「おい起きろ!」
「あぁ…?」
重い体を無理矢理にも起こし、俺は頭をボリボリと掻きながら目を見開く。こんなにも早く起きたのは初めてだ。なんせ毎日昼まで寝てたからな。
しゃがれた声の持ち主は、ゴメス大尉だ。眉間にとんでもない皺を寄せ、俺の胸グラを掴む。
「あぁ?じゃねぇよ!今日はリガ・ミリティアの輸送任務があるって事忘れていただろ!」
そうか、そういや昨日そんな事言ってたな…。だから早く起こしてきたのか。この飛行場での久しぶりの仕事だな。ここにまだリガ・ミリティアなんていたのか…。
「はぁ…ゴメス大尉、何で俺達がそんな事しなくちゃいけないんスか?所詮は民間組織、ベスパに敵う相手じゃないですよ」
リガ・ミリティアはザンスカールのギロチンによる恐怖政治に抵抗する為のレジスタンス…っと響きは良いが、どうせ弾圧されるに決まってる。
「そんなのどーでもいいんだよ!これは一応上層部の命令だからやらなきゃ意味がねぇんだ」
上層部って言っても、そんなの極一部でしかない。殆どの将官はザンスカール帝国の事には、何にも干渉しようとしない。関わりたくないのだろう。俺もゴメス大尉もそうなのだが。だけど一応は命令。俺の生活に支障を来す事が無ければいいんだ。
「さっさとモビルスーツに搭乗して、あいつらを誘導してこい!」
「…了解」
俺はノロノロとパイロットスーツへと着替えながら、ゴメス大尉の怒声に対して、溜息交じりの返事をした。
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「あー寝みぃ…」
滑走路へと向かい、ジェムズガンのコックピットでだらける。このコックピットは色々と改造をしており、色々な娯楽物を取り出す事ができる。…まぁこの事はメカニックやゴメス大尉に言ってないのだが。
バレたらしょっぴかれるなーと雑誌を読み漁っていると、森の奥からMSを載せた暗緑の車が出てきた。
「あれがリガ・ミリティアねぇ…」
それと同時にワッパに乗っている子供も出てくる。…何で子供がいるんだ?少し思考が停止する…が、まぁ関係ないやと思いつつジェムズガンで飛行場へと誘導させる。
「しかし、リガ・ミリティアの奴等俺たちよりも良いMSに乗ってんじゃねえのか?」
載せられているMSはセンサーの種類がツインアイ…中々の高性能じゃないのか?しかも何となく見た事があるような…何だっけあれ…
とにかく、リガ・ミリティアの面子も見てみたい事だし飛行場へと向かうか。コックピットのハッチを開け、ワイヤーロープで降りる。すると、遠方から子供の声が聞こえた。その方向に振り向くと、ワッパに乗っていた少年だった。
「すいませーん!お尋ねしたい事があるんですけど!良いでしょうか!」
なーんか面倒くさそうだな…さっさと追い払うか。
「子供だぁ?お前に話せる事なんて何もねぇよ。初対面の人間に何か尋ねたいのなら、自己紹介をしてからやれ。」
俺は冷たく言い放つ。流石にこんな態度だったら、目の前のこいつも俺と話す気なんて無くなるだろう。しかし、その子供は帽子を脱ぎ、
「すいません、僕の名前はウッソ・エヴィンといいます。自分は父親である、ハンゲルグ・エヴィンを探しています。何か知っている事がありましたら教えてくれませんか?お願いします!」
「あ、あぁ…」
と深くお辞儀をする。はぁー、このご時世にこんなに礼儀正しい子供がいるなんてな。俺はその子供…いや、ウッソの姿を見て感心する。
「ハンゲルグ・エヴィンね…すまんな、その名前は一度も聞いた事がないな」
「そ、そうですか…」
しょぼくれるウッソ見て、何か罪悪感が溢れてくる。親を探してんのか…何か事情がありそうだが。
一応俺も自己紹介をしておくかな。
「俺の名前はメオ・マルスだ。階級は中尉。ま、別に記憶しなくて良いからな…しかし、親を探してるのか…」
「僕の父は、昔から僕に勉強を教えてくれたんです…。でも仕事か何かはわからないけど何処かへと向かってしまって」
「そうか…」
色々と大変だったのか…
「…あ、時間を取らせてしまってすいません!ありがとうございました、メオさん!」
