果て無き黎明   作:村雨ハル

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プロローグ 「継承」 4/5

   

 

 

 鉛色の空は今にも泣き叫びそうだった。午前中までの晴れ上がった春先の快晴はどこへやら、白と灰色の雲に覆われて、鬱蒼とした空だった。

 そんないつ雨が降り始めるかわからない天気ではあったが、孤島に存在するアリアハンの王宮前の門には既に橋の上に人溜まりができており、新しい勇者の勇士を一目見ようと告知はなかったにも関わらず多くの人が集まっていた。

 

 アルトもまた、その人混みの中にいた。そんなことをせずともアゼルスが旅立つ日程はまだ定まっていないため、まだいつでも会えるのだが……なぜかはわからないが、言いようのない不安を感じていた。その原因の理由がアルトにもわからず、その不安がここまで足を進めてしまった。だが、その不安も新たな勇者を待つ人々の歓喜に飲み込まれてしまいそうになるが、それでも消えはしなかった。

 

 取り越し苦労ならそれでいいが、心の奥底でかつて、感じたことのある不安だった。

 かつて、オルテガが消息を絶ったと報告が来た日もこんな灰色の、寂寞とした空だったのをアルトはよく覚えている。その時と似た空が、アルトの記憶の底から呼び覚ましているからこんなにも不安を感じてしまうのか……少年にも答えはわかることはなかった。

 

 ふと、人混みの中からぱたぱたと華奢な腕が手を振っているのがアルトの視界に入り、そこまで人混みを掻き分け、いたのは透き通る空色の髪の少女……シエルだった。

 

「やっと会えました」

 ほっとしたような朗らかな笑みを浮かべる少女にアルトもまた、安堵を覚える。

 

「どうしたんですか? アルト君もお兄さんの姿が見たくてここに?」

「うん……まあ、そんなところ」

 

 曖昧にアルトが言い、シエルも気にしていなかったのか深く言及はしてこなかった。視線を城門に戻した少女の横顔をアルトがまじまじと見つめる。

 

「シエルも、兄さんのことを見に来たの?」

「はい、魔王を倒すのはオルテガ様でも成し得なかった大願です。その悲願を引き継いだ方を見るのはアゼルス君が魔王を倒してアリアハンに戻られるまで叶いません」

「そう、だよね」

 

 魔物の脅威は世界で共通で引き起こされている惨劇だ。魔物たちを統率し、ネクロゴンドを陥落させその軍力で世界中を進軍する元凶。

 言霊に宿る響きは禍々しく、その進軍の爪痕で多くの悲劇と絶望が齎されている人類共通の脅威。勇者オルテガも討伐に出たきり、消息を絶ち叶わなかった。その脅威に立ち向かう新たな希望。それがアゼルス。兄は戦いを選択し、人の幸福を守ることを選んだ。

 

 以前であれば、それをアルトは輝かしく思えたであろうが今は違った。

 アゼルスにはアゼルスの、アルトにはアルトの歩むべき道がある。アゼルスが守るのであれば、アルトはその傷跡を癒して生きていこうと心に決めた。楽師となり、音色で一つでも多くの笑顔を癒していこうと。

 甘さかもしれないが、勇者の息子には似つかわしい生き方かもしれない。それでもそうしたいと感じている少年には他人の評価など微々たるもので、もう気にすることもなかった。

 

「兄さん……遅いね」

「ええ、何かあったのでしょうか」

 

 シエルがこくん、と小首を傾げる。懐中時計をアルトが見つめ、兄が旅立ちの許しを終えて城門に出てくるのは四時過ぎ。だが、現在の時刻はそれを半刻ほど過ぎてしまっている。さっき感じて不安にアルトが突き動かされる形で言葉を発していた。

 

「お城まで見に行かない?」

「え……? でもここで待っていたほうがよろしいのでは?」

「遅いのが気になるんだ……」

「わかりました。そうしましょう」

 

