魔法世界興国物語~白き髪のアリア~   作:竜華零

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王室日記④「女王アリア即位20周年記念式典・前編」

Side エヴァンジェリン

 

今日は、王国にとって大事な式典の日だ。

毎年毎月、何かと理由を見つけては祭りを行っている王国の民にとっても、今日は少しばかり特別な日だと考えているだろう。

 

 

女王アリアの即位20年を記念して行われる、祝賀祭の日だからな。

アリアの即位から今年で20年、この20年間は王国にとって発展と躍進の20年だったんだ。

なおさら祝うだろう、それも盛大に。

好景気が続いているから消費も活発、商人達にとっても稼ぎ時だな。

 

 

「・・・うん?」

 

 

そんなわけで、王室顧問として王室一家で過ごさなければならない私もドレスを着ている。

黒を基調として、白のフリル、レース、紐で彩った簡素なドレスだ。

無論、手作りだ・・・小さな帽子もついているぞ。

面倒だが、こう言うのは形式と言う物があるからな。

 

 

「どうした、茶々丸?」

 

 

そろそろ時間だ、だからアリアや王室の連中の様子を見て回っていたのだが。

水晶宮(クリスタル・パレス)』のファリアの部屋の前の廊下で、立ち尽くしている茶々丸を見つけた。

普段は忙しそうにあっちこっちに出没するくせに、珍しいじゃないか。

 

 

「あ・・・マスター、おはようございます」

「ああ・・・で、何をぼんやりとしているんだ?」

「はい、ファリアさんのお着替えが終了するのをお待ちしております」

「着替え・・・お前が手伝うんじゃ無いのか?」

 

 

他の子供達ももちろんそうだが、ファリアの衣装や身嗜みを整えるのはナニーである茶々丸の仕事のはずだろう。

それが何故、廊下に突っ立ってるんだ?

 

 

「はぁ・・・それが、最近はファリアさんは私がお着替えをお手伝いするのを嫌がられますので」

「はぁ、ん・・・?」

 

 

心無し、茶々丸の顔が寂しそうな表情を浮かべている。

私は小さく首を傾げながらそれを見つめると、つい・・・と、ファリアの部屋の扉を見る。

・・・ふん、思春期か?

 

 

ファリアももう13歳だからな、それくらいの自我を持っていても不思議は無いか。

ユエも少し前に初潮を経験したし、難しい年頃と言うことか。

寂しいと言う茶々丸の気持ちも、わからなくは無いが。

 

 

「・・・お待たせしましたぁ」

「着替え、終わり」

 

 

その時、ファリアの部屋の中から暦と環が出て来た。

ここ10年でそれなりに成長した肢体は、ある意味で茶々丸よりも女性らしい。

・・・何だ、暦や環は良くて茶々丸だけが外なのか?

じゃあ、思春期では無い・・・のか? よくわからん。

 

 

中から出て来たのは、13歳になったファリアだ。

身長もグンと伸びて、もう追い抜かれてしまった。

綺麗に梳かれた白い髪とルビーのような赤い瞳、どこか若造(フェイト)を思わせる顔立ち。

うむ、なかなかの美形に育ったじゃないか、白のモーニングが良く似合う。

 

 

「よう、ファリア」

「・・・おはようございます、エヴァさん」

「・・・ん、おはよう」

 

 

父親に似た静かな口調に、私は少しだけ胸が痛むのを感じる。

もう、私は「お姉さん」じゃ無い。

ファリアが私から茶々丸に視線を移すと、茶々丸が小さく微笑んだ。

まるで、成長した我が子を見る母親のような目だった。

 

 

「とても良くお似合いです、ファリアさん」

「ああ、なかなか決まってるぞ」

「・・・そんなこと、無いよ」

 

 

茶々丸と私が褒めると、ファリアはかすかに頬を赤らめてそっぽを向いた。

はは、こう言う所はまだまだ可愛い坊やだな。

私は腰に片手を当てて息を吐くと、もう片方の手でくいっと後ろを指差して。

 

 

「さぁ、行くぞ。今日はお前のデビューの日でもあるんだからな」

「・・・はい」

 

 

私の言葉に、ファリアは表情を引き締める。

そう、今日はファリアの王太子としての公務デビューの日でもある。

王室顧問として、いろいろと気を回さねばならないんだよ。

 

 

それから私と茶々丸に挟まれるような形で、ファリアは歩き出す。

さぁ、行ってみようか。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

私が玉座に上ってから、20年と言う月日が経ちました。

20年と言うと凄いですが、10歳で即位しているので・・・。

平均寿命で考えると、まだあと50年は行けそうな気がするんですよね。

 

 

何しろ、国王には定年退職とかありませんから。

毎日お仕事がいっぱいで、決まった休暇も無く、むしろ休暇があっても緊急の案件の決裁をしなければならなくなったり、いくら残業しても怒られず、かつ体系化されたお給金も無く・・・。

・・・天国はあります、ここにあります・・・。

 

 

「おはようございます、母様、父様」

「はい、おはようございます、ファリア、シンシア、ベアトリクス、アン・・・」

「うん、おはよう」

 

 

