乱世を駆ける男   作:黄粋

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第三十九話

 三艘のうち真ん中を走る露橈から興覇の雄叫びが聞こえた。

 そしてその声に長江を揺るがさんとばかりの怒号でもって応える錦帆賊の皆。

 付き従うように露橈の左右斜め後ろを走る先登(せんとう)二艘からも吼え声のような怒号が轟く。

 

 友を殺す戦いの始まりだ。

 

「このまま突っ切れ!! 公苗、元代、公奕、準備は出来ているな?」

「公苗、問題ありません!」

「元代、問題ありません!」

「公奕、問題ありません~!」

 

 向かい合う形で船を走らせる。

 お互いの相対速度から接触までの時間は俺の感覚で二分と掛からないだろう。

 

「無茶な策を考えられましたな」

「錦帆賊の技量で高速で動き回る三艘の船全ての動きを止めるにはこれくらいしなければと考えたまでです」

「最悪、この船がバラバラになりますな」

「その可能性を減らす為に一番大きく、重量があるこの船の各所を不恰好になるのも構わず補強しましたので」

 

 俺は視線を正面に固定したまま、豪人殿の言葉に答えた。

 

 船体を補強したお蔭でこの露橈は、重量だけなら艦(かん)並みになっている。

 あちらも露橈級の船が一艘あるが現在の重量ではこちらが圧倒的に上回っているはずだ。

 

 正面から近づいてくる船を見据えながら豪人殿は俺の横に立つ。

 これから戦いが始まると言うのにその態度は常と変わらぬ冷静そのものだ。

 こういう人間がいてくれると言うのはそれだけでありがたい。

 

「……来るぞぉおおおおおおおお!!!!」

 

 見張り台に立っていた部下が叫び、緊張が高まる。

 既に船の上の人間の姿も確認出来るほどの距離。

 俺の並外れた視力が捉えたのは船頭に立つあの男の姿。

 こちらを見つめ、甲板で仁王立ちするその姿は奴の部下たちからすればとても頼もしい物に見えるはずだ。

 

「錦帆賊の露橈と右の先登(せんとう)の間をすり抜けるように船を進めろ!! 狙いはお互いが並ぶ直前だッ!!」

 

 前もって説明した通りに部下たちが動く。

 ばたばたと忙しなく動き回る彼らを尻目に俺はもうすぐ傍にまで迫った錦帆賊の露橈から目を離さない。

 俺の言葉を受けて櫂(前世でいう所のオールだ。読み方はかい)を漕ぐ部下たちが一斉に櫂の漕ぎ方を変えた。

 

「突っ切る。狙いは予定通り露橈だ。外すなよ!!」

 

 ごくりと唾を飲む音が自分の耳に届く。

 その時はすぐに来た。

 

「鉤縄、放てぇえええええ!!!」

「やぁあああああああ!!!」

「おおおらぁあああああ!!!」

「ほいさぁああああああああっ!!!」

 

 俺の合図と同時に俺たちから見て右側を今まさに通り過ぎようとしていた錦帆賊の露橈に向けて、何重にも編み込んで人の胴体ほどの太さになった縄が数人がかりで放たれる。

 

 公苗たちが放った物は露橈のマストに上手く絡みつく。

 元代たちが放った物は甲板に届き、お互いの距離が離れる過程で櫂を保護する壁板に鉄鉤の部分が突き刺さった。

 公奕たちが放った物は船にこそ届かなかったが、相手の船の突き出た櫂に幾つか巻き込んで絡みついた。

 

 縄の先端は忍者道具の鉤縄と同じように鉄鉤がついている為、上手く引っかかればそう易々と取れる事はない。

結果は上々だ。

 

「公盛、宋謙殿! 錨を下ろせっ!!」

「「了解ッ!!!」」

 

 甲板の両サイドに回っていた二人が自分たちの船に繋いでいた大きな錨を何人かの部下と協力して長江へ落とす。

 この策の為に作った特性の錨だ。

 

 

