問題児達+天帝が異世界から来るそうですよ!?   作:THE・Leaf

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原作二巻、突入!!

プロローグは面倒なので大幅カットします。


第十話 ~ウサギのちバーサーカーでしょう~

「く、黒ウサギのお姉ちゃぁぁぁぁぁん!た、大変ーーーーーーー!」

 

唐突に声がした。その声の主は、割烹着姿の年長組の一人―――狐耳と二尾を持つ、狐娘のリリの声だった。

 

「リリ!?どうしたのですか!?」

 

「じ、実は飛鳥様が優希様と十六夜様と耀様を連れて・・・・あ、こ、これ、手紙!」

 

パタパタと忙しなく二本の尾を動かしながら、リリは黒ウサギに手紙を渡す。

 

『黒ウサギへ。

 北側の四〇〇〇〇〇〇外門と東側の三九九九九九九外門で開催する祭典に参加してきます。貴女も後から必ず来ること。あ、あとレティシアもね。

私達に祭りの事を意図的に黙っていた罰として、今日中に私達を捕まえられなかった場合”四人ともコミュニティを脱退します”。死ぬ気で探してね。応援しているわ。

 P/S ジン君は案内役に連れて行きます』

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

 

「―――――――!?」

 

たっぷり黙ること三〇秒。黒ウサギは手紙を持つ手をワナワナと震わせながら、悲鳴のような声を上げた。

 

「な、――――・・・・何を言っちゃってんですかあの問題児様方あああああ―――――!!!」

 

黒ウサギの絶叫が一帯に響き渡ったのだった。

 

 

――――”ノーネーム”本拠。地下三階の書庫。

時間は少し遡る。書籍を漁っていた十六夜とジンは、山積みの本の中で眠りこけていた。優希だけは本を読んでいる。十六夜は、首をもたげて呟く。

 

「・・・・・ん・・・・御チビ、起きてるか?」

 

「はぁ~~~あ、流石に寝てるよ」

優希が大きな欠伸をしながら寝ているジンの変わりに答える。

 

「そうか・・・・まぁ、俺と優希のペースに合わせて本を読んだから当然だな・・・・」

 

「はぁぅ~~~~ぁ、誰か来るけど良いや。寝よう」

 

「優希君!十六夜君!何処にいるの!?」

 

「なぁあにぃ?」

と優希が眠たそうにゆっくりと答える。

 

飛鳥は散乱した本を踏み台に、十六夜の側頭部へ飛び膝蹴りで強襲。

「十六夜君、起きなさい!」

 

「させるか!―――ゴッフッ」

 

飛鳥の飛び膝蹴りは盾にされようとしたジンが優希の空間移動により、十六夜にクリーンヒット。

 

「優希、やりやがったな!!」

 

「は、ぁ~~~~だって、とばっちり受けたくないし。ていうか、十六夜は頑丈なんだから大丈夫でしょ?」

 

「優希君!十六夜君!ジン君!緊急事態よ!寝ている場合じゃないわ!」

 

「何がどう緊急事態なのか単刀直入で」

 

と言った優希に飛鳥が双女神の紋がある封蝋を渡した。

 

「いいからコレを読んでみて」

 

「・・・・白夜叉からだね。え~と何々、はぁ~~~~~あぅ・・・・・北と東の”階層支配者(フロアマスター)”による共同祭典―――”火龍誕生祭”の招待状?」

 

「そう。よく分からないけど―――」

 

「何コレ!!!行きたい!!!超行きたい!!!!!」

 

「しかもこの祭典のラインナップ見てみろよ優希。面白そうじゃねえか?行ってみようかなオイ♪」

 

「二人ともノリノリね」

 

「「よし、着替え終わった。さぁ行こう!すぐ行こう!!」」

 

肝を冷やしながら見ていたリリは、血相まで変えて呼び止める。

 

「ま、ままま、待ってください!北側に行くとしても黒ウサギのお姉ちゃんに相談してから・・・・ほ、ほら!ジン君も起きて!皆さんが北側に行っちゃうよ!?」

 

「・・・・北・・・・北側!?」

 

眠すぎて意識が飛びそうな中、「北側に行く」の言葉で起き、話半分の情報で問い詰める。

 

「ちょ、ちょと待ってください皆さん!北側に行くって、本気ですか!?」

 

「ああ、そうだが?」

 

「何処にそんな蓄えが―――」

 

「「「「蓄え?何それ、オイシイノ?空間移動で行くから問題ないよ」」」」

 

「そもそも、大祭の事は皆さんには秘密にと」

 