朱塔玉座(ヴァーミリオン・タワー)内の、玉座の間にまで直結している王族の私室の中で、私とフェイトは子供達の歓待を受けます。

ファリアが代表して朝の挨拶をしている間に、3歳になったアンが私のドレスのスカートにしがみ付いてきます。

 

 

それに苦笑しながら、私はアンの綺麗な金色の髪を撫でてあげます。

アンもそうですが、シンシアとベアトリクスの髪も綺麗な金色の髪です。

私も幼少時は同じ色合いでしたが、もう戻ることは無いでしょう。

 

 

「・・・こほっ・・・」

「あ・・・大丈夫ですか、アン?」

「へいき、です・・・」

 

 

か細い声で答える3歳の娘に、私は心配になります。

アンは身体の弱い子で・・・何ヶ月かに一度は熱を出して寝込んでしまうんです。

今日は重要な式典なので、子供達もある程度は参加しないといけないのですが・・・。

 

 

「・・・栞君、頼めるかな」

「畏まりました、フェイト様。今日1日、アン様のお傍仕えをさせて頂きます」

「私からもお願いしますね、栞さん」

仰せのままに(イエス・ユア・)女王陛下(マジェスティ)

 

 

10年以上の付き合いになり、すっかり気心の知れた仲の栞さん。

コーヒーを淹れる腕前は今や超一流、王宮でもちょっとした有名人です。

フェイトガールズは今や、それぞれが1人1人の子供達の付き人でもあります。

 

 

「平気です、ママッ」

 

 

そんな中、10歳になったシンシアが胸を逸らして「えっへん」、と腰に両手をつけます。

・・・発育、良い子なんです。10歳なのにもう・・・。

 

 

「私がアンの面倒を見てあげます、お姉ちゃんですからっ」

「・・・うん、そうだね」

「兄様っ、私、頑張りますっ」

 

 

シンシアの言葉に、ファリアが小さく微笑みます。

シンシアは感激したように声を上げますが、何でしょうか、最近少し心配になります。

ブラコン・・・いえ、実はファリアがシスコンなのかもしれませんが。

 

 

「・・・ベアトリクスも、頼むよ」

「・・・はい、お父様」

 

 

一方、6歳になったベアトリクスはフェイトに頭を撫でられて、顔を赤らめています。

可愛い子ですが、とても引っ込み思案で人見知りな子なんです。

兄弟姉妹の遊びの輪に加わることも少なく、窓辺で静かに本を読んでいるような子。

まぁ、それはそれで個性と言う物ですからね。

 

 

「お待たせ致しました」

 

 

その時、茶々丸さんが私室に入って来ました。

その後ろにはエヴァさんもいて・・・茶々丸さんの手には、1歳の赤ちゃんが抱かれています。

アルフレッド・アリスティデス・エンテオフュシア・・・私とフェイトの、5人目の子供。

 

 

「そろそろ時間だぞ、式部官の声に続いてそれぞれ玉座の間へ入ってくれ」

「はい、わかりました・・・皆、ちゃんとするんですよ?」

 

 

アルフレッドを茶々丸さんから受け取りながら私がそう言うと、子供達はそれぞれに返事をします。

思えば、子供達を公式な場で全員式典に出席させるのは、今日が初めてですね。

 

 

「暦さん達も、子供達のフォローをお願いしますね」

「「「「「仰せのままに(イエス・ユア・)女王陛下(マジェスティ)」」」」」

 

 

白のモーニングを着たファリアには、暦さん。

薄桃色のドレスのシンシアには、環さん。

群青色のドレスのベアトリクスには、調さん。

白いドレスのアンには、栞さん。

そしてアルフレッドは私が抱いて玉座へ、しかる後に焔さんにお任せします。

 

 

・・・では、今日も「お仕事」に行きましょうか。

フェイトや皆と頷き合って、いつものように自信に溢れた、国の象徴としての顔で。

 

 

「始祖アマテルの恩寵による、ウェスペルタティア王国ならびにその他の諸王国及び諸領土の女王、国家連合イヴィオンの共同元首、また魔法世界(ムンドゥス・マギクス)連邦元首会議議長にして法と秩序の守護者、全臣民の母、アリア・アナスタシア・エンテオフュシア陛下、御入来!!」

 

私は、玉座に座ります。

これまでも・・・そして。

これからも。

 

 

 

 

 

Side クルト

 

宰相の任期は、庶民院のそれと同じ5年です。

庶民院の開設は10年と少し前で、昨年3度目の庶民院選挙が行われました。

まぁ、結果として私は3度目の宰相を正式にアリア様から拝命したわけです。

つまり、あと4年少々は第3次ゲーデル内閣を率いることになるわけですね。

 

 

とは言え私の場合、議会が開設される前の10年間も宰相だったのですがね。

合計すれば、20年。

アリカ様のために動いていた20年と合わせて、40年。

まさに人生の大半を、ウェスペルタティアのために使ったと言えるでしょう。

厳密に言えば、アリカ様とアリア様のために。

 

 

「女性のために人生を捧げたと言うと、好印象な感じがしますね。いつか出す回顧録には、この一節を入れておくことにしましょう」

「・・・聞こえますよ」

 

 

