城の中の吸血姫   作:ノスタルジー

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二十話目。閑話最終話はまた今度。
引っ張ります。すみません。

色々問題がありますが。
とりあえず。どうぞ。


弟子と吸血鬼

 ある日。協会の長の部屋。私とエヴァンジェリンはそこに呼び出された。

 「わざわざご足労いただき申し訳ありません」

 そこには眼鏡をかけた男が座して待っていた。用意されていた座布団の上に腰を下ろす。

 「何のようだ。」

 近衛詠春。馬鹿の集まり「紅き翼」の中でまともなメンバーだと思われている馬鹿。他の馬鹿よりはマシなのは認めるが。

 「少しご相談が……」

 近衛の家に婿養子に入るために魔法世界で武者修行など馬鹿しかしない。

 「娘のことか。」

 そして。親馬鹿。

 「はは……お見通しですか」

 苦笑い。

 「お前のことは子どもの頃から知っているんだ。お前がいくつの時までおねしょをしていたかも、お見通しだが?」

 エヴァンジェリンがニヤニヤと笑って言う。さすが我が妹。いいぞ。

 「……お二人には敵いませんね」

 そういうと姿勢を正し、私たちの方を見据える。

 「娘の木乃香のことなのですが……こちらの世界に身を置かせるべきか迷っています。ご存知の通り、木乃香は妻の木乃葉をも上回る魔力をもって生まれました。類まれない魔力量と近衛の血筋。この二つが娘を裏の世界との縁となることは間違いないでしょう。しかしそれでも、お二人の前で恥ずかしいことですが、英雄などと呼ばれたこの身からすれば、娘には表の世界で平和に生きて欲しいのです…」

 近衛木乃香。陰陽術の名門である近衛家の長女。歴代トップクラスの魔力量をもって生まれてきた娘。才ある次期当主として期待されているが。親はそうでもないらしい。

 「この件についてお二人のお考えを拝聴できればと…」

 ふん。と小さく鼻を鳴らすエヴァンジェリン。だいたい何を言うか予想がつく。同意見。

 「そうだな。あの愛らしい娘は戦いと無縁の世界で生きるのがいいだろう……などと言うと思ったか?ん?」

 しかし。年を重ねる毎に性格が悪くなっている気がするが。何がいけなかったのか。

 「自分で答えが出ているくせに私たちの手を煩わせるな。馬鹿が」

 放任しすぎたのだろうか。もう少し直々に面倒を見るべきだったのか。

 「あいつは何時か確実に魔法と関わることになる。お前も言っただろう?縁があると。日本古来の魔法を学んでおいて縁の重要性が分からないとでもほざくつもりか?」

 いや。待て。エヴァンジェリンは一度置いておいて。アリスは。ふむ。忘れよう。エヴァンジェリンはおそらく京で自由にさせ過ぎたのだろう。京の街が悪影響だったに違いない。

 「……アイリス殿はどう思われますか?」

 「そうだな。私は悪くない。」

 「は?」

 「……何の話だ?」

 「エヴァンジェリンの教育についてだ。私は悪くない。」

 「それはどういう意味だー!!」

 

 間。

 「コホン。…アイリス殿はどう思われますか?」

 「エヴァンジェリンと同意見だ。私から言わせてもらうことがあるとすれば。もし本気で娘と裏を切り離せると考えていたなら。私はお前の東洋魔法の師として恥ずかしい。愚妹だけでなく愚弟子を持ってしまった汚点を背負って永遠を生きることが出来るか。不安だ。」

 「そう…ですか…」

 無視か。

 「先も言ったが、お前も無理だと承知の上だろう?お望みの最後の後押しはしてやったんだ。さっさと諦めろ。愚弟子」

 「…師弟関係は関係ないと思いますが。わかりました。では」

 まぁ。仕方ない。一応私たちは客人だ。長直々の依頼。愚弟子の頼み。

 「アイリス殿。娘に魔法を教えてやってはもらえませんか?」

 聞いてやらんこともない。

 

