魔法世界興国物語~白き髪のアリア~   作:竜華零

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注意点があります、物凄く。

*そして大前提・・・「私のフェイトさんはこんなことしない!」「フェイトさんは私の婿!」と言う方は、今更ですが、ご注意ください!

では、どうぞ!


第3部第9話「ブラックコーヒー」

Side アリア

 

以前にも言ったことがあるような気がしますが・・・。

夢を見ている時、不意に「あ、コレ夢だ」と気付くことがありますよね。

 

 

気が付いた時、私は見覚えのある湖の畔にいました。

私は椅子に座っていて、目の前には白いテーブルと、湯気を上げる紅茶があります。

薫る風の感触は、懐かしいウェールズの物で・・・。

 

 

「・・・お久しぶりです、姉様」

 

 

向かい側に座る女性に、私は微笑みを浮かべます。

腰まで伸びた金色の髪の髪に、身体全体を覆いつつも所々で肌を露出したシャープな服装の女性。

言葉は発さず、ただ微笑みを浮かべるシンシア姉様の姿に懐かしさと・・・痛みを覚えます。

 

 

5年前、「墓守り人の宮殿」で別れて以来・・・初めて、姉様の夢を見ています。

夢にまで見ても不思議では無いのに、どう言うわけか一度も姉様の夢は見なかった。

それが今日に限って、シンシア姉様のことを夢に見るなんて・・・。

 

 

「お久しぶりです、アリア先生」

 

 

でも姉様の口から漏れたのは、シンシア姉様の物とは全く別の声でした。

それを認識した途端、眼前の姉様の姿がブゥ・・・ン、と崩れました。

そして、代わって現れたのは・・・褐色の肌の道化師(ピエロ)。

肩まで伸びた銀の髪に、ピエロのメイクを顔に施した少女・・・。

 

 

ザジ・レイニーデイさんが、そこにいました。

5年前と、変わらない姿で。

 

 

「ザジ、さん?」

「はい、アリア先生。もしかして、他の誰かに見えていましたか?」

「え、ええ・・・」

「申し訳ありません。アリア先生の意識に引っ張られて、姿を維持できなかったかも・・・」

 

 

申し訳なさそうに謝って、ザジさんはテーブルの上のカップを手に取り、口をつけました。

え、と・・・これ、私の夢ですよね?

 

 

「はい、アリア先生」

 

 

言葉にしていないのに、ザジさんはそう答えました。

 

 

「・・・現在、私は姉と共に魔界からこの世界の行く末を観察しています」

「はぁ・・・それは、お疲れ様です?」

「いえ、アリア先生ほどではありません」

 

 

そう言えば、ザジさんのお姉さんがポヨさんなのですから、ザジさんも普通に魔族ですよね。

すっかり忘れていました・・・。

 

 

「今日は特に用事があって来たわけでは無いのですが・・・ご迷惑でしたか?」

「いえ、私も懐かしい顔を見れて、嬉しいです」

 

 

夢の中ですけど。

 

 

「・・・どうも、アリア先生は大きな悩みを抱えているようですね」

「え・・・?」

「魔族と人では習慣に大きな差があるので、コレと言ったことは言えませんが・・・」

 

 

えーと、何の話かわかりませんが、何か励まされているのでしょうか。

ザジさんが軽く微笑むと、視界が徐々に歪んできました。

む・・・?

 

 

「・・・目が覚めた時、最初に出会った人に相談してみると良いでしょう」

 

 

その言葉を最後に、私の視界が闇に閉ざされました。

闇に閉ざされ・・・すぐに、浮上します。

 

 

意識が現実に浮上して・・・とどのつまり眠りから覚醒した時、最初に感じたのは。

額に当てられた、掌の感触でした。

優しい手つきと、すべすべした感触に、うっすらと目を開きます。

 

 

「・・・やはり、熱っぽい気がするのじゃが・・・」

「そぉかぁ? 見た目そんなモンだろ」

 

 

・・・?

誰・・・?

 

 

「む・・・起こしてしまったかの?」

 

 

ベッドの横に、金色の髪の女性が座っているのが見えました。

どうやらその女性が、私の額に触れているようです。

シンシア姉様とは違う、青と緑のオッドアイを持つ、その人は・・・。

 

 

「・・・お母様・・・?」

「・・・うむ」

 

 

私の声に、お母様が、どこか嬉しそうに頷きました。

 

 

 

 

 

Side アリカ

 

母と呼ばれるだけで、胸の奥に仄かな温もりが宿るのを感じる。

私は王宮で幼少時を過ごした故、父や母とこのように接することは少なかったが・・・。

だがこうして娘に触れてみると、どうしようも無く、愛しい気持ちが溢れて来る。

私の父や母は、どうであったのだろうな・・・。

 

 

「・・・どうして、ここに・・・?」

「う、うむ、先程到着した所でな、休む前に様子を見るかと・・・こ、これ、熱があるに・・・」

「いえ、大丈夫です。仕事もありますし・・・それに、コレは多分・・・」

 

 

ベッドの上で上半身を起こしたアリアは、気だるげに自分の下腹部を撫でた。

そして私を見た後、どこか言いにくそうな顔で・・・。

 

 

「・・・お、何だ? 父ちゃんに何か言いたいことでもあんのか?」

「い、いえ、その・・・」

 

 

私の隣でボケッと突っ立っておるナギのことを、見た。

それから、助けを求めるように私のことをチラチラと・・・。

・・・うむ。

 

 

「ナギ、席を外せ」

「ああ? 何でだよ」

「女同士の話があるのじゃ、良いから席を外せ」

 

 

そこから軽い口論に発展し、そして最終的には半ば蹴り出すような形でナギをアリアの寝室から追い出した。

まぁ、いつものことじゃな。

 

 

ナギを蹴り出した後ベッドの横の椅子に戻ると、アリアが軽く驚いたような顔をしておった。

むぅ・・・娘の前でやることでも無かったかの。

だが、まぁ・・・。

 

 

「月のモノの話をするに、男親がいてはの」

「あはは・・・今日が18日ですから、そろそろ始まると思うんですけど・・・」

「ふむ・・・あまりにも辛いようなら、横になって休んだ方が良いぞ?」

「いえ、仕事もありますし・・・大丈夫ですよ」

 

 

ふむ・・・まぁ、女王の役職を背負う以上、すべきことが多いのは理解できるが。

特にアリアの場合、私よりも仕事は多かろう故。

だが、休息を取るのも大事なことじゃ、そこは気を付けさせねばなるまい。

・・・どう伝えれば良いのか、わからぬが。

 

 

「・・・お久しぶりです、お母様。でも、どうして急に・・・?」

「う、うむ・・・朝日が昇る前に到着してな、クルトがすでに起きていた故、アリアの顔を見て行ってはどうかと言われて・・・い、いや、言われずとも様子を見に来るつもりではあったのじゃぞ?」

「は、はぁ・・・」

「そ、それに・・・娘が結婚するとあっては、は、母親として様子を見に来たくもなろう・・・?」

 

 

私の言葉に、アリアの表情がわずかに暗くなったような気がした。

・・・う、む?

