問題児達+天帝が異世界から来るそうですよ!?   作:THE・Leaf

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vs"人類最終試練(ラストエンブリオ)"・アジ=ダカーハ。


「皆、ありがとう」

優希が言ったその言葉の意味とは―――!?





第弐拾八話 ~Dead End~

―――”煌焔の都”外壁正面の門前。

優希は仲間を捜すため、時間の止まった世界で歩き回っている。

途中で休憩として空を見上げたりした。噴火のせいで空はお世辞にも綺麗とは言えない。

すると、瓦礫の上に立つ黒ウサギと黒ウサギを庇おうとする十六夜の姿があった。その直線上にいるのはアジ=ダカーハだった。

優希は仲間の顔を見回ることにした。十六夜、耀、飛鳥、黒ウサギ。

優希は〖ステラ〗に変わり、十六夜の前に立つ。

 

 

「・・・・・・・・Restart」

 

 

その言葉で世界は再び動き出す。

アジ=ダカーハが高速で突っ込んで来る。

 

「――【アブソリュート零】」

 

優希は左手を前に出し、発動させた。アジ=ダカーハの攻撃は見えないバリアのようなもので阻まれている。

 

「・・・・ゆ、・・・・き、さん? 優希さん!!」

 

「優希!!?」

 

黒ウサギと十六夜の声に対して笑顔を向ける。すると、途端に険しい顔になる。

 

「再会を喜んでいる暇なんてない。黒ウサギを連れて逃げろ、アルマテイアッ!!!」

 

ステラと優希自身が混じった声でアルマテイアに告げる。

 

『心得たッ! ――御武運を』

 

彼女が黒ウサギを捕らえ飛去るのを確認する。

 

「だ・・・・駄、ぁ・・・・駄目・・・・!!!」

 

黒ウサギがアルマテイアの背中から身を乗り出し必死に手を伸ばしている。

 

「黒ウサギ、何の心配もしなくて良い。・・・・俺が皆を守るからッ!! 誰も死なせないッ!!!」

 

今にも泣きそうな顔の耀が泣いている黒ウサギに抱きつく。

次第にその姿も見えなくなっていった。

 

「――十六夜、避けるなよ」

 

腰に下げている天帝聖騎士の劔で十六夜を斬った。

十六夜は目を見開き驚いているが、すぐに何をしたのか気づく。

 

「全身を斬ったからもう大丈夫だろ? 重傷のまま戦われても邪魔だし」

 

続けて耳打ちをする。

 

「アイツは傷を負うと神霊級の分身を産み出す。十六夜はそいつを頼む。お前の身体は完全には回復していない。確かに聖騎士の回復したから十分なぐらい戦えるだろう。だけど、万全じゃない。それを分かって」

 

自分の身体のことは自分が一番分かっているのだろう。十六夜は首を縦に振った。

ただ、それだけではない。優希は相手の動きを見て、隙があれば加勢してくれという意味も含めている。それが分からない十六夜ではない。

 

「待たせたな」

 

アジ=ダカーハに向けて告げる。

 

『同士の為に命を懸けるか。やはり地獄のちまたは、幾星霜の時を経ても私をたぎらせて止まん』

 

「そうか。待たせたにも関わらず言葉を話してくれるなんてな」

 

『無論。本来ならば己の怪物性を高めるに言葉は使わぬ。――しかし、死者が相手ならば話は別だ。黄泉路の土産ぐらいにはなるだろう?』

 

「それはありがた迷惑だな。ありがた迷惑ついでだ。一つ確認しておきたい事がある。――箱庭第三桁・”拝火教(ゾロアスター)”神群の一柱。不倶戴天の化身にして、魔王アジ=ダカーハか?」

 

『二百年経ち、私の名を知るものがいようとは。お前が言ったことは寸分違わん!

 いざ来たれ、幾百年ぶり英傑よッ!!!

 死力を尽くせッ!!!

 知謀を尽くせッ!!!

