問題児達+天帝が異世界から来るそうですよ!?   作:THE・Leaf

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今更ながらに、レティシアをヒロインにしようとすると本編じゃなくて番外編とかじゃないと絡ませにくいんですね。
まあ、大した問題ではありませんが。

兎に角、本編を進めると致しましょう


※無線RAN繋いで3DS及びPSPでも更新出来るようになりました! なので、出来る限り毎日更新したいと思っております。
ただ、ステラなどの名前を強調するために使う 【】 ←コレの白抜きが出ないので、代用として §§ ←コレを使わせて頂きます。後にPCで直しますので、誠に申し訳ございませんが御理解と御了承を宜しくお願い申し上げます。


第弐拾七話 ~混沌闇黒物質~

―――”煌焔の都”闘技場。

優希と柚葉は『始めようか』と言ったものの、お互いに一歩も動いていなかった。互いに蟠りがある。それを優希と柚葉は解消したかった。

 

「――優希君、元の世界に帰ろうとは、もう言わない。聞かせて。何が優希君そんなに動かすのかを」

 

「・・・・約束したんだ、皆を守るって。皆、俺の同士だ。友達なんだ・・・・良いやつらなんだ」

 

「優希君・・・・」

 

「分るんだ、空間の能力で。・・・・皆、最後の最後あるいはその途中で死ぬ。俺は、それが分かっていて! 友を、仲間を見殺しにする訳にいかないんだ!!」

 

「守った行く末に自らが死ぬと分っていても?」

 

「・・・・ああ、その通りだ! 俺一人の犠牲で済むんだ・・・・あんなに良いやつらを死なせる事なんて、俺にはできない!!」

 

「私は、優希君に死んでほしく無い!!!」

 

「――人は何れ死ぬ。それが早いか遅いかの違いだけだ。死に急ぐことはない、そうかもしれない。自分が死ぬかもしれない? 当たり前だ、俺も何れか死ぬ。運命なんて嗤ってやる!! 無限という可能性を信じて、俺は運命を変える!!!」

 

柚葉は笑う。嘗ての彼となんら変わっていないことが嬉しくて堪らない。

 

「そう。・・・・それなら、ここで可能性を一つ潰しましょう」

 

「どういう事だ?」

 

「運命を変えるんでしょ? 優希君の死ぬ運命を此処で一つ潰すの」

 

「柚葉・・・・この世界を”何週回った”んだ?」

 

「それは愚問よ。・・・・優希君、貴方を死なせたくはない。だからこそ、未来の死の可能性を一つでも消しておきたい。戦いましょう」

 

「・・・・柚葉を倒せない俺じゃあ、きっと仲間を守りきることも出来ないだろうな。・・・・戦おう! 全力で!!」

 

「後悔しないでね」

 

「望むところだ――【無限の戦場(インフェニティフィールド)】」

 

辺りの景色が一変していく。

戦って煌焔の都に被害が出ないようにする為であろう。

 

「心配しなくても俺が有利になるように、とかそんなことしてないから」

 

「ええ、分ってる。だって、優希君だもの」

 

「・・・・そうだな(神格差があれば時間のギフトにも影響されないだろうが、”暗黒物質”が気になるが)」

 

「――【暗黒世界】」

 

(早速仕掛けてきたか。辺りの風景が真っ黒になった以外見た目は変わっていないな。お互いの姿もハッキリと見える。一体どうなってるんだ)

 

「皆を助けにも行きたかったりするからな・・・・早めに決着を付けたいところだ」

 

優希の背中には天使の翼が三対生えており、柚葉に眼差しを向ける。

つい先程も使っていた剣を持ち、柚葉に向かい駆ける。

すると急に眼前がブラックアウトしたかと思えば、全方位から暗黒物質が迫ってきていた。

優希は正面の暗黒物質を切り裂いたが、すぐに元に戻る。

自らの周りに結界を張り、柚葉の位置を確認する。

 

(成る程。これじゃあ俺と柚葉の距離が全く分らないな)

 

辺りが漆黒に包まれているので目安になるものが何も無い。

なので、今自分と彼女の距離が分らないでのだ。

 