 

 

「どうした、何か心配事でもあるのか・・・?」

「い、いえ・・・何も心配事なんてありません。変なことを言うお母様ですね・・・」

「嘘を、吐くでない」

 

 

とは言う物の、私にも確信があるわけでは無く・・・何となく、アリアが嘘を吐いているように感じただけじゃ。

どこか、無理をしておるような気がしてならぬのじゃ。

私が結婚の話をした途端に、表情を固くして・・・・・・もしや。

 

 

「アリア、主(ぬし)、もしや」

「違います」

 

 

私が何か聞く前に、固い声でアリアが制する。

それで、聞かずとも私にはわかった気がしたのじゃ。

 

 

「・・・っ」

 

 

椅子を立ち・・・ベッドの上で上半身を起こしておるアリアを、なるべく優しく抱き締める。

アリアは一瞬、身体を震わせはしたが、跳ねのけはしなかった。

前よりも、上手くできていると良いのじゃが・・・。

 

 

「・・・結婚は、嫌か?」

「・・・嫌では、無いです・・・」

「・・・そうか」

 

 

自分でも拙いとわかる手つきでアリアの髪を撫でながら、私はほっと胸を撫で下ろした。

女王である以上、不本意な婚姻はむしろ当然。

アリアの場合は想い人との婚姻ゆえ―――私もそうじゃが―――もしや、嫌になったのかと思ったのじゃ。

そうでないのであれば、それはそれで良い。

 

 

「でも・・・」

 

 

何かを言いかけたアリアの頭を、ぎゅっ・・・と胸に抱え込む。

柔らかな抱き心地に、目を閉じる。

今のアリアがどんな気持ちでいるのか、わかる気がする故・・・。

 

 

「・・・私もの」

「・・・?」

「主の父と・・・ナギと結婚する際には、いろいろと不安じゃった」

 

 

まぁ、私の場合はその場の流れとか勢いとか、あったがの。

死を覚悟した直後に救われて、舞い上がっておった部分もあったじゃろう。

だがその後に来たのは・・・残された民への罪悪感と、どうしようも無い不安。

妻になることの不安と、いずれ母になる不安。

 

 

そもそも私はそうしたことについては、王族式の教育しか受けておらなんだからな。

王族という枠の外で、それがどういう意味を持つのか・・・不安で仕方が無かった。

 

 

「・・・母様も、そうでした・・・?」

「うむ・・・」

 

 

不安そうに見上げてくる瞳に、やはりかと思う。

どのような意味で不安なのかは、私にもわからぬ。

・・・もっと傍にいてやれれば、わかったのかもしれぬが。

 

 

「大丈夫じゃ、その気持ちはけして悪いことでは無い、安心せよ・・・と言って、できる物でもなかろうが」

「・・・どうすれば、その・・・怖く無くなります、か?」

「・・・酷なようじゃが、その気持ちはすぐには消えぬ。いや、もしかしたら何度となく主を苛むかもしれぬ、それは、そう言う物だからじゃ」

「そんな・・・」

 

 

そう、不安は消えない。

いつも、ことあるごとに浮かんでは消えて行く・・・そんな物じゃ。

まぁ、私の場合は・・・。

 

 

「・・・主はその気持ちを、相手に・・・婿殿に伝えたことはあるか?」

「え・・・?」

「結婚する相手に対して、きちんとその気持ちを、伝えたことはあるか・・・?」

「い、いえ・・・いえ、無いです」

「何故じゃ?」

「だ、だって・・・・・・嫌われるかも、しれないから」

 

 

・・・抱き締める腕に、思わず力が入った。

何じゃ、このいじらしい娘は・・・と言うか、婿殿は何をやっておるのか。

 

 

「・・・大丈夫じゃ、嫌われなどせぬ。私とナギを見よ、先程も軽く喧嘩をしてみせたし、これまでも大小様々な喧嘩を演じてきたが、20年以上、夫婦を続けておる」

「でも・・・」

「大丈夫、大丈夫じゃ・・・だから、の?」

 

 

私がそう言うと、アリアは私の腕の中で、かすかに頷いてくれた。

うむ、結婚前の不安を結婚後にまで持ち込むのは良くないのは確かじゃし。

それに、多少は不満を言い合えるくらいが、ちょうど良いとも思う。

・・・まぁ、私とナギ程になるのはどうかとも思うが。

 

 

アリアを優しく抱いて、あやすように髪を手で梳く。

・・・16の娘にするようなことでも無いかもしれんが、事情が事情じゃしな。

少しは、母親らしいことができたじゃろうか・・・?

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

朝食後のコーヒーを楽しんでいたら、招かれざる客が来た。

見なくても気配でわかるけど、栞君と暦君が酷く驚いているようなので、僕も部屋の扉の方を見る。

 

 

「いょーっす!」

 

 

扉に寄りかかる形で片手を上げているその男の名は、ナギ・スプリングフィールド。

呼んだ覚えは無いし、そもそもいつの間に来たのか。

招かれてもいない彼は、ズカズカと歩いて、空いている椅子に勝手に腰かけて。

 

 

「栞ちゃん、俺にもコーヒー頼むわ」

「ふぇ!? え、あ・・・」

「ちょ、何ですか貴方! 他人の部屋に上がり込んで、いきなり!」

「・・・淹れてあげて」

「は、はいっ!」

「暦君も、落ち着いて」

「・・・はい」

 

 

僕の言葉に栞君がパタパタと駆けて行き、暦君が不本意そうにしながらも口を閉じた。

それを見て、ナギ・スプリングフィールドは頬杖をつきながら僕を見た。

気のせいでなければ、どこか咎めるような雰囲気がある。

 

 

「おいおい、あんな可愛い嫁さんがいて、お前、そんな可愛い子達を侍らせるってどうよ?」

「にゃ!?」

「別にそう言うつもりは無いよ」

「・・・にゃ・・・」

 

 

何故か、暦君が落ち込んでいた。

 

 

「・・・で、お前、実際の所、俺の娘のどこが良くて結婚するわけだ?」

「どうぞ」

「お、サンキュー・・・ちなみに俺は、一目で今の嫁さんと一緒になるんだって、ビビっと来てたぜ?」

「・・・そんな話を僕にして、どうするんだい?」

「どうするもこうするも、お前、結婚したら俺の息子だろ?」

 

 

・・・想像もしたくないね。

しかし、関係上は確かに義理の父子になるわけだ。

一時は戦った仲なわけだけど・・・。

加えて言えば、ネギ・スプリングフィールドが僕の義兄になるわけか。

 

 

「で、どうなんだよ。もう手は出したのか?」

「・・・父親の言葉とは思えないね。ジャック・ラカンも似たようなことを言っていた気もするけど」

「ま、男ってのはそう言うもんだろ?」

 

 

一部の男性の意見を、まるで全体の意見であるかのように言うのはどうかと思うけどね。

 

 

「・・・まぁ、それは冗談にしてもよ。実際の所、どうなのかと思ってな」

「何がだい」

「だから、お前がアリアのことをどう想ってんのかってことだよ」

 

 

・・・ことのほか真剣な目で、ナギ・スプリングフィールドは僕を見ている。

テーブルに置いたマグカップを、指先でコツコツとつついている。

 