 アルトの不安げな横顔を窺って、シエルが笑んだ。シエルがぴ、っと人差し指をアルトの口元に当てる。

 

「勝手にお城に入ったこと。後で一緒に怒られましょう。ね?」

 少女が悪戯っぽく笑むと、すぐに行動に移したのだった。

 

 

 

 橋の下を降りてから、城壁沿いを辿ってそこに天高く聳えた樹木があった。その上に最初にアルトが攀じ登ってからシエルに手を差し出して彼女を引き上げていく。城壁の高さに達した場所でまず待機する。

「まず僕が降りてから、シエルが飛び降りて。僕が受け止める」

 シエルが頷くと、アルトが飛び降りようとする。が、予想以上の高さに一瞬だけ躊躇してしまった。頬を叩くと高さへの恐怖を押し込め覚悟を決めて、意を決してアルトが飛び降りる。

 地面に吸い込まれるような浮遊感が襲い、突風がアルトの頬をなぞった。一瞬であったが宙を舞い、感覚が消えると同時に地面に降り立った。足に痺れるような痛みが一瞬だけ走り、足に染み入るように痺れが襲う。涙目にはなっていたが、それをアルトが押し殺す。

 

 シエルもまた高さに逡巡するも、そこから飛び降り、宙を舞った少女の身体をアルトが抱きとめて、受け止めた。受け止めたはいいが少年の華奢な身体では勢い余って後ろに倒れてしまい、シエルのきゃ、と小さな悲鳴が耳に入る。

 すぐさまアルトが身体を起こそうとするが、頭にむにゅっと恐ろしいほどに柔らかいふわふわした弾力のあるものに埋めてしまった。慌てて顔を離すとなだらかに華麗に盛り上がる二つのふくらみが眼前にあった。それを理解してかアルトが咄嗟に赤面する。シエルがアルトに覆いかぶさる形で乗っていたからだ。

 

「し、シエル。大丈夫?」

「は、はい。ど、どどいたほうがいいですよね!?」

 

 体勢に気が付いたシエルが赤面させて、ばっと勢いよく後退る。さっきの柔らかな感触が咄嗟に蘇ってきてアルトが首を横に振るが中々に消えてくれなかった。

 

「な、何を考えてるんですか!? す、すぐに忘れてください! はしたないです!」

 アルトの視線から胸を遮って、シエルが頬を真っ赤に染めたまま胸元を押さえた。

 

「ご、ごめん」

 アルトも視線を外して、ばっと後ろを向く。ぱちぱちと頬を叩いて柔らかい感触を必死に消そうとしたが、その瞬間に、

 

 地響きがした。城全体を、孤島全体を震わせるかのように響き、島そのものが強く揺れた。

 

「な、何でしょう…?」

「わからない。けど、行ってみよう」

 

 不安げにシエルがアルトの横顔を窺って、アルトが土を払って立ち上がる。手を差し伸べ、シエルもその手に掴まって立ち上がる。

 

 記憶を辿って、移動して裏口から二人は城内に入るが静まり返っていたのに気がつき、見張りの兵士も給仕の姿も見えずに何か城内で異変が起きているのに気が付く。静まり返った城内が俄かに張り詰めている……緊迫した空気に重さを感じ取れた。

 二人の大理石を蹴る音だけが通路に反響し、アリアハン王宮に何か異変が起きてるのがはっきりと理解できた。言いようの無い押し潰されそうな緊迫感がアルトの中に抱えた不安を増大させ、足を早くさせた。小刻みに響く二つの硬い音が少しずつ離れていく。

 遠くから剣戟の音が反響してくる。一つではなく……二つ、三つと増えては消え、そして生じては弾けてを繰り返し、城内での異常が四方から響き、アリアハン王宮において在り得てはならない事態が起きているのが遠く響く音がはっきりと伝わった。

 

「待って…」

 後ろからシエルの静止する声で、自分の足が速くなっていたことに気が付き、アルトが足を止める。

「ごめん。気が付かなくて」

「いいえ……何か焦ってるようでしたので」

 