(そう大した問題じゃあないが、辺りも黒くて”暗黒物質”も黒いせいで、常に結界を張っていないといけない。その程度なら何の問題もない)

 

念のために歩いて柚葉に近づく。が、距離が変わっていない気がする。

 

(俺、気づくの遅すぎだろ)

 

内心反省しながら空間を操り、時間の干渉を絶った。

直接的な時間の干渉は優希には効かないが、間接的であれば干渉できるのだ。

 

「――【Lost All】」

 

気づくのが遅すぎた。否、時間を止められたのだ。

優希は先程自分へ間接的に干渉する時間を絶っただけ。

恐らくだが柚葉はこの空間そのものの時間を止めたのだ。

いや、本当にそうだろうか。辻褄が合わない様な気がしてならない優希。

 

「どう、なってやがる・・・・」

 

天帝の聖騎士の力がどんどん無くなっていくような、そんな感覚が優希を襲う。

咄嗟にギフトカードを出すと、最悪の事態が起きていた。

 

「全てのギフトの文字が灰色になっている」

 

これが何を意味するのか、優希は即座に理解した。

柚葉は優希のギフトを消失或いはほぼ使えなくした。

恐らく二、三回使うのが限界ではないか。

そして【暗黒世界】にある、この漆黒の物体はあらゆる能力を低下させている。

十六夜の持つギフトのように相手の神格差をものともしないのと同じ原理だろう。

こちらの場合は防御用の結界も、ものともしていない様子だが。

コレに影響されて俺の判断能力が低下していた。更に空間を操っても、コレによって阻まれていた。

だが、見たところ【暗黒世界】が崩れていっている。

恐らく、暗黒物質と時間遡行の同時併用は難しいのだろう。しかし、彼女の事だ。ブラフという可能性もある。

 

(さて、どうしたものか・・・・。暗黒物質は攻略法が皆目分らない。柚葉は以前俺が暗黒物質を『破った』とか言ってたが、『斬って破った』って意味だろうな。攻略法はまだ見つかっていないが、とりあえず物理で殴る)

 

優希はB★RSになり、左目に蒼い炎を灯す。

左手に日本刀のような漆黒の剣〚Black Blade〛、右手に漆黒の大砲〚★Rock Cannon〛を携えて柚葉に向かい駆ける。

 

(俺の推測が正しければ【Lost All】は時間で奇跡が起こる時間と暗黒物質を束ねて発動した。恐らく柚葉は後手に回る筈だ)

 

優希が走りながら柚葉に砲弾を撃ち込む。

 

毎秒二十発の砲弾が柚葉を襲うが、暗黒物質によってガードされる。

 

間髪入れず全力で一歩踏み切り、刀で斬りつける。

 

暗黒物質でガードすると同時に余っている暗黒物質が高速で優希に襲いかかる。

 

B★RSの動体視力と反射神経のおかげで辛くも回避。それでも服が数箇所破れ、血が出ている。態勢を立て直すため、体捌きで柚葉との距離をとる。

 

(あの速さ、魔王レティシアが使っていた影よりも数倍早い。後一瞬判断が遅れていたらと思うと背筋が凍るな。それに、あれでまだ全開じゃないなんて冗談キツイな)

 

優希を蒼い炎が包み込む。B★RSから〖ステラ〗に変わったのだ。

左目に炎を灯し、再び柚葉に斬り込む。

ガードされるのは百も承知。当然、反撃されるのも分りきっている。

 

(〖ステラ〗の動体視力なら、この程度の速さは一般人が走る程度に見える。が、あっちも態勢を立て直してきてるのか正確さが増している。影と一緒で変幻自在か・・・・厄介だな)

 

優希は暗黒物質を避けながら右手で持っている大砲で砲弾を撃ち込み反撃している。

暗黒物質に防御されるが、優希も紙一重で避けている。

暫くそんな状況が続くが、どちらも引かない。

そんな中でも優希は暗黒物質の打開策を練っている。

 

「――【バーストショット】」

 

超強力な貫通弾を大砲で打ち込む。

すると、暗黒物質で密度の多い盾を作る。当然防御される。

 

