連邦兵のザンスカール戦争記   作:かまらん

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すいません、事情により、長らくこの作品を書けなかった事をお詫びします。これからはちゃんと続けていきたいと思いますのでよろしくお願いします!


第13話 艦隊戦 後編

閃光は俺にみるみるうちに近づいてくる。死の間際なのか、何故か全てがゆっくりに見える。これが走馬灯というやつなのか。俺はそんな事を心の片隅に考えていた。電撃により、身体が思うように動かない。ビームシールドで防ぐ事も出来ない。終わったな…

 

 

『メオさん!』

 

 

しかし、そんな走馬灯は誰かの声によって消え失せる。V(ヴィクトリー)が俺の機体ごとぶつかり、ビームを避けたのだった。その衝撃で俺は静寂していた思考が取り除かれた。

 

「身体が動く…!」

 

衝撃のおかげか、はたまた声によって叩き起こされたのか、痺れていた手足が動ける。その事に驚喜するが、今の状況の事もあってそれはすぐに消える。俺はペダルを踏み、ゾロアットのいる場所から遠くに離れようとバーニアを吹かす。

ゾロアットのパイロットはガンダムの介入に驚いているのか、ビームキャノンを乱射しながら蝿のように宇宙空間を飛び交う。

 

『大丈夫ですかメオさん』

 

「その声…ウッソか!」

 

ビームライフルで連射を行いながら、ウッソの声が聞こえる。どうやらスペースシャトルの所は、リーンホースと合流できたらしい。

 

「こなくそ…!!」

 

ウッソの率先射撃に次いで、俺もマシンキャノンで射撃する。ゾロアットはその弾幕を避ける事ができず、メインカメラである頭部を破壊された。そのゾロアットは深追いするのは危険だと察したのか、後退する。

 

「また助けてもらった…」

 

軍人である自分自身が情けない…そんな事を考えながら、俺は引き続き射撃を行う。V(ヴィクトリー)の介入により、こちらの陣営も何とか立て直す事が出来たらしい。シュラク隊の連携プレイや、その他のパイロットの猛攻にゾロアットらは撃墜されている。

俺もあいつらに続かなければ…。

 

すぐさまビームライフルで、前方のゾロアットを撃つ。ゾロアットは肩を掠め、反撃とばかりにビームキャノンを放とうとしたが、太い光の束が胴体部を貫き、爆散する。誰かのガンイージがビームバズーカで撃ってくれたのだろう。そんな事を思っていたら、発射されたビームの方向には白いゾロアットがいた。

 

「白いゾロアット…!?何だありゃあ」

 

仲間割れかと思ったが、識別信号では味方になっている。誰かがぶんどって動かしているか。ともかく、撃破してくれたのは間違いない。他のゾロアットを攻撃しているのが証拠だ。それよりも、今はリーンホースを守るのが最優先。

 

レバーを深く握りながら、宇宙を徘徊する。 すると、その遠方からミサイルが飛んでくるのを見た。そのミサイルは、V(ヴィクトリー)を攻撃しているゾロアットの肩に直撃する。何事なんだ、ミサイルの発射された方向を見る。遠方から近づいてくる艦。まるで魚の骨の様だった。

 

「何だあれ…!?まさかマーベット達が乗っているのか!」

 

無茶だ。こんな激しい戦場の中、1つの小型艦…いやあの形状だと哨戒艇の類だろう。あまりにも場違いだ。しかも武装もミサイルポッド唯一つ。自分から死にいってる様なものだ。俺は小さく舌打ちし、魚の骨の様な艦に近付く。爆発が何度も重なり、機体の近くで火球がいくつも浮かび上がる。

 

「…っく!」

 

流れ弾を掻い潜り、艦の所に辿り着いた。俺はマニピュレータで接触回線を行う。

 

「マーベット!死に行くつもりか!!」

 

俺は怒鳴りながら、今の戦闘状況を忙しなくキョロキョロと見る。すると、通信機械からゲッと声が聞こえた。この声はマーベットじゃない…しかも聞いたことのある声だ。まさか…