 蛮勇を尽くし――我が胸を貫く光輝の剣となってみせよッ!!!』

 

汝”悪であれかし”と願われた怪物は、三つの双眸と六つ紅玉の瞳を光らせて決戦の鐘を鳴らした。

アジ=ダカーハが高速で突っ込んで来る。凶爪が優希に向かって振り抜かれる。

優希はそれを難なく回避。

攻撃の余波が宮殿の残骸を吹き飛ばして地盤を切り裂く。

その余波を利用し、距離を取る。

 

(確かアジ=ダカーハは巨躯を誇るとか言っていたが、見たところ全長3m位だ。この箱庭で質量保存の法則が適用しているのなら、アイツは僅か3mに自分の質量を留めていることになる。だとすれば、さっきの威力も納得がいく)

 

そこで、疑問が生まれる。アジ=ダカーハに攻撃が通用するか否かである。

仮に攻撃が通ったとしても、ダメージが通るかどうかは別の話である。

試してみるかと思い、右手に ★Rock Cannon を携える。

間合いを詰めてアジ=ダカーハに砲弾を打ち込む。

巨腕を振り、砲弾を叩き落とす。余波で追加の砲弾がかき消される。

腰のブースターを点火し〝瞬間移動〟する。W☆RSには及ばないが十分である。

 

「――【バーストショット】」

 

アジ=ダカーハの真後ろから強力な砲弾を放つ。ほぼ零距離で発射された砲弾は確実にアジ=ダカーハに当たった。

 

『その程度か?』

 

「ウォーミングアップに決まってるだろ?」

 

次の瞬間、黒い物体が真下から高速で迫ってくる。

 

瞬時にバックフリップ。黒い物体を回避した。すると、今度は上から迫ってきている。アジ=ダカーハとは離れるかたちで真横に動いた。優希は滞空中に攻撃されている。

 

(〝エリアルステップ〟。出来るかと思ってやってみたが、案外出来るもの出来るものだな)

 

〝エリアルステップ〟、文字通り空中でのステップである。そこに追い討ちをかけるように黒い物体が迫ってくる。それを〝エリアルステップ〟で難なく避ける。黒い物体の正体が分かった。一瞬だが優希の視界内に入ったのだ。

 

(”龍の影”か。速度も正確さも、かなりのものだが混沌闇黒物質がそれ以上の速さと正確さがあった。そんな事よりも、アイツにどうダメージを与えるかだ)

 

地上に足を着いても影は攻撃しているが当たらない。

優希はその間に思考を走らせていた。アジ=ダカーハを足止めするのなら今のように回避し続ければ良い。

だが、それでは意味がない。アジ=ダカーハは限りなく未知だ。例え逃げてもすぐにつきとめられるだろう。それ以前に優希は逃げる気など毛頭ない。

 

(やっぱり、やってみるしかなさそうだ。出来るかどうかじゃない。やるんだッ!!)

 

優希の身体を蒼い炎が包み込む。その蒼い炎が次第に消えていき、姿を見せる。

一見、B★RSと似ているが所々違う。まず短く切り詰めたれたツインテール、ミニスカートやキャミソール調の短い衣装。頭には王冠型の蒼い炎。細く長い脚には強固な装甲と蒼色のブレード。手も悪魔のように鋭い。

 

「BRSB(ブラックロックシュータービースト)・・・・本当はW☆RSの方が良いのかもしれないがアレの影響で完全には戦えない」

 

アレの影響とは【グレイト・フル・サンレイ】のことである。【カオス・エンド】の影響も兼ねてか万全の状態では無いのだ。

 

「お前に届く剣があるとすれば・・・・〝Blood Arts〟。極めし一撃 神々を討つ」

 

アジ=ダカーハと戦うとき、斬撃系の武器は使えない。勿論、使っても構わないのだが攻撃すればするほど神霊級の分身が沸いてくるなので、物理で殴るしかない。が、物理で殴るとなると、一般人が山脈を殴るようなもの。当然、本気で殴ればこちらが壊れる。

つまり〝Blood Arts〟はそのための手段なのだ。

 

「――【烈風地走り】」

 

大地を踏みしめ、空中に飛んだかと思えば蒼いエネルギーを纏い、拳を地面に叩きつける。その蒼いエネルギーが衝撃波となり、突風がアジ=ダカーハを襲う。

 

アジ=ダカーハも巨腕を地面に叩きつける。その影響で衝撃波は雲散霧消する。

 