(もしかすればッ! ダークマターは超威力攻撃で打破できるかもしれない! 確証はないが、量よりも質の方が良い事は確かだろう)

 

優希は右手に持った大砲を狙撃銃へと変化させる。

 

「――【G-1スナイプ】」

 

引き金を引き、発射とほぼ同時に着弾。優希が撃ったのは、超強力な麻痺弾。一瞬ではあるが柚葉の体が硬直する。

 

「――【イクサ・ブレード】」

 

左手に持った剣を、刃が蒼く、峰が黒い剣へと変化させ、迫ってくるダークマターを切り裂く。

元通りの形に戻した大砲で、巨龍を倒すときにも使った技を繰り出す。

 

 

「――【フォトンシャワー】・・・・サクラリフォン!!!」

 

 

この技は元々〖ステラ〗自身のオリジナル技なのであの時とは比べ物にならない程の威力になる。

 

―――均衡は崩れた。優希自身もそう思った。

だが、柚葉は何食わぬ顔で立っていた。服がボロボロになっている以外目立った外傷がほぼ無い。

 

「――【イグニッション】!!・・・・セブンスリミット解除!!!」

 

優希の周りを蒼い炎が舞う。

 

「【オーバーリミッツ】!!」

 

ここで、制御していた力を全て解放する。全力で立ち向かうつもりだ。

だが、そこにダークマターが優希の視界に入る。

 

それが、先程とは比べ物にならないほどの超高速で迫ってくる。

 

服が破けるが辛くも回避した。が、湾曲し後ろから再び迫る。それだけではなく正面と左右からも迫ってきている。

 

優希は、苦渋の決断で空中に向かい跳躍。

 

そして、全方位から迫りくる。腰にあるブースターを点火し、真正面に突っ込む。

優希の体を切り裂き、髪と服も切られた。全身のいたるところから血が出ているが、着地と同時に走りだす。

すると、眼前には柚葉が。無慈悲に密度の多くしたダークマターで攻撃され吹き飛ばされる。

 

「――■■■■■!!」

 

地面に落ち、全身がボロボロ、呼吸も荒い。立ち上がったが、見ているだけでも痛々しい。

優希は〖ステラ〗から元の姿に戻ってしまう。

 

「――優希君、残念だったね。超威力で攻撃は不正解だよ」

 

柚葉のそんな言葉が僅かに聞こえる。

 

「優希君、教えて。兄、姉、妹と戦ったとき、何故ギフトを”進化させたと錯覚”させたりしたの? それにわざわざ鳳凰のギフトを使っていると錯覚させたり・・・・理解に苦しむの」

 

「――いつから・・・・”錯覚させた”と、錯覚していた? アレは伏線だ。自分すらも錯覚させ、相手も錯覚させた。相手を騙し、撹乱させ自分すらもそうした」

 

「一体、何のために!?」

 

「――こういう、時のためだよ」

 

優希は何時の間にか柚葉の眼前に居る。優希の手には全てが純白の煌々しい剣が握られている。優希は抜刀し剣を地面に突き刺す。すると、暗黒物質が消えていく。

地面に突き刺した剣を抜き、納刀。優希の持っている剣は”天帝の聖騎士”の力を結集させた剣だ。文字通り”天帝聖騎士の劔”である。

 

「・・・・暗黒物質の攻略法は、柚葉と零距離の状態で柚葉と繋がっている暗黒物質を突き刺すあるいは切り裂く、又は引き離すことだ。だが、それだけじゃ足りない。聖なる加護のある武器じゃないと意味ないからな」

 

「優希、何をしたの!?」

 

「何度同じようなセリフを言わせる? いつから・・・・”何かした”と錯覚していた?」

 

「嘘、嘘よッ!!!」

 

「鳳凰のギフトの本質は攻撃でも回復でも再生でもない。〝夢による幻と錯覚〟だ。そんなこと信じられない? 鳳凰は同一とする幻の鳥と実際にいる鳥が結構いるんだよ。鳳凰のギフトはほぼ永続的に発動できる。多少の不安はあったが、もう流石に使えないかな」