 

「オデロか!?何で宇宙に…」

 

『悪いかよッ!』

「悪いとかそんな問題じゃ…は!話は後だ、さっさと此処から離脱しろ!巻き込まれるぞ!」

 

『ウッソ君を援護しているんです!巻き込まれる覚悟できました!』

 

何やら聞き慣れない声だ…子供か?何故…とは思ったものの、この状況じゃらそんな余裕があるはずがない。

 

「…あぁぁ!わかったよ!ただし絶対一定の距離を保てよ!死んじまうからな!!」

 

俺はそう言うと通信機械を切り、すぐさまウッソの方へと加勢しに行く。ウッソが相手しているゾロアットは、何やらとんでもなくアクロバティックな動きをしている。高速旋回や、それを行いながらビームライフルによる射撃、そして流れる様に接近戦を持ち込んでいる。

 

「…エースか!」

 

べスパ自体のパイロットの腕は、一人一人練度が高い。俺の戦って来た奴らも一筋縄で撃墜できるものじゃなかった。だが、前方のゾロアットは動きに無駄がない。エースと判断するのは容易。…かといって相手するのは至難だ。

ウッソもウッソで、それらの行動に沿った対応をしている。あれが天才ってやつか。からといって、ウッソを一人にさせるわけにはいかない。

 

接近戦から遠距離戦へと移行した時に、俺はレバーのスイッチを押し、ビームガンとビームライフルを連射する。マシンキャノンだと、散乱した弾がV(ヴィクトリー)に当たる可能性がある。…だがビームの連射自体も危ない。射撃を行わずに、接近戦に持ち込むしかないのか?

俺の放ったビームの光に動ずる事なく、ゾロアットはV(ヴィクトリー)に接近し、ビームサーベルを振りかざす。V(ヴィクトリー)も同じビームサーベルで受け止めるものの、相手の蹴りにより機体ごと吹き飛ばされる。

 

「…迷っている暇があるか」

 

ビームサーベルを取りだし、俺はペダルを踏む。バーニアを最大限までに吹かし、ビームサーベルの刀身を突き刺すように構える。ウッソと交戦しているゾロアットの姿がみるみるうちに大きくなって行く。すると、接近している事に気付きやがったのか頭部をこちらに向けらキツネ目がギョロリと開いた。

だがもう遅い…全身から伝わるGに耐えながら、

 

「おおおお!!!」

 

大きく声を上げ、ゾロアットへと突進した。ゾロアットは機体を上に少しずらし、コックピットへと向けた桃色の刀身が足の方へと突き刺さる。

 

「は、反応したのか!?」

 

とんでもない反射神経…化け物か。俺は敵の超人的な反応性に慄く。足にビームサーベルが刺さったしても、MSは軽い支障で済んでしまう。

 

「クッ…クソ!?」

 

俺は動揺し、咄嗟にアポジで後退してしまう。だが、それが良かったかもしれない。 反撃とばかりに、ゾロアットのビームサーベルが縦一文字にふりかざした…が、

 

「うおおお!?」

 

咄嗟の後退のお陰で、ビームサーベルの刀身が先っちょにしか掠らなかった。俺は近くで感じる、ビームサーベルの熱に思わず声を漏らす。

 

『メオさん!!』

 

ウッソの声と同時に、ボトムリムがゾロアットの腹部に直撃する。吹き飛ばされるゾロアット。

今がチャンスかもしれない…!!レバーを痛くなる程握り締め、

 

「くらええぇ!!」

 

マシンキャノンを放った。飛び散らかる弾丸を掠めたり、めり込んだらしたゾロアット。流石にこれ以上は無理だと撤退しに、バーニアを吹かして遠い彼方へと飛んで行く。

 

「さっさと帰りやがれ…!」

 

小さくなって行くゾロアットを横目に、リーンホースの方へと視線を移す。リーンホースの側には見慣れない戦艦があった。だが姿からして連邦のやつだろう。

そして、此方に来ているMS。青を基調とし、ショットランサーを装備した連邦の主力機…

 