1人でうんうんと頷いていると、私の横に立っていたヘレンさんがそんなことを囁いてきます。

それは失礼。

顔を上げると、そこは朱塔玉座(ヴァーミリオン・タワー)の玉座の間。

赤い絨毯とビロード、そして煌びやかなシャンデリアで彩られた女王のための部屋です。

三方の窓からは遥か遠く、オスティアの光景を見ることができます。

 

 

「・・・即位20年にあたり、ここに集まられた皆様の祝意に深く感謝致します。即位以来、20年の月日が経った事に深い感慨を覚えます。この間には我が王国で、また魔法世界で、様々な事が起こりました。民の皆様が共に協力し、努力し、今日を築いてきたことに思いを致し、今後も皆様が力を尽くして、より良い世界を築いていくことを願っています」

 

 

耳に入るのは、即位20周年の「お言葉」を読み上げる美しい女性の声。

玉座の周りに夫君とお子様方を置き、お膝の上には第2王子のアルフレッド殿下を抱いておられます。

 

 

即位した時は10歳の少女だったアリア様は、今ではかつてのアリカ様を想わせるご容姿に。

まぁ、一部のスタイルはかなり違うと申し上げておきますが。

列の最前列でアリア様に拍手しておられるアリカ様も、実年齢よりも20は若く見えて・・・エンテオフュシア家は、老化が遅いと言う遺伝子を始祖(アマテル)から受け継いでおられるのかもしれませんね。

 

 

「大義です」

 

 

女王の「お言葉」の次は、国内外からのお祝いの品が玉座の間に持ち込まれます。

国内の貴族や経済界の大物、あるいは外国の大使や祝賀使節がアリア様の前に跪き、貢物を献上するわけですね。

各国平等を謳いつつも、事実上はアリア様の非公式帝国ですから。

 

 

イギリカ侯爵領の即位20周年ガラスペン、グリルパルツァー公爵領の職人ガンダルの記念万年筆、オスティアの高級絹「白虹絹」、宝飾店「シュトラウス」のダイヤ・・・王室御用達(ロイヤルワラント)の数々。

そしてアキダリアの色とりどりの花が描かれた民族衣装アオザイ、黒字の着物に苺の花が描かれ花弁が動いて見える民族衣装、龍山連合の「夜桜」・・・次々と貢物が献上されます。

まぁ、貢物のグレードで王国の援助額に幅が出ま・・・・・・って、オイ。

 

 

「中央エリジウム自由国大首領、デュナミスにございます」

「・・・ご尊顔を拝し奉り、光栄に存じます。セクストゥムにございます」

 

 

何か、仮面を被ったバカと無表情な白髪の女性が前に出て来ました。

と言うか大首領って国のトップが名乗って良い名称じゃないでしょう。

いや、それ以前に、何故ここにいる。

 

 

アリア様も笑いを堪えているような表情で・・・。

・・・大人しくしていてくださいよ。

今日はこの後、重要な局面が多々あるのですからね。

 

 

 

 

 

Side ファリア・アナスタシオス・エンテオフュシア(13歳)

 

・・・はぁ、と、誰にも気付かれないように小さく息を吐く。

午前中はずっと母様へのお祝いの品の献上の式典が続けられて、立ちっぱなしだった。

ようやく座れたのは、昼食会が始まってからだった。

 

 

朱塔玉座(ヴァーミリオン・タワー)内の大広間の1つ、そこに国内外の賓客を集めての昼食会。

主宰は母様、300人以上のお客様が序列に従って縦長の2列の椅子にズラっと並んでいる。

僕は王太子だから、母様と父様に次ぐ位置に座っている。

シア達は、少し離れた位置になってしまっているけれど・・・。

 

 

「・・・それでは、我が王国のこれまでの発展と、これからのさらなる飛躍を祝して・・・乾杯」

「「「乾杯」」」

 

 

母様が静かにグラスを掲げると、僕を含めた他のお客様達もほぼ同時にグラスを掲げる。

食前酒は非公式ながら王室の象徴でもある、苺の果実酒。

母様はお酒が飲めないし、僕のような未成年もいるから・・・そっちは、苺のジュースだけど。

 

 

「では、しばしの間・・・お楽しみくださいませ」

 

 

母様の言葉で、昼食会が始まる。

これから2時間の日程で続く昼食会の後は、まだまだ予定が詰まっている。

正直、僕はもちろんシア達の体力が保つのかが心配だ。

特に、アンは身体が弱いから・・・栞がついていると思うから、一応は安心できるけど。

 

 

一方で、母様と父様は疲れた様子も見せずに周囲のお客様と歓談している。

歓談しつつ食事もスマートに進めるのだから、手慣れていると思う。

僕は周囲の貴族や使節の方々との会話も上手くできないし、会話に集中すると食べる手が止まってしまう。

凄いな、母様も父様も・・・。

 

 

「お飲み物のお代わりはいかがですか?」

「え・・・あ、うん」

 

 

斜め後ろから、暦が僕のグラスに苺のジュースを注いでくれる。

その作業を進めながら、誰にも聞こえないように小さな声で。

 

 

「大丈夫、殿下は誰よりも素敵です」

「・・・ありがとう」

 

 

侍女(メイド)服姿の暦は、にっこりと微笑んでくれる。

いつも僕に優しい、ナニーの暦。

暦の優しさは、いつも僕を助けてくれる。

 

 

「オスティア牛ヒレ肉のポワレにございます」

 

 

それから、新しい料理が運ばれてくる。

肉料理、ユエが苦手そうだな・・・と思いながら顔を上げると、茶々丸がいた。

あ、う・・・。

 

 

「・・・? どうかされましたか?」

「な、何でも・・・無いよ」

「・・・左様でございますか」

 

 

・・・どうしてだろう、最近、茶々丸の顔が上手く見れない。

それでいて、茶々丸が笑うと凄く頬が熱くなる。

何でだろう・・・茶々丸の前だと、上手く喋れない。

 

 

暦や環なら平気なことでも、茶々丸がいると変な気持ちになる。

僕、病気なのかな・・・?