 この時代の船には錨は存在せず、船を止める時は櫂を上手く使って減速するか、浅瀬に向かい自然に止まるのを待つのが一般的だ。

 知識のない止まり方を想定できる人間などいない。

 その心理的盲点を存分に突かせてもらう。

 

 

 長江の河底に打ち込まれた錨が俺たちの露橈を急停止させる。

 俺たちの船が停止すれば特大の大縄で繋がっている錦帆賊の露橈も引きずられる事になるだろう。

 大縄は既に限界まで伸びきっている。

 何重にも重ねて編み込んだ成果で今の所、千切れる様子はない。

 

「全員、何かに掴まれ!! 船から振り落とされるなよ!!!」

 

 あちらの露橈は河の流れに沿うようにして操舵されている。

 船全般に言える事だが、錨の概念もない事から急に止まる事など考慮されていない。

 

 そしてあいつの事だ。

 このまま俺たちを引きずってでも船を進めようと考えるだろう。

 水上戦での彼らの利点である立ち回りの良さが無くなれば、数に物を言わせた討伐軍に包囲され状況が不利になる事は目に見えているのだから。

 

 しかしこちらの突然の急停止にあちらは引っ張られて停止せざるをえなくなる。

 錨を降ろし、操舵に影響のないギリギリの範囲で重量を増やした船は錦帆賊の船がそのまま走行を続けても、引きずられていくような事にはならない。

 

 そして推進力は状況の急激な変化にはついていけない物だ。

 

 今まで進行方向に向けていた推力。

 行き場を強引に止められたその力は新しい吐き出し口を探し、向かいやすい方向に流れていく。

 

 俺たちの船自体が巨大な楔になり、奴らの露橈は鉤縄の限界距離から弧を描くようにして走行する羽目になる。

 一時的な操舵不能状態だ。

 俺たちは三艘が横並びになった彼らの編隊の右側の先登と露橈の間に船体を滑り込ませていた。

 そして船同士が並走する瞬間に、左側にいた露橈へ鉤縄を投げつけ、その進行を強引に止めている。

 

 力の逃がしどころを求めて、勝手に左に弧を描くように進む露橈。

 俺たちの船を中心にぐるりと水上を一周したその先には後ろを進んでいた先登がいる。

 

 事態に気付いた興覇が俺たちを繋いでいる大縄を切断しようと刀を振り上げているのが見えたが、もう遅い。

 たとえ三本の縄を切り離す事が出来たとしても船の勢いは既に止められないところまで来ている。

 

「ぶつかるぞぉおおおおおお!!!」

 

 悲鳴のような怒号が錦帆賊の露橈と先登から上がり、次の瞬間に先登の横っ腹に露橈が激突する。

 重量差から先登へのダメージが酷く、外から見ても航行不能になった事が窺えた。

 

 逆に露橈の方はほとんどダメージが無さそうだ。

 元々、大きさからしてかなり違う船だからこれは仕方のない事だろう。

 露橈を振り回していた運動エネルギーも先登との衝突で消えたらしく、先登に突き刺さった状態で停止した。

 

 そして露橈の停止した場所は、本隊が待機した陸地から程近い浅瀬だ。

 陸地の本隊が直接、乗り込むには距離があるが船が動き出す事を防ぐには充分過ぎる。

 

「隊長、やりました! 成功です!!」

「落ち着け。まだまだこれからだ」

 

 こちらの想定通りに物事を進んだ事に興奮している公苗を諌めながら両腰に二本ずつ下げた棍に触れた。

 そう、ここからが正念場だ。

 

 衝突して動きを止めた二艘に船を寄せる。

 そして逆方向からは被害を免れた錦帆賊の先登も近づいてきていた。

 やはりここを死地と定めている彼らに『逃げる』という選択肢は無いようだ。

 

 お互いの船が隣接したところで錦帆賊の面々が武器を構えて、こちらを睨んでいる姿を確認する。

 その中には協力関係になったあの時からの見知った顔がかなりいた。

 

