問題児達+天帝が異世界から来るそうですよ!?   作:THE・Leaf

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第壱拾九話 ~暗黒物質(ダークマター)~

---その夜。”ノーネーム”では小さな宴の席が設けられていた。

 

「あれ? 桜が居ないんだが、知らないか?」

 

優希が唐突に尋ねた。

 

「桜ちゃんなら『お兄ちゃんが居ないから、帰って寝るね』って言ったわ」

 

と、飛鳥が答える。

 

「そうか、ありがとな飛鳥。今から桜起こしてくる」

 

「わかったわ」

 

微妙に声がうらがえったような気がしたが、気のせいかと思い優希は気にしなかった。

 

「---桜~、お~い桜」

 

優希は桜の肩をさすってみるが起きない。

 

「・・・・桜、何時までも寝てるとお兄ちゃんが桜を食べちゃうよ?」

 

と冗談で言ってみる。

 

「まぁ良いかな。寝かせて置いてやろう」

 

と、優希が桜の部屋を立ち去ろうとすると時だった。

 

「ちょっと待った~! お兄ちゃん、桜のこと食べないの!?」

 

「えっ? 食べてほしかったの?」

 

「期待したのにぃ~、お兄ちゃんの意地悪ぅ~」

 

「それは悪かったな期待させるようなこといって」

 

「次からは気をつけてよ?」

 

「わかった、わかった」

 

「ところで、お兄ちゃんは何のために桜をおこしにきたの?」

 

「今、宴で浮かれてるんだ」

 

「それで?」

 

「桜も楽しんで欲しいっいう思いと、部外者の警戒をかねてだ」

 

「涼にぃだよね?」

 

「あぁ。・・・・やっぱり桜も気づいてたか」

 

「桜ね、もしかしたらだけど、涼にぃが収穫祭に居ると思うの」

 

「それは俺も薄々感づいていた。最悪の事態を招かせないようにしないといけない」

 

「そうだね」

 

「すまないな。少し重苦しい空気にしてしまった」

 

と、優希がいうと桜は唐突に笑い出した。

 

「桜、お兄ちゃんのそういうトコ好きだよ」

 

「? よくわからないが、ほめ言葉として受け取っておくよ」

 

「やっぱりお兄ちゃんは、お兄ちゃんだね」

 

「?」

 

桜のいうことがいまいち理解できない優希であった。

 

---翌朝。

 

「お兄ちゃん、おっはよ~う!!」

 

「くらうかっ!!」

 

桜が優希のベッドへダイブ。優希はそれを回避する。

 

「妹よ、まだまだだな・・・・ゴフッ!」

 

「残念だったね。お兄ちゃん♪」

 

優希は回避仕切ったつもりだったが、回避するのを読まれていたらしく、仰向けの状態で桜に馬乗りさえている。

 

「・・・・桜、とりあえず降りてくれないか?」

 

「い~や~だ♪」

 

「起きてるのになんで、会話が成立しないのかが理解できないよ」

 

「このままじゃ駄目?」

 

「いや、だって着替えたいし・・・・」

 

「仕方ないなぁ~。桜が---」

 

「うん、出て行こうな」

 

桜が言いかけたところで優希が空間移動で桜を扉の前に移動させると同時に部屋の鍵を閉めた。

 

「さて、扉をぶち壊されない内にさっさと着替えるか」

 

と、こんな日常がまるで当たり前のようにテキパキとする。

まぁ、実際当たり前なのだが。

優希は着替えが終わると同時に鍵を開けて空間移動で少し騒がしい本拠前に移動するのであった。

 

                *

 

時間はほんの少し遡り、優希がまだ眠っている時。

 

「二人共遅いわね」

 

飛鳥が呟いた。

 

「優希さんは寝てるので桜さんに起こしに行って貰いました。十六夜さんはヘッドホンがまだ見つからないようです」

 

と、黒ウサギが答える。

十六夜は昨夜ヘッドホンをなくしたらしく、夜通し探しているのだ。

 

「なんで、桜なの!? それよりまだ寝てるって教えてくれなかったの!?」

 

「「「えっ?」」」

 

「な、何でもない」

 

耀がプイッと顔を背ける。

が、何かに気づく。

 

「皆、下がって!!」

 

--ドゴーン--

 

何か降ってきたのにいち早く耀が気づいたので巻き込まれずに済んだ。

砂塵が舞っているので目の前に人がいる、ということしかわからない。

 

「あれ? ここにいる筈なんだけどなー」

 

と、透き通った女性の声が聞こえる。

 

「何者ですか!!?」

 

