問題児達+天帝が異世界から来るそうですよ!?   作:THE・Leaf

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One For All All For Oneの日本語訳として正しいのは、「一人はみんなのために、みんなは勝利のために」だそうですよ。
皆さん知っていましたか?
ちなみに私は調べるまで知りませんでした。


第弐拾六話 ~One For All All For One~

―――”造物主の決闘”闘技場・南側入場門。

耀は南側で精神を集中させていた。

すぐ隣には召喚された優希が見送りに来ている。

 

「出会って半ば予想しはていたが、やっぱりか。あの少女がやはり、ウィラ=ザ=イグニファトゥスか。耀、分っていると思うが気をつけるんだ」

 

「うん、ありがとう。優希」

 

「耀は予選で飛鳥とウィラ=ザ=イグニファトゥス、三人同時で戦うんだろ? 飛鳥は飛鳥で厄介な相手になるだろうが、それよりも厄介なのが彼女だ」

 

「大丈夫、何とかしてみせる」

 

「・・・・何も恐れることなんてない。全力を尽くすんだ。健闘を祈るよ」

 

耀がコクリ、と頷く。

それと同時に闘技場には開幕の銅鑼が鳴り響いた。

 

              *

 

優希、黒ウサギ、ジャック、ルイオスの四人は盛大に賑わう観客席に座りながら、ゲームが開始されるのを待っていた。

 

「さてさて、一体どんな試合になるのか見物だ」

 

「優希さん、そんな呑気な事を」

 

「良いじゃないか、黒ウサギ。きっとすごい激戦になる筈だ。開始早々決着が付くわけじゃあないが、長期戦にもならないだろう。――それにしても、飛鳥のギフトが”疑似神格”の付与だなんて。思いもしなかった」

 

「ヤホホ、そうですね。飛鳥嬢の力は恐ろしいものです。そして扱いが難しい。何より付与の方法が”神託(ことば)”というのも悪い」

 

「そうだな。言葉だとすぐに霊格が霧散するからな。対象に届くまでに劣化するし、相手の霊格しだいで跳ね除けられる。”支配する”能力と間違えても無理ないな。――俺も空間を操れば、似たようなことができるが・・・・」

 

「優希さんは必要無いでしょう」

 

「ああ、それに労力に見合わないしな。・・・・飛鳥はギフトの本質も分って、それを生かす恩恵をジャックたちが用意してくれたんだ。優勝できる可能性は十分ある」

 

「ええ、その通りです! 今の飛鳥嬢ならばフェイス・レスとさえ互角に戦えます」

 

自信満々に告げるジャック。

黒ウサギも、そこまで言い切られると期待せざるを得ない。

 

「それならば、あり得るかもしれません」

 

「いや、優勝はウィラの一択だよ」

 

「よく、歓談を横からぶった切れるな」

 

「それは、そうだろ。ウィラは北側最強だ」

 

「なんだ? 名無しじゃあ、太刀打ちできないって言いたいのか?」

 

「ああ。ま、僕が造った”城塞”があるから、最初の五分くらいは耐えられるんじゃない?」

 

ジャックは気勢を削がれた様に溜息を吐いた。

 

「やれやれ・・・・よっぽど飛鳥嬢に優勝して欲しくないようですねえ。でもあの武具は飛鳥嬢以外には使いこなせませんヨ? 仮に使えるとしても優希さん位です。それはルイオス君が一番よくわかっているはず」

 

「ふん、だからどうしたのさ。僕はそんなことどうでもいいんだよ。あの女が赤っ恥を掻けばそれでね。それに”城塞”の素材は金剛鉄と例の毛皮だ。鉄塊と毛皮に解体して売ればかなりの値段が付くよねえ?」

 

「まあ、解体する前に俺が貰ってやるよ。元はこっちのものだし」

 

「そうですね、いざという時は優希殿の空間移動がありますからね。優希さん、私が許可します」

 

「ってことだから。ちゃんと許可もらったし・・・・まあ、飛鳥がそう簡単に負けるとも思ってないし」

 

「・・・・あ! 始まりますよ!」

 

黒ウサギが闘技場の中心を指さす。

開幕の銅鑼が三度鳴ると見知った人物が出て来た。

 

「・・・・あれっ? もしかして、もしかしなくとも、審判はアーシャか!? あっ、そういえばそうか。このゲーム常連客だからか」

 

「その通りです。懇意にさせていただいているサンドラ様から直々にご指名頂いたのですヨ!」

 

ヤホホ! とカボチャ頭を揺らして自慢げに笑うジャック。

 

「そりゃあ、”星海の石碑”に殿堂入りしてるし。・・・・何度も優勝してれば”最強”と呼ばれるのも無理ないか」

 

肩を竦めて言う優希。

すると、舞台に上がったアーシャが闘技場の隅に居る三人の名を連ねていく。

 

『――それでは、第一試合!