 

 

 

 

 

Side アリカ・アナルキア・エンテオフュシア

 

王国北部原産の海の幸のブイヤベースやきのこのクリーム煮などに手を付けながら、私は近くの席の者達と歓談を楽しんでおる。

時折、給仕の侍女が飲み物を注いだり新しい料理を持ってくる以外は、落ち着いた昼食会じゃ。

 

 

私はそれこそ幼い頃から経験を重ねておる故、慣れておる。

アリアも問題無かろう、即位20年と言う経験は伊達ではあるまい。

問題は孫達じゃが、私の位置からではどうすることもできぬ。

王族として最低限度のマナーは学んでおるはずじゃが、さてどうか。

 

 

「あ、すまねぇけどパンのお代わり頼むわ」

「畏まりました、ナギ様」

 

 

私の隣には、もちろんナギがおる。

途中の8年間を封印されておったためか、それとも老けにくい体質なのかはわからぬが、外見はまだそれなりに若い。

と言うか、年を経ても未だにガキ大将的な気分が抜けん奇妙な奴じゃ。

 

 

ファンクラブとか言う団体は未だ健在、最近は・・・えーと、何じゃ「渋カッコ良い」路線が売れ筋じゃとか聞いておる。

何を売るのかは、さっぱりわからぬが。

まぁ、アリアの親衛隊のような物じゃろ。

 

 

「ナギ、もう少し口調を改めよ」

「んぁ? ああ、ああ、うん。悪ぃ」

「恥をかくのはアリアや孫達なのじゃからして・・・」

「わかったわかったって」

 

 

じゃから、その手をヒラヒラ振るのをやめよと言うに。

まったく、いつまでたっても王族らしくならぬ奴よ。

しかも困ったことに、孫達には大人気なのじゃよな・・・。

 

 

ナギは格式の高い家の大人には不人気な面もあるが、子供が相手となると別じゃ。

何のカリスマがあるのかはわからぬが、孫達や子供はナギに良く懐く。

べ、別に羨ましいわけでは無いぞ。

それに、まぁ・・・私もナギのそのような面に惹かれた1人じゃしな。

 

 

「いや、しかし盛大な催し物ですなぁ、アリカ様」

「・・・気に入って頂けたのなら、陛下(むすめ)も喜びましょう」

「これだけの式典を催せるのは、いや、さすがは女王陛下と言うばかりで・・・」

「まぁ・・・そのような」

 

 

おっと、いかんいかん、ナギに引き込まれる所じゃった。

私はナギとは反対側の席に座っておる貴族との歓談を再開し、取りとめは無いが重要な会話を続けた。

アリアから式典の参加者全員に贈られた陶磁器の皿についての話や、この後の拳闘大会観覧の話など、いろいろなことを話す。

 

 

ちなみにこの後の拳闘大会で登場する「オスティア・フォルテース」と言うチームは王室所有のチームで、元オスティア難民の拳闘士が多く在籍しておる。

私にとっても、感慨深い試合になろう。

・・・楽しみじゃの。

 

 

 

 

 

Side トサカ

 

女王アリア杯(クィーン・アリア・カップ)

アリア女王の即位20年を祝って新設された拳闘大会で、世界杯(ワールド・カップ)やイヴィオン・ゲームズと並んで大きな拳闘大会・・・ってことになってる、今年からな。

魔法世界中から有名所のチームが集まる、ウチもそうだ。

 

 

だからもちろん、今年が記念すべき第1回大会なわけだ。

んでもって、決勝戦はアリア女王やアリカ様達王室のメンバーも観覧に来るって話だ。

王室はこのチームのオーナーなわけだが、それはもうアレだ、二義的な問題でしかねぇ。

 

 

「よぅし・・・この大会こそは優勝飾るぞゴルァアアァァッ!!」

「「アニキィ―――――ッ!!」」

「気合い入ってるねぇ、トサカは」

「まぁ、万年2位だからな、ウチのチーム」

 

 

俺の雄たけびに、ピラとチンが声を上げる。

よぅし、ノってんな野郎共!

だけどバルガスの兄貴とママはノってこなかった、空気読んでくれよ!

ママは、今や王宮の侍従長さんだけどな。

 

 

けどバルガスの兄貴の言う通り、ウチのチームは万年2位のチームだ。

どこのどんな大会に出ても2位、勝率やチームの規模、収益率や獲得賞金額、その他とにかく何でもかんでも2位!

このチーム呪われてんじゃねーのかってくらい、2位!

1位にもならねーけど、3位以下にもならねぇ!

