い」

 

キリカの問いに答え、竜二は織莉子を見る。

 

「だから、俺はその為に大臣と会っていたんだ。断じて、俺が彼を促したのでは無い」

「…………」

 

黙っていた織莉子だったが、やがてゆっくりと口を開いて、

 

「…………な……ため…すか……」

「何?」

「何の、為ですか。どうして、貴方はお父様を……」

 

織莉子自身、竜二が自分達を守る為に父を殺した事は理解していた。

だからこそ、織莉子は“その先”を知りたかった。竜二が、何の為に戦っているのかを。

 

「…………」

 

その意思を感じ取ったのか、竜二は窓の外に視線を移して暫し黙り込む。

その目は、嘗て杏子が“自分と同じ”と言った目であった。

 

「…………無駄に、したく無いから、かな」

「無駄……?」

 

思わず聞き返した織莉子に、竜二は何処か虚ろに、

 

「あの場で彼が人を殺めたら、全てが“台無し”になる。彼が“人”として歩んだ“過去”の全てが無駄になる。それが、許せなかった……」

「…………」

 

それは、どう言う事なのか。どうしてそう思ったのか。

それを織莉子が尋ねようとした時、

 

 

 

 

 

 

 

prrrrrrrrrrrrrrrrr!!!

 

 

 

 

 

 

「!」

 

竜二の腰から、甲高い電子音が響く。

 

「済まない。少し出るぞ」

 

竜二はそう言い残し、病室を一旦出て行く。

 

「……………………」

 

病室に沈黙が降りる。

二人は、竜二の言葉から彼の意思を読み取ろうとしていた。

 

(単純に正義心で動いているとは思えない。だから、何かしら裏がある筈)

 

説明の中で、竜二が一切触れていない事があった。

それは、“彼自身の事”。

 

(彼は“そこ”からどうにか話題を逸らそうと、注意を外そうと必死だった)

 

だが、彼女は“それ”を聞くつもりは無かった。

正直“あの事”にこれ以上関わりたくなかったし、聞いた所で碌な物では無いのは容易に想像出来た。

そこまで考えて、ふと織莉子は別の事を思う。

 

「…………お父様…………」

 

織莉子は、父が“そんな事”に関わってた事なんて一切知らなかった。

竜二の事も、“仕事仲間”としか言ってなかった。

だから、何故父が“それ”に関わりを持ったのかが理解出来なかった。

 

(いや、本当は分かってる。お父様が、私の為にこの国を変えようとした事は、分かってる……)

 

それでも、どうしてあんな方法を取ったのか、“アレ”以外に道は無かったのか。

奇遇にも、それは竜二と同じ疑問だった。

 

「…………」

 

その様子を、キリカは心配そうに見ている。

 

(…………私は…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~~~~~~~♪~~~~~~~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

二人の耳に、歌声が聞こえてくる。

それは、語りかける様な、静かな雰囲気の歌だった。

その音源は、二人の直ぐ近くにいた。

 

「……ゆま?」

 

キリカがそう呟く。

その幼い歌声は、たどたどしいながらも音程はしっかりと取り、歌の優しい感じを壊さず表現していた。

その音から、織莉子はそれが英語の歌であると気付いた。

 

「貴方、それは……?」

「お兄ちゃんが教えてくれたの」

 

歌を辞めて、ゆまがそう言う。

 

「ゆまが怖くて眠れなかった時に、お兄ちゃんが歌ってくれたの。お兄ちゃんの、お姉ちゃんが歌ってた歌なんだって」

 

二人は、静かにゆまの言葉を聞いていた。

 

「辛い時や苦しい時に、お兄ちゃんはいつもこの歌を思い出してるんだって。そうしてお兄ちゃんは頑張ってるって。だからゆまも、悲しい時に歌うの」

「……!」

 

その言葉にハッとして、織莉子は彼女を見詰める。

彼女は、織莉子の為に歌っていたのだ。

すると、ゆまは瞳を曇らせ少し俯き、

 

「……ゆまは、余りパパやママが好きじゃないの」

 