優希はアジ=ダカーハに詰め寄っており、拳を振りかぶっている。緋色のエネルギーオーラを纏っており、それをアジ=ダカーハに振り落とす。

 

「――【一刀剛断】!!」

 

あえなく両腕で防御されてしまう。あまりの威力に大地が揺らいでいるがアジ=ダカーハは受け止めている。彼は爪を此方側に向け、振り払うように腕を振るう。

 

それをステップ回避。そのままの勢いで、蒼いエネルギーオーラを纏い攻撃する。

 

「――【スラッシュレイド】!」

 

その攻撃を彼は影で反撃をする。

 

優希は更に緋色のオーラを纏わせ、影を避けてアジ=ダカーハを殴る。

 

「――【クラックウェーブ】!!」

 

エネルギーの乗った攻撃が強力な威力と強力な緋色の衝撃波を生み出し、衝撃波が攻撃ようとしていた影を食い止める。

 

アジ=ダカーハは攻撃を左腕で防御。余った右手で攻撃される。

 

それをあろうことか右腕で防御する。そのまま右方向に回転し、懐に潜り込む。右手に纏う真紅のオーラを乗せ、必殺のカウンター攻撃を繰り出す。

 

「――【レイジカウンター】!!!」

 

直撃。そのまま拳を振り切る。

 

アジ=ダカーハの顔が若干曇ったように見える。攻撃を受けてあまりのダメージでそうなったか。それとも自分の攻撃を受け止められてダメージが全く通らなかった事でそうなっているのか。此方からは察し難い。

 

優希は追い討ちをかけるように拳に緋色のオーラを纏う。緋色のエネルギーを解放しながらの高速突進。その勢いを乗せ、更に緋色の高エネルギーオーラ纏わせた拳を下からふり上げる。

 

「――CC(チャージクラッシュ)・チェイサー! 〝BA(Blood Arts)・装着纏〟――CC・ディバイダー!!」

 

アジ=ダカーハはそれを右肘で受け止めようとする。

 

優希は蒼いエネルギーオーラを纏い、そのまま攻撃する。

 

攻撃が肘で受け止められる。更に左手で優希を攻撃しようとする。

 

優希は受け止められた瞬間、右回転。目の前までアジ=ダカーハの攻撃が迫ってきている。

 

「――【ブルータブアッパー】! ・・・・――【レイジカウンター】!!」

 

迫ってきた攻撃を右腕で受け止める。彼の攻撃によるダメージが通らない。優希はそのまま前進しアジ=ダカーハを殴る。

 

『”アヴェスター”起動――相克して廻れ、”疑似創星図(アナザー・コスモロジー)”・・・・・・・・!!!』

 

優希は左目に蒼い炎を灯し、バックステップ。深追いはせず、一旦後退する。

 

アジ=ダカーハの双掌には力の渦が凝縮され、灼熱の球体が生まれてくる。

 

「十六夜、ちょっと手貸して」

 

いつの間にやら十六夜の傍にいる優希。十六夜の手を握り締める。

 

「〝Burst Mode〟・・・・〝Burst Level Max〟!!」

 

優希は右手に漆黒の両刃大剣 BRSブレード を携えアジ=ダカーハに突っ込む。

優希はアジ=ダカーハの数メートル離れた正面に立ち、剣先を自分の後側とした上段の構えを取る。剣が紅いオーラを纏わせたと思えば、蒼いオーラを纏った。

 

 

「ハアアアァァァァァ!! 〝BA・弐連纏〟――【CC・ブレイカー】【CC・デストラクト】【CC・ブーステッド】!!!」

 

 

限界まで凝縮した緋色のエネルギーが純粋な破壊力を生み出し、高高度に凝縮した緋色のエネルギー。その限界を超えて溜めたエネルギーが蒼く染まる。

それを炎球に打ち込む。炎球は勢いと輝きを増していく。

反発し合うたびに強力な力を放出し始める二つの球はやがて光球となり、周囲の光をねじ曲げる程の力の渦を生み出す。

真蒼と灼熱の衝突は溶岩の波打ち際を弾き飛ばし、巨峰を余波だけで瓦解させていく。

二人の周囲に散乱していた瓦礫は原子よりも細かく分解されていく。

 

