次話にここまでのまとめ。原作との相違点やキャラ紹介を入れます。
「ん、これでおしまい。はい複製したカード。千雨ちゃんのだよ」
そう言って照れを隠しながら、千雨ちゃんに複製した仮契約カードを渡した。
う~~~。900年生きてて、唇同士って実は初めてかも?何気にファーストかな?シスター見習いの小さい子に頬っぺたとかおでこは有ったけど、千雨ちゃんも気にしてるかな?
そんな事を考えつつ顔を上げてみると、真っ赤になった千雨ちゃんが見えた。
「あ、緊張?しちゃったかな?」
「えっ。そ、そりゃ、まぁ……」
「ハイ!お2人さんご馳走様!」
「いい土産が出来たぜ。くくく」
「「な!?」」
「声も揃ってお熱いね~。それよりカードの確認をしたらどうなんだ?」
「そうだな、千雨の切り札になるかどうかだからな」
「む~~~。と、とりあえず見てみよっか?」
「え、あぁ。どう見るんだ?」
とりあえずカードの名前、称号、アーティファクトの確認かな?カードを見ると……。
名前 HASEGAWA TISAME
称号 水の巫女
色調 Argentum(銀)
徳性 fides(信仰)
方位 centrum(中央)
星辰性 Saturnus(土星)
アーティファクト Thetis Bracelet(テティスの腕輪)
絵柄は、白いドレスの様な西洋風の巫女服(?)を着て、髪を解いた千雨ちゃんの周りに水球が浮かび、右手首に水色の腕輪をして、両手を胸元で組んで立っている絵だった。
「……誰だこれ?」
「千雨だろ?」
「これは絶対私じゃない。マジで誰だよ!しかも巫女って柄じぇねぇって!」
「そんじゃ、板に付く様になるか?俺もシルヴィアもお嬢様教育とか出来るぜ?」
「マジで?」
「え、うん。大分昔にやったよ。ハッタリも必要って事でね?」
懐かしいなぁ~。今でもシスターの見習いの子達はやってるのかな?結構苦労したんだよね~。なんか嫌な予感がしてきた。フロウくんなら喜んで悪ふざけしそうな気が~。
「ね、ねぇ?フロウくん?……あ」
「あら、どうしまして千雨さん?」
「きめぇ、それ慣れねぇよ。やめろマジで……」
視線を送ると、既に身振りまで演技に入ったフロウくんが千雨ちゃんに向かっていた。
「頑張ってね……千雨ちゃん」
「マジか!?マジでこれやるのか!?」
「おいおい。アーティファクトの鑑定は良いのか?持って帰っちまうぞ?」
「「「あ!」」」
そ、そうだね。フロウくんは鑑定具も依頼してたんだ?
「じゃぁ千雨ちゃん。カードを持ってアデアットって言ってみて。それでア-ティファクトが出てくるから。戻すときはアベアット。ちなみに意識すれば、服装も変わるからね」
「服装はいらねぇ。アデアット」
カードを持ってそう唱えると、カードが消えて半透明の水色の腕輪を装着していた。
「む、装備型か。鑑定結果は……ほ~~う」
「どうだったの?」
「コイツは好きなだけ雨を降らせられる」
「はぁ?それだけか?シルヴィアが主人なら、もっとおかしいレベルの物が出て来ても良いと思うぜ?」
「雨を降らせ放題って聞くだけで、普通にチートに聞こえるんだが……」
「その通りだ。この腕輪は装着者の周囲400mの水を全て支配下に置く。その結果雨が降るわけなんだが、こいつはその雨水を自在に動かせる。しかも魔力供給で範囲は広がるし、支配下にある雨水は、他の術者の水・火・氷なんかの影響を受けねぇ。つまり空間支配と言うわけだ。あと本人と持ち物。味方と知覚してる奴は濡れねぇんだとよ」
そうすると、千雨ちゃんの地力に思いっきり左右されちゃうかな?魔力供給すれば範囲は広がるから良いとして、水系の魔法とかもっと上手く使えるようになれば、かなり強いかも?
「千雨。水のワープゲート魔法覚えろ。雨の中で転移を連発出来る様にな。それと相性の良い風と氷系も伸ばせ。それで体術と組み合わせたら、かなりえげつない事が出来るようになるぜ」
「いや、まぁ、そうなんだろうけど。キツそうだな」
「良いじゃねぇか。やりがいはあると思うぜ?俺様でもそこまでになったら、ちったぁは本気になるかもな?」
「それでちょっとなのか?」
「千雨ちゃんは今、半分水精霊だから、割りと楽だと思うよ?魔力の器も上がってると思う」
「あ、そう言えばそうなんだっけ?ぜんぜん実感無いぞ?」
あれ、そうなんだ?私がこの身体になった時はどうだったかなぁ。翼に慣れなかったけれど、意外と何も無かったかも?あ、食事とか睡眠のリズムは変わったんだっけ……?