少し声を震わせながら、ゆまは自身の過去を語る。

自身の、“虐待”を受けていた日々を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

二人は、目の前の幼い少女の抱える悲惨な“過去”に呆然としていた。

対して、ゆまは先程と変わらず、

 

「……ゆまがイジメられるのは、ゆまが弱いから。ゆまが……」

 

その後は、声にならなかった。

 

「……ゆま、そのパパとママは今どうしてるんだい?」

 

キリカは静かにそう言うが、織莉子にはその裏に渦巻く強い怒りを感じ取れた。

対して、ゆまはポツリと、

 

「違う病院で、治療してるって」

「…………」

 

嘘だ。

織莉子は直感した。

恐らく、この街で起きた“テロ”で既に死んでいる。

キリカも同じ考えを持っていた。

 

「……でも、パパとママが帰って来ても、ゆまはもうイジメられない」

 

ゆまはハッキリとそう言う。

 

「お兄ちゃんが言ってた。パパとママが帰って来る前に、ゆまは絶対に強くなれるって。その為に頑張れるって、そう言ってこの歌を教えてくれた」

「…………!!」

「だから、ゆまは強くなる為に歌うの」

 

ゆまは織莉子と目を合わせて、

 

「お兄ちゃんは悪い人じゃない。ゆまを助けてくれた、ゆまに強くなるやり方を教えてくれた。だから、ゆまは強くなって、お兄ちゃんをイジメるヤツをやっつけてやるのっ!!」

「……そう。」

 

織莉子は毒を抜かれた様な気になっていた。

 

(今のこの子を作ったのは、確実に彼だ。なら、私は……)

 

ゆまに両親の死を黙っているのも、恐らく彼女を前向きにする為だろう。

彼女の“過去”を、“無駄”にせずに生かすやり方で。

 

(私は……信じて良いのかな……彼を……)

 

優しくキリカが見守る前で、織莉子はもう一度ゆまを見る。

その言葉は、自然と出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆまちゃん、私にその歌を教えてくれないかしら?」

「良いよっ。お姉ちゃんっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

電話から帰って来た竜二は、病室から響く歌声を廊下で聞いていた。

どうやら、一人が二人に教えている様だ。

 

(全く……)

 

予想外の展開に、思わずニヤけそうになる。

だが、そこで“ある事”を思い出し、顔が固くなる。

 

(……美国久臣……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー“イザナミ”を、止めてくれーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(アンタは、何がしたかったんだ……?)

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・???

 

 

 

歌が聞こえる。

此処は、何処なのだろう?

 

(…………)

 

周囲を見渡す。

草木の茂ったその向こうに、白い壁が見える。

天井も白く、蛍光灯が多く付いている。

此処はどうやら、植物園か何かの様だ。

 

(!)

 

歌が聞こえる。

女の人の声の様だ。

音に向かって歩く。

暫く進むと、大きな木があった。

どうやら、此処がこの空間の中心の様だ。

 

(…………)

 

その下には、小さなベンチが一つある。

そこに、女の人が座っていた。

 

(……綺麗……)

 

素直に思った。

ブロンドに近い茶髪を長く垂らし、青い瞳を持ったその人は、聞き惚れる様な声で歌っていた。

その歌詞の意味は分からなかったが、それでも何処か安心する様な感じを覚えた。

と、

 

「!」

 

女の人が歌を止め、此方を見る。

 

(!?)

 

一瞬ビクッとするが、その目が自分より遠くを見ている事に気付く。

後ろを振り返ろうとして…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁーどぉーかぁーーーーーーっ!!!」

「ひゃぁっ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなり響いた大きい声にビクッとするまどか。

前を見ると、そこは植物園では無く、

 

「何ボーッとしちゃってんのさ、何度も呼んだんだよ?」

 

見慣れた親友の顔があった。

直ぐに、まどかは下校途中にCDショップに寄ったのを思い出す。

 

「ご、ゴメン。ちょっとほかごと考えてた」

「ほかごとぉ? 一体何考えて……」

 

さやかが、さっきまでまどかが見ていたらしき方向を見て、

 

「……ははぁ~ん?」

 

何やら面白そうな笑みを浮かべる。

その方向をまどかが辿ると、

 