「――【CC・ジ・エンド】!!!!」

 

更に凝縮されたエネルギーが黄色く染まる。

 

「切り裂けェェェェェェェェ!!!」

 

炎球と閃光を放つ極光がぶつかり合う。

 

―――極光を纏う剣と炎球は砕け、消滅した。

 

「――・・・・どうしてくれるんだよ。アレ一点物なのに」

 

暫くすれば再構築して使えるようになるが。と心の中で付け加える。

 

『教えてやろう。貴様程度では”悪”の御旗は砕けないッ!!』

 

アジ=ダカーハは自らの身体を自らの両爪で身体を切り裂いた。

優希は思わず目を見開く。同時にしまったと思った。傷つけられなければ傷つければいい。

途端に大量の血液が噴出し、アジ=ダカーハの巨体が血に染まる。血液は緩やかに大地へと滴り落ち、やがて生命を得たかのように怪しく蠢き始めた。

アジ=ダカーハの血液を浴びた大地が、溶岩が、朽ちた大木が、その姿を変えて双頭の龍へと変幻していく。

 

「クソッ!!! すまない、十六夜!」

 

「終わった事を謝るな。遅かれ早かれこうなっていたさ」

 

三匹の双頭龍が優希に向かい走ってくる。

攻撃直前で BRSブレード を剣先を後に向け上段に構え緋色と白色のオーラが纏われる。攻撃しようとしている双頭龍の一匹に全身全霊を込めて振り落とす。

 

「〝BA・弐連纏―憑依装着・参式〟――【CC・デストラクト】!!」

 

振り落とした大剣は纏われた【弁慶殺し】で分身体を斬る。更に凝縮したエネルギーが緋色の刃を形成し、大爆発とともに双頭龍を葬り去った。

憑依として纏っていた【ライオットスイング】【一刀剛断】【CC・ブレイカー】と弐連纏でやっと一匹。〝Burst Mode〟の〝Burst Level Max〟という強化が無ければ倒せなかったであろう。全く、骨が折れる。

纏っていた【クラックウェーブ】から放たれる強力な衝撃波が残りの二匹を襲う。が、流石は神霊級と言ったところだ。一瞬の足止めにしかならない。

只、十六夜にはその時間が十分ありがたかった。右手に極光を宿し、それは天を貫く程の巨大な柱となる。

優希はその行為が無駄にならないように携えていた BRSブレード をしまい、拳に緋色と蒼色、橙色のエネルギーオーラを纏い、高速突進。その勢いを乗せたあびせ斬りを放つ。

 

「〝BA・弐連纏―憑依装着・参式〟――【CC・チェイサー】!!」

 

アジ=ダカーハは優希の攻撃を両腕を十字にし、防御する。

纏ったのは【スラッシュレイド】【脳天破壊斬り】。前者で移動と攻撃の上昇を。後者は収束されたエネルギーを急降下と共に叩きつける。

憑依装着は【一刀剛断】【ライオットスイング】【CC・ブレイカー】である。此処までしても両手を使うか怪しかった。

 

残りの双頭龍も十六夜によって葬り去られた。戦況は元に戻ったかのように思われた。

 

「現実はそう上手く行ってくれないものだな」

 

優希がそう呟いた。眼前には双頭龍が何十匹もいる。

少し変だと思ったのだ。止めようとすれば止めれた筈なのだから。

 

「肉を斬らせて骨を絶つ。やってくれるわ、本当」

 

皮肉を込めて言う。あの双頭龍を此処から逃がす訳にいかない。何故ならきっと、逃げた同士を追うだろうから。

 

(空間を使えるのは、後二回程か。・・・・仕方がない)

 

苦渋の決断だったが、恐らくこうするしかない。

 

「――【Forever Infinity World】」

 

永遠の無限世界。優希が消滅するか、自発的に消滅させない限り消えない世界を造ったのだ。

 

「奴さん達気づき始めてるな。十六夜、あの雑魚を任せる。俺はあっちの最凶を相手する。背中は、任せたぜ」

 

