問題児達+天帝が異世界から来るそうですよ!? 作:THE・Leaf
内容は、優希さんの住んでいた世界のお話。
それとレティシア視点のお話です。
~優希編~
ある日の事。
優希は自分の所持品及び服を整理している最中だった。
「ん? これ、ちゃんとあったんだな。失くしてなくて良かった。流石に、怒られるからな」
箱庭に召喚せれた時に着ていた、茶色い厚手のコートのポケットから鍵が出てくる。
嘗て自分が住んでいた世界の家の鍵。
それを手に取り、以前住んでいた世界の事を思い出す。
第零話―現実世界―
俺が住んでいる世界は科学とか医学とかが、かなり進歩している世界だ。
この世界の多数の人間は何かしら能力を持っている。それは、ショボイ能力から桁違いの能力まで。完全に能力が無い人とある人との偏見は無い。
だが有る者同士、無い者同士の関係はかなり最悪なものである。
その例として白星家を挙げよう。
例えば、自ら産んだ子に向かい『お前なんか必要無い』と言う。
『子は親に逆らわず、ロボットの様に忠実にしていればいい』と言う。
「それならロボットを買えばいいだろ!! 人間より忠実に正確に尽くしてくれる!!!」
と反論した事があるが、外道なセリフを吐き捨てられた。
あまりの異常さにセリフの内容すら忘れた。というより、思い出したくも無い。
”日常レベル”でこんなことを親に言われていると、頭が狂いそうになる。
”異常”だと思うだろうか? その思い、考えは正常だろう。
「何故、人間っていうのはお互いの気持ちを上手く伝えられないんだ!!」
そう言った事もあるが、『お前が人間? ゴミの間違いだろう?』と言われた。
「俺はアンタと一緒の生き物じゃない。そう言いたいのか?」
『そんなもの当たり前だろう?』と憎たらしい顔で言っていたのを、今でも若干覚えている。
「アンタみたいな外道と一緒じゃないと言って貰えて光栄だ! アンタと一緒じゃなかったらゴミでも構わない」
と言ったが。『そうか、光栄か』と嬉しそうな顔をしていたような気がする。
人間には堪能な言語を持ち合わせている。それがどれだけ便利なものであっても互いに言葉の本質を伝える事は難しい。
仮に想いや言葉の本質を本当に伝えられる日が来るのであれば、それはテレパシーが使える日だろう。いくら超常現象的な能力を持っていても、相手の次の一手が読めても、それを理解する事はできない。
人間という生き物は互いが互いを貶め合い、嗤い、馬鹿にする。
何故こんなにも愚かなのだろうか。
互いが互いを探り合い、顔色を窺って生きる息苦しそうな時代もあった様だが、互いが互いを劣等種として見てそれを告げるのは、如何せんどうかと思う。
「俺の考えは行き過ぎているのか?」
自問する。答えなど無いはずの自問。
人間というのは自分より優秀だと思うとその人物を非難するが、そうでないと思うと無視あるいは蔑む。
愚かで、虚しく、悲しい生き物。それが人間だ。
何億年遡ってもこんな生き物、人間以外にいない。恐らく何億年先であっても現れないだろう。
無益であることを理解している筈なのにそれを繰り返す生き物が何処にいる? 例え、有益であるとしても無価値であることが分っている筈なのに。
「・・・・柚葉」
唯一の理解者だった者の名前を呼ぶ。
その声は届くはずも無い。聞こえるはずも無い。
「人間っていうのは、互いを思いやって支えあうのが本来の姿じゃないのか? 足りないところを補って、切磋琢磨するのが本来の姿なんじゃないのか」
嘗て、人間にもそんな時代があった。
そんなこと今の時代では到底信じられないが確かにあったのだ。