 

「それが、どうしたというの?」

 

柚葉の周りを禍々しい漆黒の何かが現れる。

優希は慌てて距離を取る。

 

「なんなんだ、アレは・・・・一体どうしろって言うんだ」

 

余りの禍々しさに、嘗てやった鬼畜音ゲーのセリフと似たようなセリフが出てくる。

 

「優希君、これがギフトの進化よッ!! 全てを闇黒の混沌へと変えよ! ――【混沌闇黒物質(カオスダークマター)】!!!!」

 

闇黒の暴風が吹き荒れる。

 

「アイツ、ブラックホールでも作る気かよッ!!?」

 

残念ながら予想は的中した。ブラックホールではないがほぼ同じものを作ろうとしている。

 

「このままじゃ、巻き込まれて超重力でペチャンコだな」

 

(可能性を信じるんだ。可能性は零じゃない!!)

 

優希は自分が知り得る限りのブラックホールができる過程を頭の中から引っ張り出す。

空間を操り、ブラックホールができないように必死で食い止めようとする。気が飛びそうになったがなんとか止まった。

優希は殺気を感じ、回避準備に入ったが気づけば吹き飛ばされていた。

大きな岩に体が打ち付けられる。岩が崩れ、優希も倒れる。すぐに立ち上がり相手の位置を確認。柚葉は先程から一歩も動いていないように見える・・・・いや、恐らく動いていないだろう。

 

(ヤバイな、速すぎてほぼ全く分からなかった。しかも、ダメージもかなり大きい。一撃でこの威力・・・・油断も隙もない)

 

優希は再び〖ステラ〗になり、漆黒の剣と大砲を携える。左目に蒼い炎を灯し、柚葉に向かって駆ける。

迫り来る混沌闇黒物質を紙一重で回避する。髪が切られ、服も破られていく。

近づくにつれて量も多くなっており、数メートル進むことすら難しい。僅か3m弱程の距離だというのにこれ以上近づけない。

斬っても元通りになる。撃っても阻まれる。

 

(一瞬・・・・一瞬だけど、撃った後僅かに停止する。時間にしてコンマ数秒から一秒以内)

 

そこに突破口があると見たが、あまりにも早すぎる。あらゆる方位から攻撃してくるカオスダークマターを避けながら柚葉に近づくのは困難。限りなく不可能に近い。

 

(少しずつ、ほんの数センチずつだけど進んでる。・・・・後2m!)

 

そこで更に量と速度が増した。見るからに避けきれない。

バックフリップと身体を捻らせ、回転することで回避する。

上から迫り来るものを大砲と腕で防御する。地面に叩きつけられあまりの衝撃に口から血を吐く。反発力で身体が数センチ浮き上がり、そこを追い討ちをかけるように攻撃される。

柚葉から遠く離れるように吹き飛ばされ、大地に身体が何度も打ちつけられる。最終的には地面と身体が擦れ、引きずられ着地した。

 

(・・・・・・・・駄目だ。まだ終われない。きっと皆も戦っている筈だ。早く行かないと取り返しの付かないことになる。あいつ等はアジ=ダカーハの封印解除を行うために煌焔の都に来たと考えられる。何としても止めなきゃいけないッ!!)

 

意識はあるものの、身体はついて行かない。立ち上がることさえ出来ない。

段々と意識も遠のいて来る。駄目だと分かっていても言うことをきかない。

朦朧とした意識の中で懐かしい曲が聞こえる。妙にほんわかした曲調が特徴的な曲だ。

 

(これは・・・・確か、『シング・ラブ』。・・・・!! 後は任せたよ、W☆RS(ホワイト☆ロッシューター)!! ユキ後もうちょっと頑張って!!!)