「もしかしたら生活リズムが変わるかも?私がそうだったし」
「そうなのか?」
「とりあえず帰ったら魔力の質の確認だな。それから猛特訓だ!」
「あ、あぁ……」
「そんじゃ、俺様の用は済んだ。また何処かでヨロシク!」
「おう!またな!」
「え!?さようなら!お元気でね」
「あ、さようなら!」
そう言ってラカンさんは何処かにあっさり行っちゃった。何だか凄い自由人って噂も聞くけれど、本当に奔放なんだね~。
「それじゃちょっとは観光して帰るか」
「……普通そっちが先じゃねぇ?」
「あら千雨さん。言葉が乱れていてよ?」
「ヤメロ、それはもう良い」
そんな訳で、しばらく観光してから帰ることになりました。観光中、千雨ちゃんが散々からかわれたのは、良い思い出……に、なったのかな?
「ただいま~」
「おかえり、留守中に面白そうな奴が来たぞ」
「面白そうな奴?」
「え、誰か来たの?学園関係者じゃなくて?」
魔法世界≪ムンドゥス・マギクス≫から戻ってきた私達は、エヴァちゃん達の家に来んだけど、戻って来るなりトラブルがあったのかな?
「関係者と言えば関係者か?麻帆良大学部の研究グループと合同で機械人形を作るらしいんだが、それの動力源に【人形遣い≪ドールマスター≫】として、私の魔法を組み込みたいらしい」
「え?それって思いっきり魔法関係者だよね?」
「それが違うようだ。探査魔法はかけたが完全に一般人だな。どこで私のことを知ったかしらないが、魔法と科学を融合させた研究がテーマらしくてな」
「それって、引き受けたの?」
エヴァちゃんを『管理者』の一員ではなくて、二つ名の【人形遣い】で尋ねて来るって事は外部の魔法関係者が居るって事じゃないのかな?
「引き受けたぞ。この時期に他でも無い私に依頼してくるという事はおそらく原作絡みだろう?機械人形にはチェックの為の記録装置が付いてるそうだが、プライベートやこちらの秘密には触れないと言う契約もするそうだ」
「ふーん。魔法の事を知っていて契約を口に出すと言うなら、信用性は上がるな」
「まぁ、そうかな~。それでそのロボット?は、今どうなってるの?」
「まだ調整中だそうだ。半年以内程度には完成するらしいぞ。名前はまだ決まっていない。最終的に人形のデータが欲しいらしいから、その人形自体はこちらにくれるそうだ」
なんだか……随分と上手い話に聞こえるね~。でも確かに原作がらみの予感なんだよね。あっ!
「ねぇ麻衣ちゃんは?そのロボットの事覚えてないのかな?」
「なるほど、確認してみる価値は有る」
そう言って麻衣ちゃんに念話を飛ばすエヴァちゃん。
どうなんだろう?原作にそのロボットが居ても、麻衣ちゃんが覚えてるかな……?
「……こんにちは。皆さんおそろいですね~」
「ああぁ、良く来たな」
「こんにちは~」
挨拶をして麻衣ちゃんにロボットの事を訪ねると……。
「……はい。居たと思います。エヴァさんの従者で、ドール契約してましたよ。名前は覚えて無いんですけど」
「ほう、と言う事は確定か」
そう言って麻衣ちゃんは残念そうな顔をするけど、覚えて無くてもしょうがないよね。私なんてぜんぜん覚えて無いし。
「ねぇエヴァちゃん。その大学部との協力チームの人ってどんな人が来たの?」
「うん?超鈴音(チャオ・リンシェン)と名乗っていたな。ハカセとか言う子供も居たぞ」
「もしかして、葉加瀬聡美か?6-Aのクラスメイトだぞ……」
「それなら原作絡み確定なんじゃねぇか?」
「なるほど~。それじゃ今度、皆で会いに行ってみようか?」
「そうだな」
「私も会いに行くのか?」
「うん、千雨ちゃんも会いに行った方が良いかもしれないね。そのロボットってカメラ機能が有るみたいなんだし?どの道こっちに一緒に居るのは関係者には周知だからね」
「そうか……」
「ところでエヴァ。アンジェ。土産があるぞ!」
突然そんな事を言い出して、ポストカードのようなものを取り出して見せびらかしてるフロウくん。お土産って……あれ?普通に名物のお菓子とか色々買ってきたと思ったけど……?
