問題児達+天帝が異世界から来るそうですよ!?   作:THE・Leaf

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原作第三章ですが序盤を丸々カットさせて頂きます。


第弐拾五話 ~音速を超えうるもの~

―――”煌焔の都”練成工房街・第八八番工房。

ドアを蹴り破って出てきた男――ルイオスは鬼気迫る勢いで優希と飛鳥と黒ウサギを睨み、

 

「”名無し”共め・・・・よくも僕の前に顔を出」

 

「裏口の扉を蹴り破ってんじゃねええええええええええ――!!!」

 

激怒したジャックに殴り飛ばされた。頭蓋骨の二倍超はありそうな拳が側頭部にクリティカルヒットし、ルイオスは三回転半しながら壁にねじ込められたのだ。

ジャックはカボチャ頭を真っ赤に紅潮させ、空洞の瞳を尖らせて怒鳴る。

 

「全く、君と言う人は・・・・此処が借家だと何度言えば分るんですかッ! 壊した扉や壁の穴の修理代は我々が払うのですよッ!」

 

「お、お待ち下さいジャック殿! 壁に穴を開けたのは貴方ですぞ!」

 

必死に止めにかかる”ペルセウス”の同士たち。優希と飛鳥、黒ウサギもそっと同意した。

ルイオスは工房の壁から引き抜かれ、唇と鼻から血を流して怒鳴り返す。

 

「痛ぅッ・・・・ふっざけんなよ、このドテカボチャ頭・・・・!!! いい加減にしないとその空っぽのの頭蓋ぶち砕くぞッ!!!」

 

「そう言って幾度返り討ちにあったのか覚えていますか? 両手の指では足りませんよ? ――あと、私はドテカボチャではありません。もう一度そう呼んだら、その頭蓋を柘榴の如くブロッコリーにするぞと忠告しましたよね?」

 

「上等だ、この腐乱式カボチャッ!!!」

 

「誰が発酵カボチャだゴラァッ!!!」

 

「五月蠅い!!!!」

 

パァン!!! 優希が何時の間にか両手に持っていたハリセンで二人を思いっきり叩く。

 

「集中してるから頭に響くんだよ!! さて、どっちが先に血の花咲かせて欲しい? なんなら同時でもいいよ?」

 

優しくニコォとして優希は言っているので、色んな意味で非常に怖い。

 

「優希さんもですが、二人共落ち着いて下さい」

 

「俺は至って冷静だよ? 黒ウサギ」

 

「優希君、今の貴方の笑顔が何よりも怖いわ。――それにしても、黒ウサギの言う通りよジャック。程度の低い人間に付き合って、貴方まで口汚くなる必要はないわ」

 

「オイ、外野がサックリと僕を貶めてんじゃねえよ? そもそもどうして、名無し・・・・さんが神珍鉄や金剛鉄なんて霊格の高い金属を所持している・・・・んですかね!? どう考えても宝の持ち腐」

 

パァン!! 再びハリセンが打ち込まれる。

所々敬語になっていたりするのは、優希が笑顔と言う名の殺気を送っているからだ。

 

「い、いい、いいでしょうッ! この喧嘩、私が買ったわ!!」

 

「ちょ、ちょっと飛鳥さん!?」

 

「よし、飛鳥嬢に売った!! 頭蓋骨ごと柘榴のようにブロッコリーですヨッ!!! 良いですよね? 優希殿!?」

 

「? 俺に始めて”殿”付けたな。今はそんなことどうでも良い。ちょっと話しかけないでくれ。後、静かにしてくれ」

 

「ヨシッ! 許可貰ったぞッ!」

 

「ジャ、ジャックさんまで!?」

 

「はぁあ!?? 名無しごときが僕の喧嘩を買うだと!!? 頭が高いよ高すぎるよ調子乗って―――」

 

「調子乗ってるのはテメェだああぁぁぁァァァァ!!」

 

――パァァァン!!!!!!

 

「あの少女が原因じゃあ無いな。あの程度では空間は歪んだりしない。それ以前に影響が及ぶか否かの問題だし・・・・・・どうした、皆?」

 

「音が後から来ましたね」

 

「ええ、完全に後から来たわ」

 

「そうですね。後から来てましたヨ」

 

黒ウサギ、飛鳥、ジャックの目が優希からルイオスへと移る。

彼は、完全に気絶していた。

 

「「「ハリセンってこんなに威力でたっけ?」」」

 

思わず声をそろえてしまう三人だった。

 

         *

 

「やっと起きたか」

 

数分ほど気絶していたルイオスに声をかける優希。

 

「そういえば、お前にあったら渡そうと思っていたものがある」

 

すると優希の手にあるのは数ヶ月前、戦ったときに壊したはずのチョーカーに付属していた装飾だった。

 

「「ゑ???」」

 

素っ頓狂な声をあげたのはルイオスと黒ウサギだ。

 