 「こんにちはー初めましてーこのかですー」

 舌足らずな京都弁。

 「アイリスだ。お前とは前に一度会っているんだが。」

 「きれいなひとやねーお人形さんみたいやねー」

 詠春と話だす小娘。聞け。まぁいい。赤子の頃だ。覚えてはいまい。

 「詠春。」

 「はい?」

 「魔法についての話はしたか。」

 「いえ。まだです」

 なんだと。では私がするのか。それは面倒だ。仕方ない。エヴァンジェリンに任せるか。

 「彼女なら今は出かけていますが」

 「何。」

 「アリス君とチャチャゼロ君を連れて街に」

 しまった。逃げられたか。

 「なーなーおとうはん。面白いことってなんやのー?」

 詠春の袖を引き、何が楽しいのかしらんが笑う幼女。落ち着け。

 「木乃香。こちらの方はアイリスさんという凄い魔法使いなんだ。今日から木乃香に魔法を教えてくださるんだぞ」

 何だその説明は。そして何だそのキラキラとした目は。こっちを見るな。

 「これを見ろ。」

 そう言って手を差し出す。

 「え?何もないえ?」

 反応が返ってきたのを確認し、手を握る。そして。開く。

 「あぁー!?すごい!飴が出てきたー!」

 所詮幼女。ちょろい。何だその目は。詠春。

 

 詠春は出来る限り陰陽術をメインに教えてほしいと言ってきた。当然だろう。西の長の子だ。しかし、自衛に役立ちそうな西洋魔法も積極的に習得させてほしいとも言ってきた。親馬鹿。

 ある日。

 「いいか。木乃香」

 「はい。おししょーはん」

 「この札を持て。」

 「はい。おししょーはん」

 「火よ、と唱えて魔力を流せ。」

 「はい。おししょーはん。火よ!」

 沈黙。何も起こらない。魔法の才はあるはず。だが。札を使った初級術が使えないだと。何故だ。

 「あのーおししょーはん」

 「何だ。」

 今お前の教育について考えている。黙っていろ。

 「魔力ってなんやの?」

 

 またある日。

 「字が書けない奴は陰陽術は使えん。字の練習をしろ。」

 「えー」

 不満を口にする木乃香。

 「少しくらいは書けるだろう。」

 「ひらがなだけなー漢字は小学校に入ってからやって言われたえ?」

 木乃香。五歳。

 

 「あの娘の教育はどうだ?はかどっているか?」

 自室。エヴァンジェリンがアリスとチャチャゼロを連れてやって来た。アリスは睡眠。チャチャゼロは晩酌。帰れ。

 「そこそこといったところだ。」

 「ほう?そこそこ、か」

 意味深な口調。まぁいい。

 「お前の方にも新たに弟子が出来たと聞いたが。」

 詠春が言っていた。烏族の娘。禁忌の白い羽の少女。

 「あぁ。そうだ。まぁ弟子といっても剣を見たこともないようなガキだ。まだ何も出来ん」

 「白い烏族だと聞いたが。」

 「ふん。悲劇のヒロインのような面をしていたよ。髪を黒に染めて、赤い目をカラーコンタクトで隠してな」

 悲劇のヒロインか。里で迫害を受けていたと聞いたが。悲劇か。

 「面倒そうなやつだな。」

 「……否定はせんな」

 そう言った後。チャチャゼロの飲んでいた酒を横取りするエヴァンジェリン。それからはアリスの寝息と酒を注ぐときの水音だけが部屋にあった。

 




問題一。時間が飛ぶ。
どうしようかと思ったのですが。いったん飛ばします。
飛ばした時間をどれだけ細かく書くかは未定。

問題二。原作時間軸がおかしい。
詠春と木乃香、刹那関係の原作時間軸が不明な部分が多く、適当。

問題三。本編短い。閑話の半分。

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