問題児達+天帝が異世界から来るそうですよ!? 作:THE・Leaf
・・・・やっぱり織り交ぜます。
理由としては馬鹿二人の流れが無駄に長いからです。
ということで、執筆していきます。
今知りましたお気に入り数が150ということに。
評価が6.00なことに。
本当にありがとうございます!!!
日が昇りきり、開催宣言の為に黒ウサギが舞台中央に立つ。黒ウサギは胸一杯に息を吸うと、円状に分かれた観客席に向かって満面の笑みを向ける。
『長らくお待たせいたしました! 火龍誕生祭のメインギフトゲーム・”造物主達の決闘”の決勝を始めたいと思います! 進行及び審判は”サウザンドアイズ”の専属ジャッジでお馴染み、黒ウサギがお務めさせていただきます♪』
黒ウサギが満面の笑みを振りまくと、歓声以上の奇声が舞台を揺らした。
「うおおおおおおおお月の兎が本当にきたああああああああぁぁぁぁああああ!!」
「黒ウサギいいいいい! お前に会うため此処まできたぞおおおおおおおおお!!」
「今日こそスカートの中を見てみせるぞおおおおおおおおおぉぉぉぉおおおお!!」
割れんばかりの熱い情熱を迸らせる観客。
黒ウサギは笑顔を見せながらもへにょり、とウサ耳を垂れさせて怯んだ。
何か言い表せない身の危険でも感じたのだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・。随分と人気者なのね」
熱狂的な歓声奇声を向ける中で一際輝く『L・O・V・E 黒ウサギ♥』の文字。
飛鳥は生ゴミの山を見るような冷め切った目で一部の観客席を見下ろす。
「(これも日本の外の異文化というものなのかしら・・・・・頭を柔軟にして受け入れないと・・・・・)」
一方十六夜は有象無象の観客席の声を聞き、ハッと(本人にとって)重要なことを思い出す。
「そういえば白夜叉。黒ウサギのミニスカートが絶対に見えそうで見えなねえとはどういう了見だ? チラリズムなんて趣味が古すぎだぜ。昨夜に語り合ったお前の芸術に対する探究心は、その程度のものなのか?」
「そんなことを語り合っていたの?」
お馬鹿じゃないの?という飛鳥の声は馬鹿二人には届かない。
「フン。おんしほどの漢が真の芸術を解せんとは・・・・・」
「何?」
「真の芸術とはすなわち未知なる内の己が想像力。未知なる物への飽くなき探究心。すなわち、何者にも勝る芸術とは即ち――己が宇宙の中にあるッ!!」
ズドオオオオオオオオオン!!という効果音が似合いそうな雰囲気で、十六夜は硬直した。
「・・・・己が宇宙の中に、だと・・・・・!?」
「そう。それは乙女のスカートの中身も同じ事。見えてしまえば只々下品な下着達も―――見えなければ芸術だッ!!!」
「見えなければ・・・・芸術かッ!?」
「そうとも。さあ、今こそ確かめようぞ。奇跡が起こる瞬間をな」
と言い、馬鹿二人は顔を見合わせ頷きあった。そして何処に隠していて、何時持っていたか分からない双眼鏡を取り出し黒ウサギのスカートの裾を目で追う。
「あ、あの~?」
「見るな、サンドラ。馬鹿がうつる」
「はぁ~。もうすぐ春日部さんと優希君の試合が始まるっていうのに・・・・・」
飛鳥は呆れながら馬鹿二人を空気と思うことにしたのだった。
*
耀と優希は観客席から見えない舞台袖にいた。
先程から耀はゆっくりと深呼吸を繰り返している。
そして、セコンドについていたジンとレティシアは、次の対戦相手の情報確認をしていた。
「―――”ウィル・オ・ウィスプ”に関して、僕が知っている事は以上です。参考になればいいのですが・・・・・」
「大丈夫さ。ケースバイケースで臨機応変に対応する」
と優希が言うと二本の長巻が優希の腰に現れた。
それは、鍔の形が六芒星と、鍔の形が五芒星がどちらとも納刀状態で腰にある。
「優希やっぱり双刀だったんだ」