 

「今さら父親面もできねーし、娘が欲しけりゃ俺を倒せ! とか言うつもりはねぇんだ、が・・・まぁ、若いし、言いにくいのかもしれねーけどよ」

 

 

かと思えば、あっけらかんとして冗談交じりの口調に戻る。

相変わらず、掴みどころの無い男だ。

その後は、基本的に自分の嫁・・・つまりは先代女王アリカの話題を一方的に話し始めた。

どこで喧嘩しただの、殴られただの・・・だけど最終的には「嫁さん最高」に帰結する。

・・・何がしたいんだ、この男・・・。

 

 

「今だって、嫁さんに殴られて娘の寝室から追い出された所だ」

「・・・それだけ喧嘩ばかりして、良く一緒に旅ができるね」

「ああん? わかってねーな、お前。その喧嘩が楽しいんじゃねーか」

 

 

だから、一部の意見を全体の意見のように言うのはどうかと・・・。

 

 

「つーか、お前だってアリアと喧嘩したことくらいあんだろ?」

「・・・僕はアリアを怒らせるようなことは、したことが無いよ」

「はぁ? ・・・じゃあ、お前、何が楽しくてアリアと結婚すんだよ」

「別に楽しむために結婚するわけじゃ・・・」

「良いかぁ、結婚生活ってのはな・・・」

 

 

その後、仕事が始まるまでナギ・スプリングフィールドに付き合わなければならなかった。

何なんだ、いったい・・・。

と言うか、暦君や栞君が僕の方を心配そうに見ているのは、何なのかな。

 

 

 

 

 

Side 焔

 

「・・・む」

「お・・・」

 

 

午前中、夜間警備の仕事を終えて宿舎に帰る途中で、会いたくも無い奴に会った。

腰まで伸びたボサボサのオレンジ色の髪に、赤い瞳。

名前はレメイル。

種族は、私と同じ炎の精霊に連なる部族だが・・・。

 

 

「・・・どけよ」

「貴様こそ、道を開けろ」

 

 

通路には余裕があるが、わざわざ道の真ん中で睨み合う。

かつてパルティアの内乱を悲しんだことはあるが、だがコレはどうしようも無い。

理屈云々では無く、感情の問題だからだ。

 

 

「てっきりパルティアで名ばかりの領事でもしてるかと思ったが、何だ、クビか?」

「お前みたいなメイドとは違って、俺は優秀なんだよ」

「そんな粗雑な髪型でか? 北の連中がそんなだから、部族全体の評判が下がる」

「南の連中は格好ばかりで中身が無いからな、髪型一つに何時間かけるんだ?」

 

 

私の部族は昔からパルティア南部に居住していたが、レメイルの部族は北部に住んでいた。

私達が生まれる前から何度となく戦火を交えたし、互いに必ず敵対する勢力についていた。

幼少時から叩き込まれた偏見は、たとえ同じ陣営に属したからと言って簡単に消える物じゃない。

頭ではわかっていても、こう、つい、な・・・。

 

 

別に私とレメイルに限った話では無く、今のウェスペルタティア陣営には良くある話だ。

女王陛下は種族を問わず支持される稀有な人物だが、部族間の偏見までどうこうはできない。

普段は、そう言う物も配慮して配置を決めるが、完全に調整するのは難しい・・・。

 

 

「・・・また、喧嘩してる」

「本当」

 

 

その時、反対側の通路から見知った顔がやってきた。

見知った顔と言うのは、環だ。

竜舎の飼育員の制服を着ていて、両手に何かの書類を抱えている。

そして、隣には環と同じ竜族の・・・確か、キカネとか言う片角の無い女だ。

 

 

「焔、喧嘩はダメ、フェイト様も言ってる」

「いや、私では無く、コイツが喧嘩を売ってくるんだ!」

「はぁ!? てめぇがいなけりゃ、俺は温厚篤実な男子として有名だっての!」

「私だって、お前がいなければ淑やかな乙女として定評があるんだ!」

 

 

・・・何故か、環から生温かい視線を受けた。

 

 

「と言うか、お前はどうしてキカネと仲が良いんだ?」

「・・・仲良し」

「ねー?」

 

 

ガツガツと互いの角をぶつけ合いながら、環とキカネがそう言う。

・・・角をぶつけ合うのが、どうやら親愛の情を現す方法らしい。

この2人も、最初は仲が良くなかったはずなのだが・・・。

 

 

「環、焔」

 

 

その時、さらにややこしいことに調がやってきた。

樹の精霊の加護を受けた部族の出身で、パルティア出身の人間が集まっていることになる。

部族紛争の縮図だな、一種の。

だが、調はそんな私の思考には関心が無いようで・・・。

 

 

「暦と栞が呼んでいます。どうやら、フェイト様のことで相談があるとか・・・」

「む・・・」

「・・・フェイト様?」

 

 

ここでフェイト様の名前で私達を・・・フェイトガールズを召集すると言うことは。

・・・つまり、そう言う話だろうか。

 

 

 

 

 

Side クルト

 

憲法草案が一応の完成を見た後、私は主に行政機構の再編と地方自治機構の整備に関する仕事を手掛けるようになりました。

現在は1府8省によって行政の全てが管理されていますが、権限を再編・分離して1府12省に再編成します。

 

 

例えば、宰相府の権限を移管して王室関係の行政事務を執り行う宮内省を創設し、宰相府・社会秩序省の権限を移管して内務省を創設・・・といった具合ですね。

この内務省が、地方自治に関する行政を担当することになります。

 

 

これまでのウェスペルタティアの地方自治とは、つまるところ貴族による代理統治でした。

しかし今後は違います、84の貴族は名目上の地方領主とし、「代理総督」の役職を与えます。

その代わり貴族の持つ統治権(徴税・立法など)は全て、アリア様に返還して頂きます。

そして84の貴族領を含めた168の「自治県」に、王国全土を再編成。

それぞれに市民公選の地方議会を備えさせ、国法の範囲内での自治権を認めるのです。

地方議会議長が自治県代表を兼ね、さらに貴族院の議席をも占めます。

形式上、アリア様が各地方議会の議員の中から議長を任命することになりますが・・・。

 

 

その他、エリジウム討伐軍の編成なども行いますが、まぁ、そこはいろいろと・・・。

・・・と、まぁ、このように重要ですが面白くも無い事務作業を延々と続けていたのですが、昼食の段になって、私の灰色の一日が薔薇色に変化する好機に恵まれました。

・・・自分で言ってて、意味がわかりませんが。

 

 

「・・・うむ、美味じゃの」

「はい、とても・・・」

 

 

私の目の前には、初々しくも微笑みあいながら昼食をとる母娘の姿が!

このクルト、感激のあまり胸を抉られてしまいそうです。

いや、むしろ抉れ!

しかし死ぬと二度とお役に立てないので、断る!

 

 

・・・ふふ、私としたことが、取り乱してしまいましたね。

私はクールな王国宰相、いかなる時にも取り乱さない・・・。

 

 

「・・・どうかしましたか、クルトおじ様?」

「どうかしたのか、クルト?」

 

 

良し、私を殺せ!