 

優希は紅い炎を纏いながらゆっくりと立ち上がる。

 

「分かったよ、ステラ」

 

紅い炎が身体全体を包み込み、雲散霧消する。

B★RSと瓜二つの外見を持ち、衣服や髪の毛は全て白く、右目から紅い炎を灯している。

持ち手は黒で峰が白く刃が紅く、等身より大きい巨大な鎌 ホワイトサイス を携えている。

 

「《召喚完装・ホワイトウィング》」

 

すると、蛇腹状の可動部を持った八枚の白い翼が背中に装備される。

 

「・・・・まだ、完全に力を発揮できなさそう。これは、凄く面白そう! ゾクゾクする」

 

(すまない、W☆RS。俺のせいだ)

 

優希が意識の中から語りかける。

 

「笑止、何を今更。その程度知っている・・・・――久しぶりに暴れてみましょう」

 

その後に、やっぱり貴方と居ると退屈しない。と心の中で付け加える。

W☆RSは笑って、柚葉に向かい駆ける。

迫り来る混沌闇黒物質を避けながら前に進む。空中へ飛び上がり、翼を使って空中を飛び続けている。空中を自在に移動し混沌闇黒物質を翻弄している。

 

「――【レッドウィンド】」

 

ホワイトサイスを使った攻撃。切った後に紅色の軌跡が発生し、それも混沌闇黒物質を切り裂く。

柚葉に一気に近づくと、混沌闇黒物質の量と速さが増した。

 

「――【DEAD・END】」

 

前方へ紅い気団が六発、円状で現れる。それを三つ、計一八発を一斉に叩き込む。

混沌闇黒物質が僅かに停止する。高速で動くことで消えたように見える〝瞬間移動〟をする。

ホワイトサイスで柚葉に切りかかるも、漆黒の爆風で防がれる。〝瞬間移動〟で後退。上空で佇んでいる。

 

(【DEAD・END】の時、僅かにだが混沌闇黒物質が欠けたような気がした)

 

優希が中から語りかけ、W☆RSも頷く。

 

(柚葉が暴走しているのか、ギフトが暴走しているのか分からないが・・・・突破口はある)

 

W☆RSも同じ事を考えていたのか、クスクスと笑う。

 

「名残惜しいが・・・・そろそろチェックメイトだ」

 

ホワイトメイスをしまい、純白の大砲 ☆Rock Cannon を召喚する。

 

「《召喚完装・Ultimate》!!」

 

とてつまなく巨大な武装が召喚され、背中に装備される。

巨大な純白の翼に紅い噴出孔がある。頭上背後の空中には純白の円に羽がついたような形状をしている。

それを ☆Rock Cannon に結合させる。

気づけば柚葉が何かしようとしている。

 

 

「これで終わりよ、優希君。全てを混沌の終焉へと導きましょう。――【カオス・エンド】!!!」

 

 

「チェックメイトと言っただろう! 終わるのはお前だ。――【グレイト・フル・サンレイ】!!!」

 

 

 

 

 

 

―――混沌とした禍々しい漆黒の物質と紅い太陽のような砲弾が衝突する―――

 

 

 

 

 

 

空間が壊れ、煌焔の都、闘技場の舞台に放り出される。

身体と服がボロボロで、大砲を支えにして肩で息をし立っている。

柚葉も身体がボロボロで、舞台上に仰向けになっている。

 

「――やっぱり、駄目。本当に優希君を殺す事なんてできないっ」

 

柚葉は泣きながら言葉を紡ぐ。

優希はW☆RSから元の状態に戻り、柚葉の傍にゆっくりと歩み寄る。

 

「・・・・柚葉、ありがとう。そして、すまなかった」

 

「良いの、優希君。今まで色々ありがとう」

 

柚葉は涙を流しながら笑っていた。

 

 

―――次の瞬間、大地が揺れた。

 

 

「地震か!?」

 

激しく大地が揺れる。ただの地震ではない。

まさか。そんな不安と絶望が優希を襲う。

 

「地獄の釜が開かれたようね・・・・直にアジ=ダカーハが出てくるわ」

 

「――・・・・間に合わなかったっていうのか!?」

 

柚葉は首を縦に振る。思わず「嘘だッ!!!」と叫びそうになったが、そんなことを言っている暇などなかった。

 

 

 

「――【Time Stop】」

 

 

 

柚葉の声が聞こえた。噴火する火山も、壊れていく建造物も全て止まっている。

それでも、優希は動いていた。

 