 

 

「だぁが、それも今日までだぜ野郎共ォオオォ――――ッッ!!」

「「アァニキイィ――――――ッッ!!」」

 

 

今日こそ・・・今日こそは!

今日こそはアリア様やアリカ様のチームとして、優勝して見せるぜ!

これまでの脇役人生とおさらばして、ついに今日、俺は主役になってやるぜ!!

 

 

「・・・っし! 行くぜ!!」

「「アニキッ、ファイトォっす!!」」

「焦ってコケるんじゃ無いよ」

「落ち着いて行け」

 

 

チームメイトの声を背に、俺はオスティアの闘技場に続く階段を駆け上がる。

そして、熱い太陽の日差しと共に現れる大観衆。

流石は決勝戦、そして遠目にVIP席に見えるのは間違いなく俺達(オスティア)の女神。

審判の女のマイクパフォーマンスも、今は届かないぜ。

 

 

『さぁ、それでは決勝戦の相手は、はるばる帝国からやって・・・・・・え、嘘、コレ良いの?』

 

 

ふふん、相手チームの弱点モロモロ、全て研究済みだぜ!

今日の俺は、気合いがかなり違うからなぁ・・・!

 

 

『え、えーっと・・・驚くなかれ、本日の帝国チームの代表選手! 何かいろいろ噂のある最強の奴隷拳闘士、数多の伝説を残す帝国最強の漢!・・・その名も!』

「よっし! かかって来いやゴルァッ!!」

 

 

俺はいつでも準備万端だぜ!

見ててくださいよ、アリア様にアリカ様・・・!!

この大会こそ、優勝カップを持ち帰りますぜ!

 

 

 

『その名も・・・・・・じゃ、じゃじゃじゃ、ジャック・ラカ―――――ンッッ!!』

 

 

 

・・・・・・終わった、いろいろと。

やっぱ今年も、2位かぁー・・・。

 

 

 

 

 

Side テオドラ・ バシレイア・ヘラス・デ・ヴェスペリスジミア

 

「こっの・・・戯け戯け戯け、戯けぇ――――――――っっ!!」

 

 

女王アリア即位20周年式典と言うことで、もちろん帝国の長たる妾も招待を受けておる。

夫であるジャックも当然、まぁ、一緒に参加しておる。

こう言うのは夫婦同伴が基本じゃからな、当たり前じゃ・・・が!

 

 

「戯け! 戯け・・・この、戯けがっ!!」

「いや、あのチームのオーナーがラカン財閥でよ。そこのトップから頼まれてよ、ホラ俺アイツとマブダチだし」

「たぁわっ・・・けぇ―――――!!」

 

 

ぱしぱしぱしぱしぱし・・・がすんっ。

最初の張り手の音、最後のはグーで殴った音じゃ。

ジャックの身体は鋼鉄のような物じゃから、欠片も効いておらんが。

くそぅ・・・バグめっ!

 

 

「ああ、もう・・・どうして主はそうなんじゃ」

「そうだぜジャック! 何で俺にも声かけてくれねーんだよ!!」

「ナギ! この戯けめが!」

 

 

闘技場のVIP待合室、個室であるそこで妾はジャックを責め立てておる。

ナギとアリカもおるが、別にウェスペルタティア王室として抗議にきたわけでは無い。

じゃが後で抗議されるかもしれぬ、だって女王の名を冠した大会で帝国の夫君が優勝って。

しかも登場の仕方が最悪じゃったし・・・!

すまぬ、良く知らぬが相手のチームの選手よ。

 

 

「いやホラ、良く見てくれよ。ジャックじゃなくてシャック・ラカンで登録してあったんだ。実況のねーちゃんが間違えただけで。それにデュナミスの仮面借りてたし、大丈夫だって」

「それが何の慰めになるんじゃあぁ―――――――っっ!!」

 

 

がすんっ・・・顔面を殴っても、さっぱり効かぬ。

むしろ、妾の拳が痛いのじゃ・・・。

 

 

「終わった・・・今年の王国・帝国関係は冷却下して終わりじゃ・・・」

「おいおい、今年はまだ始まったばっかだろー?」

「なおさら悪いわっ!」

 

 

あうぅ・・・弱ったのじゃ、ヘラス帝国支配地域に外資・・・ウェスペルタティア資本を呼びこむのが今回の訪問の目的じゃったのに。

ヴァルカン―ニャンドマ間の国境地域に新産業地域を創設して、80億ドラクマの巨額投資を引き出す予定じゃったのに・・・貨物専用鉄道を背骨に工業団地や物流基地を作るはずじゃったのに・・・。

エネルギー供給とか工業用水のインフラ整備とか・・・他にもいろいろ案件があったのに。

 

 

「だ、大丈夫じゃテオ、たぶん、クルトもそんな重箱の隅をつつくかのような真似は・・・」

「・・・しないと思うのかの?」

「・・・」

 

 

アリカは、曖昧に笑いおった。

良いんじゃアリカ、もうその気持ちだけで・・・。

ふ、後であの陰険眼鏡宰相にグチグチ言われるくらい、何てこと無いわ。

 

 

そう、妾には帝国の民の生活水準を昂進させると言う責務があるのじゃ!

この程度のことで、負けてはおれぬ。

待っておれよ、我が民よ。

妾は必ずやウェスペルタティアから譲歩を引き出してじゃな・・・!