アリア様もアリカ様も、小首を傾げて不思議そうな目で私を見つめるとは・・・。

・・・ダメだ、とても直視できない・・・手元の人参のソテーでも見つめていましょう。

 

 

「い、いえ、何でも・・・そう、何でもありません・・・」

「・・・はぁ」

「妙な奴じゃの・・・」

「スープのお代わりはいかがですか?」

「あ、はい、頂きます、茶々丸さん」

 

 

とりあえず、そこでお二方の世話をしている絡繰さんから、後で映像だけ頂きましょう。

そしてブラボー4、ちゃんと撮影していますか・・・!?

証拠写真は残せませんので、宰相権限で全て没収しますよ。

 

 

ちょっとした報告でお食事中のアリア様に面会の許可を頂いたのですが、アリカ様もご一緒で、しかもどうせだからと昼食に誘われ・・・何たる幸運、何たる僥倖。

このクルト、今この場で死を賜っても構いません。

でも死ぬとお役に立てないので、やはり生きる!

 

 

「いや、マジでうめーなコレ! あ、俺もお代わり良いか?」

「ナギ、もう少し丁寧に食べんか! 娘の前だと言うに・・・」

「あん? 娘の前だからこそ、気取って食う必要がねーんだろーがよ、なぁ?」

「え、えーっと・・・」

 

 

・・・約一名、私の心の泉にさざ波を立たせるバカが一人。

ナギめ・・・アリア様を困らせるとは、不敬罪を適用してやろうか。

バカは放っておいて、とりあえずアリア様とアリカ様のお姿をこの目に刻みつけておきましょう。

 

 

・・・今はまだ、宰相府の限られた場所でしか過ごすことのできないアリカ様。

しかし、もうすぐ・・・もう少しで・・・。

 

 

 

 

 

Side アスナ(明日菜)

 

・・・懐かしい景色。

どうしてか、そう思ってしまう。

 

 

『ここは、知ってる』

 

 

私は、知らない。

知らないはずなのに、私の中のもう一つの声が知ってると言う。

この「声」が「私」と混じり始めて、もうどれくらいの時間が経っただろう。

 

 

この「声」・・・目を閉じれば浮かび上がる名前は、アスナ。

アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア・・・。

私の、もう一つの名前。

ううん、「私」の本当の名前・・・?

じゃあ、私は・・・神楽坂明日菜は・・・本当では、無いの・・・?

 

 

『・・・貴女は、誰・・・?』

 

 

私は・・・誰?

私は・・・何?

貴女は・・・誰?

貴女は・・・何?

 

 

この子は・・・いったい、誰?

私は、いったい・・・何?

 

 

「・・・」

『・・・・・・』

 

 

サァッ・・・と風が吹いて、私の髪と服の端が揺れるのを感じる。

だけど、それを感じる「私」を、私は実感することができない・・・。

 

 

自分が、どこに立っているのか。

自分が何を見て、何を感じているのか。

どの記憶が「私(アスナ)」で、どの想いが私・・・明日菜の物なのか。

わからない。

 

 

「・・・?」

 

 

その時、ふと左手に何かが触れた。

敵意は感じない、怖い物でも危ない物でも無い。

ふと、視線を下ろすと・・・そこには、灰銀色の犬・・・狼?

とにかく、大きな動物がいた。

 

 

とにかく、その灰銀色の動物が私の左手に鼻を押し付けている。

自然、私の手はその大きな頭を撫でるように動くことになる。

 

 

「・・・ぁ・・・」

 

 

不意に、何かが左腕を這い上ってくるような感触を感じた。

見てみると・・・細い、触手のような物が2本、私の左腕を這い上がって来て・・・左胸に触れるような位置に。

それは、灰銀色の動物の背中から伸びている触手だった。

 

 

反射的に振り払おうと・・・思う前に、不思議な感覚が、頭の中に這入って来た。

フワフワするような、不思議な、感覚・・・。

 

 

「・・・」

 

 

灰銀色の動物から放たれる奇妙な力が、私の心の中のさざ波を、少し抑えてくれるのを感じる・・・。

心地良い感触に、私は目を細める。

 

 

『・・・カムイ・・・』

「カムイ・・・?」

 

 

私の中の「声」に合わせて、私は口の中で灰銀色の動物の名前を呟く。

カムイ、その名前を。

 

 

 

 

 

Side 5(クゥィントゥム)

 

「・・・何をしている?」

 

 

宰相府の通路の窓から中庭を見下ろすと、<黄昏の姫御子>が灰銀色の狼の隣に腰かけていた。

あの狼は、普段は女王陛下(あねうえ)の傍でウロウロしていることが多いんだけど。

今日に限って、女王陛下(あねうえ)の傍を離れていると言うのも妙だね。

 

 

「<黄昏の姫御子>が宰相府にいると言うのは、3(テルティウム)から聞いていたが・・・」

「は、何を見ているのかと思えば、落ちぶれたお姫様か」

「・・・・・・言葉を選べ、4(クゥァルトゥム)

「選ぶ? はっ・・・くだらないね」

 

 

中庭から視線を外すと、反対側の廊下から4(クゥァルトゥム)が歩いて来るのが見えた。

いつものように皮肉気な笑みをたたえて、僕と同じように中庭の様子を見下ろしている。

 

 

「技術開発局のセリオナの所に行っているのでは無かったのか、4(クゥァルトゥム)

「行って来たさ、先日、貴重な支援魔導機械(デバイス)を2つの壊してしまったのでね」

「・・・で?」

「どうもこうも無い、セリオナが新しい物を造るまでは、コレ一つで間に合わせるしか無いさ」

 

 

そう言って、片手の赤いルビーのついた指輪型の支援魔導機械(デバイス)を見せてきた。

彼に限らず、僕や3(テルティウム)吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)も支援魔導機械(デバイス)をいくつか持っているけども、4(クゥァルトゥム)のように早々と壊したりはしない。

つまる所、4(クゥァルトゥム)は物の扱いが雑なのさ。

 

 

「・・・それで、キミはお姫様を見て何をしていたんだ? いつもならあの半魔族(ハーフ)の女と女王を陰から守っているだろう」

「その女王陛下(あねうえ)から、様子を見守るように命じられている」

「ふん、今さら<黄昏の姫御子>の力を狙うような人間もいないだろうに、見守るも何も・・・」

 

 

・・・稀に思うのだが、4(クゥァルトゥム)は実は女王陛下(あねうえ)に不満でもあるのだろうか。

そうでなければ、もう少し要領良く集団に溶け込めると思うのだが。

 

 

実際、4(クゥァルトゥム)は僕や3(テルティウム)と違って、周囲の人間に煙たがられている節がある。

どうも、3(テルティウム)とは別の意味で人形らしからぬ存在になりつつあるようだ。

 

 

「勘違いするなよ、5(クゥィントゥム)

「・・・何がだい?」

「僕は別に、キミや3(テルティウム)と違って女王に個人的な思い入れがあるわけじゃない。だから女王がどうなろうと、王国がどうなろうと・・・知らないね」

「それならどうして、ここで女王で守っている?」

「別に、守っているつもりは無いさ、ただ・・・」

「ただ?」

 

 