「……へっ?」

 

洋楽のCDを眺める竜二がいた。

 

「あんたまさか、竜二さんに見惚れてた?」

「え、えええぇ!? そんな事ないよ!」

 

顔を真っ赤にするまどかを見て、さやかの弄りは更にエスカレートする。

 

「いや~、等々まどかにも春が来たのかぁ~? しかも愛しの彼は年上の外国人。これは面白い所に行きますねぇ~」

「ち、違うって! そんな訳じゃ……!」

「りゅーじさーん! まどかの奴が……」

「さ、さやかちゃぁん!!」

 

まどかが必死になって、さやかの口を抑えようとする。

 

「……お前等、此処は店内だぞ……」

 

呆れた様に竜二が言う。

我に帰った二人は、周囲の客が皆こっちを見て笑っているのに気付く。

 

「……あ、あははは……」

 

最早、二人は笑う事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・見滝原市、通学路。

 

 

 

「……もぉ~っ、酷い目にあったよぅ……」

「あはは、ゴメンゴメン」

 

CDショップから逃げる様に出て、三人は通学路を歩いていた。

 

「しっかしさぁ、本当に竜二さんに見惚れてたの?」

「違うって言ってるじゃん!?」

「…………」

 

まだ引っ張るのか、と竜二は思う。

その前で、二人の会話が続く。

 

「でもさあんた、あたしが大声出すまでずぅっとボンヤリしてたんだよ? 本当に違うの?」

「本当だよ。私は……」

 

言いながら、まどかはチラリと後ろの竜二を見る。

 

「? どうかしたか?」

 

竜二は彼女にそう聞く。

 

(…………)

 

ふと、あの光景が頭に浮かぶ。

どうしてそれが見えたのかは分からなかったが、その事に不思議と嫌な感じがしなかった。

と、

 

「……フフフフフフ……」

「ひっ!?」

 

怖い笑い声に驚いて見ると、さやかの顔が間近にあった。

 

「コレはもぉ~、言い訳出来ませんよねぇ。まどかさぁん」

「さ、さやかちゃん、その……」

 

まどかの言葉に耳を貸さず、さやかは竜二の方を見ると、

 

「竜二さんにまどかは渡さないぞ! まどかはあたしの嫁になるのだ!!」

「何でそうなるのぉ~!!」

 

又も目の前で女子の羞恥が晒される事になった竜二は、

 

(勝手にしろよもう…………)

 

嘗てない程脱力していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さやかちゃん、またね~!」

「またな、美樹ちゃん」

「まどか、竜二さん、また明日!!」

 

さやかは二人と別れ、自宅に向けて歩いて行く。

 

「…………」

 

暫くそのまま歩いていたさやかだったが、

 

「………」

 

ピタッと、突然足を止める。

 

「……」

 

そのまま暫くその場に立っていたさやかだったが、

 

「…」

 

急に向きを変え、来た道を戻り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………フフッ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・見滝原市、市民公園。

 

 

 

「…」

 

大きな緑地公園の並木道をさやかは歩いて行く。

 

「……」

 

夕暮れの公園は、黄金色に色付いてた。

 

「………」

 

急に立ち止まるさやか。

 

「…………」

 

そこは、並木道から少し外れた林の中だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あれっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

訳が分からない様子で、さやかはキョロキョロ周りを見渡す。

 

「何で? 何であたしは此処に?」

 

まるでさっきまでの記憶が無い様に、首を捻るさやか。

 

『私が呼んだんだよ~っ☆』

「!?」

 

急に頭に響いた声に、さやかは思わず肩をビクつかせる。

 

(ユイ!? 何で!?)

『教えてあげようと思ってねっ♪』

(教えるって、一体何を?)

『決まってるじゃん』

 

ニヤニヤ嗤う様な気配をさやかは感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あなたの本性を、だよっ☆』

 

 

 

 

 




どもども~、B.O.A.です。

いやー、この亀展開はどうにもなりませんねぇ……。
予定より大幅に掛かりそうなwww。

次回、ま、読めるかもなぁ……。
続きも頑張って行きます(^-^)/

感想等、お待ちしております。o(^▽^)o

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