 

 

「・・・お疲れ様・・・でした・・・」

「お、サンキュー。いや、義姉貴(あねき)はいつも気が利くよなぁ」

「・・・嗜み・・・です・・・」

 

 

・・・頑張れ、妾。

帝国の明日は、妾にかかっておるのじゃから・・・!

 

 

 

 

 

Side アリア

 

あえて何も見なかったことにしつつ、式典は何事も無かったかのように次へ進みます。

何せ愛用の京扇子を開いて口元を隠し、そして開いた時にはある選手の攻撃でクレーターができた闘技場が綺麗に修繕されていましたから。

 

 

・・・相変わらず、親衛隊の工作班は良い仕事しますね。

でも何故でしょう、麻帆良の工学部の人達を思い出してしまったんですけど・・・。

スケールこそ違いますが、似たような光景を見たことがあるのかもしれません。

私が京扇子を軽く振ると、王室専用特別席(ロイヤルボックス)の傍にいた担当官が慌てて動きます。

 

 

「・・・相変わらずだね、彼は」

「そうですね」

 

 

フェイトの声に小さく微笑んでから、私はすぐに今の光景を忘れます。

ここ20年で学んだことは、王室には時として「見ないフリ、見なかったフリ」が必要な時があると言うことです。

そして修繕された闘技場では、次は軽やかな音楽が流れ始めます。

 

 

登場するのは拳闘士では無く、いつかオスティアのお祭りに登場した移動サーカス団です。

奇跡の箱(パンドラ)」と言う名のそのサーカス団を呼んだのは、子供達・・・特にファリアのためですね。

人間離れしたエンターテイメント、それこそ10年ぶりですけど・・・。

 

 

「・・・ファリアは1度、見ているんですよ?」

「え・・・そうなのですか、母様?」

「ええ、うふふ・・・」

 

 

お腹の中にいた頃ですけどね。

・・・あれ、それってつまり、見て無いんじゃないですかね?

・・・無意味に子供を混乱させたかもしれません。

 

 

なお、このサーカス団の模様は全国中継されます。

そして記念日と言うことで、10歳以下の子供達を2000人ほど闘技場に招待しています。

子供達は全て無料で、王室費から2000人(子供料金)分をサーカス団に支払っています。

私が普段から懇意にしている孤児員の子供達も、たくさん来ています。

朝のお手紙の中に、「サーカスが見たい」との要望があったのを思い出しまして。

 

 

『はぁい、ピエロのお兄さんから子供達にプレゼントだおーっ』

 

 

サーカス団の三つ子ピエロの声と同時に、ぽんっ、と小さな破裂音。

闘技場の空から、小さな傘のついたお菓子袋が子供達に降り注ぎます。

・・・あ、うちの子供たちにも来ましたね。

 

 

「良かったですね、アルフレッド?」

「・・・うぃっ」

 

 

膝の上に乗せている小さな息子も、お菓子袋を手に笑顔です。

まだ食べれませんけど、プレゼントは嬉しいですものね?

頭を撫でて上げると、アルフレッドはにへら~っと可愛らしい笑顔を見せてくれます。

 

 

・・・その後、サーカスの後にはやはりオスティアのお祭りにも来ていたチゼータ三姉妹の剣舞、そしてザラキエル・ルーナ・コラールの無料チャリティーコンサートなどが続きます。

子供達の歓声を聞きながら、私はアルフレッドを抱っこしていました・・・。

 

 

 

 

 

Side シンシア・アストゥリアス・エンテオフュシア(10歳)

 

はぁ・・・疲れた。

ママとパパに教えられた通り、いつでもどこでもニコニコしてます。

正直、ほっぺが痛い・・・。

 

 

「んぅ・・・疲れたぁ・・・」

「・・・まだ、途中」

「はぁい、ナニー・・・」

 

 

私が王室用のお手洗いの中で大きく背伸びしていると、傍に立っている環が呟くように指摘してきた。

環の言う通り、まだまだ式典の予定はたくさん残っています。

ああ、考えただけでも疲れちゃいそう・・・。

 

 

でも、頑張らなくちゃ・・・王女の務め、だもん。

だけど私でも凄く疲れちゃうから、アンが熱を出してしまったの。

アンは身体が弱いから、長時間拘束されるような式典は辛かったのでしょう。

パパとママも心配していたけれど、式典を抜けることができないから・・・。

 

 

「アンの様子、何か聞いてる?」

「・・・問題無い、栞がいる。シンシア様は心配しなくて、良い」

「・・・そうね、栞がついてるものね」

 

 

ちょっとだけ、怒られた気分です。

ぱんっ・・・とお手洗いの鏡の前でほっぺを叩いて、気持ちを入れ替えます。

アンは心配だけど、でも私は私のやるべきことをいなくちゃ。

私がちゃんとしないと、パパとママだけじゃ無くて兄様にもご迷惑がかかるもの。

 

 

環に身嗜みを軽く整えさせてから、お手洗いから出ます。

クルトおじ様が他の国の人達と会談している間は、私達は休憩時間。

ママとパパは、ヘラスの皇帝陛下と会ってるって・・・本当、凄いよ思う。

疲れたりとか、しないのでしょうか・・・?