「優希さん、あの時・・・・完全に壊してましたよね?」

 

「何時から壊したと錯覚していたんだい? 黒ウサギ」

 

と言った後に、ルイオスへそれを投げつけた。

 

「渡すんだったら、終った後でも良かっただろ!?」

 

「別にあってもなくても変わらないだろ? じゃあ何か? 召喚してたら勝っていたって言うのか? それに、俺はちゃんと返したぞ?」

 

「当たり前だッ!」

 

「「「「無い、無い」」」」

 

手を左右に振り完全否定する優希達。ジャックすらも否定している。

 

「分らないだろッ!!」

 

「「「「あえて言おう。分りきっている」」」」

 

「お前らまとめて殺してやろうか!!! おい待て。返した、と言ったな何時だ!!?」

 

「はいはい、言うだけ言ってろ。ちなみに終った後だ・・・・で、話を元に戻すが。黒ウサギ、飛鳥、もう分りきっていると思うが”ペルセウス”が最後の同盟相手だ」

 

「信じられないわ」

 

「それはこっちのセリフだ。――そうか、だから召喚できていたのか。じゃあコレなんだ!!」

 

「馬鹿だな、レプリカだ・・・・それに二人共、会話が進まないだろ?」

 

見るからに鉄製のハリセンが地面に突き刺さっていたので二人は黙った。

 

「・・・・黒ウサギ。貴女は構わないの?」

 

「へ?」

 

「それは、俺も聞いておきたい。この同盟について一体どう思っているのか」

 

「確かにこの同盟には思うところがない事にもないのですが・・・・先程、きになることを言っていましたので。そう易々と無下にすることもないかなと思うのです」

 

「ああ、こいつがディーンを直したってことか」

 

「まあ、他ならぬ黒ウサギがそういうのなら構わないけど。そこの所はどうなのかしら? 本当に貴方がディーンを直したの?」

 

「・・・・フン。それくらい楽勝だ」

 

「そうか、そうだな、楽勝だな。”ペルセウス”には”オリュンポス十二神”の一柱、”鍛冶神・ヘパイトス”がいるからな。だから、ギフトエンチャントとかはこいつ等の十八番だ。だろ?」

 

「その通りだ」

 

ニヤニヤと軽薄な笑みを浮かべるルイオス。

 

「だから、ヘルメスの具足にハデスの兜、アテナの楯に神霊殺し――いや、今は星霊殺しの鎌だな。前のゲームで”楯”だけ使わなかったのは、ヘパイトスに捧げたからだ」

 

「なるほど、そういうことだったのですね」

 

と納得する黒ウサギ。それに対して飛鳥は意味が分らず小首を傾げていた。

 

「つまりどういうことなの?」

 

「伝承では”ペルセウス”がゴーゴン退治に授かった武具は”兜” ”具足” ”楯” ”鎌”の四つの武具だった。けど、”楯”はアテナに返上して失われている・・・・伝承ではその時、ゴーゴンの首と”楯”を融合させて返上したんだ。これが”ペルセウス座”の楯の位置――”アルゴールの魔王”の正体。ゴーゴンの首を楯に付与した術式を組んだのが、ヘパイトスだったんだ」

 

流暢に”ペルセウス”の伝承を告げる優希。

その隣で自慢げに笑うルイオス。

しかし飛鳥は全く理解できず小首を傾げ、

 

「――・・・・??? え、えっと? つまり、ボンボン坊ちゃんの先祖は偉人という事?」

 

「その通り! 先祖”は”凄い人なんだ!」

 

「YES! ご先祖様”は”すごいのです!」

 

「ヤホホ! ご先祖様”は”本当に凄いのですよ!」

 

「よおおおし、表に出ろッ!!! そして心の声をハッキリ言ってみろ!!!」

 

 

「「「「ボンボンマジ下種坊ちゃん」」」」

 

 

「アルゴオオオオオオオオオォォォォォッル!!!」

 

「ルイオス様、おやめください!!! 街中で星霊召喚なんて洒落になりませんから!!」

 

作業服の騎士達が数人がかりでルイオスを押さえつける。

 

「まあ、端的に言うとゴーゴン退治のご褒美の一つに鍛冶神の神格・・・・といよりも恩恵付与に特化した神格具を貰ったってことだよ、飛鳥」

 

飛鳥も納得したように首を縦に振る。

 

「それがあれば、神珍鉄や金剛鉄の製鉄も可能でしょう」

 

「――フフン、当然だね! この僕にかかればあの程度のことなんて造作も、」

 

「ルイオス様、見栄を張らないでください。ジャック殿が居なければ、何処から手を付ければいいのか分らなかったではないですか」

 

諌めるように側近の男が告げる。

ルイオスは怒気を込めて睨んだが、手は出さずに舌打ちするだけにとどまった。前途多難な同盟相手に溜息を漏らす黒ウサギだったが、ふと気になったようにジャックへ問う。

 