片手の支援魔導機械(デバイス)を弄びながら、4(クゥァルトゥム)は皮肉気な笑みを浮かべた。

それはまた、人形らしからぬ表情だった。

 

 

「屈服させてやりたい女が、いるんでね・・・厳密には、ここにはいないがな」

 

 

 

 

 

Side 暦

 

フェイト様と女王陛下の仲が、微妙になってるのは知ってる。

ナギ・スプリングフィールドの話を聞いていても、それはわかる。

・・・フェイト様は、辟易としてたみたいだけど。

 

 

・・・仲が微妙になってるって言っても、喧嘩したわけじゃない。

と言うか、喧嘩をしたことが無いんだから。

 

 

「フェイト様、お願いがあるのですが・・・聞いて頂けますか?」

 

 

仕事を終えて・・・いつものように女王陛下の部屋に行こうとしているフェイト様に、私と栞達がそう声をかける。

フェイト様は一瞬、不思議そうな顔をしたけれど・・・いつものように、許してくれた。

いつだって、フェイト様は私達に優しい。

 

 

とても、優しい人。

だけど、優しさの使い方が上手では無い人・・・。

 

 

「・・・フェイト様は、女王陛下のことをどう想っておられますか?」

「何だい、急に・・・ナギ・スプリングフィールドに影響でもされたのかい?」

「いえ、そう言うわけでは無くて・・・」

 

 

フェイト様が女王陛下を想う余り、そして優しぎるから、2人の仲が微妙になってる。

嫌い合ってるわけじゃなくて、ただ、最後のもう一歩が踏み出せないだけ。

もっと言えば、踏み出し方がわからないから、踏み出すことが怖いから・・・。

 

 

そしてそれは、フェイト様や女王陛下に限らない。

・・・私達にも、言えること。

だから、午後の間に話し合った・・・ううん、話し合うことなんて、無かった。

ずっと前から、私達は決めていたから。

 

 

「・・・では、フェイト様」

「何だい?」

「私達のことは・・・どう、想っておられますか?」

「・・・質問の意図が、わからないな」

 

 

・・・あ。

フェイト様との距離が、今、一気に開いたのを感じた。

後ろの栞達を振り返ると、私と同じことを考えたのか・・・頷いた。

 

 

栞はいつも通り微笑んでいたし、調は少し落ち込んで、焔は方を竦めて、環は自分の角を撫でてる。

・・・でもコレは、わかっていたこと。

 

 

「・・・私達は10年・・・あるいはそれ以上前から、フェイト様のお傍でお付けして参りました。フェイト様に救われて、生きる意味と価値を、頂きました」

「・・・別に僕は、何もしていない」

「フェイト様はそうお考えかもしれませんが・・・フェイト様は私達に、ずっと、たくさんの物を与えてくれていました」

 

 

ここでこうしていられること自体、フェイト様のおかげ。

その想いを胸に、私達は今日まで生きてきた。

自分達のことよりも、フェイト様のことを優先して・・・。

・・・たまに、自分達のことを優先したこともあるけど。

 

 

『フェイト様と一緒に行かせてください!! どこまでもついて行きます、最後までッ・・・』

 

 

ずっと前に、フェイト様に救われたあの日に・・・私はそう誓った。

私だけじゃ無く、栞も、焔も、環も、調も、皆。

でもフェイト様にとっては、きっと私達はいなくても良かった。

今でも、そうかもしれない・・・。

 

 

でも、女王陛下はそうじゃない。

だからコレは・・・。

 

 

「フェイト様、私達は・・・」

 

 

だからコレは、きっと。

 

 

「私達は、フェイト様のことを、愛しています」

 

 

だからコレはきっと、私達ができる・・・最後のこと。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「では、そのように処理してください」

「はっ、では失礼致します!」

「・・・・・・ん~っ」

 

 

法務省の官僚が持ってきた裁判所制度に関する案件を処理した後、私は執務室の椅子の上で伸びをしました、夕食後の仕事は、今日はもう終わりです。

腰骨が・・・鳴ったりはしませんでしたが、それなりに疲労を感じてはいますね。

 

 

そうは言っても、今日の仕事始めは午前7時半で、終わりは今・・・えー、午後9時過ぎ。

食事や休憩もありますので、まぁ、人並みの労働時間と言った所でしょうか。

いつもよりは短めのスケジュールでしたから、随分と楽でした。

クルトおじ様がいつも以上に張り切ってましたから、そのせいかもしれませんけど。

 

 

「マッサージでも致しましょうか?」

「ん~・・・そうですねぇ・・・」

 

 

茶々丸さんのマッサージは、激しいですが効果抜群ですからね。

だって、明らかに曲がらない方向に腕や足が曲がりますものね・・・。

挙句の果てに、腰が・・・まぁ、効果はあるんですけど。

 

 

「・・・今日は、遠慮しておきます」

「では、このまま寝室へ?」

「いえ・・・」

 

 

ふに、と胸に手を置きます。

何と言うか、私・・・今、テンションが高いです。

 

 

お母様に励まされたからかもしれませんが、凄くテンションが高いです。

正直、フェイトに何を言うか、話すかもわかりませんが、気持ちばかりが先行している状態です。

もう、居ても立ってもいられないと言う状態です。

一刻も早く、フェイトに会いたい。

久しぶりに、そんな気分になっているのです。

 

 

「・・・たまには、私がフェイトを迎えに行こうと思います!」

「わかりました」

 

 

そんなことを宣言する私に、茶々丸さんは妙に神妙な顔で頷きました。

 

 

「では私は、いつも以上に念入りにベッドメイキングした上で、アロマ・・・お香を焚いて参ります」

「何でですか!?」

「マスターには、内密にしておきますので・・・」

「な、何でですか!?」

 

 

え、本当に何でですか!?

でも茶々丸さんは、変わらず神妙な表情で「わかっています」と言わんばかりに頷いて。

 

 

「お香の種類は、イランイランでよろしいでしょうか?」

「イラ・・・何ですか、それ?」

「・・・」

「え、ちょ・・・茶々丸さん!?」

 

 

茶々丸さんは、そのまま頭を下げた体勢のまま下がって・・・執務室から出て行きました。

・・・イランイランって、本当に何ですか。

軽く溜息を吐いて・・・それから、執務室の外へ。

この時間であれば、フェイトも自分の執務室にいますよね・・・。

 

 

「フェイトの執務室へ行きます」

「ワカリマシタ」

 

 

そう考えて、歩き慣れた廊下を歩きます。

ガションガションと、田中Ⅱ世(セコーンド)が私の後についてきます。

田中さんが張り付いているので、私は安心して歩きまわれます。

それ以前に、宰相府は厳重に警備されてますけどね。

 

 

5分もしない内に、フェイトの執務室の前に到着しました。

普通の扉ですが、何だかいつもより大きく見えます。

中に何人かの気配を感じますし、どうやらいるようですね。

・・・とは言え、ここでこのまま立ち尽くしていても始まりません。

 

 

胸に手を置き、深呼吸。

・・・良し、行きますよ!