「この世界、時代には言葉はあっても心は無いのか? 言の刃で傷つけ合うだけなのか? その刃を早く鞘に収めろよ・・・・無意味な事してんじゃねえよ」
虚しく、誰も居ない部屋で響く自分の声。
深い溜息を吐いてから、俺は部屋着から着替えようとする。少し前まで柚葉と住んでいた家だが、俺以外誰も住んでいない。朝と夕方に妹が来るぐらいだ。
俺は黒っぽいジーパンに白いブラウス、その上に茶色い厚手のコート。
白いマフラーを手に取り、首に巻く。妹への置手紙も書いておく。
手袋と家の鍵を持ち、外へ出る。鍵をかけ、コートのポケットに鍵を入れ、手袋をはめる。
「う~寒いな・・・なんたって真冬だし。」
雪がしんしんと降っている中、ふと空を見上げ呟いた。
同じ様な日々を過ごす、退屈な毎日。俺は社会的に殺されているので実際、ニート同然だ。それでも、毎日妹が来てくれてご飯を作ってくれるので生きていられる。
この時代は何かと便利だが、個々にIDカード及びチップを持っている。
それが無いと何も買えないのだ。俺のは、もちろん意味を為さない。
妹には感謝してもしきれない。それに関しては頭も上がらない。
『出かけて来る。夕方ぐらいには戻るから』って置手紙したから大丈夫だとは思うけど。まあ、鍵も持たせてるし問題ないと思うが。
「はぁ~あ。何か面白いこと起きないかなぁ・・・・例えばこのまま空から不思議な手紙が落ちて来るとか・・・・」
そんなことあるわけが無いと思って歩きだそうとした瞬間だった。
「ゑっ? マジで落ちてきたよ!?」
―――それが物語の始まりだった。
~レティシア編~
「大変です!大変なのですよー!」
黒ウサギの声が本拠の館中に響く。
「なんだ相変わらず騒がしいな、一体どうしたんだよ。黒ウサギ?」
我が主の声がする。きっと呆れた顔で黒ウサギに対応しているのだろう。
「問題児様方が何も言わず、居なくなったのです!」
「いつもの事だろ? そんなことで一々騒ぐな。それに一々対応してたら身が持たない」
声が響くので、もっともな意見が自然と聞こえてくる。
「それがですね。この置手紙見て下さい」
「えーと、『ちょっと上の方で遊んでくる。適当に勝って帰ってくるから心配するな』・・・・十六夜もこう言ってるんだ。大丈夫だろ」
「あしらわないで下さい! 十六夜さんのことです。中層ぐらい行っていても不思議ではありません」
「この辺の下層ほぼ全てから出禁だからな。十分ありえるね。・・・・で?」
「で? じゃありません!! 捜して来て下さい、御願いします!! 今日は黒ウサギもジン坊っちゃんも、」
「はいはい、分った、分った。捜してくる」
「本当ですか!?」
「但し、条件」
「な、何でしょうか・・・・?」
「誰か一人連れてって良い?」
「へ? あっ、はい! それくらいなら、もちろん良いのです!!」
「いるだろ、レティシア?」
すぐに主の下へと向かう。
私は主の一歩後ろに立ち、45度の礼。
「ここに」
主殿は小さく笑みを零すと。
「顔を上げてレティシア。聞こえていたと思うけど、これから皆を捜しに行く。そこで、一緒に来て欲しいんだけど」
「承りました、マイマスター」
「レティシア様!? えっ? レティシア様を連れて行くのですか!?」
「何? 今更駄目と言っても無駄だからな」
「い、いえ、そんなこと言いませんけど・・・・」
「以外だ、って言いたいのか? 黒ウサギ、考えても見てくれ。良い意味でも悪い意味でも有名になってしまった俺と、金髪美少女が一緒にいたら噂が一人歩きしてあっちの方から来てくれるだろ?」
「なるほど」
「いやいや、感心するなよ。・・・・じゃあ、行ってくるから」
「――お兄ちゃん何処行くの!?」
