BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A.   作:B.O.A.

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・1991年12月
ソビエト社会主義共和国連邦崩壊。

セルゲイ・ウラジミール大佐がスペンサーに接触。
B.O.W.“タイラント”の素体テストに合格し、10人のクローンと引き換えに幹部に起用される。


chapter 2-4

・見滝原市、街道。

 

 

 

「…………はあ」

 

見滝原市の中でもそれなりに大きな通りを、巴マミは一人で歩いていた。

お菓子の魔女の経験が原因で、学校も休んでいた彼女が何故外出しているかと言うと、

 

 

 

 

 

 

 

 

(食材が尽きた…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

幸い、お菓子の魔女戦は買い物直後だったので、今までは何事もなく暮らせたのだが、元々平日の昼を購買で済ます前提だったので、等々底を尽きてしまったのだ。

という訳で、彼女は今買い物帰りだった。

 

(いい加減、ショックを振り切らなきゃいけないのは分かってるんだけど、中々ね…………)

 

買い物袋を持っている彼女の顔色は暗く、重いオーラを発していた。

 

(はあ…………、こんなんじゃ先輩失格ね…………)

 

自分で思って更に落ち込んでいくマミ。

完全に負のスパイラルに嵌っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、悪い事は重なるというのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃっ!?」

 

突然、買い物袋の持ち手の片方が切れ、中身の一部が歩道に散らばってしまった。

 

「もう……、最悪…………」

 

気分を一層落として、中身を拾い出すマミ。

と、横合いから誰かの腕が伸びる。

 

「?」

 

見上げたマミが見たのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

What's wrong ?(どうした?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄まじくガタイのいい男だった。

 

(……うわあ)

 

今までのテンションを、半分ほどぶっ飛ばすぐらいのインパクトをマミは受けていた。

この人、絶対に“ゴリラ”って影で言われてるな、と失礼な事を思うマミ。

 

(っといけない、いけない)

 

考えを戻し、この人英語話してたな、と思うマミ。

 

「これ、君の落とした物だよな?」

 

男の英語が、マミの発動した魔法で、一瞬で日本語に聞こえるようになる。

 

「はい。ありがとうございます」

 

マミはそう言いながら、男の手から、落とした食材を受け取る。

 

「紐が切れるとは災難だったな」

「ええ、本当に。悪い事は重なる物ですね」

 

男は一瞬キョトンとすると、感心したように言う。

 

「驚いたな、この年の子がここまで流暢に英語を操るとは……。流石は日本、と言ったとこか」

「…………」

 

マジカル翻訳でズルしてるとは言えず、少し笑顔が引き攣るマミ。

と、そこへ、

 

「クリス、待たせて悪かったな……、ってお前は!?」

「え?竜二さん!?」

 

お互いの存在に驚く両者。

 

「竜二、この子知っているのか?」

「……ああ、少し事情聴取したのでな」

「…………と、なるとこの子は…………」

「…………その通りだ」

 

男の問いに答えていく竜二。

 

「あ……、あの…………」

 

目の前で置いてかれたマミが言う。

 

「竜二さん、この人は……?」

「俺の捜査の協力者だ。“あの事”についても知っている。と言うか、俺が話した」

「え?」

「いきなりお目にかかるとはな、“マジカルガール”」

「ええ!?」

 

マミは竜二に詰め寄って、

 

「ほ、本当に言っちゃったんですか!?」

「ま、参考程度のつもりだったんだけどな」

 

あっけらかんと言う竜二。

 

「参考って、そんな……!?」

「心配すんな。まだ、彼ぐらいにしか言ってないから」

「そういう問題じゃ……! ……いや、それも問題だけど…………」

「……あの、いいか?」

 

置いてかれてた男が口を挟む。

 

「君が彼の言っていた“魔法少女”って奴なんだよな?」

「あ、はい。私は、見滝原中学校三年生で、“魔法少女”の巴マミです」

「俺は、クリス・レッドフィールド。元軍人で、今は捜査官をやってる」

 

男ークリスは、自己紹介すると右手を差し出す。

マミも右手を出して、二人は握手をする。

 

「クリスは俺の先輩でな。捜査の応援に来て貰ったんだ」

「そうなんですか?」

「ああ。この不甲斐ない後輩の応援にな」

「あ、酷いや」

 