「一つ気になったのですが・・・・”ウィル・オ・ウィスプ”と”ペルセウス”は、どのようなご関係なのですか? 失礼ですけど、友好的には見えないのですよ」

 

「ヤホホ・・・・まあ、ちょっとした貸し借りのある間柄というやつですよ。以前にお話ししたかもしれませんが、我々”ウィル・オ・ウィスプ”は”マクスウェルの魔王”に幾度か襲撃を受けていまして」

 

「YES、それは聞きました。五桁でも最上位の魔王と――」

 

「黒ウサギ、まさか知らないのかい? それは少し前までの話だよ」

 

「へ?」

 

「何、間の抜けた声を上げているんだ・・・・同盟相手を何度も襲っている魔王の情報ぐらい入れておかないと――”マクスウェルの魔王”は五桁じゃない。俺達が”アンダーウッド”に行っている間に四桁まで上り詰めたそうだ」

 

「よ、四桁ですか!?」

 

声を荒げて驚く黒ウサギ。

 

「驚くのも無理はない。五桁の中層と四桁の上層じゃあ天と地の差とか言われているからな。後、単身昇格っていうのも稀有な例らしいし」

 

「・・・・・・・・・・、」

 

「黒ウサギが一体何を考えているかは知らないが、アイツは今、黒ウサギが考えている事の想像を絶すると思うよ」

 

「と言いますと?」

 

「正直信じられないが・・・・”マクスウェルの魔王”は二一二〇年代以後に”パラダイムシフト”を起こしたらしい」

 

「に、二一二〇年代でございますか!?」

 

今度こそ黒ウサギはウサ耳を跳ねさせて驚いた。

 

「だから、言っただろ? 正直信じられないって。ジャックどうなんだ? 起こした後も襲ってきたと聞いたが」

 

「はい、私自身、彼奴の揮う力を見るまで半信半疑でした。ですが、見てしまえば納得するしかない。あれは最早、最強種と比べても遜色ない魔王です」

 

「・・・・そうか。際限なく湧いてくるな。正直、本格的に危機感を感じるよ。――だから、”ペルセウス”と一緒にいるのか。リーダー(笑)のコイツは未熟なボンボン坊ちゃんだが、星霊を従える力を持っているからな」

 

「おい、誰がリーダー(笑)で未熟者だ」

 

「その通りです」

「その通りね」

 

優希に肯定する黒ウサギと飛鳥。

 

「否定しろよ! 同盟関係だよね僕等!?」

 

飛鳥と黒ウサギ、優希とジャックは共に頷き合う。ルイオスが叫んでいた気がしたが、あえて無視した。

 

「召喚される前に封じられたが、それは使用者が駄目だっただけで実際はまあまあ強い筈だし」

 

「オイ! 誰が駄目だと! それに、まあまあってなんだ!」

 

ルイオスの叫びを又も無視。

 

「・・・・そうね。そういう事情があるなら同盟を考えてあげてもいいわ」

 

「本当ですか飛鳥嬢?」

 

「ええ。――但し、」

 

瞬間、飛鳥は燃えるような怒りを瞳に宿し。

 

「”ペルセウス”の首領が、”ノーネーム”に対する過去の非礼を詫びるのなら、ね」

 

「は、はぁ!? 何で僕がそんなことをする必要があるのさ!?」

 

「ならこの話は此処でおしまい。私達は他の同盟コミュ二ティを探すわ」

 

「飛鳥、それは困る。ここで終らせるのは余りにも勿体無さ過ぎる相手だ」

 

「でも、優希君! 貴方はこの男がしたことを許せると言うの!?」

 

「確かに許せない部分はある」

 

「なら、」

 

「それとこれとは話が別だと思わないか、飛鳥」

 

「思わないわっ! これから一緒にやっていくのよ!? 詫びを入れてもらわないと気が済まないわ!」

 

「ルイオスはこの条件呑むのか?」

 

「ああ、呑んでやる。だが同盟は利害が一致しないとする意味がない。だから、もしその条件を出すと言うのなら、僕も条件を出させてもらう」

 

「正論だな、聞こう」

 

「話が分ってくれて助かるよ――ディーンを含めた三つの兵装。それを使って”造物主の決闘”で優勝して来ること。出来なければ、その三つは全て僕が貰い受ける・・・・それが条件だ」

 

「飛鳥、どうする?」

 

「ええ、いいわ! 貴方の条件呑みましょう! もちろん、こちらの条件も呑んでもらうわ!!!」

 

 




今思いましたが、優希さんの出るところだけ書くと原作スッカスッカですね。
どれ位かというと48ページ丸々開きます。三章の終わりから六章の始まりまで空きます。
更に六章もほぼ全てカットなんじゃないかなあと思っています。
まあ、こんなこと言っても何にもならないので。

3月13日15時46分頃更新しました。

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