黒ウサギが声の主に訪ねる。

 

「私? 私は”村正柚葉”です。どうかお見知り置きを。唐突で大変申し訳ございませんが、白星優希君はここにいますか?」

 

と、村正柚葉と名乗る女性が砂塵の中から現れる。

 

「村正柚葉さん、そうおっしゃいましたね? 優希さんは確かにここにいます。ですがどういったご関係で?」

 

黒ウサギが、大和撫子のような女性、村正柚葉に答える。

 

「永遠の愛を誓った関係です。なので優希君を探しにきたのです」

 

「そう、それは残念だったね。私も優希と将来を誓い合った関係だから」

 

と、少し勝ち誇った顔をしながら答える。

 

「構いません。それは恐らく貴女の勘違いですから。それにどっちにしろ優希君を奪いにきたのですし」

 

「ち、違う! それに、優希のところには行かせない!」

 

耀がムキになってって答える。

 

「そうですか。それなら、強行突破させていただきます!!」

 

~十六夜サイド~

 

---同時刻。

 

「見つからねえか。仕方ねえ。流石に時間だしな」

 

結局、見つからなかったらしい。仕方なく足どりを進める。

 

「なんだ? やけに騒がしいな。あまりに暇で遊んでるのか、あいつら」

 

やれやれと思いながら外と繋がるドアを開ける。

すると、信じられない光景が眼前に飛び込んできた。

 

「いざ・・・・よい・・・・さ」

 

--ドサッ

 

首もとを掴まれていたボロボロの黒ウサギが地面に落とされる。

飛鳥も耀もジンもボロボロになって地面に横たわっている。

 

「テメェ!!!!!」

 

「大丈夫全員気を失っているだけだから」

 

「ふざけんな・・・・ふざけんなァァァァアアアァァ!!!!!!」

 

--ドッゴーーン

 

と辺りに爆風が舞起こる。

 

「驚きました。こんな一般人がいるなんて。あっ、けれどこんな人を一般人と呼んでいいのかしら?」

 

と呟きながら、左手一本で十六夜の拳を受け止めている。

 

「チッ、クソがアアア!!」

 

十六夜は柚葉に向かってもう一撃加えようとする。が、いきなり吹き飛んだのだ。

 

「グッ、ハッ」

 

と十六夜は口から血を吐き出す。

 

「クッソッタレがァァァァッァァァ!!」

 

「無駄ですよ? 何度殴ってきても貴方の拳が私の身体に届くことはありません」

 

と言いながら、またもや左手一本で拳を受け止めている。

 

「邪魔なだけなのでお休みしててください」

 

またも十六夜は吹き飛ぶ。が、十六夜はすぐに体制を切り返し、再び柚葉に殴りかかる。

 

「言っていることが分からないのですか?」

 

その瞬間十六夜は何か強力な衝撃を受ける。それに身体が耐えられず、意識を失ってしまった。

その時であった。丁度優希が現れたのだ。

 

「どういう、どういうことだよ柚葉!!!!」

 

~優希サイド~

 

本拠前は信じられない状況下にあった。

十六夜だけでなく他の仲間達も全員気を失っているのだ。

眼前には柚葉がいる。が、思わず叫んでしまった。叫ばずにはいられなかった。

 

「優希君がそんなに感情的になって叫ぶなんて珍しいね。質問は『どういうことだ』だったかな? 見て分からないの? こういうことだよ。優希君を迎えにきたら断られた。だからだよ?」

 

「そうか。分かった。よーく分かった。分かりすぎるぐらいに分かった」

 

「それならよかった」

 

「”全く分からねぇ”ってことがなぁ!!」

 

「相変わらずね優希君」

 

--パチン、バチバチバチバチッ

 

と指を鳴らす。と同時にそこから雷が発生した。

が、まるで柚葉を避けるように雷が逸れていった。

 

「すごーい! 優希君空間内の電子を操って雷出せるんだね」

 

「 〝ファントムモード・改〟・・・・さぁ、お前の罪を数えろ 」

 

「ゾクゾクしちゃうな。優希君が本気だなんて」

 

「・・・・灰燼とかせ蒼星剣!」

 

と、優希が叫ぶと、とてつもない炎が柚葉に襲いかかる。

が、炎は柚葉の目の前で雲散霧消したのだ。

よく見ると、深い深い闇のような、終焉を告げるような闇黒が、柚葉の周りで渦巻いている。

 

「これが私の最凶にして最恐であり最強のギフト。ギフトネーム”暗黒物質(ダークマター)”。一つ言っておくけれど、空間内の概念を歪ませようが、壊そうが、崩壊させようが、ロストさせようが無駄よ?」