 それを指摘されて、アルトが下を向く。気が急いて、シエルとの歩測が違っていた。彼女のことを考えずに気持ちばかりが先行していた。それは紛れも無く事実だった。焦っていた―――紛れなく焦りがアルトの足を進めて、突き動かしていた。

 気持ちばかりが空回りしていてはダメだ。そうアルトは自分に言い聞かせる。まず、ここにいるのはアルトだけでなくシエルもいる。僧侶の初級の呪文を幾つか使えると言ってもシエルは女の子だ。男として女の子は守らないと。そう決めて、アルトはきつく拳を握り締める。アリアハン城は異常事態が起きているなら尚更彼女の傍にいないと。

 

「お兄さんのことが気にかかるのはとてもわかります」

 そんなアルトの気持ちを知ってか知らずか、おずおずとシエルが声をかけて、そっとアルトの眼前まで近づく。紅玉のような大きな紅い瞳に真摯に見つめられ、内心アルトはどぎまぎしていた。

 

「今は信じましょう。きっと大丈夫ですって」

「そうだね」

 

 アルトが心配げなシエルに笑みで返した。それに彼女が微笑みを返してくれた。

 信じるということは言葉にすると簡単だが、それを実行するとなるととても難しい。だが、今は何の根拠も無いけれど兄は無事だって思えてきた。それは見る人を安堵させ、元気付ける彼女の笑顔のおかげなのかもしれない。

 

「今は進もう。なんでこんなことが起きてるのか……微力かもしれないけど、今は僕たちに出来ることを探して、それをやろう」

「その意気です」

 

 ぽん、とシエルが手を軽く叩いて、それにアルトが微笑む。また二人が歩き始めた。まだあちこちで反響する剣戟の音は途切れず、その中を潜り抜ける。

 

 

 どれほど通路を進んだかはわからないが、分岐に差し掛かった瞬間だった。二人が一旦歩みを止めて、驚愕に思惟を支配された。銀の甲冑に身を包んだアリアハン所属の騎士が目の前にばたりと倒れてきたからだった。

 アリアハンの兵士、騎士は勇猛で知られる。その力量、白兵戦での制圧力は世界に知られ、強国として名を轟かせてきた。事実、アリアハン王都や領の大都市や小さな町村が強大な魔物の脅威に晒されないのはその力により、安寧を保っているからだ。

 その勇壮たるアリアハン騎士が目の前に傷だらけで倒れこんでくれば、驚いて当然のことだった。騎士は甲冑諸共左の脇腹を切り抉られて、真紅の出血が止め処なく溢れてくる。大理石の通路に紅い血に染まっていく。咄嗟にシエルが斬り痕に手を翳す。

 

「恵みを齎さん。生命の躍動を呼び覚ませ―――ホイミ」

 

 シエルの掌から白い光の文字が描き出されると同時に光が溢れ出して、シエルの唇から言霊と同時に呪文が放たれ、ゆっくりではあるが光が騎士の切り傷を包み込んで治癒していく。傷口が傷むのか騎士が呻くがそれで生きていることがわかった。

 

「大丈夫です。時間をかけてゆっくりと治療すれば完治できます」

「よかった。でも」

 

 安堵したのも、束の間アルトが騎士の傷跡を見る。刃物で抉られた傷跡だった。騎士の鍛錬が以下に激しくともここまでになるまでやるわけがない。そうアルトが思案した瞬間に、

 

「アルト君!?」

 

 シエルの声に弾かれて、背後を瞬間的にアルトが振り返る。そこにいたのは純白の…肉が全て剥がれ落ちてそれでも甲冑を身に纏った骸骨の剣士だった。

 剣を振り下ろさんとした骸骨剣士にアルトが咄嗟に騎士の、アリアハン騎士団が使役する鋼の剣を持ち、防ぐ。全身がよろめきそうになる重たい感触に振り回されそうになるもののそれで鍔迫り合い、力任せに魔物を弾き飛ばす。勢い良く骸骨剣士が地面に叩きつけられる。