竜二の文句をさらりと流すクリス。

と、ふと竜二がマミを見ると、

 

「そういや、外に出てるって事はもう振り切ったのか?」

「あ…………」

 

“あの経験”を思い出し、気づかない内に、身体を震わせるマミ。

 

「……何やら重い物を抱えてるようだな」

「クリスは元軍人だし、今の職場でも“そういう事”を経験した事があるから、相談してみるといいぞ」

 

男二人はそう言う。

 

「……じゃあ、歩きながらで良いですか……?」

「OK。そうしようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人は街道を歩き出す。

その間、マミはあの時の事をゆっくりクリスに語る。

トラウマに震えるその様子を、二人は静かに見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………成る程な」

「ずっと思ってたんだが、長く使命(魔女退治)をこなして来たのに、一度も命の危機に逢わなかったのか?」

「…………危ない時はありましたが、本当に死を目の前にした事は無かったので…………」

 

竜二の疑問に、マミが答える。

 

「……俺は、そのキュウべえって奴が気に食わんな。死の恐ろしさを教えずに、少女達を戦場に送り出すのだからな」

「…………一応言ってはくれたのですが、自分で十分に実感出来てなかったのだと思います…………」

「……そういや、お前は結局何を願ったんだ? 将来の夢を叶えるとか?」

 

ふと、竜二は思い付いたままにマミに聞く。

直後にマミは俯いて、間を置いた後にポツリと言う。

 

「…………私は、助命を願いました…………」

「……………………」

 

思わず、言葉を失う二人。

 

「…………マミ、それは…………?」

「…………小学生の時に、交通事故に遭って…………」

 

マミは俯いたまま自身の過去の事を言う。

 

「……悪い。嫌な事を聞いちまったな」

「…………いえ、いいんです。相談に乗って貰ってるんですから」

 

竜二の謝罪に、少し顔を上げて答えるマミ。

 

「……じゃあ、君が魔法少女になったのは不本意だったって事か?」

「そうするしか手がなかったのです……。考える暇もありませんでした…………」

 

それを聞いてクリスは少し黙ると、静かに言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………君が今一番守りたい物は何だ?」

「守りたい物…………?」

「俺は、互いに認め合って共に戦ってくれる“仲間”であり、“パートナー”だ」

「!」

 

 

 

 

 

 

 

 

クリスの言葉にはっとなるマミ。

足を止めたマミに合わせて、三人は立ち止まる。

幸い、そこは人通りの無い路地裏だった。

 

「君はどうなんだ?」

「…………私は…………」

 

マミの脳裏に浮かぶのは、嘗て自分の“後輩”が言った言葉。

自分はもう一人じゃないと、自分を一人にしないと言った彼女の事。

ずっと、自分が欲しかった存在。

 

「…………私も、…………同じ…………です」

「そうか」

 

クリスはマミと向き合うと、

 

「君の両親の事は同情する。君が生き残る為に、他の事を考えられなかったのも解る。俺は君と違って進んでこの道を選んだから、君と俺では死の恐怖に対する心構えも違っていただろう。でも、君が今守りたい物が俺と同じ“仲間”だと言うのなら、ここで立ち止まっているようなら“今ある物”も失う事になる」

「…………ッ!」

「キツい事を言うが、守りたいのなら、乗り越えて戦うしかない。それが出来ないのなら、使命(魔女退治)を捨てるしかない」

「そんな事解ってます!!でも……」

「俺もそうやって、仲間を守る為に他人の命を奪ってきた」

「!」

「嘗ての同僚を撃たねばならない時もあった。でも、止まる訳にはいかなかった。止まれば、全てを失ってしまうからだ」

「そんなのって……!」

「ああ、間違ってるし、不合理かもしれない。だがな…………」

 

マミの顔を覗き込んで、クリスは続ける。

 

「それが、本来の“命懸けの戦い”だ。戦場に正しさも間違いもない。ルールなんてない。自分の意志を貫き通すか否かの世界だ。そうだろう?」

「…………」

 

項垂れるマミを見て、黙っていた竜二が口を開く。

 

「……お前、この数日間の鹿目ちゃん達の事を聞いてるか?」

「…………!」

 

マミが顔を上げて竜二を見る。

引き篭もってたので学校にも行っていない挙句、携帯のアドレスも交換し忘れてたので、マミはあれ以来今まで誰とも話してなかったのだ。キュウべえも勧誘の為か、家を空けていた。