「ああ、親父さん見つかるといいな」
ウッソはそのまま颯爽と何処かへと向かって行った。良い子じゃないか…。何故リガ・ミリティアと同行してたんだろうな。
「戦争孤児ってやつか?…だとしてもリガミリティアにいるのは危険すぎる…」
さっきその事を聞けばよかったと後悔したその時、途轍もない爆音が聞こえた。
「何だこの音!?」
俺は向かおうとしていた飛行場を背に、ジェムズガンのコックピットへと乗り込み、遠方へとメインカメラを向ける。その画面にはバイクのような戦闘機が地上を駆けていく。その後ろ側には胴体だけのジェムズガンが転がっている。
「あの爆音は撃墜されたものか!」
急いでレバーを引き、ビームライフルを構える。数は…8機いや、10機だな。あのバイクもどきは恐らく、いや絶対的にベスパのものだ。
リガミリティアの奴等、余計なものを連れてきやがった…。
ペダルを踏み、ジェムズガンを飛ばす。敵機もこちらに気が付いたのか、1機ずつ散開させていく。バイクもどきの背にはキャノンが搭載させている。
「小さいとはいえ…ジェムズガンの装甲じゃあ、一発でKOだぞ!」
散開するバイクもどきをビームライフルで狙い撃つ。しかし、機動性は彼方側が圧倒的に上回っており、簡単に避けられる。反撃とばかりにキャノンを撃ってきた。スラスター回避を行い、ギリギリで避ける事ができた。しかし、
「危ねぇ!?」
足元に撃ってきたキャノンの弾は地面を崩壊させ、ジェムズガンは足元が狂い転倒してしまった。そしてすかさず、バイクもどき達はキャノンの砲塔を調整しながら、こちらへと向かってくる。
「ひぃぃぃ!!」
情けない悲鳴を上げたのもつかの間、緑色のMSがその中の1機を足で蹴飛ばした。それによりバイクもどきの動きも動揺し、逃げるように走り回る。
「なっ…!」
そして背後からビームが降り注ぎ、逃げ回るバイクもどきを2機、3機ていど撃墜した。その背後のMSも言わずもがな、目の前のやつと同じだ。
「まさかリガ・ミリティアのMSか?」
目の前のMSは手を差し伸べる。俺はそれに応え、機体を持ち上げてくれた。その際のお肌触れ合い回線により、声がヘルメット越しに聞こえる。
『アンタ!仮にも正規の軍人でしょ!何情けない戦いをしてるの!』
「ぐっ…」
この声はどうやら女のようだ…まさか民間組織の者に助けてもらうとは言い返す言葉もない。その証拠に俺の喉から出ようとした声は、無意識に抑えられた。
『またさっきの状況になったら、助ける事なんかできないからね!』
そう言うと、緑色のMSはビームライフルを連射させ、バイクもどきを撃墜にはしていないが転倒させたりなどの無力化をさせている。民間組織のパイロットとはいえない、凄い腕だ…。
「って何、ボーっとしてんだ!俺は!」
俺はなりふり構わず、ビームライフルを連射させる。すると小規模な爆発が起きた。ビームがどうやら奇跡的に当たったらしい。
「よっしゃ!俺だってやれるんだ!」
ガッツポーズをしていると、飛行場の方からバーニアの音が聞こえる。それはさっきのMSとは違い、色は白く、アンテナはVの様になっている。そのツインアイは、鋭く光っている。やっぱり見た事があると思っていたら…あの歴史の教科書で写真が載っていた、
「ガンダムじゃねぇか!」
抵抗のシンボルであるガンダムであった。ガンダムはそのまま輸送機の翼を素通りし、空高く飛びあがった。日差しを受け、微小ながらも反射で光っているガンダムの姿はとても勇ましい。
「まさかリガ・ミリティアが開発したってのか!?」
俺は目を見開き。ガンダムを見つめる。…しかし、そのガンダムの向かっている方向には、その反対に暗い紫色のヘリコプターがある。
…いや、ヘリコプターじゃない。あのビームローターはベスパのMSだ。実際には戦った事はないが、ゴメス大尉が前話していたトムリアットというMSだ。
「おいおい…!!」
ぼそりと呟いた後、それにして応えるようにトムリアットは人型に変形させる。そして両手でもっている、ビームバズーカを構える。
「っ!!」
俺の方に太いビームが降り注いだ。
文章おかしくなってない…かな?