そう意気込んで、ドアノブに手をかけた、瞬間。

 

 

 

 

「私達は、フェイト様のことを、愛しています」

 

 

 

 

狙ったようなタイミングで、最悪の言葉を聞きました。

もし言葉に殺傷力があるのなら・・・。

 

 

私は、死んでいたと思います。

 

 

 

 

 

Side 調

 

「私達を・・・お嫁さんに、してください」

 

 

暦がそう告げた時のフェイト様の表情を、何と表現すべきでしょうか。

困惑と呼べば良いのか、それとも拒絶と取れば良いのか。

ただ一つわかることは、私達がフェイト様の答えを知っていたと言うこと。

 

 

そして一つだけ、意外なことがあったとしたら。

ガタンッ、と扉の方から音がして、そちらを見れば・・・扉の隙間から翻って消える、薄桃色のドレスの端。

 

 

「・・・アリア?」

 

 

何かが駆けて行く音に反応して、フェイト様が動きます。

・・・その行動に対して思うことは、「やっぱり」と言う感情。

もう、何年も前からわかりきっていたこと。

だから・・・。

 

 

「フェイト様!」

 

 

私が声をかけると、扉の直前で、一度だけフェイト様が振り向きました。

暦が俯いたまま動きませんから、他の誰かが言わねばなりません。

 

 

「・・・そう言う、ことです」

 

 

・・・薄桃色のドレスの主の存在は予想外ですが、コレで良かったのかもしれません。

フェイト様は、また形容しがたい表情を浮かべて・・・。

 

 

「・・・すまない」

 

 

それだけ、告げました。

それに対して、焔が寂しげに微笑む。

 

 

「謝らないでください。私達はもう十分に、貴方から幸福を頂きました」

「だから早く、追いかけて」

 

 

焔だけでなく、環も角を撫でながらそう言う。

・・・環のアレは、てれ隠しのような物なのでしょうか。

 

 

「ありがとう」

 

 

最後にそう告げて、フェイト様は扉の向こうへと駆けて行きました。

後に残されたのは、私達5人・・・。

 

 

『・・・どいてくれないかな』

『ココヲ通スナトノゴ命令デス』

『そう、なら・・・仕方が無いね』

『ディフェンスモード!』

 

 

・・・何か、廊下で揉めているようですけど。

まぁ、ここからはもう、私達が感知すべきことでは無いでしょう・・・。

 

 

「・・・どさぁ・・・」

 

 

その時、両手で目元を拭いながら、暦が何かを呟きました。

 

 

「・・・わかってた、けどさぁ・・・!」

 

 

そんな暦を、栞がゆっくりと抱き締める。

栞の肩に顔を埋めて、暦が肩を震わせています・・・。

見れば、焔も環の頭を撫でています。

 

 

・・・そう、わかっていました。

わかっていたんです、けど・・・フェイト様の優しさに甘えて、この5年・・・やってきました。

そう、わかって、いたんだ・・・。

わかって・・・っ。

 

 

「何よぉ・・・こんな美女が5人もお嫁さんにしてって言ってるのに・・・良いじゃんかぁ・・・っ」

「・・・そうですわね、失礼しちゃいますよね・・・でも、そんなフェイト様だから・・・」

 

 

そんなフェイト様だから・・・きっと、私達は惹かれた。

きっと、私達は恋をして・・・愛しさを覚えて・・・。

 

 

「いつか、後悔させてやるんだからっ・・・!」

「ええ、ええ・・・」

 

 

・・・こうして、私達の初恋は終わる。

どうか・・・お幸せに・・・。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

どこをどうやって進んできたのか、覚えていません。

気が付いた時、私は寝室の扉に寄りかかって、床に座り込んでいました。

胸が・・・心臓が激しく動悸していて、呼吸がおかしいです。

 

 

何を・・・何も、そんなに驚くことは無いはずなのに。

あの5人がフェイトをどう想っているかなんて、それこそ5年以上前から知っていました。

それを承知で、フェイトの傍に置いておいたのは私自身です。

・・・フェイトの傍から無理に離すのも、どうかと思いましたし・・・。

 

 

「・・・嫌・・・」

 

 

膝を抱えて、ゆったりとしたドレスのスカートに顔を埋めます。

仕事がしたいと言う強い欲求が胸の奥から生まれてきますが、今日の仕事は終わってしまいました・・・。

深く息を吐くと、仄かな甘い香りが・・・何の香りでしょうね・・・。

 

 

「・・・嫌です・・・」

 

 

仕事と言う逃げ場が無くなってしまえば、後には・・・胸を抉られるかのような痛みだけが残ります。

右手は左手の指輪をしきりに撫で、「そんなはずは無い」と自分に言い聞かせるばかり・・・。

こんな気持ちは、嫌。

 

 

こんな気持ちになるために、フェイトに会いに行ったわけじゃありません。

お母様には、嫌われたくないと言ったけれど・・・本当は、そんなレベルでは無くて。

私は。

 

 

「・・・アリア?」

「・・・っ」

 

 

ビクッ・・・と、身体が震えます。

原因は、すぐ後ろ・・・扉の向こうから聞こえた、フェイトの声。

 

 

一瞬の内に私の頭はまた、嫌な思考を始めます。

・・・来てくれた? 嬉しい、でも、暦さん達には何て・・・断った? それとも・・・?

そんなことを考えてしまう自分が、どうしようもなく汚い生き物のように思えて。

こんな自分を見られたくなくて、私は扉を開けることができません。

 

 

「アリア?」

「・・・来ないでください」

「アリア・・・?」

「来ないで・・・」

 

 

扉の向こうに、フェイトがいます。

それがわかっていても、やっぱり私は、フェイトには・・・。

 

 

「アリア」

「私は今、きっと嫌な顔をしています、だから・・・」

 

 

だから、見ないで。

そう言うしかない自分が、とても情けなくて・・・。

私は、スカートに顔を埋めるしかできません。

 

 

・・・結局の所、私は臆病者なんです。

嫌われるのが嫌とか、怖いとか・・・自分の綺麗な面だけを、相手に見せたいだけで。

結婚だって、私の感性の問題で、断るつもりなんて無かった。

だって、フェイトを嫌えるはずが無いから・・・。

でも、怖かった。

どうしようも無く・・・怖かった。

 

 

このまま、当たり前の物になってしまうんじゃ無いかって。

フェイトが何を想っているのかがわからないまま、進むのが・・・。

今さら結婚式を延期できるはずもないから、さらに怖くなって・・・。

その後の保証が、何も無いのに・・・。

でも、それは当たり前のことで。

当たり前・・・それが、怖くて。

 

 

・・・自分で自分が何を考えているのか、わからない。

自分の中がグチャグチャで・・・もう、私・・・。

 

 

「・・・?」

 

 

不意に、顔を上げます。

恐る恐る、扉の方を見上げますが・・・フェイトの声がしません。

気配も感じないので・・・行ってしまった?