分身体は決して弱くない。寧ろ、最悪なほどに強い。が、目の前の最凶よりは弱い。だから、雑魚と言ったのだ。

散り散りになっていた双頭龍が元の位置に戻っている。何度も黒ウサギ達が逃げた方向に行くが五キロほど行くと元の位置に戻っているのだ。それは優希達を疑うだろう。

集中砲火されるのは必然的だが、お互い背中合わせで戦えば不意打ちを受けることもない。血戦、死闘の幕開けとなった。

 

優希は幾つものBlood Artsを行使し、アジ=ダカーハと戦う。

十六夜は優希と援護しつつされつつ、双頭龍を相手にする。

 

始まってすぐに乱戦となっているにも関わらず、ほぼ全て相手にしている。

それは優希が迫ってくる双頭龍を一体づつ確実に葬り去っているからだ。

十六夜も優希の攻撃タイミングに合わせ、倒しきれない敵を確実に葬り去る。

 

優希はアジ=ダカーハの猛烈な攻撃を回避し、時には攻撃を利用し双頭龍にダメージを与えたり、本体に反撃したりと途轍もない行動量である。

 

優希はアジ=ダカーハが自損して分身体を増やさないよう、絶え間なく攻撃している。

最悪といえる状況下で二人の息はどんどん合わさっていく。

 

「――――〝纏・全〟【葬―CC・デストラクト】ォォォォォ!!!!」

 

比喩が無い程純粋な真紅のエネルギーが凝縮されたオーラを纏い、空中から大地へと拳が振り落とされる。

 

 

 

―――同色の刃が形成され超大爆発によって双頭龍の全ては葬り去られた。

 

 

 

アジ=ダカーハが何か魔術を発動させたが無駄であった。纏ったのは大剣が使えるBlood Arts全てだ。その中には勿論、カウンターが入っており魔術は逆に攻撃力を底上げする形となった。

本体自身は防御魔術でも使ったのだろう。ほぼ無傷だ。

 

『ここまでやってくれようとは!! 血が騒ぐ!!! 認めよう、人間。お前達に分身体は邪魔だ。妨げにしかならん。――後悔するがいい!! 此処まで本気を出させたことをなッ!!!!』

 

「十六夜、奴さん死亡フラグ立てたぜ? 何だかんだでなんとかなりそうだぞ」

 

「優希、残念ながらここは現実だ。死亡フラグが立ってんのは俺達だ」

 

「「死亡フラグなんて最初っから立ってんだ!! フラグなんて、へし折ってやらああああァァァアァァァアァァ!!!」」

 

「運命なんて嗤ってやる。・・・・十六夜、お前にBlood Artsの一つを渡す。普通に攻撃したらこっちが壊れるからな」

 

優希は左手の平を十六夜の右手の平と合わせる。すると十六夜に緋色のオーラが纏われる。次第に十六夜の身体に吸収されていく。

 

「名を【ライオットスイング】。相手の装甲を破壊する強力無比の攻撃。連続で使用可能だから、連打もできる。相手が相手だからおすすめしないが」

 

「悪いな。こんな汎用性の高いの貰って」

 

「気にするな状況が状況だ。行くぞ」

 

優希は拳を構え、純粋な緋色のエネルギーオーラを纏ってアジ=ダカーハに突っ込む。

 

「〝纏・全〟――【破―CC・チェイサー】!!」

 

〝瞬間移動〟に等しい速度で突進する。その勢いを乗せ、あびせ殴りを繰り出す。

 

アジ=ダカーハは魔術を行使し、防御壁を張る。

 

それにカウンターが発動する。威力が桁違いに増し、防御壁を撃ち破る。

 

それは想定の範囲だったのだろう。劫火の球体が優希の身体を襲う。

 

優希の身体を守る一つの強力な牆壁、HA(ハイパーアーマー)が球体と反発し合う。

純粋な緋色の衝撃波が球体に反撃の意で襲っている。

 

それに間髪入れず、十六夜が緋色のオーラを纏いアジ=ダカーハへと殴りかかっている。

 

空いているてで同じ球体を作るアジ=ダカーハ。

 

十六夜はバックステップし、一度下がる。

 