”ノーネーム”所属 久遠飛鳥!!

”ノーネーム”所属 春日部耀!!

そして、我等がアイドル! 優勝候補筆頭! 難攻不落のスーパーレディー! ”ウィル・オ・ウィスプ”所属 ウィラ=ザ=イグニファトゥス――!!!』

 

「――すごい大歓声だな。ウィラも誰かさんと同じで人気ものだな」

 

「優希さん、それは黒ウサギのことですか!!? 皮肉ですか!?」

 

「皮肉? 違う、違う。大変そうだと思ってるだけ。ほら、開幕宣言されるよ?」

 

『それでは此処に――”造物主の決闘”の開幕を宣言します!!!』

 

               *

 

「―――・・・・開始早々”愚者の劫火”ですか。なあ、いつもこんな感じなのか、ジャック? もし、毎回こんな感じだったら焼死体の灰が続出だぞ」

 

「優希さん何冷静に質問しているのですか!!」

 

「はあ、よく見ろよ黒ウサギ。無傷だ・・・・それにあの程度の劫火で騒ぐな」

 

「へ?」

 

「何間抜けな声だしてるんだ。炎を凍らせたのを驚いてるのか? 確かに物体の運動エネルギーをマイナスに移動させるなんていう、熱力学第二法則をぶち壊すことやってるけどさ、箱庭じゃ普通だろ?」

 

「あっ、い、いえ」

 

「黒ウサギ、もうちょっと自分の仲間を信じろよ」

 

すると上方の観客席からジンの声が聞こえてくる。

 

「優希さん! 黒ウサギ! それにジャックも!」

 

「? ジン! どうしたんだ、こんなところで?」

 

「ヤホッ!? それにサンドラ様まで!?」

 

「私はジンに街を案内していました。”箱庭の貴族”様とはお久しぶりですね」

 

「息を吸う吐くのように嘘ついたな、今」

 

「どうして、分ったんですか!?」

 

「そういう奴等を数え切れないぐらい見たから。だから、俺は嘘吐きが嫌いなんだ」

 

しゅんとするサンドラにルイオスが、見たこともないような愛嬌と笑顔で隣の席を空けた。

 

「これはこれは、”サラマンドラ”のサンドラ様! こんな一般席で出会えるとは思っても見ませんでした! ささ、此方の席にどうぞ」

 

「ありがとうございます、ルイオス様。貴方も北側に来ていらしたのですね」

 

「はいはい、互いを探り合うような社交辞令はいいから。試合観戦の邪魔だ」

 

「・・・・すみませんね。サンドラ様、」

 

「いいのですよ。彼の言っていることはもっともです」

 

 

優希に視線を送りつけるルイオス。当然、優希は気づいているが無視。

ルイオスが視線を上げると一人の少年が見え、視線が止まる。

 

「・・・・? おい、そこの白髪チビ」

 

「なんだ?」

 

無礼な物言いに、泰然と対応する白髪の少年。

普段のルイオスならこの態度だけで怒り心頭となっていただろう。

しかしこの場合に限っては違った。

白髪金眼の少年を上から下まで注視したルイオスは、僅かに腰を上げて問いかけた。

 

「お前・・・・僕と、何処かで会ってないか?」

 

訝しそうに睨みながら告げるルイオス。

先程からずっと少年を見ていたのはそれが理由だったのだろう。少年は一瞬だけ瞳を丸くして驚いたが、小さく笑って頷いた。

 

「「そうだな。会った事があるかもしれない」」

 

「うちは商業コミュニティだからな。”ペルセウス”とも商売の中であったんだろ」

 

「今ハモったよな、お前?」

 

ルイオスが優希に向かって問いかける。

 

「ああ。それが?」

 

「コイツを知っているのか?」

 

「いや、知らない。ただ、」

 

騙す奴の典型的な奴ということだけは知っている。そう言おうとした時だった。

 

「あのー、いいですか? ルイオスさん」

 

と、いきなり割って入ってきたジン。

 

「あん? なんだよ」

 

 

「それ――“レティシアさんを買い取ったとき”、じゃないですか」

 

 

「―――っ!?」

 

ハッと、虚を突かれた少年の表情が驚愕に染まる。

それと同時に優希が少年の背後で日本刀のような剣を突きつける。優希の背中には天使の羽が三対生えており、剣も煌々しい。

 