唐突に主殿の妹、桜の声が聞こえてくる。
「あー面倒な奴に捕まったな」
「あれ? レティシアさん? もしかして・・・・レティシアさんとデート!?」
桜は両手で頭を抱え、必死に何かを悩んでいる。
「あのな桜、」
「うぅ~、許す。仕方ない、それは流石に仕方が無いよ。レティシアさんとデートなんでしょ? レティシアさんなら私も許す」
主殿は一瞬何か考えるような顔をして、桜に言う。
「ああ、そうなんだ。今からレティシアと中層でデートしてくる」
私は思わず声を出してしまいそうになるが、主殿が左目でウインクしてので何となく察した。
あちらからは主殿が私の方へ顔を向けただけにしか見えなかっただろう。
「いいなぁー、羨ましいなぁー、レティシアさん。私の分も楽しんで来て下さいね?」
彼女の目が若干潤んできているのは気のせいでは無いだろう。
「主殿、着替えてきても良いか?」
主殿は、『喋りにくいだろうから、普通に喋れば良い』と言ってくれている。
が、流石に自らの恩人であり主である人物を呼び捨てにするのは心もとない。
「行っておいで。俺はそのままのメイド服でも十分可愛いと思うし、結構好きだけど」
紛いの無い、純粋すぎるストレートな意見を言われ、私は思わず主殿と目を合わせられなくなる。顔もなんだか熱い。
「す、すすす、すぐにき、着替えてくる!」
私は逃げるようにその場を離れた。
私は心をゆっくり落ち着かせ、着替え始める。
着替え終わった後で、思わず鏡に目が移る。
(どうだろうか。似合っているだろうか。始めて出会った時と同じ服装だが・・・・)
あまり待たせても、心もとない。
そう思い、私は部屋のドアを開ける。
すると、目の前には主殿がいた。きっと、待っていてくれたのだ。
「も、申し訳ない」
「何に謝ってるの?」
「私は、主殿を長く待たせてしまった」
「そうか? そんなことないと思うが。・・・・似合ってるよ、レティシア。可愛いね」
その一言を聞き、私の頭の中がグルグル何かが回るような感覚がする。
顔も凄く熱い。こんなに正直に気持ちを伝えられたのは、始めてだからどうにかなってしまいそうだ。
思わず私は倒れそうになってしまう。
「大丈夫かい? レティシア。具合が悪いなら、無理強いはしないけど」
そこを主殿は受け止めてくれた。更に気遣いの言葉までかけてくれた。
「行く。一緒に行かせてくれ」
「体は大丈夫?」
「ありがとう、こうしてれば大丈夫なようだ」
私は立ち上がり、主殿の右腕に掴まる。いわゆる、腕を組む形だ。
なんというか、体が密着していると凄く安心する。
「そっか、具合が悪くなったら言って欲しい。・・・・このまま、空間移動しよう」
そう言って、主殿と私は五桁の中層へと空間移動した。
*
「――はい、到着」
「凄い賑わいだ・・・・確かにここならいるかもしれない」
主殿は人の多い場所へ空間移動したのだ。
何か祭りでもやっているのかと思うが違う。ここは常にこんな感じで賑わっている。
このような場所は近くでギフトーゲームが行われることもしばしばある。
それを見越して此処に移動したのだろう。
「此処なら耀もいる可能性高いし。例え見つからなくても、レティシアと一緒だから楽しめるだろうし」
「・・・・ただ、これだけ多いとなると捜すのが大変じゃないか?」
私は思わず話を逸らしてしまう。
自らも主殿と一緒だから楽しめるだろうと思っていたので、嬉しいようで恥ずかしい。
「無理に捜す必要なんて無いよ。始めから見つける気もないし」
「・・・・確かにこの箱庭は広いなんてものでは無いからな」
主殿と私は喋りながら歩いている。