 

 

「・・・えぇ、本当?」

「うん、私、宮内省の人達が話してるのを聞いて・・・」

「・・・?」

 

 

お手洗いから出た時、少し離れた位置で侍女が2人、何かを話していました。

まぁ、だからと言って別に何も思いませんでしたけど・・・。

侍女の噂話なんかに、興味無いもの。

 

 

「本当なの、それ・・・今夜の舞踏会で」

「うん、そう・・・探すって話でね・・・」

 

 

早くママの所に戻って、ベアトリクス達の面倒を見てあげないと。

私、お姉ちゃんなんだから・・・。

 

 

 

「そう、ファリア殿下のお嫁さん探しを兼ねてるって話でね」

 

 

 

でもそれ以前に、妹だから!!

 

 

「ちょっと、その話・・・少し詳しく説明なさい」

「え・・・あ、お、王女殿下!?」

「し、シンシア様? いえ、その私も人づてに聞いただけですので、その・・・」

 

 

両手に腰を当てて、噂を聞いたって侍女を下から見上げる。

兄様の、お嫁さん探しですって・・・?

・・・兄様のお嫁さんは、私なのに・・・!

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

テオドラ陛下を含む各国元首との交流を済ませた後、夜の予定のために港へ移動する前のわずかな時間を使って、僕は『水晶宮(クリスタル・パレス)』の育児部屋(ナーサリールーム)に向かう。

アリアは無理だ、主役だからね。

 

 

僕なら他の者には不可能な速さで移動できるし、アリアよりは仕事が少ないからね。

とは言え、あまり長時間アリアの傍を離れることもできない。

だから、ほんの数分ほどのことでしか無い。

 

 

「・・・ありがとう、栞君」

「いえ、当然のことをしたままでですわ」

 

 

僕がお礼を言うと、侍女(メイド)服姿の栞君がしっとりと微笑んだ。

育児部屋(ナーサリールーム)には子供達のためのベッドがあり、今はその内の1つが使われている。

僕とアリアの3女、アリア・・・アン。

 

 

小さな身体を薄いパジャマに包んだ僕の娘は、ベッドの中で眠りについている。

侍医に薬を処方されて、氷枕なども使って・・・熱のせいか、少し頬が赤い気もする。

侍医の話では微熱で、疲れが出ただけだろうと言うことだ。

 

 

「朝には熱も引いて、お元気になられるそうですわ」

「・・・そう、良かった」

 

 

そっ・・・と、アンの綺麗な金色の髪を撫でる。

具合が悪くなったと聞いて、僕もアリアも心配していたのだけど・・・まだ、3つだからね。

仕方が無い、今はゆっくりと休むと良い。

・・・アンの額に軽く口付けてから、僕はベッドから離れる。

 

 

「・・・悪いけど、ついててあげてくれるかな」

「畏まりました」

 

 

深々と頭を下げる栞君にもう一度お礼を言って、僕は育児部屋(ナーサリールーム)から出る。

さて、アリアの所に戻らないとね。

今夜は、空の上の舞踏会だから・・・。

 

 

・・・不意に、足を止める。

右手の甲で軽く口元を押さえると、こほっ、と咳が出る。

少し呼吸が苦しくなって、身体が軋むように動きを止める。

そんな状態が、2分ほど続く。

 

 

「・・・・・・ん、風邪かな」

 

 

誰にともなく「嘘」を吐いて、僕は身嗜みを軽く整える。

それから、何事も無かったかのように歩き出す。

今日も仕事がたくさんだからね、早く戻らないと。

 

 

・・・そう、まだやることはたくさんあるんだ。

だから僕は、まだアリアや子供達の傍にいないと。

だけどあと、どれくらいの時間を僕はアリアや子供達のために使えるのだろうか。

・・・僕の疑問には、誰も答えてくれなかった。




アリア:
アリアです。
本日は私の即位20年をお祝い頂きまして、誠にありがとうございます。

フェイト:
・・・ありがとう。

アリア:
さて、前回クルトおじ様が少し申し上げたように・・・今回は、私達の最愛の子供達をご紹介しますね。
少しだけ未来の話などもありますので、お楽しみ頂ければ幸いです。
では、どうぞ。


ファリア・アナスタシオス・エンテオフュシア
長兄、父親の因子を最も強く受け継いだ第1王子。
白い髪と赤い瞳、父に似た顔立ちから国民の人気は実は他の弟妹に劣る。しかし王家の血を最も色濃く受け継いだのは彼であり、一般には知られていないが彼は「黄昏の姫御子」としての才能を持っている。また、アーウェルンクスの持つ全ての情報と経験を魂に刻まれており、母から「複写眼(アルファ・スティグマ)」と言う特殊な魔眼をも受け継いだ。そのため、個人的な才能では他の弟妹を圧倒する。
母親への愛情は深く、誕生日の贈り物を大事に取っている。一方で父親には苦手意識を持っているようだが、愛情が無いわけでは無い。弟妹からは「優しいお兄ちゃん」と言う認識を受けている。