「ほう、これは……」
「わ~~!やっちゃったんだ!」
やっちゃった……?え?何?どういう事?意味が分からないまま千雨ちゃんがそのポストカードらしきものを覗き込むと……。
「んな!?ちょっと待て!仮契約の写真とかどこで撮ったんだ!返せ!」
「えぇ、何で!?いつ写真なんて撮ったの!?」
「良いじゃないか。ほら千雨。カード見せてみろ」
「オイ!ちょっと待て!」
抵抗も空しく絡め取られ、ポケットからあっさりとカードを取られてしまう。
「水の巫女だと?くっくっく」
「わ~。可愛い!この服着てみて!」
「やーめーろー!はーなーせー!」
そう言って縛り上げられた千雨ちゃん……。って、これは無いんじゃないかな!?
「え、ねぇエヴァちゃん?ちょっとかわいそうだと思うんだけど!?」
「何を言う!?アンジェが見たいと言ってるんだ!千雨!今すぐ着るか着替えさせられるかどちらが良い!?」
「選択肢ねぇじゃねぇか!?」
「バカめ!あると思っているのか!?」
「あぁ、くそ!分かった!分かったからこの糸解け!」
そうして、着せ替え人形になっていく千雨ちゃんだった……。
――後日。
「はじめましてネ、皆さん。超鈴音と言うヨ。エヴァンジェリンさん達とは先日会ったばかりネ」
「はじめまして。葉加瀬聡美と言います。長谷川さんとも初めてお話ししますね」
「はじめまして。シルヴィアと言います。エヴァちゃんたちとは良くしてもらってるの。特に魔法関係でね。貴女達は知ってる人みたいだから、皆で挨拶に来ました」
と言うのは実は建前。世界樹に意思が有ると知られるのは困るので、麻衣ちゃんは私の家でお留守番してる、はず。もしかしたら散歩してるかも?とりあえず今日は大学には近づかないようにお願いしておいたんだよね。
「構わないヨ。表向きは科学の実験だからネ。私達は魔法には詳しく無いから、エヴァンジェリンさんの【人形遣い】のスキルを頼ることにしたネ。先日の契約の話も問題無ければそのまま進めたいヨ」
「私の家ではプライベートと機密扱いという事にする場合はカメラは回さないという契約だな。それに追加して、世界樹周辺とシルヴィアの家とその中でも、カメラを回さないと言う点を追加したい」
「問題無いネ。こちらからは、運用後にしばらくしてから茶々丸を実験に使いたい。その時はそちらの家は写さないから、全権をこちらに預けて欲しいヨ」
「……あぁ。良いだろう。好きにしろ」
「ふーん。お前面白いな。良く分かってる」
「何の事かナ?」
「いいぜ?そのほうが面白そうだ。断っても上手くやりそうだからな」
何だろう。フロウくんが何かに気づいてるみたいだよね?超ちゃんは何をするつもりなのかな?でも、原作絡みなんだよね?邪魔しても必ず起きる事みたいだし。気をつけるしかないかなぁ~。
「それじゃ契約書を取り交わして起動調整に入るネ。よろしく頼むヨ」
そうして、私達の新しい家族の準備が進んでいった。
――それから2年と半年、原作開始までの間。
学園長から千雨ちゃんが中1から中3までの間、学校関係者にまぎれて学園で働いて欲しいと言う依頼が来ました。これはどう考えても2003年に来る主人公ことネギくん関係だってのは分かっていたので、報酬と条件付きで受ける事に。
千雨ちゃんはそのまま中学生に進級。エヴァちゃんも原作通り中学校に入学。かなり渋ってたけど、アンジェちゃんの「私は中学校に行ってないから、お姉ちゃんと行きたいな~」の一言でやる気に満ちていました。それからロボット(性格にはガイノイドと言うらしいです)の茶々丸ちゃんも中1から一緒に学校に行く事になりました。
私は非常勤の養護教諭という形で、第3保健室と言うとっても怪しい部屋を預かる事に。別に保健室に居ないで家に居ても良いそうです。そんないい加減で良いのかな?でも全体の職員会議とか、魔法使いとして必要な時とかに出てきて欲しいそうです。
フロウくん、麻衣ちゃん、チャチャゼロちゃんはお留守番。家を空けるわけにもいかないし、麻衣ちゃんの存在を広げる訳にもいかないからね。
そうして千雨ちゃんの修行もしつつ、ついに原作2003年2月。運命の日がやってきた。