「――・・・・・・・・柚葉?」

 

柚葉に呼びかける。自分はどんな顔をしているのだろう。よくわからないが頬に冷たい水滴が伝っているのが分かる。

 

「優希君、貴方と私以外の時間を全て止めた。混沌闇黒物質も同時に使用したから、神格に影響されず全て止まっているわ。・・・・だから、その涙を拭きなさい。優希君の仲間はまだ生きている」

 

優希は手の甲で涙を拭う。まずは少し安心できる。

 

「優希君、さっきも言ったけれど、アジ=ダカーハの封印が解かれた。けれど、今の身体で立ち向かっても勝ち目はない。――だから、休んでいきなさい」

 

優希は思わず反論しようとするが、先程安心したせいか身体の力が抜けている。気づけば地面に横たわっていた。

 

「おやすみ、優希君」

 

そこで優希の意識は途絶えた。

 

                   *

 

「――目を覚ましたみたいね」

 

優希はとっさに辺りを見回すが、何も変わっていないように見える。やはり、時間が止まったままなのだろうか。

 

「心配しなくても、時間は止まっているわ。優希君が『Restart』と言わない限り、永遠に止まったまま。私自身ですらどうにもできない」

 

実際本当のことだろう。柚葉は嘘を吐かない。俺は今も昔もそれを信じている。

 

「間違いないよな?」

 

「もちろん」

 

優希は気持ちの整理が未だ追いついていない。が、答えだけは決まっていた。

 

「皆を助けにいく」

 

優希の体は完全に回復していた。きっと柚葉のおかげだろう。

 

「あれ? 柚葉のギフトって何があるんだ?」

 

唐突に疑問を投げかける。その理由はギフトの進化だ。ギフトが進化するには条件がある。『神霊・星霊・龍以上の力を持つ事と神格以上のギフトが発動』が条件にあったはず。だからこそ、優希は質問している。

 

「”生命と回復を司る者(エンキ)” ”混沌闇黒物質” ”時間遡行”」

 

服から取り出したギフトカードにそうかかれていた。

唐突に思った。チートすぎるだろ、と。

 

「エンキのギフトは完全じゃないから、それ程チートではないわ」

 

どうやら顔に出ていたらしい。

 

「自分に使うのは止まっていなければ使えないし、誰かに使うのであれば心打ち解けた人で、睡眠時しか使えない」

 

それでも十分すぎると思う。混沌闇黒物質を使っていれば、動かなくてもいいし。時間止めれば回復できるし。やっぱりチートだった。

 

「優希君、コレを」

 

柚葉がギフトカードを優希の手に乗せ、何かが移ったような感覚がした。

柚葉にギフトカードを見てと言われたので見てみると、黒色の文字で。

 

「”混沌闇黒物質”」

 

の文字があった。

 

「一回ぐらいなら、使えるから。全部渡しても良いけど、身体壊れるし」

 

優希はそこで気がついた。混沌闇黒物質は使うと身体にダメージを負い、蝕んでいく。それをエンキでカバーしていたのだ。

 

「――”カオス・エンド”は負の感情などによって威力が増大するの」

 

唐突に告げられた。

そこでも気がついた。きっとセーブしてくれたのだと。優希は内心、死んでいたかもしれないと思った。

 

「目には目を歯には歯を。・・・・健闘と武運を祈るわ」

 

ありがとう。とだけ言い残し、止まった時間の中で仲間を捜すため歩き出す優希であった。

 

 




終わりました。終わりましたよ。次はアジ=ダカーハとの決戦ですね。
果たして優希さんは勝てるのか!? というより、生きていられるのか!?
流石に優希さんも今の状況で戦いに行くのは無謀でしょう。

「死を覚悟し、最凶を敵に回してまで守りたいものがあるとすればそれは、笑顔だ」

覚悟を決めた顔で優希は言った。

優希さん、カッコイイ・・・・。
白星優希vsアジ=ダカーハ。優希さんはアジ=ダカーハとどう戦うのか。果たして!?

3月26日0時12分頃更新しました。

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