 

「やっぱり知らないようだな。あいつ等もお人好しだな……、お前が落ち着くまで機を見ていたんだろうな」

「何かあったんですか!?」

 

竜二は少し間を置くと、ゆっくりと続ける。

 

 

 

 

 

 

 

「鹿目ちゃんが魔女に襲われて、そこを美樹ちゃんが助けたそうだ。多分、美樹ちゃんは魔法少女になったんじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 

「そんな!?」

「更に、暁美ちゃんが怪我して今日まで意識不明で入院してたって事も知らないだろう?」

「暁美さんが!!?」

 

マミにとって、手強いライバルの様な存在だったほむらの予想外の事実に、マミは驚きを隠せてない様子だった。

 

「驚くのは解るがな。だが、これがどういう事か分かるか?」

「…………?」

 

首を傾げたマミに、竜二はため息を一つ付くと、

 

「ベテランが二人もいるのに、新人の美樹ちゃんがいなかったら鹿目ちゃんは死んでたって事だぞ。一人は意識不明だったけど、もう一人はどうだったよ?」

「ッ!」

「今回は偶々運が良かったが、そうじゃなかったかもしれないんだ。……失ってたら、後悔してもし切れないぞ」

 

ショックで再び俯いてしまったマミに、クリスが少し屈むと、

 

「気が動転してるのは分かるがな、そんな事だって起こるのが戦場って物だ。マミ、君はそれでも戦う意志があるか?」

「……………………」

 

長い沈黙の時が流れる。

俯いたマミの瞳は、暗く虚ろだった。

 

「…………私は、…………正直、怖いです。あんな風に魔女に殺されるのは、嫌です…………」

「…………」

「…………でも、…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マミの瞳に小さな光が灯る。

 

 

 

 

「鹿目さん達が殺されるのは、もっと嫌です…………」

 

 

 

 

 

その光は、静かに輝きを増していく。

 

 

 

 

「もう、一人になりたくない…………! 失いたくない…………!」

 

 

 

 

マミは顔を上げて、二人を見る。

その顔は、嘗て“後輩達”に魔法少女の使命を語った時と似ていて、でも、違う気迫を纏っていた。

 

 

 

 

「私には、“後輩”を守る責任がある。あの子達を、正しく導く責任がある」

 

 

 

 

 

さやかが魔法少女になったのは、勿論自身の願いが大きな理由だろう。

だが、それ以外に、“マミの負担を軽くする”事も彼女を促したかもしれない。

自分の不甲斐なさが、彼女を戦場に呼んでしまったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立ち止まっていられない。あの子達の為に、私は戦わなくちゃならない…………!」

「…………いい具合に、覚悟が決まったようだな」

 

クリスは満足そうに笑うと、すぐに表情を引き締めて、

 

「だがコレだけは言っておく。自分の意志と使命感は違う。単に使命感だけで戦うつもりなら辞めておけ、意志が共わなくして貫き通せる物など無いからな。それと、自分が“仲間”を大切にするのと同じだけ、“仲間”も自分をそう思ってると信じろ。彼等が本当に君の“仲間”なら、無闇な自己犠牲は彼等を悲しませるだけだ」

「はい。分かりました」

「正直、君ぐらいの少女に掛ける言葉ではないとは思っていたが……、上手く通じたようで良かった。俺から言える事は以上だ」

「有難うございました!」

 

クリスに深くお辞儀するマミ。

そこに、竜二が声を掛ける。

 

「出来るだけ早く、鹿目ちゃん達と連絡とってやりな。心配しているようだからな」

「はい。竜二さんも有難うございました」

「構わないよ。それと、近々暁美ちゃんから話が行くと思う。耳を貸してやるといい」

「暁美さんが?」

「詳しくは本人に聞いて欲しいが、……あいつも何かしら、強い意志と使命感で動いているみたいだからな」

「あの子が…………!?」

「飽くまで、俺の直感だけどな」

 

少し思案したマミだが、直ぐに顔を上げると、

 

「分かりました。話をしてみます」

「OK」

 

再び歩き出す三人。

やがて、三人の視界にマミのマンションが見えてくる。

 

「あら、もう目の前に来ちゃったか。んじゃ、そろそろこの辺で別れよう」

 

マンション手前の交差点で、竜二が立ち止まって言う。

 