「ああ。”創作系ギフト以外の使用を一部禁ず”ってルールにあったからな。それに魔王が何時来るか分からない。そなえあればってやつだよ」
耀が小さく笑った後、
「そうだね」
と言った時どこか嬉しそうだった。
『それでは入場していただきましょう! 第一ゲームのプレイヤー・”ノーネーム”の春日部耀と、”ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャ=イグニファトゥスだす!』
優希と一緒に通路から舞台に続く道に出る。
その瞬間―――耀は優希にお姫様抱っこされた状態で舞台の端にいた。
「ヤッフウウウウウウウゥゥゥゥゥ」
「危ないな。ゴスロリ服でツインテの可愛いお嬢さん?」
アーシャが照れたかと思うと急に耀が不機嫌になったので、
「けど、やっぱり耀の方がずっと可愛いね」
と優希が言うと耀は盛大に赤面。
そのころ、らしくないほど熱狂的な声を上げて十六夜の肩を揺らしている飛鳥が居た。
「ジャック! ほらジャックよ十六夜君! 本物のジャック・オー・ランタンだわ!」
「はいはい分かってるから、落ち着けお嬢様」
誰かさん(もちろん優希)のせいで場が静まり返っている。
黒ウサギも審判であろうがなかろうが、誰かさんのこの状態は非常にやりずらい。
が、此処は審判なので開幕宣言をすれば問題なく進行する(はず)。
『―――それでは、第一ゲームの開幕を宣言します』
「今しがた、決勝の舞台を用意しよう」
パン! と白夜叉が拍手一つ。
その所作一つで―――全ての世界が一変した。
*
変化は劇的であり、バフンと少し意外な着地音。見れば下地は樹木の上だ。
「この樹―――」
と耀が何かを言おうとしているところに優希が耀の唇に人差し指を当てて、
「駄目だよ? 耀。相手にヒントを与えてしまう発言は控えないと」
と言うと耀は首を縦に振った。
そんなやり取りをしていると”契約書類(ギアスロール)”を持った黒ウサギが現れ、それを淡々と読み上げる。
「―――ようするに、此処から外に出るか相手のギフトを破壊すれば勝ちってことだね」
と、優希が解釈する。
その後アーシャが
「睨み合っても進まねえし。・・・・・先手は譲るぜ」と言う。
「それは?」
「ノーネームに本気出すなんてかっこ悪いからな。それに後でいちゃもん付けられるのも面倒だし?」
「って言う事で、譲ってくれるらしいよ」
「ところで、貴女は・・・・・”ウィル・オ・ウィスプ”のリーダー?」
「え、あ、そう見える? なら嬉しいんだけどなあ♪ けど残念な事にアーシャ様は、」
「そう。分かった」
リーダーと間違われた事が嬉しかったのか、愛らしい満面の笑みで質問に答えるアーシャ。
だが耀は聞いていない。耀は会話をほっぽり出し、背後の通路に疾走していった。それを追うように優希も行く。
アーシャが唖然としているころ。
「耀、俺が後ろにいるから、何も心配せずに前へ進んでくれ」
「うん、分かった」
「あっ、来たね。会話をほっぽり出したから怒っているのか?」
「焼き払えジャック!」
「ヤッフウウウウウウゥゥゥゥゥゥ!!」
左手を翳すアーシャ。ジャックの右手に提げられたランタンとカボチャ頭から溢れた悪魔の業火は、瞬く間に樹の根を焼き払って耀と優希を襲う。が、
――カチン――
と刀の納刀音が聞こえるとほぼ同時に、炎が真っ二つになっていた。
「何ッ!? 斬った・・・・のか?」
アーシャが驚くの無理も無いだろう。優希の太刀筋は観客であり、ノーネームの仲間であり、白夜叉であっても見えなかったのだから。
「耀、言わなくても分かっているだろう?」
「うん」
(確かこの炎は生前のジャックが二度の生を大罪人として過ごして、永遠に生と死の境界を彷徨っているところに、哀れと思った悪魔が与えたものらしい。それに元々、この世界では”伝承がある”=”功績がある”らしいからな。で、あれば)