私は以前腕を組んだままで、離れようにも人が多いので逸れる可能性がある。
それでは迷惑をかけてしまうのでこの状態を維持している。
「――レティシアこの辺で有名な食べ物って何?」
「うむ。そうだな・・・・あそこっ! あそこのたこ焼きはとても美味いことで有名だ」
「それなら、並ぼうか」
(少々長い列だがこれはまだ少ない方か)
時間帯によっては何時間どころか半日程並ばされることもあるとの噂。
それほど美味しいという事だろう。期待が高まる。
「――たこ焼き、一つで良いよね? レティシア?」
「そうだな」
「店員さんたこ焼き一つで」
「はい、一つですね。少々お待ち下さい」
「――お待たせいたしました」
「レティシア、俺が払うから。その財布は閉まっておいて」
そういい、主殿が代金を払った。
「ありがとう、主殿」
「いえいえ」
たこ焼きは一つ一つが一般のものより大きい。
見た目は至ってシンプル。8個入りだが一般のものの値段とあまり変わらなかった。
「座って食べない? 歩きながらは食べづらいし」
すると主殿は大通りの脇にあったベンチへと向かう。
そこに腰掛けたので、私も同じく腰掛ける。
主殿がたこ焼きを竹串で刺す。
「レティシア。はい、あーん」
私は恥ずかしかったが食べることにした。
「あーん、はむ。熱っ、ん・・・・美味い! 主殿。はい、あーん」
「あーん、熱っ。うん・・・・すごい美味い!」
残りの6個も同様に食べあった。
「――美味しかったな」
「もう一つ買えば良かったかもしれない」
「いや、少量を二人で食べるから美味しいんだよ」
「確かにそうかもしれない」
「・・・・あれ、クレープだ。食べる?」
「確か、あのクレープも絶品だと聞いたことがある」
再び並び、購入。
主殿はチョコバナナ生クリームのクレープを買い、私はブルーベリー生クリームのクレープを買ってもらった。
「本当にありがとう」
「いいんだよ。折角二人っきりで初デートしてるんだ」
そう、笑顔で言ってくれた。何気ない一言は本当に嬉しい。
何よりこの時間は私にとって、もの凄く幸せな時間だ。
照れ隠しで、クレープを一齧りしたがこれも美味しい。
「レティシア、顔にクリーム付いてる」
主殿が左手の親指で私の頬に付いていたらしいクリームを取る。
そしてそのクリームを何の躊躇をすることなく舐めた。
思わずドキッとしてしまった気がした。
そして、一緒に居てずっと気になっていた事を問う。
「主殿は・・・・その・・・・・・」
「何、レティシア? 思い切って、聞きたいことは訊いてくれて良いよ」
「耀のことは好きなのかっ!!?」
主殿は一瞬驚いた顔を見せたがすぐに笑みを零した。
「いや、ゴメン。・・・・勿論、好きだよ」
「やっぱり、・・・・そうか」
「レティシアも好きだよ」
「はへ?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。まさか、主殿は・・・・。
「十六夜も飛鳥も黒ウサギも、ジンもリリも。みんな俺は好きだよ」
やはりか。
「主殿。それは耀に、もの凄い勘違いをされているだろう」
主殿は全く分っていない顔をする。
きっと、恋愛をしたことが無いのだろう。余程住む世界が悪かったのか・・・・。
同情せざるを得ない。
「主殿もクリームが付いている。少し屈んで欲しい」
主殿が少し屈むと顔がすぐ傍にある。当たり前だが。
鼓動が早くなっているのが自分でも分る。聞こえているのでは無いだろうか、とさえ思う。
私は主殿の頬に口付けをした。
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「「!?」」