 これから俺たちは……彼らを殺すのだ。

 

 最後に興覇と目が合う。

 奴は明らかに不利な状況だと言うのに、不遜な笑みを浮かべていた。

 

「各自、得物を構えろ。奴らの船を……制圧する!」

「「「「「「「「「「「了解!!!」」」」」」」」」」」

 

 部下たちの返事を聞きながら、俺は錦帆賊の露橈に飛び込んでいった。

 

 

 

 戦う事には慣れてきたはずだった。

 海賊を相手にした時に、初めて人を殺す事への怖さを感じたけれど。

 兵士として仕えている間に、何度となく経験したその怖さに慣れていく自分に私は気づいていた。

 

 でも隊長はこの日を迎えるまでに何度も私たちに問いかけてくださっていた。

 どれだけ大丈夫だと私が言っても、それでも隊長は機会があれば今回の戦いが辛い物になると言っていた。

 

 その意味を私は今、本当の意味で理解した。

 

「やぁっ!!」

 

 軍に入ってからずっと扱ってきた大剣が……重い。

 使い慣れた重さなのに。

 短い間だったけれど笑い合った相手を傷つける度に重くなっていく。

 

 涙を流さないように唇を噛みしめて堪える。

 崩れ落ちていく錦帆賊の人達は、誰一人として手心なんて期待していない。

 全力で向かってくる相手に、手加減出来るほど私は強くない。

 

 だから、がむしゃらに大剣を振るった。

 彼らを……殺していった。

 

 息が苦しい。

 身体も思うように動かない。

 でも、ここで手を止める事だけは出来ない。

 

「……そんな顔をすんなよ、副隊長の嬢ちゃん」

 

 錦帆賊の中で一番言葉を交わした同じ年くらいの男の人が目の前に立っていた。

 その手に直剣を携えて、苦笑いを浮かべながら、でも真剣な目をして。

 

「う、ふ……うっ、うっ……」

 

 もう私は言葉を交わす事も出来ない。

 口を開けば泣き叫んでしまうだろうから。

 

 国賊を討つのを、悲しむ事は出来ない。

 だからせめて声を上げて泣き叫ぶ事がないようにと、口を噤みながら剣を構えた。

 

「嬢ちゃん。悪いが手は抜かねぇからよ。派手な一撃頼むぜ」

 

 心の底から申し訳なさそうに言いながらその人は飛び掛かってきた。

 私は迎え撃つ為に大剣を構えて、そして斬った。

 

 また身体が重くなった気がした。

 

 

 

「悪いなんて思うなんて今更だよなぁ」

「ええ、そうですねぇ。ここまで来て謝るのは筋違いでしょう。隊長とあっちの大将の中ではもう話が付いてるんですし。我々も事の次第は散々聞かされてましたから」

 

 身体の底に溜まっていく、気を抜けば噴出してしまいそうな苛立ちを無理やり押さえつけながら向かってくる『敵』を倒す董襲と蒋欽。

 普段、事あるごとに罵り合う仲である二人がお互いに背中合わせで死角を補い合うように戦っていた。

 彼らの周りには既に息絶えた錦帆賊たちの姿がある。

 

 そんな躯の中に混じる見慣れた鎧を着た兵士たちの姿に董襲は歯噛みし、蒋欽も沈痛な顔をした。

 

「何人かやられたな。流石、その辺の賊とは格が違う」

「わかってた事でしょうが。何年も国からの討伐を躱してきた方々相手に無傷でいられるはずがないって」

「ああ、わかってた。兵士なんてやってんだ。こうなる事はとっくに覚悟してたよ。けどな……こんなお互い嫌な思いしかしないような戦場で仲間が死んでいくなんて……覚悟しててもやり切れないだろうが!!!」

 

 怒りに任せて振り下ろした剣が流れ矢を叩き落とす。

 