(”ウィル・オ・ウィスプ”のリーダーは『生と死の境界に現れた悪魔』だけど、彼女はリーダーじゃない。なら、違う悪魔か種族のはず)
(魔王と戦う可能性があるのに、”不死身”とか明らかに笑えないからな。まぁ、兎にも角にもリーダーじゃないらしいから、ツインテの子は大丈夫だろう。問題はカボチャことジャックだな。あいつ、何かを隠してる。が、そんなこと考えてもきりが無いからな・・・・いつか本性表すだろうし。今は別に良いだろう)
「おっと、危ない。炎を三方向にしたのか。だが、これで確信したよ。そいつはカボチャが出しているわけじゃない。何故なら僅かにタイムラグがあるからだ。そしてこいつは、天然ガスだろ? 俺は知識量でどうにか分かったが、耀は案外早く気づいていたかもしれないな」
「・・・・くそ、悔しいけど後は任せるよ。本気で殺っちゃって、ジャックさん」
「わかりました」
「耀! 振り返るな!!」
と優希が言うと、耀の目の前にジャックが現れた。
「嘘」
「嘘じゃありません。失礼、お嬢さん」
ジャックの真っ白な手が耀に叩きつけられようとした時、
「とうとう、本性を見せやがったな。ジャック・オー・ランタン」
と優希が言い、腰から抜いた二本の長巻でジャックを止めている。
「・・・・気づかれていましたか」
「あぁ、薄々感じてたんだよ。”何か隠してる”ってな」
「さ、早く行きなさいアーシャ。この方達は私が足止めします」
「何言ってんだ? ジャック・オー・ランタン? 俺があんたを足止めするんだぜ? ・・・・耀! 行くんだ!!」
「行かせるとでも?」
「あんた程度、止めるなんて余裕だッ!!」
と優希が言うと、ジャックとの間合いを取る。
「ゴメン、優希! 後でちゃんとお礼する!!」
「コノヤロッ、待て!」
と耀が先に駆け出す。それをアーシャが追う。
「行かせません!!」
と言うジャックを優希が止めて、ジャックに語りかける。
「そいつはこっちの台詞だ。なぁ? ウィラ=ザ=イグニファトゥス製作の不死身悪魔ジャック・オー・ランタン?」
「これは、これは、御名答!」
「あのゴスロリツインテさんは元自縛霊だろ?」
「おっと、これも御名答ですね」
「この蒼い炎は、無為に命を散らした魂を導く篝火なんだろ? 眠い眠いと思いながら調べ続けたからな。知らない事は大体無いと思うぜ?」
「そうですか。ではこのランタンの事も?」
「”地獄の業火”じゃなかったか? 違ったら違うと言って欲しいんだが・・・」
「いえ、合ってます。よくそこまで調べ上げましたね」
「褒められる程じゃない。ところで、こんなに駄弁って大丈夫なのか? 正直言うとツインテの子は耀には勝てないぜ」
「問題ありません。貴方を倒してすぐに向かいますので」
「残念だったな。あんたに俺は倒せない」
「それは?」
「俺が”天帝”だからと言ったら分かるか? それとも”帝釈天”の方が分かりやすいか?」
「なッ!!???」
「さぁ、来いよ。不死身の悪魔。この断罪の守護神が相手してやる」
「本当に本気でいきますよ?」
「そうかい―――【鬼人双刀・百煌斬刹(きじんそうとう・ひゃっきざんせつ)】!!!」
「本当に見えませんね」
「本当に不死身なんだな」
お互いに分かりきっていることを言う。
「百回刃を入れたのにな・・・・・どうなってるのか知りたいよ」
「そうですか。ですがお喋りは此処までです」
と、ジャックが言うと辺りが火の海になった。
「逃げられないようにしても逃げねえぜ?」
「そうですか」
ジャックが優希に地獄の業火をランタンから放つ。優希はそれを次々と斬っていく。
「くっ・・・・やっぱり、手数が足りないな。あんたのところまで刃が届かねえ。仕方ないな。このままだと耀のところに追いつくし」
というのも、ジャックが辺りを火の海にしたのは優希が耀との距離感を無くすためだったのだ。つまり優希が業火を断ち切れるのをあえて利用したのだ。