優希側は衝撃波と球体が反発している。優希も深追いはせず、十六夜と同様にバックステップ。

 

アジ=ダカーハは両手を合わせるようにし、自ら反発させる。それと同時にバックステップ。劫火の球体がプロミネンスを生み出し、太陽・・・・否。白色の恒星が創生された。

 

優希は瞬時に十六夜の前に回り込み、発動させる。

 

「――【NEO・Absolute Zero】!!!」

 

純色の蒼色が優希と十六夜を包む。

 

(ヤバイ。滅茶苦茶にヤバイ。アジ=ダカーハも流石に防御壁張ってるか。追撃の心配はないが・・・・。幾ら何でもぶっ飛びすぎだろッ!!!)

 

 

 

―――次の瞬間、“極超新星爆発(ハイパーノヴァ)”が起こった。

 

 

 

それを、純蒼色の牆壁が極超新星爆発を防ぎきった。

 

「十六夜!!

       絶対手を離すなよ!!!!」」

「優希!!

 

安心など出来ない。第二波が来る。

 

十六夜は左手に極光を宿し、優希も右手に極光を宿す。

 

 

 

「「―――Ultimate Aurora Absolute Zero!!!!!」」

 

 

 

出現したブラックホールと究極の極光。

一部の光がブラックホールに吸い込まれていく。

 

 

 

――――――二人はブラックホールに究極の極光を撃ち込んだ。

 

 

 

漆黒の渦は極光により葬り去られた。繋いでいた手を離し、一息吐く。

―――二人がアジ=ダカーハに目を向ける。すると、一難去ってまた一難。否、絶望去ってまた絶望。

二人の眼前には何百はあろうか劫火の球体がある。しかも、大きさが先程の倍はあると思われる。

 

「まあ、その行動に関して予想の範疇だが・・・・これはないだろ」

 

優希が呟く。やっとの思いで防いだハイパーノヴァ。やっとの思いで葬り去ったブラックホール。

何をしようと無駄。所詮無駄な足掻きでしかない。

 

『さあ、どうする人間よ。・・・・どう坑がう? どう足掻く?』

 

アジ=ダカーハの言葉を聞き、真剣になって十六夜に問う。

 

「十六夜、アレ全部がぶつかり合ったら・・・・どれぐらいの威力になるか、想像できるか」

 

「分かんねえが、言えることはある。何とかしねえと、原子レベルまで分解されるってこと位だ」

 

「違いないな」

 

優希は思わず失笑する。こればっかりはどうにもならない。

 

「・・・・諦める訳にはいかねぇんだよ。勝たないと意味がねぇんだよ。終わるわけにはいかねぇんだよ!!!」

 

右目が紅く染まっていく次第に右目も。髪の色が純白に変わっていき、服も純白の衣装へと変わっていく。それは、紛れもなくW☆RSだった。

 

「全く、見てられないな」

 

優希の面影が全く残っていない様子のW☆RSが涼しい顔で言う。

 

「・・・・優希か? 優希なのか?」

 

「半分正解、半分不正解。私は﴾シング・ラブ﴿。全てを純白の”一”にする。“純白・唯一ノ神”だ」

 

自らを純白・唯一ノ神と言う﴾シング・ラブ﴿は、ハッとした後、時間がなかったのだったな。という。

 

「私の本体の親友よ、それ以上前に出るなよ。・・・・装着せよ〖Ultimate・ONE〗」

 

彼女は右手に純白の大砲を持ち、十六夜に告げる。次の瞬間には優希が召還完装したUltimateと同じような武装だが、より煌々しい純白の武装である。

 

 

「―――【Divine Punishment The End】」

 

 

何かが放たれた。十六夜には見えないように﴾シング・ラブ﴿は十六夜の真正面に立っている。

 

「眼がやられる。瞑っておいたほうがいい」

 

﴾シング・ラブ﴿は紅い炎を灯した右目だけ開けておき、〖Ultimate・ONE〗を楯に変え、自らの眼前に張る。

 

その数秒後―――壮絶な光を放ちながら無音の大爆発が起こった。

発生しようとしていた極超新星爆発は大爆発と共に雲散霧消した。

 

「もう、開けてもいいぞ」

 