「何から何まで同感ですがねぇ。それを表に出しちゃいけませんよ。やり切れなさを抱えてるのも苛立ってるのも泣きたいのもアンタだけじゃないんですから」

「……ああ、わかってる。すまん、八つ当たりだった」

「別に愚痴るのは構いませんよ。ただアンタの声でかいんで、周りに妙な勘繰りされないように抑えてください」

「……重ね重ね悪かった」

 

 向かってくる相手を見据える。

 誰もかれもが不退転の意思を宿した瞳で、敵対する者を睨みつけていた。

 

「おっしゃ来い! 建業は凌操隊が一の兵、董元代が相手だ!!」

「同じく凌操隊、蒋公奕と申します。返り討ちになりたい方からどうぞかかってきてくださいな」

 

 獣のように吼える董襲と、静かに不遜な言葉をかける蒋欽。

 似て非なる凸凹コンビに向かって、錦帆賊たちはどこか楽しげに飛び掛かっていった。

 

 

 

 表情の見えない兜を被り、一見すると無表情で敵を討っている宋謙。

 そんな彼に追従しながら剣を振るう蒋一は、苦い表情を隠せていなかった。

 

「あ~くそ。わかっちゃいましたがキツイですね、これ」

「公盛、思っていても口にしてはならんぞ。彼らの気持ちが無駄になりかねないからな」

「……すいません、宋副隊長」

 

 この日を迎えるまでの間、隊長たる凌操が口を酸っぱくして隊員たちに言い聞かせていた事がある。

 

 

 今までは最初から敵として想定していた相手との戦いだった。

 しかし今回は違う。

 かつて笑い合った相手に刃を向ける。

 こんな時代だ、こんな事態になる事が今回限りだとは限らない。

 お前たちが今考えている以上に、俺が今話している以上に、現実を前にした時の衝撃は大きいと思う。

 敵を倒せなくとも責めはしない、しかし無駄死には許さない。

 駄目だと思ったら引け。

 これは何よりも優先される命令だ。

 

 

 その言葉通り、蒋一は今こんな戦いをやめて逃げ出したい心境にあった。

 言葉遣いは荒いが優しい性根の青年は、知り合いを殺しているという現実に心が折れる寸前になっていたのだ。

 

「心が痛むか、公盛」

「……すいません。でも大丈夫です。甘ちゃんや新入り連中が泣くの堪えて歯を食いしばってんのに俺が逃げるわけにはいきませんから」

 

 自分よりも辛い立場のはずの彼らが戦っているのだ。

 自分だけが逃げるわけにはいかない。

 そんな意地にも似た気持ちが彼を戦場に押しとどめていた。

 

「彼らの為に泣けるのは建業に帰ってからだ。それまでは耐えてみせろ」

「了解、です」

 

 苦々しさを隠しきれない表情に自分にはない若さを感じた宋謙は戦場の喧噪に紛れるように小さく溜息を零した。

 

 

 

 父からゆずり受けた曲刀で、笑い合った人たちに斬りつける。

 私が斬りつけた傷から血が出て、痛そうに顔をしかめるのがわかった。

 

「お嬢、腕を上げられましたなぁ」

 

 苦しそうに、だけどうれしそうに笑うその人は私に船での生活の仕方を教えてくれた人だ。

 父と同じくらいお世話になった人で、父と同じくらいにしたっている人だ。

 

 その人に私は今、刃を向けている。

 こうなる事はわかっていた。

 こうなる事を覚悟していた。

 

 なのに私は言い様の無い痛みを感じている。

 

 ズキズキズキズキと。

 むねがいたむ。

 

「お嬢……行きますぞ!」

 

 槍の穂先が突き出される。

 駆狼様の放つ昆の一撃に比べれば止まっているように見える突き。

 

 私はその一撃をよけて、そして……おじさんを斬った。

 なぜか涙は出なかった。

 

 

 

「よぉ、随分と無茶な真似したじゃねぇか」

「お前たちの首をどうしても俺たちの手で取っておきたかった。その為の策だ」

 