「よく気がつきましたね。何故でしょう?」
「なんとなくだよ。なんとなく近いような気がするんだ」
実際優希が言うように、耀とはかなり近い位置にいる。
「ちょっとだけ見せるよ。本気の一部を―――」
【鬼神双蓮・無限乱舞】(きしんそうれん・むげんらんぶ)
「―――!? 消えた? 否、近くにいる!!?」
――ズバッ――という音が聞こえたと思えば斬られている。
「ぐっ・・・・(動けませんね。下手に動けばとんでもない事になるでしょう)」
「ハァァァァァ!!!!」
(下手に動けば恐らくなんらかの方法でランタンが壊されるでしょう。その証拠にランタンの持っている手だけは斬っていない・・・・今回は負けですね)
「やった!! ゴール!!!」
その瞬間、会場の舞台がガラス細工のように砕け散り、円状の舞台に戻ってきていた。
「―――はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・負けた」
それを見た黒ウサギが言う。
『勝者、春日部耀!!』
ハッと観客席から声が上がる。次に割れんばかりの歓声が会場を包んだ。
「―――ふぅ~~終わった~~~~」
と優希がその場に倒れこむ。
「優希!!」
「あっ耀、おめで―――ゴフッ」
耀が優希の体の方に飛び込んだのだ。
ヒューヒューと観客が言ったり口笛を吹いている。
「春日部も意外と大胆な事するんだな」と言い、十六夜は驚いている。
「よ、よよ、耀?」
「優希ありがとう。優希がいなかったら、きっと勝てなかった」
優希は優しく笑った後、(耀が優希を抱きしめていたので)耀と同じように優希も耀を抱いた。
ゴホン、ゴホンとわざとらしくジャックが咳払いしたあと、優希に尋ねた。
「すみませんが、是非貴方の名前をお伺いしたい」
「”ノーネーム”の白星優希だ。きっとまた会う事になる。その時はまたよろしくだな、ジャック」
「ヤホホホホ。次会うときは是非共闘が良いですね」
「そうだな。俺も、ジャックと戦うのは御免だ」
「私は違うぞ! 次会ような事になったら、今度こそはアーシャ様が勝つからな! 覚えとけよ!」
「もし良ければいつか、六七八九〇〇外門に遊びに来てください」
「ありがとう、気が向いたら行くよ」
「はい。是非皆さんでお越し下さい」
「早く行くぞ!!」
「呼んでおりますので、それではまた」
*
「―――勝てたわね! おめでとう!! 春日部さん、優希君!!!」
「ありがとう。けど、あれは優希が居たからこそだと思う」
「それでも勝てたんだろ? 良かったじゃねか。それと優希、後であれどういう技か教えろよ?」
「分かったよ、十六夜」
と言い、問題児達が楽しそうに笑う。
「中々見ごたえのあるゲームだったのぅ」
「ええ! 貴方達は良い仲間をお持ちだ」
「・・・・おい、アレ」
と言いながら空に向けて優希が指を刺す。白夜叉も上空に目を向け、観客の中にも異変を感じたもの達が声を上げていた。
「これは・・・・黒い”契約書類(ギアスロール)”だな」
「なんと書かれていますか!?」
「まず、プレイヤーは此処の舞台区画に存在する参加者と主催者の全コミュニティ。ゲームマスターが白夜叉だ。あっちの勝利条件が全プレイヤーを屈服させるか殺害。最後にこっちの勝利条件は一にゲームマスターを打倒。二に偽りの伝承を砕き真実の伝承を掲げよ、だとよ。ちなみに言っとくが、相手はグリムグリモワール・ハーメルンだとさ」
そんな黒いギアスロールが舞い落ちる中、静まり返る舞台会場。
観客席の中で一人、膨張した空気が弾けるように叫び声を上げた。
「魔王が・・・・・魔王が現れたぞオオオオォォォォ―――!!!」
やっとですね。やっとvs魔王・・・・・と言いたい。
まだ伏線張りしなければいけないという現実。
魔王現れても殺すに殺せないという面倒くささ。
まぁいいや。とにかく第壱拾弐話更新して、第壱拾参話を執筆します。