十六夜が目を開けると、そこは焦土と化した大地だった。大地は黒こげ或いは灰になっていた。初めのハイパーノヴァでも似たような状況だったが、更に悪化している。

 

「一体、何をしたんだ・・・・」

 

アジ=ダカーハをよく見ると壮絶なダメージを負っている。十六夜が驚愕の声を上げるのも無理はないだろう。

 

「無色の劫火を宇宙系で最大の恒星に纏わせて撃った。それに加え唯一神の”天罰”。計り知れない程の――」

 

と言いかけたところで﴾シング・ラブ﴿は気絶した。

十六夜は倒れる彼女を受け止める。

すると、彼女の身体が蒼い炎で包まれBRSBに戻ったかと思えば、B★RSになる。優希は目を醒まし、肩で息をし始める。

 

「――ハア、ハァ。・・・・一体、・・・・何をしたっていうんだ?」

 

優希は十六夜の肩を借りているが、さっきやった事を覚えていない様子だ。

 

「覚えてねえのか?」

 

十六夜は真剣な眼差しで問う。

優希はゆっくりと首を縦に振る。

十六夜は先程起こった出来事を大まかに説明する。

 

「――そう、か。なら・・・・奴さん、相当キレてるな」

 

優希は苦笑混じりに言った。

実際、優希の言った通りアジ=ダカーハは本気モードと言ったところだ。

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!』

 

声にならない雄叫び。

優希は呼吸を落ち着かせ、自力で立つ。

 

「十六夜、右に避けろッ!!!」

 

高速でアジ=ダカーハが突っ込んできた。

まだ、完全ではない優希をいたわって前に出た十六夜だったが反応できそうにない速度だったのだ。

 

間一髪。紙一重で何とか回避したが、頬が爪で切り裂かれたらしく血が出ている。

 

アジ=ダカーハがB★RS状態の優希ですら捉えられない速度に至り。

 

十六夜が吹き飛ばされた。

 

「十六夜ッ!!!!」

 

何時攻撃したのか。どうやって攻撃したのか。殴ったのか、蹴ったのか。それすらも分からなかった。

よく見ればアジ=ダカーハが少しずつ回復している。彼が立ち止まっているからこそ分かった。

だが、そんなことは今どうでも良かった。

 

「クソがああああああァァァァァァァァ!!!」

 

優希の左目に紫色の炎が灯る。

緋色のオーラが右腕に纏われる。

 

アジ=ダカーハに右手で攻撃する。緋色のオーラが槍の形になりアジ=ダカーハを襲う。オーラの槍は四本。

 

アジ=ダカーハはそれを腕を振ることにより、雲散霧消させる。空いている左手で攻撃される。

 

優希はバックフリップでそれを回避。空中で体制を立て直し、滑空。蒼いオーラの槍を三本出現させている。

 

アジ=ダカーハは攻撃を回避し、側部からこうげきする。

 

優希は空中ジャンプで回避。緋色のオーラを纏いながらアジ=ダカーハへ突っ込む。

 

アジ=ダカーハは高速でその場を離れる。立ち上がる十六夜に追い討ちをかけに行ったのだ。

 

優希はエリアルステップでアジ=ダカーハを追いかける。

 

(クソッ!!! 間に合わなねぇ!!!! 畜生がッ!!!)

 

アジ=ダカーハが十六夜を爪で貫こうとしたその瞬間。

 

右手に真紅のオーラを纏った優希が高速でアジ=ダカーハを殴った。

 

それを左手を優希の前に出すことで、牆壁を作ったのだ。

 

アジ=ダカーハは高速の蹴りを放つ。今の十六夜の身体では防御するしかない。

 

十六夜はいとも簡単に吹き飛ばされた。

 

「ッざけんな!!!」

 

優希は〝瞬間移動〟に匹敵する速さで十六夜を追う。十六夜の背中側に回り込み、背中合わせになる形で地面に足を擦らせ、減速させる。数百メートル程飛ばされただろうか。やっとのことで止まった。

 

「十六夜!! 十六夜ッ!!!」

 

優希は必死に呼びかける。

 

「・・・・優希、・・・・・・余所見してんじゃねえよ」

 