「レーーティーーーシーアーーーー?」
「見つかってしまったか」
「今! 確実に、優希にキスしたよね!!?」
「「頬だけだ」」
脇にいる問題児二人がフォローのような、そうでないようなことを言う。
「マズイな。耀さんが大変お怒りなようなので・・・・逃げるぞ。レティシア」
「承りました。マイマスター」
そう答えると、主殿は私を”お姫様抱っこ”と呼ばれるものをされた。
「じゃあ、また本拠でね」
主殿はウインクを送り、空間移動する。
「待て! 俺等も連れてけ!!」
寸でのところで十六夜が主殿の足を足で掴む。
よく見ると両手に耀と飛鳥が抱えられている。
「――十六夜、そんな危なっかしいことしないでくれ。落ちたら拾うの大変なんだぞ?」
「悪い、悪い」
「優希! 今日行かないって言ってたのはこういうことなの!?」
「主殿、まさか行く先を知っていたのか?」
「耀それは違う、誤解だ。只、面倒だっただけだ。レティシア、それも誤解だ。俺は行く先を聞いていない。後、二人同時に質問しないでくれ」
「――お兄ちゃん、レティシアさんとのデートどうだったー? って、あれ?」
「桜、修羅場を地獄に変えないでくれ」
「ゴメン、悪気はなかった」
「桜、俺は生死を懸けた鬼ごっこを強いられたから晩御飯に遅れると伝えてくれ」
「分った。健闘を祈っておく」
「優希!! どういうこと!!?」
それから主殿が耀を説得するのに何時間もかかった事は言うまでもない。
*
―――その日の夜中。
私は眠れないでいた。あまりにも眠れないので明かりのある部屋を探してみたがない。
枕片手に眠れないという理由で夜中を徘徊か・・・・。
黒ウサギの寝ている部屋へ行くと鍵がかかっていた。
(どうしたものか、これでは・・・・。主殿の部屋を訪ねてみるか)
――ガチャ。
(空いた! 良かった、鍵はかかっていなかったようだ)
「!!?」
「夜襲とはいい度胸・・・・って、なんだ。レティシアか」
主殿は言い終わった後眠たそうに欠伸をしている。
「夜分失礼して申し訳ない」
「一体、どうしたんだい?」
余程眠たいのか穏やかで優しい口調になっている。
「眠れないのだ」
「不眠症かい?」
「違う、・・・・心細くて眠れない。だから・・・・一緒に寝てくれないか。主殿」
「(卑怯だ、それは余りにも卑怯だ! 枕で顔を半分埋めて、上目遣いで『寝てくれないか』と金髪美少女に言われて断れるはずが無いッ!!)。もちろん、良いよ
」
「ありがとう」
「(パッと顔が明るくなって・・・・すごい可愛い。ビデオか写真で撮っておきたいぐらい可愛い)」
「本当にすまない」
「謝らなくて良いんだ。皆には不眠症って伝えておくよ。だから、毎日でもおいで」
「ありがとう」
私は精一杯の感謝の気持ちで伝える。
主殿は優しく微笑んでくれた。
主殿が布団に入るのを確認し、私も布団に入る。
「――レティシアから、凄い良い香りがするよ」
「嫌いか?」
「いや、この匂いは好き」
主殿は私を抱き寄せる。
驚きの余り少し声を出してしまったが、されるがままにした。
「ごめん、嫌だった?」
「・・・・このままが良い」
私は主殿の胸に顔を埋める。
凄く心地が良い。同時に凄く落ち着く。
主殿が私の頭と髪を撫でる。とてつもない安心感に包まれる。
「もう寝たのかな。寝顔も可愛いな。何ていうか愛くるしくもある」
そんな声が聞こえる。
「おやすみ、レティシア」
主殿は前髪がかかっている私のおでこに軽くキスをして眠りについた。
私も主殿に抱きつき、深い眠りについた。
*
「大変です! 大変なのですよっ!!」
黒ウサギの叫びで目が覚める。一体何があったのだろうか。