「「「「秘密?」」」」

 

重なる四人の疑問符。ギクリと硬直するジン少年。失言に気が付いた時にはもう既に手遅れだった。振り返ると、邪悪な笑みと怒りのオーラを放つ優希・耀・飛鳥・十六夜の四大問題児。

 

「う、嘘・・・・・・・・こんな、こんな・・・・・・秘密なんて酷すぎる。ぐすん」

 

「・・・・そっか。こんな面白そうなお祭りを秘密にされてたんだ、私達。ぐすん」

 

「コミュニティを盛り上げようと毎日毎日頑張ってるのにとっても残念だわ。ぐすん」

 

「ここらで一つ、黒ウサギ達に痛い目見てもらうのも大事かもしれないな。ぐすん」

 

泣き真似をするその裏側で、ニコォリと物騒に笑う問題児達。

隠す気の無い悪意を前にして、ダラダラと冷や汗を流す少年少女。

哀れな少年ジン=ラッセルは問答無用で拉致され、問題児一同は東と北の境界壁を目指すのだった。

 

                  *

 

リリに手紙を預けた後、優希、十六夜、飛鳥、耀、ジンの五人は”ノーネーム”の移住区を出発し、二一五三八〇外門の前にある噴水広場に来ていた。

今朝方から賑わいを見せるペリベッド通りの”六本傷”の旗印を掲げるカフェに優希達が陣取っていた。

 

「それで、北側ってどのへんなの?それ以前に此処はどのへんなの?」

 

「此処は少し北よりの場所ですよ」

 

「大体で距離は?」

 

「980000kmぐらいです」

 

「そう、恒星並みの大きさだね―――って、ゑ!?」

 

「まさか、知らなかったんですか!?」

 

「「「「何を今更」」」」

 

「本当無計画だったんですね」

 

「それにしても約10万キロなんて話にならんわ。確かに行けるけど流石に遠いわ!!こちとら眠いんだよ!!!」

 

「優希、お前だけが頼りなんだ頑張ってくれよ、な?」

 

「な?じゃねえよ!!本を半永久的に読んどったのは誰のせいだよ!!!」

 

「優希君御願い」と言って飛鳥が優希の左手を握る。

 

「優希御願い」と言って耀は優希の右手を握る。

 

「「駄目?」」

 

「駄目なわけ無いだろ?可憐な女性達の頼みを断るなんてできないからね。連れて行ってあげるよ。だけど、これを送ってきた白夜叉にも何かきっと意図があったはずなんだ」

 

「だったら早く白夜叉のとこ行こうぜ。どっちにしろ場所が分からねえと移動できねえだろ?」

 

「そうだな」

 

                   *

 

”サウザンドアイズ”の支店の前に空間移動した瞬間、

「お帰り下さい」

と言われた。

 

「まさか移動してすぐに門前払いを受けるとは流石に思わなかったよ。女性店員さん」

 

「白夜叉はいるか?」

 

「今、オーナーはいません」

 

「そうか。優希、”中に入って待ってろ”だとよ」←言ってない事を言う十六夜

 

「そんなこと一言も言ってません!!!!」←店員断固否定

 

「遠まわしに言っただろ?」←からかう十六夜

 

「言ってません!!!!」←なおも否定

 

「よし。許可が出た入ろう!!!」←強行突破しようとする十六夜

 

「許可してません!!!!」

 

明らかに無駄な応酬である。

そこで優希が白夜叉が来た事に気づく。

 

「やっと来たね」

 

「やっふぉおおおおおお!ようやく来おったか小僧どもおおおおおお!」

 

何処から叫んだのか、白夜叉が降ってきた。

嬉しそうな声を上げ、空中でスーパーアクセルを見せ付けつつ荒々しく着地。

ズドォン!と地響きと土煙を舞い上がらせて登場した。

 

「思ったのだけれど白夜叉は飛んで現れないと気が済まないのかしら?」

 

「・・・・・、」

 

痛烈に頭が痛そうな女性店員は言い返せずに頭を抱えた。

 

「招待、ありがと。北側が何処のなのか分からなくて・・・・・・・」

 

「よいよい、全部分かっておる。まずは店の中に入れ。・・・・秘密裏に話しておきたい事もあるしな」

 

「やっぱり、何かあるみたいだね?白夜叉」

 

「気づいておったか優希。内容はじっくり説明してやるさ」

と、白夜叉が言った瞬間店内にいた。

 

「―――それじゃあ聞こうかな」

 

「・・・・・・本題の前に一つ問いたい―――」

 