 

 

その瞬間、よろめくように立ち上がりました。

待って・・・そう言いそうになって、ドアノブにかかりかけた手を止めます。

どうしようもなく、目の前が真っ暗になって。

扉に額を押し付けて、唇を噛んで・・・。

 

 

崩れ落ちそうになった、刹那。

 

 

「アリア」

 

 

 

背後から、抱き締められました。

 

 

 

お腹と、肩に回された2本の腕に・・・ぎゅっ、と、力強く、抱かれます。

心臓が、掴まれたかと・・・思いました。

 

 

「・・・?」

 

 

顔だけで振り向くと・・・そこに、白い髪と、無機質な瞳が。

彼の向こうには、開け放たれた窓。

いつも、彼がやってくる・・・窓が。

 

 

「あ、ぅ・・・」

「・・・とても、綺麗な顔だよ。嫌な顔なんて、していない・・・」

 

 

そう囁かれて・・・額に軽くフェイトの唇が触れます。

そして私の色素の薄い白い髪に、口づけるように顔を埋めて・・・。

・・・それだけで、身体から力が抜けてしまいそうで。

 

 

「は、離してください・・・っ」

 

 

それがまた怖くて、軽く身体をよじらせます。

いつもなら、コレでフェイトは離してくれるのですが・・・。

 

 

「・・・嫌だ」

 

 

今日に限って、拒絶されました。

そのことに、軽い混乱を覚えます。

フェイトが、私のお願いを断るなんて・・・初めてのことです。

 

 

「な、慰めとかなら、やめてください・・・惨めになるだけです・・・」

「・・・慰めとか、どうしてそんなことを言うのか、わからないけど」

 

 

肩に回されていた手が、ゆっくりと私の顎に触れます。

途中、鎖骨と首筋を掠めて・・・ぞくり、としました・・・。

 

 

「僕は、キミ以外にこんなことはしない」

 

 

きゅ・・・と、胸が締め付けられます。

その隙に、フェイトに軽く唇を奪われます。

それから、頬、瞼・・・と、キスを重ねられて、私・・・。

数センチも離れていない距離で、フェイトと見つめ合っています。

 

 

 

「愛してる」

 

 

 

・・・一瞬、何を言われたかわかりませんでした。

だって・・・そんな。

 

 

「・・・嘘」

「嘘じゃ無い・・・どうして、疑うの?」

「だって・・・だって、今まで、一度もそんなこと」

「伝わってると思ってた・・・いや、違うね・・・どう伝えれば良いか、知らなかった」

 

 

一旦、離れて・・・今度は、正面から。

身体を回される間に逃げなかったのは、逃げられなかったから?

それとも・・・。

 

 

「でも、あの・・・この間は、何も・・・」

「この間・・・?」

「・・・ミッチェルに、その・・・んむっ・・・!?」

 

 

フェイトが軽く屈んで、上を向いた私の唇に、自分のそれを重ねます。

さっきのような触れるだけの物では無く、いつもより少しだけ乱暴で、強く口づけられます。

 

 

「んっ・・・ふむっ・・・ぷぁっ」

 

 

ぐっ・・・とフェイトを押しのけて、何とか呼吸の自由を取り戻します。

抗議しようとフェイトの顔を見ると、強い瞳と目が合って・・・自然、口を閉ざしてしまいます。

 

 

「・・・本当は、こうしたかった」

「え・・・」

「アリアは・・・違う? さっき、どう思ったの・・・?」

「わ、私は・・・そんな。けど・・・」

「けど・・・?」

 

 

気が付けば、背後の扉に背中を押しつけるように、フェイトと見つめ合うような体勢になっていて。

逃げようと思えば、逃げられるかも、だけど。

私の手はドアノブでは無く、フェイトの首に伸ばされていて・・・。

 

 

・・・言いたかった、叫びたかった、本当は。

この人は、フェイトは・・・。

 

 

フェイトは、私のだって。

誰にも・・・誰にも、渡さないって・・・叫びたかった。

だから・・・。

 

 

「・・・ます・・・」

「何・・・?」

 

 

フェイトに抱きついて、耳元で囁きます・・・。

でも意地悪なフェイトさんは、聞こえないフリをするんです。

私は、唇を噛んで・・・視界が潤むのを感じて・・・そして。

 

 

「愛してます・・・!」

 

 

言いました。

一度、言ってしまえば、後は止まらなかった。

 

 

「愛してる・・・愛しています! 貴方だけを愛してます・・・前から、ずっと、伝わってほしいって、でもフェイトは、何も変わらなくて・・・怖くて・・・どうしようもなくて!!」

「・・・うん」

「一緒にいるだけじゃ、嫌なんです! コーヒーを飲むのも紅茶を飲むのも、お喋りするのも、楽しいけど・・・楽しいけど、けど不安で、フェイトはどうなのかわからなくて・・・わかっていたけど、不安で、だって、何も言ってくれないから・・・だから、このままなのかって・・・だから!」

「・・・うん」

「何か言ってくれなきゃ・・・わからないじゃないですか!」

 

 

気持ちばかりが溢れて、何を言っているのかわかりません。

だけど、フェイトの温もりは感じてる・・・。

 

 

「・・・僕も、楽しかったよ。キミといると安らいで、キミが楽しそうにしているなら、それで良いのかと思っていたんだ」

「はぃ・・・はいっ・・・」

「でも、それじゃダメなんだね・・・伝えないと、伝え合わないと、わからないことがあるんだね。言葉にしないと、わからないことが・・・あるんだね」

「・・・フェイト・・・私、私・・・フェイト・・・!」

「・・・今になって理解するのも、遅いのだろうけどね」

 

 

抱き合ったまま、少しだけ離れて・・・フェイトの唇が、まるで私の涙を拭うように、額、頬・・・と、伝って行きます。

 

 

「けど、もし許してくれるなら・・・僕にもう一度、チャンスをくれないかな?」

「・・・」

「そして、できればキミも・・・僕にちゃんと、教えてほしい。何をしてほしくて、何が嫌なのか」

「は・・・」

「・・・許して、もらえるかな・・・?」

 

 

一瞬、フェイトの無機質な瞳が、不安に揺れた気がしました。

それはきっと、私の思いすごしなのでしょうけど・・・でも。

でも、それでも、私は・・・。

私はそんなフェイトが、どうしようも無く愛しくて。

 

 

「・・・は、ぃ・・・」

 

 

目を細めて、小さく頷いた、刹那。

フェイトに唇を塞がれて、私はそれ以上、何も言えなくなりました。

 

 

・・・甘い香りが、私達を包み込みました・・・。

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

伝えなければ、何も変わらない。

僕は「感情」を学んだつもりだったけど・・・どうやら、肝心な部分を学んでいなかったようだった。

実際の所、今でもよくわからないけれど。

 

 

「ん、ふ・・・っ・・・」

 

 

アリアの小さな唇に、自分のそれを重ねる。

この5年間、これくらいならば何度でもしてきた。

だから、加減などはわかっているつもりなのだけど・・・。

 

 

「・・・んぅ・・・っ」

 

 

いつもより長く・・・そして強く。

そんなキスを、望まれているような気がした。

と言うより、僕が望んでいるのか・・・?