「ジャベリンか…」

 

『そこの…ジェムズガン?とガンダムのパイロットは生きてるか?』

 

「生きてる生きてる…」

 

俺と同じ連邦兵のパイロットが負傷の確認する。何故かジェムズガンの所だけ疑問系だったのは流しておいてやろう。何とか戦い抜けたお陰で俺はとても寛容になったようだ。細かい事も気にしなくなった…。これが生きる上で本当に良かったのかは疑問だが。

 

『はい、大丈夫です』

 

『そうか、なら艦までの帰還はできるようだな?ではお先に』

 

連邦兵のジャベリンはそのまま旋回を行い、ガウンランドへと向かった。…どうやら、ジン・ジャハナムは本当に援軍として来てくれたらしい。英雄とか何とか少し胡散臭い感じはしたが、実際に来てくれたのだから、とんでもないお優しいお方なのだろう。

 

「しかし、危ない所をありがとう…ウッソ」

 

『当然の事をしただけですよ、それより御身体…大丈夫ですか?』

 

「大丈夫だ…何とか調子が戻ってきた」

 

手を握る事を繰り返しながら、周りを見渡す。遠方ではザンスカールの戦艦が後退しているのがわかる。MSもだ。どうやら凌げる事が出来たようだ。ヘルメットの中は火照った体の為か、とんでもなくむさ苦しい。俺はヘルメットのバイザーを開き、一息つく。

 

「…こんな所にいるのも何だし、取り敢えず帰還するか。はぁ…やっぱり宇宙は苦手だな」

 

疲労で重い身体を鞭打つように、ゆっくりとペダルを踏み、徐行する感覚で機体を動かす。ずっと体が緊張してたお陰で、肩がとても凝った。…まだおっさんと呼ばれる歳ではないのに、何だこの悲しさは。

目を瞑りながら、片手ずつ肩をほぐして行く。…ダジャレじゃない、うん。

 

『メオさんは宇宙が嫌いなんですか?』

 

「嫌いというか、怖い…な。何にも囚われることのない、この無重力は不安しか感じられない。ま、地球育ちだからと思うが。ウッソは宇宙に来てどうだ?」

 

『僕も地球育ちですが、不安とかは感じられないんです。どちらかというと、宇宙に興味があります。そこら辺に散らばった星を見ていると、何だか心が安らぐんです」

 

ウッソの生き生きとした声は、年相応のものだ。やっぱり子供は感受性が高いのだろう。地球連邦でも15歳の少年兵が活躍したらしいが、ウッソを見てると何となく説得力がある。…とはいえ、やっぱり子供が戦う事自体はあまり賛同できない。まぁウッソの活躍がなかったら、この戦争自体が悲惨な結果を招いたのだろうが。

「そういや、両親についての手掛かりは何か掴めたか…?」

 

『…いえ、まだ何も…』

 

すると、ウッソはトーンを低くした声で答えた。あまり聞かれたくない話題なんだろうな。もう少し考えて話せば良かった。

自分の言動に後悔しつつ、俺はキョロキョロと辺りを見渡した。

…いた。俺の見ている方向は、さっき交戦中に介入して来た魚の骨。

 

「ウッソ、お前は先に行っていい。ジン・ジャハナムさんに聞きたいんだろ?両親の事。俺はあの魚の骨もどきに向かうから。

 

『は、はいわかりました…。…あの!』

 

「ん?」

 

『オデロ達はただ、お手伝いがしたくて、来てくれたんです。そのお陰で僕も…』

 

言葉が濁るウッソ。まさか、俺が叱るつもりと思っていたのか?まるでゴメス大尉と同じ扱いじゃないか。俺は苦笑いする。

 

「大丈夫だ。別に怒らないから」

 

軽い口調で応答し、俺は魚の骨へと近づく。しかし、よくこんなものを拾って来たもんだ…。この艦はどうやら、上と下にMS2機を積むようだ。やっぱり哨戒任務の為のやつか…