「”打倒魔王”これは本当だよ」

優希に言われ、頷いた後ジンに質問する。

 

「ジンよ。それはコミュニティのトップとしての方針か?」

 

「はい。名と旗印を奪われたコミュニティの存在を手早く広めるためには、これが一番良い方法だと思いました」

 

「リスクは承知の上なのだな?そのような噂は、同時に魔王を引き付けることにもなるぞ」

 

「覚悟は承知の上です。それに仇の魔王からシンボルを取り戻そうにも、今の組織力では上層に行けません。決闘に出向く事が出来ないなら、誘き出して迎え撃つしかありません」

 

「無関係な魔王と敵対するやもしれん。それでもか?」

上座から前傾に身を乗り出し、更に切り込む白夜叉に十六夜が答える。

 

「それこそ望むところだ。倒した魔王を隷属させ、より協力な魔王に挑む”打倒魔王”を掲げたコミュニティ―――どうだ?修羅神仏の集う箱庭の世界でも、こんなにかっこいいコミュニティは他にないだろ?」

 

「・・・・・・・・ふむ」

 

白夜叉は二人の言い分を噛み砕くように瞳を閉じる。

しばし瞑想した後、呆れた笑みを唇に浮かべた。

 

「そこまで考えてのことならば良い。これ以上の世話は老婆心というものだろう」

 

「ま、そういうことだな―――で、本題はなんだ?」

 

「うむ。実はその”打倒魔王”を掲げたコミュニティに、東のフロアマスターから正式に頼みたい事がある。此度の共同祭典についてだ。よろしいかな、ジン殿?」

 

「は、はい!謹んで承ります!」

 

「おい、優希寝るな」

 

「駄目、眠い」

 

白夜叉はため息を吐いた後、話を始めた。

「北のフロアマスターの一角が世代交代したのを知っておるかの?」

 

「確か・・・・・”サラマンドラ”っていうコミュニティじゃなかったけ?」

 

「優希何で知ってるんだよ」

 

「俺はこの数週間、要るのかどうか怪しい情報から知っておかなければいけない重要な情報まで・・・・一睡もせず集めたんだよ。就任したのはジンと同い年の・・・・・・・サンドラ、だったような気がする」

 

「そ、それは、本当ですか!?」

 

「あぁ、もちろん。我らがリーダーと同じ十一歳だよ。俺の記憶に誤りは無いはずだ。もし違ったならその情報はブラフだったって事」

 

「優希の言っていることは全て本当じゃよ」

 

「で、白夜叉は俺たちに何をしてほしぃ~~~~~はぁ~~~あ、の?」

先程から優希は喋り始めと喋り終わりに欠伸をしていたが今度は喋っている途中に欠伸が出たらしい。

 

「そう急かすな。実は今回の誕生祭だが、北の次代マスターであるサンドラのお披露目も兼ねておる。しかしその若さ故、東のマスターである私に共同の主催者(ホスト)を依頼してきたのだ」

 

「それって、確か・・・・かなり面倒くさかったような気がしたが」

 

それを聞いた耀が優希に尋ねる。

「ちょっと待って優希。その話後どれぐらいなの?」

 

「俺の知ってる限りの情報は少なくとも一時間位かな?」

 

「そいつは駄目だ!黒ウサギに追いつかれる!!」

 

「白夜叉今すぐ北に向かって!!優希君でもいいから」

 

「十六夜、内容聞かなくていいのか?」

 

「優希、そっちの方が面白い!」

 

「だってさ。白夜叉頼むよ」

 

「よし、良いだろう!!ジンには悪いが面白いなら仕方ないなのぅ?」

 

ちなみにジンは十六夜に取り押さえられているので何もできない。

彼らを余所目に、白夜叉は両手を前に出し、パンパンと拍手を打つ。

 

「あっ着いたね。早く外に出て空気でも吸おうかな」

 

「優希が着いたって言ったんだから、着いたんだろう。さっさと行こうぜ?」

 

「何回やられても慣れないものね」

 

「そうかな?」

 

などと言いながら問題児四人は店外に出て行った。

 

「・・・・・・そうか、優希が使えるのじゃたな」

 

驚かれなかった事に肩を落としながら白夜叉も外に出るのであった。

 

                *

 

―――東と北の境界壁。

   四〇〇〇〇〇〇外門・三九九九九九九外門、サウザンドアイズ旧支店。

四人が店から出ると、熱い風が頬を撫でた。

優希と飛鳥は大きく息を呑み胸を躍らせるように感嘆の声を上げた。

 