「あの……、付き合って貰った所で悪いのですが、二人共本当に大丈夫だったんですか? お仕事とか…………」

「まあ、合流地点への最短ルートからは外れてるが、遅れる程のロスは無いし、心配しなくてもいいよ」

「街の案内も兼ねて、長めに猶予を取ってたからな」

 

申し訳無さそうに聞いたマミに、何でもない様に答える二人。

 

「そうですか。なら安心しました」

「それじゃあ、また何時か会える時まで。長生きしろよ」

「クリスのアドバイスを忘れるんじゃないぞ?」

 

二人はマミと別れて交差点を曲がろうとしたが、

 

「…………あの!」

 

その二人にマミが声を掛ける。

 

「まだ何かあるのか?」

「…………その」

 

マミは一瞬言い淀んだが、直ぐに笑顔を作って、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お仕事、頑張ってください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!」

 

二人は驚いた顔をするが、笑顔を作ると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「任せておけ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が去った後を、マミは立ち止まって見ていた。

 

(……うん。やっぱりそうよね…………)

 

マミはついさっきの事を考えていた。

 

(私は、あんな事を言いたかったんじゃない。本当は、クリスさん達に協力したかったんだ)

 

元々、マミは正義感の強い少女である。

漫画やアニメのヒーローを夢見ているとまではいかないが、強い憧れを持っている少女である。

半端な覚悟のまま、彼女が辛い戦いを続けられたのは、魔女退治をして人を守る使命に強く共感していたからだとも言える。

 

(この街で起こっている事だもの、私も関わる権利はあると思う)

 

だが、実際はマミは二人に協力を申し出なかった。

二つあるその理由の一つ目は、先程の勢いだけで申し出るのは間違いだと思ったからだった。

しっかり考えた自分の本気の意志でなくては、彼等の足で纏いにしかならないだろう、とマミは考えていたのだ。

そして、その二つ目は、二人の纏う雰囲気の違いだった。

 

(クリスさんは自分で選んだって言ってたけど、二人とも何か避けられない使命を背負っている様に見えた)

 

住む世界が違う、という事だろうか。

踏み込み難い何かをマミは感じていた。

 

(それに、幾ら魔法少女でも彼等からすれば子供だもの。協力したいと言った所で、適当にあしらわれるだけ…………)

 

それでも手助けしたいなら、自ら彼等の世界に踏み込むしかない。

マミの心は決まっていた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・見滝原市、工事現場付近。

 

 

 

マミと別れた竜二とクリスは下水工事の現場に来ていた。

 

「お前って、意外に面倒見いいよな」

 

唐突にクリスが言う。

 

「は?」

「いや、最初に会った時は自分の任務以外興味ないみたいな感じだったが、意外と気遣いするのだなってな」

「まあ、任務に支障があるなら切り捨てるくらいの冷酷さはあるけどね。オフぐらいは、自由にしたいのよ」

「ほお、俺も切り捨てるのか」

「クリスが切り捨てられるなら、本気で世界が終わるわ」

 

冗談半分、本気半分で言う竜二。

 

「随分と評価するのだな」

「“半年前”を知ってるからね」

 

クリスは半年前、アフリカで文字通り世界を救っている。

その事は既に竜二も知っていた。

 

「俺の“同類”と決着つけたんだってな」

「俺はどうもその類の奴に縁があるらしいな。お前で三人目だ」

「そいつは幸運だったな」

「本当にそうなら、賞金でも降ってくればいいのに」

 

他愛ない話を二人がしていると、

 

 

 

 

Captain(隊長)

 

 

 

 

工事の作業服を着た男が近寄ってくる。

 

「準備が整いました。何時でも出れます」

「了解した」

 

と、作業服の男が竜二を見て、少し厳しい目をする。

それに気付いたクリスは、

 

「“ピアーズ”。話は聞いてると思うが、彼は味方だ。あんまりピリピリするな」

「ですが隊長……」

「いいよ、クリス。俺を知ってるなら尚更だし、そもそも、BSAAとアメリカって仲いい訳じゃ無いからな」

 

 

 

過去のイザコザもあるが、方や国連の特殊部隊で、方や大国の諜報員(エージェント)である。余り友好的な関係は持てないだろう。

こんな形で、協力捜査するのが異例なのだ。

 

 

 