(未来のお話)
成人して後は経験を積むためオレステス総督、龍山連合総督、テンペ総督などを歴任、魔法世界中を訪問し王国の平和外交の象徴となる。
王国の歴史上最も長く王太子であり続けた人物でもあり、母から王位を受け継いだのは81歳の時。
わずか1年の在位の後に崩御、子供は国内の大貴族出身の正妃との間に王子が1人と王女が1人。


シンシア・アストゥリアス・エンテオフュシア
長姉、5人の子供達の内で最も奔放かつ明るい性格。金色の髪に青い瞳の美しい少女で、母と祖母の面影を残す容姿をしており、エンテオフュシアの外見的特徴を最も良く受け継いだ。人当たりの良い性格と細かいことに頓着しない性格により、国民の人気は最も高い。ただ元気が過ぎて父親や母親から叱責を受けることもあるが、生来の性格のためか人から恨まれることは何故か少ない。
そして兄が母から魔眼を受け継いでいたように、彼女もまた魔眼を受け継いでいた。「殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)」である。本人も勉学よりも運動を好んだため、王室顧問エヴァンジェリンによる戦技訓練を5人の中で唯一、受けることになる。
最大の特徴は、兄を愛していること。

(未来のお話)
後に「学び舎の母」と呼ばれることになるシンシアは、ウェスペルタティアの貧しい地域に私財で学校・病院・孤児院などを建てて行く。本人は医療や教育に関する知識を全く持っていなかったが、その重要性は理解していたとされる。そのため彼女は貧困層からの支持を受けることになるが、これは貧民街(スラム)にパイプを持つ叔父の存在が大きかったとも言われている。


ベアトリクス・アタナシア・エンテオフュシア
次女、金色の髪に赤い瞳を持つ物静かな少女。人見知りが激しく、あまり社交的とは言えない性格。
外で運動するよりは部屋で読書をすることを好み、父親も母親もそこは娘の個性として受け入れているようである。数いるナニーの中でもフェイトガールズの調に懐いており、逆に暦や焔などの活発な女性達には苦手意識を持っている様子。そのため調がパルティアに戻った後も、毎日のように文通を続けた。
母親から魔法薬・魔導理論に関する才能を受け継いだのか、机の上で物を考える力に優れている。それに関連して王室顧問エヴァンジェリンが理論面での師となり、共に机を並べることが多かったユエ・マクダウェルとは5人の中で最も気心の知れた仲となる。

(未来のお話)
成長して後はアリアドネーに留学、そこで魔法薬に関する博士号を取得、研究員の資格も得ることになる。王国に戻って後は、慈善事業を精力的に行う姉シンシアの補佐として活躍、姉の思い付きの事業が軌道に乗れたのは、多くは彼女の功績である。後に外国人と結婚し、王子を1人出産してこれを「フェイト」と名付ける。実は隠れファザコンだった模様。


アリア・アンジェリク・エンテオフュシア
母の名を受け継いだ第3王女、金色の髪に青と緑の色違いの瞳と言う容姿を持つ少女。
身体が弱く、産まれた時から病気がちであった。そのためベッドで過ごすことが多く、兄や姉が持ち込む外の話を聞くのを喜んだ。姉であるシンシアが後に病院の建設事業に力を入れるようになったのは、彼女の存在が大きいとも言われる。室内での読書を好む姉ベアトリクスからは良く本を貰い、その影響で彼女も学問への関心が高くなることになった。病弱と言うこともあって、父親と母親からは特に心配されていた。誕生日を同じくするココロウァ家のルチアとは、生涯の親友となる。

(未来のお話)
姉ベアトリクスの影響で学問への関心が高かったが、姉のように外国への長期留学が可能な体力はついにつかなかった。むしろ彼女の功績は王室の家庭像を赤裸々に綴った「王室日記」と言う本の執筆にあり、王国臣民の王室への親近感を高めることに貢献した。「出産は命と引き換え」と侍医から言われた彼女は恋仲にあった国内貴族の青年と結婚後、まさに「命と引き換え」に王女を出産。2年後に夫も後を追うように死去、娘は姉シンシアの養女となる。


アルフレッド・アリスティデス・エンテオフュシア
末っ子の第2王子、法的には第2王位継承者となる。
母親以上に、3人の姉に非常に可愛がられている。その分、父親や兄との関係が希薄になっているとも言われるが、誕生日の際には2人からも心のこもった贈り物を受け取っている。父親からは人間性を、母親からは愛情を、シンシアからは外への好奇心を、ベアトリクスからは学問への関心を、アリア(アン)からは他者への慈しみの心を受け、学び、健やかに成長することになる。そのためか多少甘えん坊だが、献身的なナニー達により厳しく躾けられて育つ。

(未来のお話)
成長した後は、士官学校に入学。軍人王子として軍事面から母、そして兄を支えることになる。
母と兄の死後は元帥の地位にあった彼が兄の子供達を守護、王位継承の正統を守ることになる。自らは妻との間に3人の子を儲けるが、全て女子。しかし彼の孫娘が兄ファリアの孫と結ばれることが後の王室にとって重要な転機となるのだが、それはまた別の話である・・・。


アリア:
・・・以上です、お楽しみ頂けたでしょうか?

フェイト:
・・・じゃあ、次回。

アリア:
はい、次回はおそらく最後の本編ですね。
残す所、あとわずか・・・もう少しだけ、お付き合いくださいませ。
では、またお会いしましょう。

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