どうやら意識はあるようだ。あれだけの攻撃を受けて意識があるのだ。とてつもなくタフである。

 

アジ=ダカーハはゆっくり歩いてこちらに向かって来ている様子。

気づけば優希の紫の炎は消えており、それどころか通常の優希に戻っていた。

 

『終わりだ人間。幾百年ぶりだったが・・・・楽しめた。人間ごときが此処まで我を本気にさせたのだ、誇れることだろう』

 

「それは、どうも。・・・・一つだけ聞いていいか。いや、・・・・頼んでいいか」

 

『聞いてやろう。死者の遺言だ、聞いてもいいだろう』

 

「三分間だけ・・・・待ってくれないか。・・・・たかが180秒だ。6307200000秒も封印されてたんなら、180秒なんて一瞬だろ?」

 

『いいだろう。一八〇秒・・・・三分間だけ待ってやろう』

 

「十六夜、聞いてほしいことがある」

 

優希はそういって、十六夜に耳打ちする形となる。

 

「十六夜、俺はアイツに勝てる方法を一つ見いだした。ポーカーフェイスで聞き続けろ」

 

十六夜は何も言わず、何の動作もせず、優希の言葉を聞く。

 

「実は柚葉との戦いで、空間のギフトが後一回ぐらいしか使えなくなっているんだ。そこでだ。・・・・その最後の一回を使う。それは―――」

 

優希の表情が真剣な眼差しから笑顔に変わる。

 

 

「・・・・お前を逃がすことだ。――【空間転送】」

 

 

「オイ!! 待ちやがれッ!!!」

 

十六夜は驚愕の表情から怒りを浮かべ、空間の壁を叩いている。

 

「十六夜、皆に・・・・伝えて欲しいことがある。絶対に、伝えてくれ。

 『皆、ありがとう。・・・・本当に、ありがとう。みんな、大好きだっ!!!!』」

 

優希は大粒の涙をこぼしながら、最後の想いを託した。

 

「馬鹿ヤロウッ!! そんなもん、自分で伝えやがれッ!!! ・・・・――優希、必ず伝える。だから、約束しろッ!!! 必ず、戻ってくると!!!!」

 

優希と十六夜は同じ表情をしていた。

十六夜の周りの空間がポリゴン化していく。

 

 

 

「「絶対に、約束だ」」

 

 

 

それが、二人が交わした言葉、想い、約束。

 

やがて空間が完全にポリゴン化し、十六夜は空間転送された。

優希はその場に崩れ落ち、両膝をつく。空を見上げ、涙をながす。

 

 

「――・・・・死にたく、ねえよ」

 

 

さっき約束したばかりなのに。約束が果たせそうにない。

 

 

「畜生、・・・・生きたい。生きていたい。――俺に残された時間は、一二〇秒にも満たないのか」

 

 

流れゆく時間の中で、仲間と過ごした時間が流れていく。

辛い時や悲しい時もあった。それ以上に幸せで、楽しい時があった。

過ごした時間は決して無駄ではなかった。とてつもなく有意義で、言葉に出来ないほど楽しかった。嬉しかった。

 

刻々とすぎる無慈悲な時間。それは後、三〇秒程であった。

 

「死を覚悟し、最凶を敵に回してまで守りたいものがあるとすればそれは、笑顔だ」

 

だから、諦めることは出来ない。

 

 

―――残り、十秒。

 

 

―――残り、五秒。

 

 

―――零秒。

 

 

アジ=ダカーハが超高速で突っ込んでくる。

最早、対応はできない。

アジ=ダカーハが勢いを乗せた攻撃を放つ。

手加減など無い一撃。アジ=ダカーハの拳が直撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――その瞬間、白星優希は死んだのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




3月28日22時56分頃更新しました。



※『GOD EATER 2』より
 キャッチコピー 並びに ゲーム内の技の名前 などを引用及び参考にさせて戴きました。

 『Wikipedia』より
 BRSB 並びに W☆RS を引用及び参考にさせて戴きました。

 『ブラック★ロックシューター THE GAME 攻略ランド』より
 スキルの発動 並びに BOOSの攻略 を引用及び参考にさせて戴きました。

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