「レオンとかならまだしも、エージェントの中にはあからさまに敵意を向けるのもいない訳ではない。最も、俺はそういうのではないがな」

 

 

 

竜二、そしてジョージもそうだが、彼等は割と体裁を気にしない柔軟さがある。

嘗て竜二が、クリス等を呼ぶのに“背に腹は変えられない”と表現したのも、ジョージより上の“お堅い連中”に話を付けるのが面倒だったからなのだ。

 

 

 

「…………」

 

ピアーズと呼ばれた男はジッと竜二を見た後、少し息を吐くと、

 

「…………分かりました。いがみ合ってても仕方ないですしね」

 

その言葉に頷いたクリスは、改めてピアtーズと向き合うと、

 

「隊の内の二人は地上で待機。その他で、先に二人の装備を整えて真下を確保。その後、俺たちは下で装備品を受け取る」

 

「了解!」

「クリス、俺も下の確保を手伝うよ」

「よし、任せるぞ」

 

先に装備を整えさせた二人と竜二がマンホールに入っていく。

暫くすると、中から「クリア(確保)!!」と叫ぶ声が聞こえた。

 

「お前たちで上を確保しろ。飽くまで、工事の体裁に見せてな」

「「了解!!」」

 

地上に残す二人に言うと、クリスはピアーズ等と共に、マンホールに降りて行く。

最後の一人が降りると、上から装備品の入ったケースが降りてくる。

受け取ったクリスが装備を整えていると、近くで同じ作業をしてたピアーズが話し掛ける。

 

「いきなりハードな任務になりましたね……」

「初任務だと不安か? ピアーズ」

「いいえ。ただ、予想を大きく超えてきました」

 

 

 

 

 

 

彼、ピアーズ・ニヴァンスは今年になってBSAAに入隊した新人隊員である。

軍人家系の生まれだった彼は幼い頃から士官の道を目指し、米軍の特殊部隊に所属していた。

そして、その高い能力を買われてクリスにBSAAにスカウトされたのだ。

 

 

 

 

 

 

「公にならないように、偽装しながらの取引の捜査が今回の任務だ。確かに、初任務で与えられるとは思えない内容だな」

「それ位の方が、逆にヤル気出ますけどね」

 

 

 

 

 

入ったのが7月始め、そこから約2ヶ月の最終調整を受けて隊に配属。

クリスの口添えもあって、ピアーズは初任務にして支部を越えた任務につく事になった。

 

 

 

 

 

「後は、“彼”がどれ程影響を与えるか、ですね」

 

ピアーズが言いながら、周囲を警戒している竜二の後姿を見る。

 

「……そうだな。確かに、彼は未知数だ」

「出来れば、敵が“増える”事にはなりたくないですね」

「任務に出れるって事だから、まあ、可能性はかなり低いと思うがな」

 

装備が整ったので、クリスは話を切り上げて竜二の元に向かう。

ピアーズも後ろから追ってきた。

 

「整ったみたいだな。動けるか?」

 

クリス等に気付いた竜二が声を掛ける。

 

「総員、準備完了です」

 

後ろをチェックしたピアーズが、クリスに言う。

クリスは頷くと、

 

「下水道にB.O.W.が潜んでいるという事だったな」

「そうだ。今のところ、新型とリッカーだけだがな」

「何故態々下水道に? 普通はもっと被害を出すようにするのでは?」

「リッカーが下水道から地上に出てたのも考えて、恐らく相手も余り派手に動きたくないのだろう。長い戦いになりそうだ」

 

三人は下水道の先に銃を向け、ライトを点ける。

 

「今のところ、新型は最初以来出てきてないが、何時来てもおかしくはない」

「死角を作るな。固まって行動しろ」

「了解」

 

隊長の声に応え、ピアーズ等9人の隊員の声が重なる。

11人の部隊は、ゆっくりと下水道内を進み、B.O.W.の捜索を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

底の見えない闇に、彼等は踏み込もうとしていた。

 

 

 

 

 




一週間近くの間を置いて、ようやく書けました。B.O.A.です。

今回は、マミの修理とあの人達の登場でエライ字数になりました。
iPod touchからの執筆が大変でした。

そして、二章の終わりでもあります。
三章からが本番と言っても過言ではないので、応援してくれると嬉しいです。

次回も早く投稿出来るよう頑張りたいと思います。
感想、指摘等お願いします!

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