「こ、これはすごいな・・・眠気を振り払って見る価値が十分にある」

 

「赤壁と炎と・・・・・ガラスの街・・・・・!?」

 

―――そう。東と北を区切る、天を衝くかというほど巨大な赤壁。あれが境界壁だ。

キャンドルスタンドが二足歩行で街中を闊歩している様をみて、十六夜も喜びの声を上げた。

 

「へえ・・・・!98000kmも離れているだけあって東とは随分と文化様式が違うんだな。歩くキャンドルスタンドなんて奇抜なもの実際に見る日が来るとは思わなかったぜ」

 

「十六夜、違うのは文化だけじゃないんだ。其処の外門から外に出れば銀世界なんだ。それを箱庭の都市と大結界と灯火で、常秋の様相を保ってるらしいんだ。是非見てみたいと思っているよ」

 

「なるほど。厳しい環境があってこその発展か。ハハッ、聞くからに東側より面白そうだ」

 

「いや、それは違うぞ。俺達の住む外門が寂れてるだけで上層に行けばもっと良いものはあるらしいからな」

 

「今すぐ降りましょう!あのガラスの歩廊に行ってみたいわ!良いでしょう白夜叉?」

 

「・・・・ああ、構わんよ。続きは夜にでもしよう」

 

「”見ィつけた”―――」

 

の声がした瞬間、声の主が消えた。

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

「なんか聞こえたのは気のせいだから、早く行こ?」

 

――ズドォォォォン――

 

「ゆ~~~~~き~~~~~さ~~~~~ん??????よぉぉぉぉくもやってくれましたねぇぇぇぇ?????」

 

「チッ、箱庭の貴族の特権で無料で”境界門(アストラルゲート)”使いやがった、逃げるぞ!!!」

 

「逃がすかッ!!!」

 

「「甘いぜ!!黒ウサギ!!!」」

 

十六夜は隣に居た飛鳥を抱きかかえ展望台から飛び降りた。耀は黒ウサギに捕まった瞬間、優希にお姫様抱っこされた状態で展望台の下にいた。ちなみに、叫んだのは優希と十六夜である。

 

「逃がすかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

「なんで俺!?っていうか、もうウサギじゃなくて”バーサーカー”の間違いだろ!!?」

 

「フッフフフフフフゥゥゥ、捕まえ―――」

と優希の肩を掴もうとした瞬間【ファントムモード】の声が聞こえ、優希の体を”透りぬけた”。

 

「―――残念だったな。今黒ウサギが見ている俺はそこにいる様に見えても実態は別の場所にある。分かりやすく言うと、今の俺は”幻影”だ」

 

「ソウデスカ」と言いながらニコォォォと不気味すぎる笑みを浮かべている黒ウサギ。

 

最早、”引く”と軽く飛び越えて”ドン引き”である。

一方、耀は顔を盛大に真っ赤にしながらおとなしく優希に捕まっている。

 

「何アレ???血に飢えた吸血鬼かバーサーカーみたいな顔してるよ!?明らかに狂乱者だよ!!??」

 

「仕方が無いデスネ。ロープで縛り上げて差し上げましょう!!!!!!」

 

「なんで、ロープなんて持ってんだよ!!!??それ以前にどっから出したんだよ!!!!???」

 

「大人しく捕まってもらいましょうか???」

 

――グゥゥゥ――・・・・優希のお腹が盛大に鳴った。

 

「黒ウサギ、お腹減った。美味しい食べ物と甘い食べ物出してくれたら大人しく捕まるよ」

 

「本当ですか?それなら黒ウサギが白夜叉様に頼めば二つ返事で”良い”と言ってくれるので問題有りません」

 

「おいコラ黒ウサギ!最近のおんしは些か礼儀を欠いておらんか!?コレでも私は―――」

 

「出してあげて下さい!!!黒ウサギは他の問題児様を捕まえに参りますので!」

 

全く聞く耳を持たずに叫ぶ黒ウサギ。白夜叉はあまりの勢いに負けて思わず頷く。

 

「そ、そ、そうか。良く分からんが頑張れ黒ウサギ」

 

「はい!!!」

 

と言った後、黒ウサギは十六夜達が逃げて行ったと思われる方向に向かっていった。

ゲームの開始から約二時間。黒ウサギと問題児の追いかけっこは、後半戦にもつれ込むのだった。

 




次、どうしよう・・・・まだ考えてないな・・・

まぁ、お昼ご飯を食べながら策を練ります。

という事で、第十話更新!!

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