「動くな」

 

その優希の一言で辺りに居る者全員が竦み上がる。

信じられないほどの殺気。誰も動けずその場に立ち止まったままだ。

 

「お前は、魔王連盟の者だろ? リーダーか、はたまた二番か三番か・・・・答えろ」

 

「あ、ああ。その通りだ。俺はお前達が魔王連盟と呼ぶものの長だ」

 

「そうか。・・・・なら、色々と教えて貰わないとな」

 

「・・・・・・クソッ、やるしかないようだなッ!」

 

白髪の少年が距離を取ろうとした。

優希はそれと同時に斬りつけ、容赦なく少年の両腕を切り落とす。

 

「―――■■■■■■■■■■■!!!!」

 

「次は両足を貰うが、どうする? ”吐く”か? それとも”死ぬ”か? 選択する時間ぐらいやるよ」

 

「――・・・・はあ、はあ、はあ、吐かねえし、死なない」

 

優希は少年の答えを聞き終わると同時に、両足を切り落とした。

 

「分らないのか? 分らないなら教えてやる。お前は今生かされている。血が出ないのも痛みで死なないのも俺のおかげだ」

 

「ハッハッハッ・・・・吐くわけないだろ? て、・・・・・・き」

 

優希は少年の最後の答えを聞くと同時に真っ二つに体を切った。

天帝の力で出血と痛みによる死を制御していたが、それも解除。

少年は紛れもなく死んだ。

 

 

――――はずだった。

 

 

 

「駄目でしょ。今後の展開が狂うじゃない」

 

「すまない、恩に着る」

 

少年が生きている。更に見知った人物がそこにいた。

 

「!!? ・・・・ゆ、柚葉!??」

 

「久しぶりね、優希君」

 

「”ウロボロス”の連盟旗・・・・柚葉、お前そいつらの」

 

「うん、優希君の予想通り。優希君が殺した少女も勿論生きてる」

 

十六夜も何時の間にか到着しているみたいだが、決して突っ込もうとなどしていない。

優希が殺した少年少女含め首魁たちが何やら話しているが優希には聞こえない。

 

「私は此処に残って優希君を止めるけど・・・・いいでしょ?」

 

只、柚葉の声が聞こえてくる。

 

「それも、そうね。私しか優希君を倒せないし。そっちは好きにして。まかせるわ」

 

「―――・・・・・・き、ゆ・・・・き、優希!!!」

 

「!!!!??」

 

「しっかりしろ。お前がビビッてどうすんだよ!!」

 

十六夜に声をかけられたことにより、我に返った優希は安堵の息を漏らす。

 

「そうだな。・・・・皆聞いてくれ」

 

優希のほうへと”ノーネーム”のメンバーの視線が集まる。

 

「柚葉はここで俺を止めるらしい。さっき会話の中で聞いたから間違いない」

 

「行って来い。アイツの能力はお前じゃないと何ともならない」

 

「こっちは任せて、優希」

 

「大丈夫よ、心配しないで優希君」

 

「言っておきたい事がある

――まず一つ、諦めるな! 絶対に諦めるな!!

    二つ、仲間を信じて、仲間を助けろ!!

    三つ、死ぬな! 死にそうになったら逃げろ、隠れろ。突破口を見つけて殺せ。

    最後に、“生きる事から逃げるな!!!”」

 

そう言って優希は右拳を自分の前に出す。

同様にメンバー全員が右拳を出して合わせる。

 

 

「「「「「「健闘を祈る」」」」」」

 

 

「One For All All For One!!」

 

「「「「「One For All All For One!!!」」」」」

 

 

優希は拳を離し視線を柚葉に向ける。

”ウロボロス”は撤退したようで、その姿は見えない。

 

「優希の邪魔になる。俺達は帰って作戦会議だ。急ぐぞ!」

 

十六夜のそんな声が聞こえ、駆け出す。

 

「柚葉もう少し待っていてくれ。同士の背中が見えなくなるまで」

 

フフッ、と笑い柚葉が言う。

 

「ええ。いくらでも待ってあげる」

 

 

―――同士の背中は完全に見えなくなった。

 

「始めようか」

 

「始めましょうか」

 

優希と柚葉の戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 

 




終ったーー!! 原作六巻終りました!!!
はい、短かったですね。すみません。
いや、もうしょうがないかなあ・・・・なんて。
次回オリ展開ですが、内容が薄くならないように、面白くないと思われないように頑張ります。


3月14日16時58分頃更新しました。

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