 そう俺たちが錦帆賊を倒す為の、な。

 他の軍に手柄なんてくれてやらない。

 これはこいつらが俺たちの為にお膳立てしてくれた戦いなのだから。

 

「くくっ! ったくどこまでも律儀な奴。ああ、ほんとお前を、建業の連中を信じて良かったぜ」

 

 愛用しているのだろう曲刀を構える興覇。

 俺も腰に下げた棍を二本、両手に持って構えた。

 

「へぇ、そいつを使うのか。こりゃ楽しくなりそうだ」

「ああ。錦帆賊、そして『鈴の甘寧』の最期の晴れ舞台だ。盛大に楽しませてやるよ」

「はははっ! そいつはありがてぇな!! なら……行くぜぇ!!!」

 

 こうして俺は友と打ち合った。

 どちらかが死ぬまで止まらない戦いの始まりだ。

 

 

 

「はっはっは! まさかここまで鮮やかにやってみせるとはな! ほんとあいつには驚かされる!!」

 

 戦場の推移を森の中に潜んで見守っていた蘭雪は駆狼たちの見事な采配に大笑いしていた。

 

 彼らによって動きを封じられた二艘の船、接舷する駆狼たちの船と被害を受けなかった錦帆賊の先登。

 怒涛の展開に付いていけず、唖然としていた他領の船が今更ながら動きだし彼らを包囲しようと四苦八苦している様子がここからはよく見える。

 

「笑いたくなる気持ちは分からなくもないが声を抑えろ、文台」

「これが笑わずにいられるか、公共! どれだけの軍が奴らに煮え湯を飲まされたと思ってるんだ!? そんな奴らをたった一艘で、たった一部隊で手玉に取ったんだぞ!! やはりあいつを初めて見た時の私の勘は間違っていなかった!!!」

 

 孫家の持つ戦闘本能が刺激されているのか、瞳を爛々と輝かせながら蘭雪は私と祭に熱弁を振るう。

 祭は想い人を心配する気持ちとその鮮やかな手際に感心する気持ちとがない交ぜになった複雑な顔をして事態の推移を見守っていた。

 私は二人の様子に片手で頭を抑えながらため息をつく。

 

「我々が行動するには朱将軍からの号令がいるから一人で突撃だけはしてくれるな。それに……敵が奴らだけとは限らん。他領の連中が何か仕出かすかもわからんのだからな。そちらに目を光らせておけ、公覆」

「御意。では少々、周りを窺ってきますぞ」

 

 命を受け、二人に頭を下げると祭は部隊の人間に指示を出す。

 私は彼女の後姿を見送りながら会話を続けた。

 

「……ふむ、そうだな。本当ならすぐにでも突撃したいんだが、少々、将軍を急かしてくるか」

「迂闊な事はするな。こちらから催促なんぞしたら将軍たちはもちろん他領の連中に対しても角が立つ。あちらからの指示を待て」

「……はぁ、仕方がないとはいえまどろっこしい事この上ないな」

「それが政治という物だ」

 

 忌々しそうに舌打ち一つして戦場に視線を戻す蘭雪。

 そんな彼女の姿を見守りながら私は口には出さずに思考を巡らせた。

 

「(今回の件で間違いなく建業は、そして駆狼はさらに名を上げる。これまで以上に諸侯の風当たりはきつくなるだろう。あいつへの引き抜き、我らに対しての離間計略に暗殺。考えられる工作を挙げればキリがない。あいつの性格を考えれば計略の類に引っかかる可能性は限りなく低い。だが縁者を狙われれば……」

 

 それは最悪の予想、しかし容易に想像が出来る可能性だ。

 

「戻ったら対策会議だな。まったく……良くも悪くも話題に事欠かん男だ」

 

 錦帆賊との協力関係を確立させたと思えば、海賊団を一つ潰す。

 貴族の娘を保護したと思えば、その一族とも懇意になる。

 

「しかし、それでもあの男を手放そうとは思わん」

 

 そう、あの男は建業に無くてはならない男なのだから。

 


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