すると、部屋のドアが開かれる。
「朝から騒々しいな!! 黒ウサギ、お前は毎日一回叫ばないと気がすまないのかッ!!!」
「すみません」
シュンとする黒ウサギ。
「で、何が大変なんだ?」
「レティシア様が何処にも見当たらないのです!」
「そうか。じゃあ俺、二度寝するから」
「主殿、私も一緒に二度寝させてもらう」
「ちょっと! 御二方、二度寝しないで下さい! って、えっ? 御二方?」
「ああ、夜中に不眠症で寝れないから助けてくれと言われて・・・・まだ眠いんだ寝かせてくれ」
「それは大変でしたね。ゆっくりお休み下さい。って、なんでレティシア様と一緒に寝ているのですかぁぁぁぁぁ!!!?」
「えっ! 優希君とレティシア一緒に寝て・・・・一晩過ごしたの!?」
飛鳥が驚きの声を上げる。
「何っ! 優希とレティシアが一夜過ごした!?」
続いて十六夜も衝撃的な様子の声を上げる。
「ええっ! お兄ちゃんとレティシアさんが・・・・初夜を!!?」
そして桜が、驚きの声を上げたと思えば衝撃と絶望の混じった声を上げた。
「えっ・・・・優希と、・・・・レティシアが、・・・・えっ!? 子供・・・・?」
最後に耀が絶望的な様子の言葉を発した。
主殿は右手で頭を抱えている。
「俺、・・・・どうして伝言ゲームがゲームとして成り立つ理由が今分ったよ」
きっと主殿は、どう解釈すればそうなるのかと思っていることだろう。
「レティシア俺が説明しても恐らく無駄だ。説明してくれ」
「承りました、マイマスター・・・・・・実はな、私が不眠症で困っているところを主殿が」
「ああーなるほど。それでか。レティシアがお母さんになったということ」
「違うわ!!!!!!!!!!」
主殿が何時の間に持ったのか、何時の間に移動したのか。ハリセンで十六夜の頭にフルスイング。音が後から来た。
「皆さん、レティシアさんは不眠症で困っていて誰かの部屋に行こうと思った。ですが生憎、女性の部屋が全て閉まっていた。なので、主である優希さんの部屋に行った・・・・違いますか?」
そこに助け舟ジンが来た。
「その通りだ」
「それで、一緒に寝たのですか?」
と黒ウサギからの質問。
「「それは認める。一緒に寝た」」
主殿と私がハモる。
「「「「怪しい」」」」
ジン以外が口を揃えて言う。
「まだ、疑うか」
「「「「・・・・・・」」」」←ジト目
主殿は深い溜息を吐く。
「やはり、迷惑をかけてしまったか・・・・」
主殿はそんな事ない、と言い私の目の前に立つ。
すると優しい笑顔で私の頭を撫でる。
「迷惑なんてかけてないよ」
「・・・・殺意の眼差しで私と主殿を見ている人物がいるのだが」
すると、その人物が何か思いついたような顔をする。
「私も不眠症かも」
「! お兄ちゃん、私も不眠症」
「あっ、ずるいです。レティシア様、黒ウサギも不眠症です」
「黒ウサギ、ずるいわ。私もレティシアと一緒に寝・・・・私も不眠症よ」
「「皆誰かと一緒に寝たいだけだろう」」
主殿と私は声を揃えて呆れた声をあげた。
「今日、外が暖かいから皆で雑魚寝するか」
全員が主殿の意見に賛成な様子。
朝ごはんを食べた後、陽気な天気の下で全員仲良く寝た。
今回はプロローグに繋がるお話とレティシア視点でのお話。
なんとなく書きたいと思ったがゆえに書いた番外編でしたが・・・・。
なんか、ヒロイン迷走しているような気がします。
書いていて気がつきましたが、レティシア可愛いですね。
どうしよう・・・・ヒロイン、レティシアの方が良いのか・・・・?
まあ、タグにも一応『?』が付いているので、変更しても問題ない筈。
兎にも角にも、3月18日10時26分頃更新しました。