 

 

唇の形を確かめでもするように、僕はアリアの唇を奪い続ける。

少し位置を変えるだけで、アリアがかすかな吐息を漏らす。

 

 

「ん、む・・・はぁ・・・っ」

 

 

定期的にアリアに息を吸わせつつ、キスを繰り返す。

ぎゅっ・・・と、腕に力を込めてアリアの身体を抱き締めながらキスをすると、どうしようも無く「愛しい」気持ちになる。

少し苦しそうに、それでも僕を拒絶せずにキスを受け入れるアリアの姿は、何よりも美しく見えた。

 

 

 

・・・もどかしいな・・・。

 

 

 

自分でも不思議なことに、何故かそんなことを考えた。

今は半ば床に座るようにアリアを抱き、唇を重ねているのだけれど。

どうしてか、もっと・・・そう、もっと、アリアに触れたい・・・そう考えてしまう。

これ以上の触れ方なんて、わからないけど・・・。

 

 

「ん、はぁっ・・・ふむっ!?」

 

 

・・・何度目かの呼吸のためにアリアが唇を開いた瞬間、僕はより強く唇を押し付けた。

その拍子に、互いの舌が一瞬だけ、掠めたような気がして・・・僕はそのまま、自分の舌をアリアのそれに絡めた。

 

 

「・・・ゃ、ちゅっ・・・はっ・・・」

 

 

アリアは少しだけ僕の腕から逃れようと身じろぎするけど、僕には彼女を離すつもりが無かった。

そのまま・・・アリアの口内を、ゆっくりと味わうことにする。

とんっ、とんっ・・・とアリアが僕の胸を叩くけど、僕はその手を掴んで、やめさせる。

彼女の息すら奪うような勢いで、唇を重ねる。

 

 

「・・・ちゅ・・・ぅんっ・・・ぁ、ふ・・・」

「ん・・・アリア・・・?」

「は、ぁ・・・の・・・じゃっ・・・た・・・」

 

 

焦点の合ってないような目をするアリアに、僕は再び唇を近付けようとして・・・。

・・・それは、アリアの手で遮られた。

 

 

「ダメ・・・?」

「ダメ、じゃ、無い・・・けど・・・その、ここ、床・・・だか、ら・・・」

 

 

・・・ふむ。

僕はアリアの額に軽く口づけると(「ひゃうっ・・・」)、アリアを両手で抱え上げた。

それから・・・ゆっくりと、ベッドに下ろす。

すると、シーツからかすかな甘い香りが立ち昇ったような気がした。

 

 

・・・何の香りかはわからないけど。

ただ、今は目の前のアリアの方が、僕にとって重要だった。

顔を赤らめて、どこか潤んだ瞳で僕を見るアリアの方が・・・大事だった。

 

 

「・・・あ、の」

「愛してる」

「・・・っ」

「・・・愛してる」

 

 

この言葉にどんな魔法がかかっているのかはわからないけど、それだけでアリアは表情を緩めてしまう。

その隙に、僕はアリアの上に覆いかぶさって、髪、額、瞼、頬に唇を這わせて・・・再び、唇を奪った。

・・・当然、深い方。

合わせて髪を撫でると・・・アリアも、僕に唇を押し付けてくる、ような気がする。

 

 

「ちゅ・・・ちゅ・・・ふ、んっ・・・」

 

 

次第に、アリアも慣れてきたのか・・・少し落ち着いてきた様子だった。

その証拠に、僕の背中に回されたアリアの腕に込められた力が、少し緩んだから。

僕はアリアの右手を左手でとり、ベッドに押し付けて・・・指を絡ませる要領で、手を重ねた。

 

 

「ふ、ぁ・・・フェイ、ト・・・ん、やぅっ・・・」

「・・・っ」

「んっ・・・んんんっ!? ・・・ぷぁっ!」

 

 

名を呼ばれた途端、言いようも無い感覚を覚えた。

そのためか、より強く唇を押し付けて・・・最後に、絡めたそれを強く吸い上げた。

はっ・・・はっ・・・と、酸欠を起こしたかのように喘ぐ彼女の姿に・・・「ぞくぞく」とした感覚を覚える。

潤み切ったその瞳が、たまらなく愛しかった。

 

 

「アリア・・・」

「は・・・ぁ、ま、待って・・・」

「何・・・?」

「・・・ぁ、の・・・」

 

 

アリアに覆いかぶさるような体勢のまま、僕はアリアの言葉を待った。

アリアは視線を彷徨わせた後、手の甲で口元を隠しつつ―――まさか、僕のキスを避けるためでも無いだろうが―――自分の小指を噛むようにしながら、控え目に、言った。

 

 

「・・・明かり、を・・・」

 

 

・・・明かりを、どうしてほしいのだろう。

ただ、アリアはそれ以降は何も言わないし、さて・・・。

どうした物かな・・・?

と、考えていると。

 

 

ドドドドドドッ・・・、と言う音が、寝室の扉の向こうから聞こえた気がした。

何だ・・・と思った、次の瞬間。

 

 

『ここを・・・けには・・・せん、マス・・・』

『やかま・・・ 非常・・・んだよ!』

『マ・・・ゴシュ・・・』

『そう・・・馬に蹴ら・・・』

『意味・・・らんわ・・・い、ど・・・共が!』

 

 

ドガンッ、と鍵を粉砕する勢いで、寝室の扉が開いた。

そこから現れたのは、予想通り・・・吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)

肩越しに、戦闘の跡が見えるのは何故だろう。

 

 

「アリア! 大変だ! 千草から連絡があって、旧世界のさよ達・・・が・・・あ・・・?」

「あ・・・」

「・・・ふむ」

 

 

吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)の声量が、急激に下がった。

アリアは目を丸くして、僕は特に驚くでも無く。

 

 

そんな僕とアリアは・・・ベッドの上で。

と言うか、僕がベッドで寝ているアリアの上に覆いかぶさるような体勢で。

しかもアリアは、両目に涙をたたえていて。

その状況を把握したらしい吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)は、まず顔を赤くして、次いで青くして、さらに赤くして・・・。

 

 

倒れた。

 

 

背後には、茶々丸が立っていた。

片方の腕が、巨大な注射針になっているのだけど、何だいそれ?

茶々丸は自分の主人(エヴァンジェリン)を抱き抱えると、僕とアリアを見て・・・軽やかに微笑んだ。

 

 

「・・・ごゆるりと・・・」

 

 

そのまま、音も無く扉を閉めた。

まさに、何事も無かったかのように。

ただ、まぁ・・・。

 

 

「えっ、いやっ・・・その、違っ、ま、待ってえええぇぇぇ―――――――――ッッ!!」

 

 

先程までとは別の意味で顔を赤くしたアリアが、そう叫んだ。

・・・まぁ、そうなるよね。

慌てふためいているアリアを見ていると、僕はとてもおかしな気分になった。

 

 

可愛いな、と。

そして・・・早く、結婚したいな・・・と。

そう、思った。

 




クルト:
ははは、ごきげんよう、クルト・ゲーデルです。
とりあえず、お世継ぎは可能な限り早くお願いしたい物ですね。
姫が良いですねぇ・・・ナギに似なければ王子でも良いですが。
まぁ、アリア様のお子ならさぞかし・・・。
あの吸血鬼も、子供が生まれてしまえばどうせメロメロするに決まってますからね。


クルト:
では、ラブロマンスパート終了、次回からはどシリアスですよ。
と言うか、戦争パートに入りますよ。
では、ぜひとも我が立憲王政党に清き一票を。

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