 

 肩が外れそうになるが、きつく剣を握り締める。

 息が乱れ、荒くなっていく。

 恐怖が心を満たしていく。

 足が竦む。剣の重みに手が震える。剣を振るったときの手の痛み、相手に暴力を振るった感触が心に響き、心がずきりと痛む。

 そんなアルトの気持ちを知らず、骸骨剣士はゆっくりと立ち上がり、再び剣を構える。暴力の時間がまだまだ続くとわかり、心が悲鳴を上げているのがわかる。

 戦いたくなんかないのに、したくないのに、震える心が囁きかける。

 

 だが、アルトはその自分の弱さを締め出した。だからこそ、余計にきつく剣を握り締めた。掌が痛くなってくるほどに握った。

 背後には……守るべき者がいた。

 兄の言葉がアルトの心に響く。暴力に小さな何かが踏み躙られてしまう。それを許すわけにはいかないと。だからこそ勇者は戦うのだと。

 傷ついた騎士とそれを治癒しているシエル。この二人を置いて、逃げる訳にもいかない。例え、アルトが弱くても、心許なくとも戦う。二人を守る為に剣を振るう。

 

 骸骨剣士が一気に距離を詰め、猛攻を仕掛ける。幾度なく剣戟の音が弾け飛ぶ。重たい剣に振り回されながらもアルトが防いでいく。普段から兄や祖父に鍛えられていた成果が出て、何とか情けない姿ではあるが、戦うことができている。内心、鍛錬してくれた二人に感謝していた。

 袈裟から振るわれる魔物の剣を、アルトが防いで鍔迫り合いになる。がちがちと刃が噛み合って悲鳴を上げる。それを力いっぱい押し出して、骸骨剣士がよろめく。

 

 ――守ってばかりじゃダメだ!

 

 そう、心に念じて、アルトが地面を強く蹴りだした。体勢を崩した敵は間に合わずに真一文字に振り下ろされたアルトの一閃に間に合わずに切り裂かれた。倒れ臥す前に砂となって魔物は消えた。

 がむしゃらに戦った少年には、勝利の感慨など出ずにその場に崩れ落ちる。

 

「アルト君、大丈夫?」

「僕は何とか……その人は?」

「はい。今、治癒が終わりました。命に別状はないですし、傷つけられてからすぐにホイミをかけたので間に合ったって感じです」

 

「そっか……よかった」

 何とか守りきれた。そんな気持ちがぼう、と湧き出た。こんな自分でも何かを守りきったんだという安堵が何よりも先に感じられた。

 

「アルト君……あんまり無茶しないでくださいね」

「ありがとう」

 心配げな眼差しを向けるシエルに、アルトが微笑む。

 

「あの人を放置するわけにもいかないよ。どこか……医務室を目指そう」

「そうですね。それがいいのかも」

 

 シエルが肯定を返そうとした瞬間だった。言葉が途絶えた。アルトも異変に気が付き、周囲を見渡す。

 四方に骸骨剣士で囲まれていた。数は十数もの数の敵に囲まれていた。それに焦燥感を感じ始める。逃げ場が塞がれていた。一体を倒すのがやっとな少年にとっては充分絶望的な状況といえた。

 

 二人を何とか逃がさなければならない。だが、どうやってか? 通路はどこも敵で塞がれ、退路がない。切り開こうにも通路一つにつき、五~七体の魔物と戦わなければならない。その隙に距離を詰められてしまえば退路がなくなる。

 だが、こうしていても、時間が経過するだけで、更に敵がいつ行動し始めるともわからない。

 

 そんな少年の心境を悟ってか、四方の骸骨剣士たちが駆け始める。

 時間の感覚がゆっくりと、鈍く感じられた。高まった緊迫感が自分の時間を遅めているのだとわかった。知覚できる視野は酷くゆっくりとしていた。音もゆっくりとがちゃがちゃとけたたましく鳴り響く敵の駆け足が聴覚に入るまで遅く感じられた。