 

コックピットから降り、俺はパッチを開く。壁を蹴り、そのままブリッヂの方へと向かう。だいぶ宇宙での移動も慣れて来たんじゃないか?少し慣れてきた事について少し嬉しく思う。

ブリッヂ前のパッチをへと辿り着き、そのままパッチのボタンを押した。

 

「…子供?」

 

俺が知っているウォレン、オデロ、スージィを含めて、ブリッヂにいる者は子供だ。その子供達は、それぞれ機械などを対面して操縦しているというのか。

 

「メオさん!こ、こんにちは…」

 

ウォレンが第一に挨拶するが、他の子供達は少し俺に対して、距離を置いている。…警戒しているのか。いや、いきなり軍人が入ってきたら驚くのは無理もないだろう。

 

「誰?…あのおじさん」

 

「お、おじさん!!?俺がか!?」

 

自分でも信じられない程、声が大きくなった。でも実際、おじさん呼びは本当に傷つく。しかも年端もいかない少女に言われてしまったら、

 

「ひっ!?」

青がかった少女が同じ容姿の似た、姉と思わしき少女に抱きつく。やっちまった…怯えさせてどうするんだ。すると、ウォレンが間に割り込んできた。

 

「一応、味方だから!別に怯える事はないよ!」

 

何とかフォローをしてくれるウォレン。…ウォレンの一応味方という言葉が引っかかるが、気のせいという事にしておこう。

黒い肌の少年が二人と、さっきの失礼な少女とそのお姉さん二人。この多人数という事は、ジブラルタルの時に乗り込んできた訳ではなさそうだな。オデロはというと…片隅の席で顔を伏せていた。

 

「オデロ…お前なぁ、何で宇宙まで来たんだ」

 

「…あんたに言う事なんか何もねぇよ」

 

オデロの口調はどこか拗ねた感じだ。こいつマーベットとかオリファーの時はこんな態度しないのに、俺の時だけするんだよな。…少し厳しい口調で叱りすぎたのが駄目だったのか。

 

 

「あのなぁ…リーンホースはもうすぐ大規模な戦争が待っている。お前達まで巻き込まれたらどうするんだ」

 

「うるさい子供扱いすんな!俺だって戦えるんだ…!!ウッソは良くて、何で俺たちは駄目なんだ!?」

 

言葉が詰まる。そりゃあ…そうだ。まだウッソは子供なんだ…しかもオデロよりも年が下。それなのに、ウッソに殺し合いをさせている。

オデロの言動は何故ウッソより上の年なのに、戦えないんだという意味だろうが…俺から聞くと、何故俺よりも下の年なのに…まだ子供なのに、ウッソが戦うんだという事に捉えてしまう。

 

べスパのやり口が気に食わないと思っていたが、リガ・ミリティアも目的は違えど、やっている事は同類なのかもしれない。オデロの言葉はとても胸に打つような感触であった。

 

「…何であれ、死ぬ事はなかったのは良かった。ここの操縦手は?」

 

「はい」

 

黒い肌の背が高い方のの少年が手を挙げる。この声は戦闘中時に返答で聞こえたものだ。彼が操縦していたのか。

 

「一旦、この艦はリーンホースへと向かってくれ。俺が先に向かって事情を話しておく…ええと」

 

『トマーシュ・マサリクです。左から弟のカレル、エリシャ・クランスキー、エリシャの妹のマルチナです」

 

「…あぁよろしく頼む」

ブリッヂを出る。少し変な空気にさせてしまったな。申し訳ない気持ちを抱きながら、再度ジェムズガンへとコックピットに乗り込む。

 

各機体の損傷を見ながら、オデロの言葉が脳によぎる。こんな事考えても、所詮俺は一人のパイロット。特別何もやれる事はないだろう…。わざわざ自分に言い聞かせるなんて、つくづく大人は嫌になる。自己嫌悪に陥った気分を抑え、俺は溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 


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