 

「だろうな。ダークマターはそもそも、”在るもの”であるかさえ分からない。概念が存在していないと言われても驚きはしない。無から有を生み出すとか絶対に不可能なことですらしかねない」

 

「優希君、いつからそんなに思考が鋭くなったの? 今、物凄く驚いているのだけれど」

 

「 〝ロストプロバビリティ・ロストフリクション・ロストレジスタンス〟 」

 

「確率に摩擦それに抵抗まで概念を消失させたのね」

 

「許さない。許せない。許すつもりもない。俺はお前に神罰を下す!」

 

「出来るものならやってみなさい」

 

「〝フォルテモード〟!!!」

 

と、叫んだ優希の背中には二対の羽根がある。

 

「 煌々剣・純白-改。進化したこの剣でダークマターを斬る!! 」

 

「剣? 剣なんて一度も握ってないよね?」

 

「柚葉、お前には俺の剣は見えない」

 

「不可視なんだね」

 

「その通りだが、喋りながら応戦なんて余裕だな。柚葉!」

 

優希は剣を振り続けるが当たる当たらない以前に全く届かないのだ。

 

「・・・・仕方ない」

 

急に優希がそう言って立ち止まったのだ。

 

「諦め---」

 

柚葉は何か言っている途中に突然、回避行動を行ったのだ。

 

「”部分空間歪曲”、少し驚いたわ。優希君」

 

空間歪曲とは空間移動の本質である。空間移動は空間そのものを歪ませ歪曲させるが、部分的に歪曲させることでノーモーション攻撃することが出来るのだ。

 

「〝ロストライトスピード〟! 【終焉零式f・天地明察】!!!!! 」

 

ダークマターを切り裂いた。そう思われた瞬間だった。

柚葉は不可視の剣を中指と親指で 真剣白刃取りしているのだ。

 

「ダークマターを突き破ったのは褒めてあげる。だけど残念だったね」

 

「残念なのはそっちだ。 【神罰】!! 」

 

強力な閃光が柚葉を貫いた。優希もそう確信した。

だが、何故だろう。優希を含め、ノーネーム全員が”無傷”で柚葉の前にいる。

状況が全く呑み込めない。どうなっているのか皆目理解できない。

 

「ギフトネーム”時間遡行(タイムトラベル)”。ここまで言えば分かるかな?」

 

「時間を戻したのか!? いや、時間軸から無かった事にしたのか!!!?」

 

「御名答! すごいね、優希君。それに免じてってわけじゃないけど、今日はもう帰るね。また会うことにもなるだろうし、またね優希君」

 

といって、柚葉は優希達の眼前から姿を消すのであった。

 

「---・・・・俺も南に行く。なにが起こるか分からない」

 

「優希さんそれでは---」

 

「大丈夫だ。問題無い」

 

と、優希が言うとパチンと指を鳴らす。するともう一人優希が現れた。

 

「10秒前の俺を置いていく。あんまり多いと制御するのが面倒だからな」

 

「・・・・やっぱりお兄ちゃんも行くんだね」

 

「桜、此処は任せる。桜にしか出来ないことなんだ」

 

「別に良いけど・・・・なんで居たって分かっていたのに話しかけなかったの?」

 

「桜のためだ」

 

「・・・・お兄ちゃん、無事でいてね」

 

優希は少し笑ったあと、桜の頭を優しく撫でる。

そして、優希は桜を抱き寄せると、桜に耳打ちした。

 

「もちろんだ、桜。必ず戻る。必ずだ」

 

と。すると桜は優希に向かってこう言った。

 

「約束位守ってよ、お兄ちゃん」

 

優希は桜に、分かってるよと告げると優希は桜を離す。

 

「さぁ、行こう。アンダーウッドへ」

 

「俺はヘッドホン捜す。だから行って楽しんでこい」

 

「十六夜、いいのか?」

 

「仕方ねえさ」

 

「そうか、楽しめたら楽しんでくるさ」

 

「精々気をつけろよ?」

 

「言われるまでもない。・・・・じゃあ行ってくる。皆、一応どこかに掴まっていてくれ。落ちたら洒落にならない」

 

と優希が言うと、黒ウサギ、耀、飛鳥、ジンが優希に掴まる。次の瞬間、優希たちが消えるのであった。

 

 




第壱拾九話がやっと終わりました。
そして、やっとアンダーウッドですね。中々物語が進行しませんがもうなれました(笑)

次は第弐拾話ですが、十六夜とレティシアの会話章は全カットします。
なので、第五章からです。

6月23日更新します!

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