 

 覚悟して、少年は引き摺るようにして剣を握り締め、前に向かおうとする。足に力を込める。

 ほんの少しかもしれないけれど、二人が逃げるための活路を切り開くために。アルトは走り出していた。無駄かもしれないけど、それでも生かせる命が、そこにあるのだから。

 そんな少年の気持ちを踏みにじるかのように魔物の進軍はそこまできていた。死がそこまで来ている。圧倒的に脆弱な自分を掻き消す暴力はそこまで来ている。アルトが覚悟を決めたその瞬間、だった。

 

 

 ―――疾風が吹き抜けた。

 

 吹き抜けた熱風は敵を引き裂いて、魔物たちが砂となって粉塵に還る。嵐の如く―――鋭利に振るわれた白銀の牙は鋭く敵の命を吹き飛ばす。

 紺の外套が粉塵に煽られて靡く。アルトは藍の瞳で嵐を巻き起こす者を映す。目の前に立つ、希望。

「兄さん!」

 

 にっと笑った瞬間にアゼルスが、駆け出して剣戟を振るう。

 一瞬の出来事だった。視覚に捉えたその瞬間には自分の置かれた絶望的な状況は、掻き消えてゆく。閃光が描き出されて、その剣戟の閃光がなぞった魔物は絶命し、粉塵として大気に舞う。

 刹那の時間で、瞬く間に骸骨剣士たちを切り裂いた蒼い疾風の背中を、アルトがその眼で見つめていた。

 これが……アリアハンの若き勇者。如何なる絶望すらも切り裂く希望。それが今、目の前に立つ青年。

 

 程なくして救護部隊が駆け付け、傷ついた騎士を介抱する。彼らの話で今の状況が端的にわかった。アリアハン王宮内に突如として魔物が現れ、強襲したのだという。倒しても倒しても湧き出ていたがその数は鎮静化しつつあるのだという。

 

「何とか、終わりそうだな。大丈夫か?」

「僕の方は大丈夫だよ」

「危ないとこを助けていただいてありがとうございます」

 二人にアゼルスが向き直って、シエルが小さく頭を下げる。命の危機を救われ、この事態も終息に向かっている。

 

「いや、戦ったのはアルトだろ?」

「え……?」

 兄に視線を向けられて、アルトが小首を傾げる。

 

「お前が戦おうとしなかったらシエルもあの騎士もどうなってたかわからないしな。紛れもなく、お前が守ったんだよ」

「そう、かな」

「はい、そうです」

 

 こそばゆくなってアルトが視線を逸らす。自分のこの手で、ただがむしゃらにやっただけで、たまたまでしかない。こんな自分でも、誰かの命を守ったのだと、そう告げられてアルトが赤面したまま、下を俯く。そんなアルトにアゼルスが肩を叩き、見上げればアゼルスが親指を立てて笑っていた。

 

 空気が緩みかけた、その瞬間だった。

 大気が重くなった。身体が押し潰されそうだった。重力の全てという全てを凝縮し、自分の上に乗っかってきたように思えた。

 その『何か』の気配と眼光が自分の身体を切り裂いてしまったように鋭利な殺気が場に満ちていた。

 

「目的を果たすだけだったが、こうして敵に出会ったしまった以上、殺さなければ」

 

 その声が響き、それを見つめる。濃緑の法衣を身に纏った魔術師。法衣から覗かせる顔は銀の仮面で上半分を覆われており、仮面で隠されていない部分は整い、かなりの美丈夫ではと思わせる。

 人の形を成しているがこの男はこの場に在ってはならない……押し潰されそうな威圧感と禍々しい違和感を放つ人の形をした『何か』であると、想像に難くない。

 その手に握り締められているものに気が付いた。掌ほどの大きさの宝球であった。銀の光を放ち、神々しさすら感じさせる輝きであった。それを握り締めたまま、男は三人を射抜いた。

 

 

 

 

 


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